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有限会社センチュリーオート

業種

その他

地域

関東

従業員数

50〜99人

File.23

24時間無休のサービスも複数社員でカバーし年次有給休暇の完全消化を目指す ―クルマに関することをワンストップで展開「センチュリーオート」の場合―

幅広い人材活用

2020.09.10

有限会社センチュリーオート

本社に集まり社員みんなでガッツポーズ!地域に根差して32年目を迎えた

 JR東松戸駅から車で5分。千葉県松戸市紙敷にあるセンチュリーオート本社を訪ねると、真っ白な胡蝶蘭が店内にあふれていた。新型コロナウイルス感染症の影響で延びていた「新・中古車販売館」が5月30日にリニューアルオープンしたばかり。お揃いの赤いポロシャツで接客する社員の声もひときわ明るかった。
 1989年創業の同社は、鈑金塗装と中古車販売に始まり、車検・整備、24時間レッカーサービス、レンタカー、新車販売へと事業を拡げてきた。従業員は83名。地域のお客様へ、車に関するワンストップサービスを展開している。
 大半の従業員も、26歳で起業した代表取締役の石井英幸さんも、この土地で生まれ育った。
 「地域密着だから、うちに入って良かった、長く勤めたいといわれるような会社づくりを心掛けてきました」と石井さん。働く環境の改善にも努めてきた。

休みを増やしても売上に影響せず

 4週6休だった休日を2016年から週休2日に切り替えた。水曜日が定休で、残り4日は前月申告で従業員が好きに選べる。働き方改革関連法の施行により取得が義務付けられた年5日の年次有給休暇は、会社がカレンダーに組み込んだ。お正月やお盆休みに加えることで長い休みをとれるようにした。年間の休日は110日にのぼる。
 4年前の週休2日の採用は「実はものすごくこわかった」と石井さんは振り返る。事業拡大で仕事量は増えていた。電気自動車や自動運転など車が高度化し、修理や整備に時間がかかるようになった。残業を増やさずにやっていけるのか。
 「結論を言えば、売上にも影響しなかった。みんなが効率的な働き方を考えるようなりました」。会社も人員配置を厚くし、体制を整えた。

「あそこの会社に入って良かったねと言われる会社づくりをしたい」と語る石井英幸代表取締役

24時間勤務からの解放

 特長的なのは24時間無休のレッカーサービス事業だ。朝から翌朝までの24時間勤務が同業に多いなかで同社は、午前8時、10時、正午、午後8時からの11時間勤務による4交代制を採る。夜間でも最低2人態勢だ。
 「同業他社より1.3倍くらい人をかけています。社員一人当たりの粗利は減りますが、労働条件を良くするにはある程度の人数は必要。結果的に辞めないことにもつながる」(石井さん)。
 レッカー部28人を束ねる部長の木下正丈さんは、同業他社から移ってきた人が決まって口にする言葉があるという。「家に帰って寝られるのがうれしいと。それと休みが計画的に取れることですね」。1週間同じシフトなので生活のリズムが乱れず、体調管理もしやすいという。
 走行中の故障や事故による出動連絡は平日で日に約50件、週末になると約80件にも及ぶ。他社に多い一人勤務だと、時間内に作業が終わらず、休憩や仮眠も取りづらい。実作業や精神的な負担においても複数人体制は心強いと木下さんは話す。

趣味はバイクのツーリング。「休みがしっかりとれるので走れます」と話すレッカー部長の木下正丈さん

5年で5人が復職

 働く環境の改善は復職者も招いている。この5年間で5人が復職した。その全員が、人手としてほしい鈑金・整備などの技術者だ。
 フロント本部長の石田直博さんは整備士として同社で26歳から12年間勤め、さらに技術を身につけようと、輸入車専門の鈑金塗装会社に転職した。約10年間勤めたが、老朽化する設備を更新しない職場環境に悩んでいたところ、石井さんと偶然会い、3年前に戻ってきた。
 「以前いたころと比べて会社の規模は大きくなっていたのに、社員一人ひとりに目が行き届いている感じは変わらなかった。学んできた鈑金技術や組織の運営で、自分にやれることがあるんじゃないかと思えました」。
 復職者の多い鈑金・整備部門は率直に意見を言い合える職場だという。「それぞれ外で経験してきているので技術やプライドがある。このやり方、進め方のほうがいいと、時々ぶつかったりもしますが、ため込まずに言える関係が良さだと思います」

鈑金スタッフと談笑するフロント本部長の石田直博さん。「ここの良さは何でも言い合える関係です」

定年引き上げ、パートは無期雇用

 石井さんは昨年夏、全社員と面談し、意見を聞いたうえで、給与や手当、就業規則の見直しを始めた。さらに、長く勤めてもらえるように定年を60歳から65歳以上に引き上げる準備も進める。「60歳を超えても同じ仕事なら給与は下げない」という方針だ。
 パート従業員の働き方にも目を配る。安心して働き続けられるよう本人同意のもと今年中に、有期から無期雇用へと切り替える。主婦の多いパート従業員は家庭との両立で勤務時間が限られる。6時間勤務の場合、昼休憩は1時間と一律にせず、本人が30分で良いと希望すれば5時間30分の勤務とするなど柔軟に対応している。
 石井さんには創業以来続けていることがある。全社員の出退勤記録の確認作業だ。休日・有休の取得、早退、欠勤、遅刻。ひと月分のタイムカードに目を通し、それぞれの働き方をみる。「人には癖があって、必ず早めに出社する人、ルーズな人もいる。この社員はなぜこの月はこんなに帰りが遅かったのかと、仕事の状況も把握できます」
新型コロナウイルス感染症の影響で4、5月は客足が途絶えた。6月に入ってようやく通常の7割ほどに戻ったという。
 昨春入社した本城淑乃さんは電話や来店客に対応するコンシェルジュを担当する。
「コロナの対応で私がすごいなと思ったのは、会社がすぐにマスクを支給してくれたことです。アルコールの除菌剤も。お客様に対しても、従業員にも、気を配ってもらえたことがうれしかったです」

お揃いの赤いポロシャツを着て明るく接客する従業員のみなさん

社員は家族、HPに全員の自己紹介

 <会社に入る前はロックバンドのドラマーでした>
 <得意料理は回鍋肉と餃子です>
 会社のホームページの「スタッフ紹介」欄には、顔写真とともに、全社員が自己紹介とお客様へのメッセージを載せている。
 「お客様へのサービスを追求してきたら社員も増えてきたが、今も気持ちは一人二人でやっていた創業時と同じ。うちはファミリーだと思っています」
 石井さんの働く仲間に向ける眼差しが、会社の活性化につながっている。

新型コロナにも対応した開放的な接客スペースを設けて再オープンした新・中古車販売館
ホームページの「スタッフ紹介」欄。趣味や特技、将来の夢に彼女募集の告知まで。親しみが沸く

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

年5日の年休を含む年間110日の休日取得

効果
働き方改革関連法の施行により義務づけられた年5日の年休について、あらかじめカレンダーに記入することによって、確実に取得。4年前から週休2日を導入。そのうち4日分は自分で休みが選べる。
取組2

勤務の負担軽減を図る4交代制

効果
年中無休のレッカーサービスでは24時間交代勤務が主流のところ、11時間勤務の4交代制を採用。必ず複数人で従事する。超過勤務を防ぎ、休憩が取りやすい働き方にした。
取組3

パートは無期雇用へ、勤務時間も柔軟に

効果
安心して働き続けられるよう、今年中にパート従業員は無期雇用に切り替える。昼休憩も1時間に限定せず、本人の希望で短くでき、その分の賃金を支払う。

COMPANY DATA企業データ

自動車を通じ地域社会に根ざした企業を目指す

有限会社センチュリーオート

代表取締役:石井英幸
本社:千葉県松戸市
従業員数:83名(正社員72名、非正規雇用労働者11名=2020年5月末現在)
設立(創業):1989年
資本金:500万円
事業内容:鈑金・塗装、車検・整備、新中古車販売、年中無休のレッカーサービスなどのカーライフサポート。

経営者略歴

石井英幸(いしい・ひでゆき) 1962年千葉県松戸市生まれ。日本自動車整備専門学校(現:トヨタ東京自動車大学校)卒業。トヨタのディーラー勤務を経て創業。松戸商工会議所が優れた技術をもつ地元企業を表彰する松戸優良企業大賞で2018年度に最優秀賞を受賞。好きな言葉は「感謝」。