子ども看護休暇は30分単位! 社員のアイデアを形に
―「地域密着」がモットー 水清建設の場合―

子育て支援

2019.11.01

岩手県のほぼ中央に位置する矢巾町。同町を拠点に、建設事業を展開する水清(みずせい)建設の水本孝(こう)社長は、「地域がよくならなければ、自分たちの会社はよくならない。矢巾町とともに発展していきたい」と同町と会社経営への思いを語る。

ICT技術で負担軽減、65歳定年制→「社員のため、町のため」

水清建設は年3回ほど中学、高校、大学生らのインターンシップを受け入れ、若い世代に建設業の魅力を伝えている。2019年8月上旬、同町の高校生2人がインターンシップに訪れていた。子どものころから水清建設の工事現場の風景を見て育ち、インターンシップを希望したという。作業着に身を包んだ2人は、「実際に仕事を体験して、地域に密着して貢献している様子がよく分かった。将来のキャリアプランも教えてもらい、ぜひここで働きたい」と笑顔を見せた。

水清建設は「地域の顔」としてだけではなく、社員の仕事と生活のバランスをサポートする働き方にかかわる施策を多く導入し、岩手県内外で注目されている。

水本社長は、「中小企業は来てくれる人材に、いかに活躍してもらえるかがカギ」と理由を説明する。背景には、「少子高齢化の影響で人材が集まりにくく、現役の男性社員を中心に考えた従来の働き方では対応できない」との危機意識があるという。

「地域がよくならなければ、自分たちの会社はよくならない」と話す水本孝社長

「地域がよくならなければ、自分たちの会社はよくならない」と話す水本孝社長

建設現場ではICT技術を積極的に活用して作業の負担を減らすとともに、2007年には定年を65歳まで延長したほか、地域活動や子育てなどを目的としたさまざまな休暇制度を導入している。

水本社長は「トップダウンよりボトムアップ。社員からアイデアや話があると、そのほとんどを『いいんじゃないか』と認めて進めている」という。水本社長が社員の声を聞くことで、多様な働き方ができる職場環境づくりにつながっている。

社員の声を聞く場所が、年に2回ほど行われる面談だ。面談は「会社の目標達成のために、部や個人単位でできることの達成度を半期に1度、評価する」(水本社長)ねらいで行われているが、水本社長はその席で必ず「会社に要望は何かありますか」と聞いているという。その席で、社員は「つい自分の思っていることを口に出してしまう」というのだ。

同社総務部課長の瀧恵子さんもその一人だ。「自分が言ったことが実現するとよかったなあという気持ちになる。さらに頑張ろう、いろいろな提案をしようと思えるようになる」と話す。

PTA活動は地域貢献の務め→「ワークライフバランス休暇」

瀧さんは、現在、子どもが通う中学校のPTA会長を務めており、これまでに小学校のPTA会長や保育園の役員を経験した。5年ほど前の面談時に、瀧さんが「PTA会長を引き受けることになり、お休みをいただく機会が増える」と説明したところ、水本社長からの答えは「地域のためになるからやりなよ」だった。

子どもが通う中学校のPTA会長を務める総務部課長の瀧恵子さん

子どもが通う中学校のPTA会長を務める総務部課長の瀧恵子さん

瀧さんらの声がきっかけとなって、2年前に「ワークライフバランス休暇」が導入された。仕事と生活のバランスをとることが目的で、自己啓発につながる活動はもちろん、PTAや学校行事をはじめ地域活動に参加するためにも利用できる。瀧さんはPTAや地域活動の参加に利用し、「地域で人脈が広がり、いろいろな方の考え方を吸収できた。休暇制度を利用しながらの参加は、自分のためにも会社のためにもなる」と振り返る。

社員旅行(沖縄)でスキューバダイビングを楽しむ女性社員

社員旅行(沖縄)でスキューバダイビングを楽しむ女性社員

町の春まつりで子どもたちとバーベキューを楽しむ社員

町の春まつりで子どもたちとバーベキューを楽しむ社員

小学校の卒業式でPTA会長として祝辞を述べている瀧さん

小学校の卒業式でPTA会長として祝辞を述べている瀧さん

もともと、水清建設は、公共事業にかかわる仕事も多いことから、「公益性」を考えるうえで、会社ぐるみで地域活動に取り組んできた。水本社長も生まれも育ちも矢巾町で、「会社組織で動くよりも、社員一人ひとりが地域のいろいろな場面で活動した方が領域や幅が広がる」とみている。

子育て中の社員の声を反映した制度も生まれた。「子の看護のための休暇」は子どもが中学校を卒業するまで、午前8時から午後5時までの勤務時間中に30分単位で取得できる。現在、5歳と2歳の子どもを育てる女性社員は、朝1時間の短時間勤務を利用して保育園に子どもを預けてから出社している。「発熱など子どもの急なお迎え時に30分単位で取得可能な『子の看護のための休暇制度』はとてもありがたい」と話す。

長期工事になりがちな建設業→竣工したら「リフレッシュ休暇」

「リフレッシュ休暇」は、建設業の実態を反映して生まれた。工事現場はいったん着工すると、土曜日や祝日も出勤して作業を行うことが少なくないため、一つの現場が終わると、休日出勤した日数分まとめて休暇を取得できるようにしたのだ。最長で1か月間取得できる。

水本社長は「一つの現場が竣工し、一段落したらまた新鮮な気持ちで英気を養って、安全に工事に取り組んでほしい」との思いを込めている。学校の春休みなどに子どもを連れてテーマパークに行ったり家族で旅行したりといった計画を立てる社員もいるという。リフレッシュ休暇を利用する男性社員は「現場竣工後に数日間まとめて取得できるので、遠方に出向いて趣味の釣りを楽しんでいる。気分をリフレッシュすることができ、次の仕事への意欲も増す」と効果を実感している。

社員のアイデアが「働き方改革」につながっている

社員のアイデアが「働き方改革」につながっている

こうした多様な休暇や制度について、水本社長は「労働環境が柔軟であれば、必ず社員のモチベーションが上がり、お客様の満足度が向上し、会社の経営にプラスになるといった好循環になる。小さな改善の積み重ねで生産性を上げていく」とねらいを説明する。

水清建設では、社員に対してモデルとなるキャリアプランを作成している。例えば、高校を卒業し18歳で入社した場合は、21歳ではこんな資格をとったり、こういう業務についたりということを示し、それぞれが「会社と成長していくイメージを持てるようにしている」という。

学生らを対象にしたインターンシップでも水本社長自身が伝えているという。そのうえで、「社員が仕事で成功体験を積み重ねていくことで、仕事にやりがいを見つけることができる。さらに会社がその実績を評価して公正に成果配分をすれば『この会社にいてよかった』と感じてくれるだろう」と思いを語る。

case study水清建設 働き方改革のポイント

  • 01生産性向上

    建設現場でのICT技術の活用による作業効率アップ、作業時間短縮

  • 02短時間勤務や様々な休暇制度

    子の看護のための休暇(子どもが中学校卒業まで1人につき年5日、30分単位で取得可能で利用率は女性100%、男性70%に上る)、ワークライフバランス休暇(自己啓発をはじめ地域や学校行事に参加できる)、リフレッシュ休暇(現場竣工後に心身のリフレッシュを図る)など。

company data企業データ

株式会社水清建設

  • 代表取締役 水本孝
  • 本社・岩手県矢巾町
  • 従業員数49名(2019年8月現在)
  • 創業1958年
  • 資本金4200万円
  • 総合建設業(土木、水道、建築、舗装、管工事)

経営者略歴

水本孝(みずもと・こう) 1983年日本大学工学部土木工学科卒業。86年に水清建設に入社し、2001年6月から代表取締役社長。2015年6月から矢巾町商工会会長(現在2期目)