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石田クリーニング株式会社

業種

生活関連サービス業,娯楽業

地域

中国・四国

従業員数

100〜300人

File.76

従業員と会社がWin-Winになる「稼ぎ方」改革ブラック企業からの脱却に成功-石田クリーニングの場合-

時間外労働の削減

2021.10.29

石田クリーニング株式会社

 愛媛県松山市を中心に、30店舗のクリーニング店をチェーン展開している石田クリーニング株式会社。1953年の創業以来「洗う技術」を活かし、日々地域のお客様に清潔な暮らしをお届けしてきた。しかし、クリーンにする仕事でありながら、内情は「ブラック企業そのものだった」という。会社と従業員どちらかではなく、双方が得をする働き方改革の道を模索し、石田クリーニング独自の「ホワイト化」を目指している。

女性が働きやすい職場環境づくりを推進

 一般的にクリーニング業界は、女性の職場と言われる。石田クリーニングの従業員も90%以上が女性だ。しかもパートスタッフの比率が高く、従業員の確保や定着には長く苦心してきた。「時給は安く、休みも取れない、そんな条件では誰も応募しない」と清本有策社長は当時を振り返る。その頃、清本社長は正社員ではあったが、役職はなく、経営や給与に関する権限は当たり前ながらゼロに等しかった。「そもそも会社に、時給を上げるだけの企業体力がなかった。正社員とパートスタッフの間でコミュニケーションがうまく取れていなかったケースもあり、休みも取りづらい雰囲気だった」。

 それならばと思案を巡らせ、お金をかけずにできること=休みが取れる独自の制度を考え出した。子育て中のパートスタッフや正社員が、入学式や運動会など子どもの学校行事の際、優先的に取得できる特別休暇制度を創設したのだ。さらにPTAの会長を引き受けると、少額ながら手当を支給するという制度も設けた。結果的にPTA会長になりましたという申請はなかったが、それよりも対外的な効果を期待したと清本社長。その狙いは見事的中し、女性活躍推進企業や子育て応援企業といった「女性が働きやすい会社」として、メディアなどに取り上げられ、注目されることが多くなった。それでも「本来、会社がやらないといけないことは、ほとんどできていなかった」と語る。

 同社が働き方改革に本腰を入れて取り組むきっかけとなったのが、3度にも及ぶ労働基準監督署による臨検だった。クリーニング業界は1年で繁閑の差が大きく、4~6月と10月の衣替えが繁忙期だ。繁忙期以外の時期との労働時間には大きな差があるにもかかわらず、労働時間の管理が曖昧なままだったという。当時、常務取締役となっていた清本社長は、「これが続けば、この会社は潰れてしまう」という危機感をもった。

 そこで、まず取り掛かったのは、各従業員の労働時間を「見える化」し、把握することだった。さらに当然のように横行していた残業を減らすべく、見直しをスタートさせた。しかし残業は、気合いと根性で減らせるものではない。清本社長が、本当の意味での「働き方改革」を決意した瞬間だった。

清本有策社長は、いろいろな制約があった中で、少しずつ従業員の働く環境を改善していった

「働き方」改革ならぬ「稼ぎ方」改革を宣言

 まず取り組んだのは、所定労働時間外にあふれてしまっていた業務の無駄を見直し、効率化することだった。同業他社との価格競争から退き、単価をアップすることで量より質へと転換。物理的な受注枚数を減らして、残業時間の大幅な削減に繋げた。さらに得た利益を原資に、福利厚生の充実にも着手。社内で衛生管理委員会を設立し、工場内のトイレ改修など、これまで費用面を含め手つかずだった問題点をひとつずつクリアするべく動き出した。

「組織を円滑にまわすには、従業員の待遇を考え、生産性を上げるための設備やITの導入、それらを正しく評価する仕組みがあってこそ」と説明する。2018年、M&Aで自社株を取得。オーナー社長に就任したことで、従業員の頃から少しずつ作り上げてきた働き方改革へのベースを一気に加速させることになる。

 2018年は、石田クリーニングにとって「会社の本気を内外に示す」激動の年となった。松山市とサイボウズなどが官民連携で立ち上げた「まつやま働き方改革推進チャレンジ企業」プロジェクト第1号に選定された。グループウェアソフトを用い、半年をかけて、従業員同士のコミュニケーション技術や問題解決能力を高めるレクチャーを受けた。

 「職場環境(場・風土)」「労働環境(待遇)」「収益(生産性)」を3つの改革の柱に掲げ、取り組みを始めた。従業員や取引先に向けての経営計画発表会では、3ヵ年計画となる「働き方」改革ならぬ「稼ぎ方」改革を宣言。人生における労働時間を、会社に高値で売るという発想の転換、年次有給休暇の取得促進や残業の削減などに加え、会社からの課題をクリアすれば待遇が上がるといった、石田クリーニング流の働き方改革だ。

 なかでも「真面目に仕事に取り組んでいる人が、きちんと報われる職場づくり」にこだわったという。そのために勤怠管理や評価をすべてクラウド化。評価基準を可視化することで、従業員が自身の目標設定をしやすくなり、働きがいに繋がっていった。ネックのひとつだった情報の共有は、非公開型の従業員専用インフラシステムを利用。連絡事項の伝達の他、スケジュールを一元管理した。さらに社内用とお客様用の動画共有サイトのチャンネルを立ち上げ、社長メッセージや会議の動画をアップし、いつでも閲覧できるようにしたことで、コミュニケーションのスピードも増していった。

運動会などのイベントを通して、従業員同士のコミュニケーションが活発になり、思いやりの心が芽生えたことで、仕事がスムーズになったと話す小川照美さん

 今年から始動したばかりという広報課に所属する小川照美さんは、18,000名もの会員数を誇る同社お客様専用アプリやSNSの情報更新、動画共有サイトにアップする動画制作、配信を担当している。キャリアスタートはパートスタッフだった。正社員を目指したのは「衛生面、残業の削減、年次有給休暇の取得促進など、自身を含め、従業員の働く環境を良くしたいと思ったのがきっかけ」と小川さん。

 特に実感しているのが、コミュニケーションの重要性だ。マネージャー時代、情報がしっかり共有できず、従業員の勘違いが引き金となり、人間関係が悪化する状況に陥った。中小企業で広報課が配置されているのは珍しい。だからこそ従業員同士、また社長や幹部とのコミュニケーションをスムーズにすることも広報課の使命だと考えている。

 動画配信は、従業員と一緒に作り上げていきたいと意気込む。「みんなを巻き込んで、石田クリーニングは元気な会社だと思ってもらいたい」。ひとつの企業から地域を元気に、引いては愛媛県も元気にしていきたいと夢はふくらむ。

ポイントが貯められ、お得情報も配信される石田クリーニングのお客様アプリ
コロナ禍で開催は延期されているが「本気の大運動会」や「忘年会」といったイベントも実施

働きやすさの「枠」を整えるのが会社の役割

 清本社長が心がけているのは「すべて会社が先に動く」こと。「待遇も設備も先に整えておく。会社が何も改善せず、従業員に労働を求めるのは本末転倒」。生産性が上がっても、従業員に還元されない、逆に従業員の待遇だけをよくしても、会社の生産性向上には繋がりにくい。会社は働きやすさを整え、結果は後から求めているという姿勢を、「稼ぎ方改革」を通して従業員に伝える狙いもあった。

 ところが、それまで石田クリーニングの改革に伴走してきたサイボウズのコンサルティングから「会社と従業員とのコミュニケーションに問題があり、このままでは成果が出ない」と指摘されてしまう。その原因は「従業員の心の問題でした」と清本社長。 「稼ぎ方改革」を、それぞれに関わる「自分事」と捉えてもらうためには、従業員の意識を変えることからだと痛感したという。

 従業員の生活に直結し、かつわかりやすいのはやはり休暇と給与の改善だ。清本社長は、パートスタッフを含む全従業員と1対1の面談を実施。それぞれの仕事量、シフトを洗い出し、1人ひとりに合わせてアドバイスと提案をした。そして年次有給休暇強化月間を設け「休む練習」と称して、盆と年末年始を店休日とし、計画年休としたのだ。従業員からは「休んでも仕事に支障がないことがわかった」「家族との時間が持てた」という声も聞かれた。会社の本気が徐々に伝わり、従業員の意識もようやく少しずつ変化の兆しが見えてきたが「まだまだ道半ば」と語る。

 新型コロナウイルス感染症により、主力だった冠婚葬祭のクリーニング事業が消滅の危機だという。しかし、価格競争から一線を画し、量より質を貫いてきたことから「クリーニング、アイロン、しみ抜きなどすべての技術がトップクラス」との自負がある。クリーニングで培った信頼と実績を基に、お客様のニーズを深掘りすることにシフトしつつある。さらにレンタルスタジオや、これまでの取組をノウハウとして、従業員の育成や働き方改革を行うグループ会社も立ち上げ、クリーニング業に留まらない進化を遂げている。

「時間=人生であり、経営者として従業員の労働には見合った対価を払うべきだと考える。働きやすさの“枠”は整える。それらをうまく利用して、自身の待遇アップを勝ち取ってほしい」と清本社長。 「誰かの役に立って、ありがとうと言われる仕事が理想。この会社に来て、人生得したなと思ってもらいたい」。

 これからも石田クリーニングの「稼ぎ方改革」は続いていく。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

パートスタッフなど女性が働きやすい職場環境を整備

効果
従業員の応募と定着を目指し、子どもの学校行事の際、優先的に取得できる特別休暇制度を創設。PTAの会長を引き受けると、少額ながら手当を支給するという制度も設けた。「女性が働きやすい職場」として注目を集め、採用活動もスムーズに。
取組2

給与体系の見直しと残業時間の削減

効果
打刻タイプのタイムカードから、ICカードに切り替え、労働時間をクラウドで集計。残業時間も可視化され、無駄を見直すことで残業の削減目標に繋げる。業務の無駄を洗い出し、質を高めることで効率化と生産性の向上が実現。
取組3

ITツールの導入でコミュニケーションの活発化

効果
さまざまなITツールを導入し、従業員のIT化に対する苦手意識を払拭。スケジュール管理など従業員への浸透を図る。コロナ禍前からオンライン会議は頻繁に行っており、情報共有と問題に対する軌道修正がすぐできる仕組みも整えた。

COMPANY DATA企業データ

石田クリーニング株式会社

代表取締役社長:清本有策
本社:愛媛県伊予市
従業員数:111名(2021年7月現在)
設立:1953年12月
資本金:1000万円
事業内容:クリーニング業

経営者略歴

清本有策(きよもと・ゆうさく)
1969年愛媛県生まれ。まったくの異業種から、クリーニング業界へ転身。自身の“働きやすさ”を追求し、職場環境や業務内容の改善を進めていく中で、前社長に見出される。事業を引き継いだ後、2018年M&Aで自社株を取得。オーナーに就任。モットーは「心が変われば、態度が変わる。態度が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる」