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株式会社マエダハウジング

業種

建設業

地域

中国・四国

従業員数

50〜99人

File.31

「顧客の満足」「社員の幸せ」の両立を目指して ―住宅リフォーム会社「マエダハウジング」の場合―

時間外労働の削減

2020.09.30

株式会社マエダハウジング

 リフォーム・修繕の実績数は2万4000件、2016年には「先進的なリフォーム事業者表彰(経済産業大臣表彰)」を受賞するなど、輝かしい実績を上げ続けているのが、住宅リフォームを手掛ける「マエダハウジング」(広島市)だ。顧客の満足と社員の幸せを両立させた、同社の働き方改革とは。

創業のきっかけは勤務先の倒産

 今でこそ順調な同社。創業のきっかけは、前田政登己(まさとみ)社長が従業員として勤めていた別のリフォーム会社の倒産だった。施工中の案件はストップ。支払いができていない職人から問い詰められた。「これは自分がやれということかな」。そう考え、「マエダハウジング」と記載した名刺を作り、「会社は潰してはいけない」と胸に刻んだ。創業時から「顧客や社員ら関わる人たちを幸せにする」と、がむしゃらに前へ進んできた。その思いは経営理念「住宅事業を通して、お客様の満足、社員の幸福、地域への貢献を同時に実現する」にも表れている。

「『経営理念の浸透』『社員が能力を発揮するための環境整備』が経営で重要なことの8割を占める」と語る前田政登己社長

 しかし、住宅リフォームは人の介在の比重が大きい。顧客の満足を追求するほど社員が疲弊していった。「顧客、社員の幸せの両立のため、働き方改革は避けられない」。前田社長は改革を決心した。

「リフォームプランのパッケージ化」で顧客と社員の利益を両立

 2017年、広島県の「働き方改革企業コンサルタント事業」に採択され、改革が本格化した。同年5月、全社員に現在の職場環境についてWEBアンケートを実施。「やる前から不安はあった」と前田社長が語るように、「こんなことをやっても無駄だ」といった意見が多かった。複雑な思いを抱えながらも、「何のために改革をやるのか」というゴールを明確にするため、7月にキックオフミーティングを実施。全従業員の前で改革の方針を発表し、社員らとともに問題点を洗い出した。社員からは「仕事量の偏りがある」「同じような仕事を繰り返している」「残業が多い」といった声が上がり、これらを基に改革の柱を立てていった。

働き方改革のきっかけとなったキックオフミーティング

 1つ目の改革の柱は「リフォームプランのパッケージ化」だ。過去の豊富な実績をもとに、5つのリフォームプランを作成。パッケージ化されたプランをもとに顧客と対話することで、打ち合わせに費やす時間を削減した。前田社長は「社員の負担が減るのはもちろん、お客様にとっても一から考えるよりは分かりやすい」と、その効果を強調する。

「制度の見える化」で残業時間削減と年次有給休暇取得率向上を実現

「時間外削減チェックシート」や「時間有給休暇申請チケット」など、制度の「見える化」を進めた

 2つ目の改革の柱は「残業削減」だ。残業を事前申請する際に「時間外削減チェックシート」を提出書類として加えた。シートには「その仕事を定時までに終わらせることはできないか」「次の日の朝に行うことはできないか」といったチェック項目が用意されている。「仕事をやろうと思ったら、いくらでも夜遅くまでできてしまう。『本当にその残業は必要か』という意識を持ってもらうためのものです」と前田社長は説明する。
 3つ目は「年次有給休暇促進」だ。チケット1枚で1時間の有給を取得できる「時間有給休暇申請チケット」を導入。「働く時間をフレキシブルにすることで、最大限に能力を生かせる社員もいる」(前田社長)という通り、特に子育て中の社員から好評を得ている。また、残りの有給日数を記載した「有給休暇票」も全社員に配り、制度の「見える化」を進めた。
 その結果、1人当たりの1日の残業平均時間は2016年の1.7時間から、2019年には0.68時間にまで減った。年休の取得率は2016年の17.4%から、2019年は69.35%と大きく増加した。

働き方改革を進める上でサポート役を務めた高野由美子さん

 改革を進める上で、サポート役として大きな役割を果たしてきたのが、経営本部総務経理室主任の高野由美子さんだ。「自分はどれくらい残業をしているのか、有給がどれだけあるのか分からない状態だった。それについても特に悪いという意識がなかったように思う」と取り組み前の状態を振り返る。
 社内唯一の総務担当だったため、社長にサポート役として指名された。会社の課題が分かっていながら、「一人だけの力では難しい」となかなか動き出せずにいただけに、指名を受けた際は「これで全社的に改革に取り組める」と前向きにとらえたという。その後は「現場で頑張っているみんなの力になりたい」と考え、取り組んできた。改革はまだ道半ばだというが、「働きがいがあり、毎日楽しく働ける会社であり続けるため、取り組みを続けていきたい」と笑顔で語る。

プライベートで同僚と島根県出雲市に旅行に出かけた高野さん(中央)

トップダウンの「プロジェクト」から社員が考える「委員会」へ

 前田社長は「会社が新しいことを始めるときは大きなエネルギーが必要なため、トップダウンで進めていくしかない」と語る一方で、「ただしそれを続けてしまうと『会社がやってくれるんだ』というマインドになり、改革は社員にとって他人事になってしまう」と続ける。
 同社の改革はトップダウンからスタートし、ミドルへ移行するために「プロジェクト」の形をとっていた。しかし、改革を進めていくにつれ、社員の間で「自分たちの職場は自分たちで考えていかなければならない」という意識が芽生え、今では社員のボトムアップによる「働き方改革委員会」が立ち上げられている。
 委員の一人で、住宅事業部設計デザイン部係長とプランナーを務める立迫ひとみさんは、顧客向け資料作成のソフトや形式を統一させる取り組みを進めている。プランナーは顧客の要望を図面に起こすのが仕事だが、同部が約2年前に立ち上がったこともあり、プランナー同士で形式が統一されていなかった。「統一化することで、施工現場の監督や職人との調整がスムーズになり業務効率化につながる」と、その狙いについて解説する。

生産性向上の取り組みについて語る立迫ひとみさん

 また、現在4人いるプランナーのうち2人が産休中である。「ぜひ復帰してほしい」と期待を寄せる立迫さんが進めているのは「業務範囲を分けること」だ。プランナーは顧客との打ち合わせにより、土日に出勤することが多い。そのため、打ち合わせなど「土日出勤でないとできない仕事」と、資料作成など「土日以外でできる仕事」を分け、子育て中の社員が働きやすい体制を整えようとしている。「これからの人材育成を考えても、業務範囲を分けることでステップアップしやすくなる」と強調する。

非常時にデジタルシフトを早める

 新型コロナウイルス感染症は、月を追うごとに大きな影響を与えていった。今年の2月にはリフォームに必要なトイレなど中国製品の受注が止まった。そのため、約20の現場の施工がストップした。さらに、4~5月にはモデルルームの来客が約50%減少した。
 働き方にも大きな変化が生じた。しかし、前田社長は「生産性を上げる良いきっかけになった」と前向きだ。オフィスに出社する社員を通常の3割に削減するため、テレワークを実施。顧客とのオンライン打ち合わせも開始した。「オンラインだと売り上げが上がらないのではないか」との懸念もあったが、前田社長自身が他社のオンライン営業を多数受け、「顧客接点があれば大丈夫だ」と実感した。また、動画共有サービス「YouTube」でのコンテンツも月約15本配信している。内容は「網戸の張替え方法」など、顧客にとって役立つ情報だ。3カ月で約10万回再生されるなど、大きな反響を受けた。「デジタルシフトは2~3年前から考えていたが、今回のことでそれが早まったように思う」と話す。

マエダハウジングの本社オフィス。出社する社員を通常の3割にするためにテレワークを実施している

 前田社長は働き方改革について「決して『早帰り運動』ではない。社員の幸せと同時に顧客満足を上げるため生産性を上げることが大切だ」という思いを持っている。これからも「関わる人すべての幸せ」を実現させるため、改革の手を緩めるつもりはない。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

リフォームプランのパッケージ化

効果
過去の実績をもとに、5つのリフォームプランを作成。パッケージ化されたプランをもとに顧客と対話することで、打ち合わせに費やす時間を削減した。
取組2

制度の見える化

効果
「時間外削減チェックシート」や「時間有給休暇申請チケット」など、目に見える形で制度の周知を徹底。結果、1人当たりの1日の残業平均時間は2016年の1.7時間から、2019年には0.68時間にまで減った。年休の取得率は2016年の17.4%から2019年は69.35%に増加。
取組3

トップダウンの改革から社員主体の改革へ

効果
働き方を確実に変えるため、トップダウン、ミドルダウンからの意識付けで働き方改革を進めた。その結果、社員の意識も変わっていき、現在は社員が主体となって改革を続けている。

COMPANY DATA企業データ

住宅事業を通して、お客さまの満足、社員の幸福、地域への貢献を同時に実現する

株式会社マエダハウジング

代表取締役社長:前田政登己
本社:広島県広島市
従業員数:88名(グループ全体 2020年1月現在)
設立:1995年
資本金:1億円
事業内容:住宅リフォーム、新築の設計、施工、管理、メンテナンス、不動産売買仲介

経営者略歴

前田政登己(まえだ・まさとみ) 1965年、兵庫県姫路市生まれ。国立津山工業高等専門学校卒業後、1988年に株式会社マツダ入社。リフォーム会社勤務などを経て1993年、マエダハウジング創業。