「ユートピア構想」が農業ビジネスを変えていく!
―6次産業化体制 ワールドファームの場合―

残業削減・有休促進

2019.11.01

ワールドファームの新しいビジネスモデルで、農業女子が活躍中

茨城県つくば市を本拠に全国に展開する有限会社「ワールドファーム」は、働き方改革とともに農業の仕事の風景を変え、就農を希望する若い世代に人気を集めている。上野裕志代表取締役社長は、「ここ10年ほどで現在のモデルが出来上がってきた。農業は昔のイメージから脱却していかなければならない。もっと仕事の効率を上げたい」と話す。

畑と工場が隣接、栽培から加工まで一貫

上野社長が、農業就業人口の減少や高齢化、耕作放棄地の拡大といった問題に真正面から取り組む中で、たどり着いたのが、農業の「働き方改革」を前提とした新たなビジネスモデルの構築だ。

ワールドファームは、野菜の栽培から加工まで一貫した「6次産業」の体制をとる。収穫を待つキャベツ畑に隣接したつくば市の同社本社の工場では、機械を使ってキャベツのカット作業が行われている。雨天時には、社員は農作業ではなく、工場の仕事を行うようにするなど、工場の仕事と一体化させることで、人員配置の無駄をなくしている。また加工品を前提に生産しており、野菜を大きく育てて収量を増やし、虫食いがあっても工場内でカットするため廃棄せずに生産効率を上げている。このように、茨城県内をはじめ全国の直営農場と提携農場の生産から加工工程までを一貫して管理している。

キャベツの加工風景。ワールドファームの従業員はすごいスピードでキャベツを処理していく。

キャベツの加工風景。ワールドファームの従業員はすごいスピードでキャベツを処理していく。

「土・日は休み」「残業なし」 社員の3割が女性

経営企画を担当する櫻井勇人さんは「『週に5日働き、基本的に土曜日、日曜日は休む。残業はなし』との考え方を徹底している」と説明する。農業を集団で行うことで、年間の休日は120日確保している。全体に20代の社員が多く、平均年齢はおよそ30歳。農業が抱える問題を解決しながら取り組んでいる。

女性社員の活躍の場も広がっており、同社の社員のうち女性は34人と全体の3割を占める。そのうちの一人、藤田美樹さんは、「ワールドファームのビジネスモデルを全国に推進していきたい」と抱負を語る。子どものころから農作物に興味があり、高校と大学で農業を専門に学んだ。高校時代にワールドファームの存在を知り、入社を希望したという。「農業の仕事はきついというイメージはあったが、実際に入ってみると想像とは全く違った。お休みもきっちりとれるし、作業も時間内に終わる」と笑顔を見せる。現在、藤田さんは仕事をしながら、工場の衛生管理に関わる資格取得の勉強をしている。家族との時間もゆっくりとることができ、「将来的には大学で専攻していた果樹も作ってみたい」と意気込む。

「効率よく働くことができ、自分の時間を大切にしながら仕事を楽しむことができる」と語る藤田さん

「効率よく働くことができ、自分の時間を大切にしながら仕事を楽しむことができる」と語る藤田さん

益子照史さんは35歳の時にワールドファームに転職した。もともとは別の企業で営業を担当しており、農業経験は全くなかったが、「農業にビジネスチャンスがある」と感じて飛び込んだ。実際に入社してみると、「仕事時間中は集中するけれども、早い時間に帰ることができる。当初は『残業がない』というのも不思議な感覚だった」と振り返る。現在は、空いた時間を、トラクター免許を取得するなど仕事に関わる資格の勉強に充てているほか、一緒に食事をするなど職場のメンバーとコミュニケーションをとるための時間も大切にしている。

「残業がないという感覚が不思議だった」と益子さん

「残業がないという感覚が不思議だった」と益子さん

週末のお休みに地域のお祭りを楽しむ藤田さん(左)

週末のお休みに地域のお祭りを楽しむ藤田さん(左)

「職場のメンバーとの懇親の時間が大切」と益子さん(右)

「職場のメンバーとの懇親の時間が大切」と益子さん(右)

効率性と地域発展を追求、「村社会の復活」を目指す

ワールドファームでは、毎日、朝のミーティングで天候面などによって変わる仕事の内容を全体で調整して進めている。上野社長は「効率よく働くと決めれば、仕事は必ず時間内に終わる」と言葉に力を込める。サイバーダイン社と農業分野のロボット活用に向けた実証試験を開始するなどの研究を進めており、上野社長は「もっと仕事の効率を上げることができる」と語る。

農業の将来性について語る上野社長

農業の将来性について語る上野社長

ワールドファームが掲げるのは、地域が一体となった「アグリビジネスユートピア構想」だ。「次世代を担う農業者を育成し、国産の農産物を安定的かつ持続的に供給すること」を目指している。上野社長は、「会社の企業理念として農業振興があり、農業を振興するためには、効率よく働くとともに人材育成が必要となる。そして、ここで育った人材が『効率よく働くことができる農業システム』を広めてほしい」と構想への思いを語る。

イメージは、農業を通じた「地域の村社会の復活」だ。農業は仕事を通じて地域とのかかわりが生まれやすく、子育てを含めた地域全体のつながり、社会の機能が働き、地域全体が持続的に成長できるとの考えからだ。

農業について、上野社長は「子育てをしながら続けやすい仕事」という。実際、農業は時間単位でできる仕事が多く、働く時間に制約のある育児中の女性にも任せやすいためだ。例えば、トラクターは、自動化が進んで運転がしやすくなっており、「そういった人材が、1時間でも、トラクターで耕運してくれるだけでとても助かります」。また、工場の管理をはじめ、農作物を貯蔵する倉庫にかかわる仕事など、地域にさまざまな仕事を生み出す。

農業の「4K」(きつい、汚い、危険、稼げない)を「新4K」(簡単、感動・感謝、稼げる、家族のために)に変えるという。「日本の農業は世界に負けない」。上野社長は、働き方改革とともに農業の効率性の追求を続ける。

case studyワールドファーム 働き方改革のポイント

  • 01残業時間削減

    仕事の効率化を図り、時間内に仕事を終える職場づくりに取り組んでいる。

  • 02休暇日数増加

    土曜日、日曜日を特別な理由を除いて休日にするなど年間の休暇日数を増やしている。

  • 03女性が仕事を続けやすい職場環境の整備

    短時間勤務制度など育児中の女性が働きやすい制度を導入。

company data企業データ

有限会社ワールドファーム

  • 代表取締役 上野裕志
  • 本社・茨城県つくば市
  • 従業員数102名(2019年8月現在)
  • 創業2000年
  • 資本金5,500万円
  • 農業および食品加工業

経営者略歴

上野裕志(うえの・ひろし) 1964年生まれ。広島県福山市出身。83年茗渓学園卒業。その後、スポーツイベント・用品販売やホテル経営等を手がけた。2000年にワールドファームを設立し、2002年からワールドファーム代表取締役。