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株式会社朝日通商

業種

その他

地域

中国・四国

従業員数

301人〜

File.83

業界の「当たり前」を見直し、働き方を「選ぶ」仕組みづくりコミュニケーションを活性化して、エンゲージメントを育む-朝日通商の場合-

時間外労働の削減

2021.11.08

株式会社朝日通商

 香川県高松市で、1台の8tトラックで創業した株式会社朝日通商。いまや保有する車両台数は約236台(2021年時点)を数え、四国をはじめ全国11カ所に拠点を有するまでになった。2019年には会社設立50周年を迎え「物を運ぶ会社」から「豊かさをつなぐ会社」へと、運輸業の未来を見据えたスタートを切った。

 慢性的な人手不足と言われる運輸・物流業界において、会社が生き残るために何より大切なことは「社員のエンゲージメントを育むこと」と後藤耕司社長は語る。業界を取り巻く法律や時代の流れに柔軟に対応し、物流業界の「当たり前」を見直しながら、社員たちの働く環境の改善に努めている。

「リレー輸送」と「シャトル便」の確立

 トラック輸送や倉庫、物流センターの管理といった総合物流を担う運輸・物流業界は、人手不足、特にドライバー不足が慢性化している。物流や輸送と聞いてイメージするその多くは、大型トラックが重い荷物を積んで高速道路を走る長距離輸送。ハードで敬遠されがちな3Kのイメージも付いてまわる。 後藤社長は3年ほど前、新卒採用である高校を訪ねた。その時に言われた就職担当の教師の言葉が、同社の働き方改革へのきっかけになったという。 「『屋根の下で働く』『残業がない』『年間休日100日以上』が希望条件。それを満たせば業種は問わないという学生が増えている」(後藤社長)。 しかし、視点を変えると、これらの条件をクリアすれば、働きたいと思える魅力的な業界に近づくということだ。後藤社長は社内に「戦略策定チーム」を作り、改革に乗り出した。

「改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)」によるドライバーの拘束時間の規制で、長距離輸送が難しくなっている現状がある。加えてトラックドライバーは業務の性質上、残業の削減は可能でも、ゼロにするのは難しいとされる。 そこで同社では、法規制と働き方改革を両立する輸配送の仕組みを確立した。

「リレー輸送」は、出発地から目的地まで4人のドライバーが担当する。例えば、それぞれ四国と関東を出発したドライバーが、輸送ルートの中継地点で乗ってきたトラックを交換して出発地に戻る。納品までの時間を短縮できるうえ、荷下ろしや荷積みもないため、労働時間は一般業種とほぼ同様の8~9時間となる。 一方「シャトル便」は、中距離の荷物に対応し、香川と関西を1日往復運行する輸配送方法だ。こちらは荷下ろしや荷積みの業務もあるため、ドライバーは改善基準告示で定められた1日の拘束時間(13時間)を最大限利用する。

 一見、シャトル便の方がドライバーにとって負担が大きいため、敬遠されがちに思える。しかし「その点は棲み分けができている」と後藤社長。リレー輸送に比べるとシャトル便は拘束時間が長いため、給与に差が出るからだ。「残業はできるだけ減らしたい」「トラックにたくさん乗って稼ぎたい」それぞれの働き方に合わせてドライバーが選び、シフトを調整できるようにした。

「経営者として、車中泊が当たり前の長距離輸送を社員にさせていることに罪悪感があった」と話す。ところがなかには車中泊を苦にせず、長距離ドライバーの仕事を楽しんでいる社員もいたと笑う。法令は遵守しながら、社員が気持ちよく働ける現場づくりに今も取り組んでいる最中だ。

安全も品質も心身も、すべては健康が第一という後藤耕司社長。「リレー輸送もシャトル便も、究極は社員の健康を考えての策」という

業界の壁を破る年間休日のアップと週休2日制導入

 週休2日制の導入は、後藤社長の念願でもあった。昨年から、これまで隔週土曜出勤だった働き方を土日休みとする週休2日制へと完全移行。年間休日が95日から119日へと大幅にアップした。管理本部で人事や労務といったあらゆる業務を担う北山理彩さんは、週休2日制の実現に向けた就業規則の改定に主戦力として関わった。 かつて同じ業種で総務に携わる立場の方々との会合に参加した際に、旧態依然とした業界の流れに縛られ、自社の就業規則を変えるのは難しいという声を聞いた。「朝日通商さんには、先陣となってほしい」と言われ、身の引き締まる思いだったという。

 改定作業では、会社の今後や給与計算など経理手続きの簡素化も考慮に入れた就業規則を提案。しかし、会社側は現状の就業時間はキープするという方針を打ち出す。すでに決定していた週休2日制の施行日まで間がないというのが理由だった。その部分のすり合わせに時間を要し、何度も就業規則を作り直す結果となった。 しかし「社員が安心して長く働き続けられる環境を作りたい」というベクトルは同じ。駆け足で改定作業を進め、会社からOKが出た時は、達成感でいっぱいだったと話す。

 隔週土曜出勤の頃は、あまりプライベートの時間が取れず、不満が募ることもあったという北山さん。週休2日の働き方となった今は、大切な家族や友人との時間が増え、充実した休日を過ごすことができている。

北山理彩さんは2018年入社。社会保険の手続きなど、社員の給与に関わるすべての業務を担当する
趣味は釣り。「休みになると出かけています。秋の釣りシーズンが楽しみ」

ITを導入するからこそ、コミュニケーションを密に

ドライバー職の働き方改革と同時に、スタッフ(事務)職の基幹業務をデジタル化する取組を推進。在宅勤務の拡張も、週休2日制の実現とコロナ禍で加速したという。 運輸業特有の業務に「配車」がある。お客様のオーダーに合わせ、トラックやドライバーを手配する仕事だ。担当社員からは「在宅では仕事ができない」との声も上がったが、コロナ禍で必然的に対応しなければならなくなった。 ITやオンラインツールの導入などで、業界にも働き方改革の波は確実に押し寄せている。同社も運輸業の未来を見据え、時代に合った戦略を推し進める中で、幹部を含む社員の意識の変化に期待を掛ける。

 ポイントは、エンゲージメントの醸成だ。エンゲージメントとは愛社精神のこと。待遇や人事制度を良くするとともに、部下と上司、社員と会社のコミュニケーションも重要となる。 同社では、コミュニケーションの妨げになりがちな、部門の壁をなくすため、クラウド型のビジネスチャットツールを有効活用。全社員が業務報告・お客様の喜ぶこと・仲間の喜ぶこと・業務での気づきの4項目からなる日報をアップし、部門長がコメントを返す取組を始めた。これは全社員がアクセスすることができる。

 取締役経営企画室長の荒井実加さんは「例えば、管理本部とドライバーでは、お互いどんな仕事をしているのかがわかりづらい。日報を通して他の社員や業務に興味を持ち、垣根のないコミュニケーションに繋がれば」と説明する。 方針発表会で自身の夢を語る「ドリームプランプレゼンテーション」もエンゲージメントを育むプロジェクトの一環だ。「自分の中にある夢を言語化し、実現のために今の仕事があることに気づいてもらうため」と後藤社長。部門を越えたチーム編成で得たものを「所属部門に還元する意味合いもある」と荒井さんはその効果を語る。

「コロナ禍が終息すれば、社員が集える場を設けたい」と取締役経営企画室長の荒井実加さん

 ドライバー不足の背景には、若者の車離れもあるという。同社は「働きやすい職場認証制度」で、取組要件を満たした事業者に与えられる1つ星を取得。職場環境の改善を「見える化」することで、求職者によるドライバーへの就職を促すのが狙いだ。 運輸・物流業界は、AIなど次世代テクノロジーの導入で変革の時を迎えている。同社は運輸・物流業の枠を越えた、お客様のニーズに合わせた提案型の販売支援企業を目標に掲げる。「過去の延長線上ではなく、3年先、10年先から逆算して今をどう改善すべきか、社員には未来志向のマインドで、イノベーションを起こしてほしい」。後藤社長の目は、業界の未来に向いている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

社員が選べる輸配送方式を確立

効果
運輸・物流業界の問題点だった長距離輸送。法令を遵守したうえで、1日8~9時間の拘束時間を可能にした「リレー輸送」と、拘束時間を最大限使った「シャトル便」の輸配送方式を確立。社員の働き方に合わせて選べるようにしたことでドライバーの定着率もアップ。「長距離輸送業務は危険」のイメージも払拭。
取組2

週休2日制の導入により年間休日アップ

効果
隔週土曜の出勤体系を見直し、週休2日制を導入。年間休日が95日から119日にアップした。スタッフ(事務)職は土日休み、ドライバー職もシフトを活用し、週休2日の確保に成功。休日を増やしたことで、業務の無駄を見直し、より集中できる雰囲気を作った。
取組3

全社員の日報義務化。エンゲージメントを高める

効果
クラウド型のビジネスチャットツールにおいて、4項目からなる日報の提出を義務化。部門長が1人1人にコメントを返してコミュニケーションを深める。それぞれの仕事の把握に繋がり、業務の割り振りやシフトを決めるのにも役立つ。

COMPANY DATA企業データ

人と環境に優しい、物流システムを提供

株式会社朝日通商

代表取締役社長:後藤耕司
本社:香川県高松市
従業員数:307名(2021年1月現在)
設立:1970年5月
資本金:3000万円
事業内容:一般貨物自動車運送業・物流センターの管理運営及び物流情報の収集処理事業・3PL事業・物品の仕分け、梱包及び発送業務の請負業・貨物運送取扱事業・ものづくり事業・倉庫並びに貸倉庫業・作業請負事業・産業廃棄物、一般廃棄物の収集運搬業・貿易代行事業

経営者略歴

後藤耕司(ごとう・こうじ)
1960年香川県高松市生まれ。1982年明治大学工学部中退、山宗化学株式会社を経て、1991年株式会社朝日通商に入社。2006年代表取締役就任。2019年「瀬戸内の豊かな日常をアジアへ」をコンセプトに、海外への販路拡大を目指す中小企業のためのビジネスコミュニティを立ち上げる。2021年地域産業発展のため、「瀬戸内グローカルラボ」へと名称を変更。座右の銘は「知行合一(ちこうごういつ)」。