「社員が辞めない経営」実現で勝ち取った2桁成長
―建設業界向けシステム開発 現場サポートの場合―

柔軟な勤務形態

2019.11.01

次々と離職者を出すギラギラしたIT企業だった会社を、働きやすい職場へと転換させたのが、建設業界向けシステム開発の「現場サポート」(鹿児島市)だ。同社で働く人は、従業員ではなく、仲間であるとの考え方を築き上げ、ストレスを低減させた関係作りで、事業実績や生産性も上昇していったという。

利益最優先の「暗黒時代」から脱却、「仲間に感謝」の職場作り

建設現場で仕事の配分や進展状況を効率的に伝達・共有するためのクラウド・ソフトウェアを開発するのが現場サポートの中核事業だ。福留進一社長が38歳の時に設立した。

創業から間もない時期は、「暗黒時代でした」と福留社長は振り返る。目の前の利益を最大化することが経営の主眼だった。利益は出る「優良企業」だったが、社員間の優劣が浮き彫りになり、ついていけない社員が続出し4人に1人が辞めていくなど、雰囲気は決して良くなかった。「これではダメだ」と福留社長は2010年ごろから、利益の最大化方針をやめ、仲間意識が高く、経営理念を社内で共有できる会社作りを始めたという。

社内で働く人たちを「仲間」と位置づけ、環境整備に意欲的に取り組む福留社長

社内で働く人たちを「仲間」と位置づけ、環境整備に意欲的に取り組む福留社長

フレックスタイム制度を導入したほか、時短勤務の年齢制限撤廃、テレワークの容認、時間単位の有休制度などで、労働環境の外枠を整備した。働き方改革を、単なる労働環境の整備に終わらせず、社員の意識向上につなげることに努めた。

例えば、リフレッシュ休暇は、「年間5連休以上にして取得すること」にした。取得しなければ、賞与の評価に影響するため、取得率は100%だ。この「リフレッシュ休暇」の隠れた狙いは、仕事を抱え込まずに分業することと、社員に『私がいなくても仕事は回るんだ』という意識を植え付けることだ。実際、リフレッシュ休暇を取得した社員は、以前にも増して、緊張感をもって仕事に臨むようになるという。

現場サポートの「働き方改革」の特徴は、「良好な人間関係」への強いこだわりだ。社内では自社開発のビジネスSNSを活用し、デジタルなコミュニケーションを活性化させている。仕事中は、自分の仕事に没頭するため無口になりがちだ。しかし、自分のタイミングで応答できるデジタルツールを用いることで、1日に社内のネット空間を行き交うやりとりは500通に達するという。

現場サポートの社内SNSには「ありがとう掲示板」というコーナーがある。社員が同僚に感謝の気持ちを伝える仕組みだ。仕事上で気づいたことを「助言をしてくれてありがとう」「サポートしてくれてありがとう」などの言葉にして、感謝の気持ちを公開で伝える。社員は月に1回以上、社長は毎日、感謝するエピソードをネット上にあげる。それを読んだ各社員が、さらにコメントを付け加える。賞与時期には「ありがとう大賞」という企画もあり、受賞者は賞与に反映され、更に社長との高級レストランでのランチに招かれるという。

精神疾患をバックアップ、「仕事続けたい」意欲を支える

人間関係の改善には、アナログなコミュニケーションも活用されている。月1回開かれる読書会では、人間学についての月刊誌をつかって、社員は読後の意見を出し合う。目的は相互理解にあるため、相手への批判は一切禁止だ。このほか社内勉強会では、会社の理念を学習し、会社が向かう方向について確認しあうという。会社が費用を半額負担する社内の懇談会も頻繁に開き、食事をしながら絆を深めるイベントも好評だという。

会社全体で仕事を進める時、同僚の仕事を助ける必要が出てくる。その時、人間関係が悪いと「同僚の尻ぬぐいをする」との意識になり、関係が良いと「フォローする」という考えになる。「だから『感謝』と『承認』を会社の文化にして、結果として仕事の効率を上げていければと考えている」と福留社長は話す。

更に、先進的な取り組みとして、長期疾病の予防と回復のプログラムがある。IT業界には精神疾患で仕事の継続が難しくなる人の割合が高いとされている。精神疾患になると、社員は決まって「迷惑をかけますので」といって、辞めていく。

そこで現場サポートでは、病気で仕事継続が難しくなった社員には、仕事のコアタイムを廃止するほか、賞与は75%を保証し、目標設定はしない。そして幹部が月1回面接する。こうして「万が一」の時にも仕事を継続できる体制を整える。精神疾患になった社員が辞職を申し出る時に、福留社長は「そのことは元気になってから考えろ」と声をかけ、そして、元気になったら「仕事を続けたい」と社員は答えてくれるという。

社員がやめない経営、社員が追い込まれない経営を進めることで、社内の雰囲気は改善し、ここ数年、事業規模は2桁成長が続いている。

社長との個別面談から生まれた「テレワーク」のアイデア

商品のウェブ広告や自社サイトの企画などをしている右田文香さんは、昨年夏から隣県の宮崎県都城市の自宅でのテレワークを始めた。鹿児島市出身だが、結婚を機に都城市に移り住んだ。

昨年の結婚を機に、自宅での「テレワーク」を始めた右田さん

昨年の結婚を機に、自宅での「テレワーク」を始めた右田さん

「通勤するとしたら1時間半ぐらいかかる。引っ越ししても仕事を継続できるか決断を迫られた」という。そこでテレワークという働き方を選択した。自宅からチャットツールを使って社員と意思疎通をしながら仕事を続けている。「もしテレワークができなかったら、体力面で仕事を継続できたかどうか」と話す。今では、週末にはご主人と外出を楽しむ余裕もあるという。

テレワーク制度は、社員側の提案から生まれたという。2か月に1回、各社員は社長と個別面談し、仕事に関する提案をする機会が与えられている。社員のアイデアが採用されれば、更に仕事へのモチベーションも効率も上がる。「会社経営の目的は、社員の成長」と言い切る福留社長は、次々と社員に仕事の新たな挑戦の舞台を用意し、そのための環境整備のためには惜しみなく資金を投入する考えだ。

趣味としてサイクリングを楽しむ、飯伏政樹さんはフレックスタイムを活用し、夫婦で子どもの面倒をみているという。飯伏さんは中途入社で、他の会社の事情にも詳しいが「ここまで、職場環境整備をするのはまれだろう。一朝一夕ではできません」と話す。社員同士の密なコミュニケーションができる社風に、満足感を高めている。

学生時代から自転車が趣味の飯伏さん。通勤も自転車を多用しているという

学生時代から自転車が趣味の飯伏さん。通勤も自転車を多用しているという

テレワークで宮崎県都城市の自宅で仕事をしている右田さん。7月はバリ島に新婚旅行を楽しんだ

テレワークで宮崎県都城市の自宅で仕事をしている右田さん。7月はバリ島に新婚旅行を楽しんだ

子供とプログラミング教室に出席する飯伏さん。趣味ではサイクリングを楽しんでいる

子供とプログラミング教室に出席する飯伏さん。趣味ではサイクリングを楽しんでいる

良好な職場環境で生み出された同社の製品は、九州・中国地方の公共工事の現場ではトップシェアを誇っているという。福留社長は「東京の真ん中でなくても生き残れるってことを、鹿児島発のIT企業として示していきたい」と意気込んでいる。

case study現場サポート 働き方改革のポイント

  • 01良好な社内の人間関係を構築

    社内のSNSで、同僚社員に対する仕事上の感謝を1か月に1回は発言するように推奨。社長は毎日、感謝の言葉を発信している。相互に感謝と承認する文化を醸成することで、良好な人間関係を作り、モチベーションを高める。

  • 02社員による社長への提案機会の提供

    2か月に1回、10分間の社長面談を義務化。面談では主に社員が仕事環境について説明するほか、職場環境の提案をする。テレワーク制度の導入や、研修制度の拡大は面談によって提案されたのが契機だった。

  • 03長期疾病社員のサポート

    万が一、精神疾患になった場合でも、安心して働き続けられるように、収入を保証するとともに、業務の負担軽減を図る。

company data企業データ

株式会社現場サポート

  • 社長 福留進一
  • 本社・鹿児島市
  • 従業員数46人
  • 創業2005年
  • 資本金1500万円
  • 建設現場で使うクラウドサービスの開発・販売・アフターサービス▽14年に鹿児島県経営品質賞優秀賞受賞、16年に九州初のユースエール企業認定、18年に鹿児島県第1号の働き方改革推進企業に認定される。

経営者略歴

福留進一(ふくどめ・しんいち) 1967年鹿児島県指宿市生まれ。大学を卒業後、富士ゼロックス鹿児島(株)に営業職として入社。2005年同社を退職と同時に 現場サポートを設立。現在は、鹿児島県中小企業家同友会の副代表理事、総務委員長。鹿児島県経営品質協議会幹事。座右の銘は『才と徳』。