育休復職率100% 会社の使命は「社員の幸せ」
―ソフトウェア開発 プロアシストの場合―

子育て支援

2019.09.20

大阪市のビジネス街、北浜地区に本社を置く「プロアシスト」。生駒京子社長が創業したソフトウェア開発などを手がける会社だ。現在の社員数は約240人。産休・育休の取得を戦略的に促進し、会社を大家族に見立てたユニークな経営で、一体感を作り出している。

「社員は家族、ずっと一緒に働きたい」子育てを全面支援

プロアシストでは女性社員の割合が約3割。産休・育休を取得する社員は、創業以来、男性4人を含む12人を数える。同社の特色の一つは、育休後の復職率が100%であることだ。

社員は縁があって一緒になった家族のようなもの、だからなるべく最後まで一緒に働き続けたい、というのが生駒社長の考えだ。そのために、社員との絆を強め、簡単に離職しにくい雰囲気作りに注力している。

生駒社長の育休についての考え方は、独特だ。「育休は権利」だが、社員には「育休を感謝して取得するように」と話しているという。育休期間中は、当然子育てに没頭することができる。「そのまま家庭に入ってもいいかな」という思いがよぎる人も出てくる。だから「私が休んでいる間に、その仕事を仲間が埋めていて待っていてくれる」という意識を持ち続けてほしいというのが、生駒社長の考えだ。恩着せがましいようにも聞こえるが、同僚が支えてくれていることを意識することで、復職への動機付けになることを期待しているという。

専業主婦から一念発起してプロアシストを創業した生駒京子社長

専業主婦から一念発起してプロアシストを創業した生駒京子社長

実際、子育て社員を会社全体で支援しようという考えは、浸透している。2019年4月に育休から復帰した福本友佳さん(開発1部)は、産休・育休を2回取得した。育休期間中、職場では席をそのまま空けて復帰を待っていてくれたという。そして同じ職場で復帰できたという。

2度目の産休・育休を経て4月から職場に復帰した福本友佳さん

2度目の産休・育休を経て4月から職場に復帰した福本友佳さん

育休明けで職場に戻っても、支援は変わらない。子供の病気等が発生すると、周囲の社員は「早く帰った方がよい」と帰宅を促す。福本さんは「私が恐縮するほど、気を使ってくれました」と話す。

同じく産休・育休を取得した宮田愛子さん(機器開発課)も「働きやすい職場環境」を実感している。育休取得後に、子供の保育園への迎えに間に合うように、早めの出勤、早めの退社ができるように、働く時間帯をずらすこともできる。こうした柔軟な勤務形態が、育休後の職場復帰100%を支えている。

育休取得後に、「働きやすい職場環境」を実感しているという宮田愛子さん

育休取得後に、「働きやすい職場環境」を実感しているという宮田愛子さん

台湾への社員旅行を親子で楽しむ福本さん(右)。社員の家族同士の交流も楽しみの一つだ

台湾への社員旅行を親子で楽しむ福本さん(右)。社員の家族同士の交流も楽しみの一つだ

親子で外出を楽しむ宮田さん(奥)。仕事と家庭で気持ちを切り替えて、充実した毎日を過ごしている

親子で外出を楽しむ宮田さん(奥)。仕事と家庭で気持ちを切り替えて、充実した毎日を過ごしている

社長は専業主婦から起業、家庭の事情にいつも目配り

たとえば、子供は小学2年生であっても、一時的に心身が不安定になることがある。その場合、状況に応じて、時短勤務を特例として認めているという。このように柔軟に制度を適用できる背景について、牧江基子・人事課長は「仕事や家庭の見通しを考えれば、人繰りは調整が可能です」という。つまり、家庭の事情を先まで見通しながら、仕事を各人に分配するという考えが浸透している。

従業員の家庭の事情を見通しながら仕事の配分を計画するという人事課長の牧江基子さん

従業員の家庭の事情を見通しながら仕事の配分を計画するという人事課長の牧江基子さん

社員旅行で家族も交流、自然に生まれる育休への理解

大家族的な雰囲気もプロアシストの特徴だ。創業時は社屋がなく、複数のマンションの部屋を借りて職場にしていたこともあった。かつては社員がマンション内の台所でカレーを作り、食事を共にしながら働くこともあったという。今では、高層ビル内に職場を移し、社員も増え、かつてのように食事を共にする機会も減ったが、創業時に定着した大家族的な雰囲気は、一端が残っている。毎年の社員旅行がその一例だ。もはや、社員旅行を開催するだけでも珍しいが、そこには社員だけでなく、家族の同伴も認められているという。昨年は台湾へ行った。生駒社長は「旅行では社員の家族同士の輪ができます。仕事以外で社員同士が遊ぶのは、とても良いことです」と話す。育休中の社員が、生まれた子供を連れて職場を訪れる風景も珍しくない。子供の成長を職場で見守る雰囲気から、自然と、子育て社員への理解が生まれてくるという。

会社の使命に「社員の精神的・物質的幸福」を明記している。周囲の経営者からは「会社は利益を第一に掲げないと」と、批判されることもあったが、この考えを貫き続け、今では社外で一目おかれるようになっているという。

もちろん就業時間だけを管理していても、利益が安定していなければ経営は難しくなる。業務の効率化を図るため、社内では技術的な指導や研修を頻繁に行うなど、業務の効率に重点を置いている。技術力の向上は、余裕のある勤務を保つ前提条件でもある。社員の働きやすさと、収益性の双方へと目配りする生駒社長の経営改革は、一歩一歩前に進んでいる。

case studyプロアシスト 働き方改革のポイント

  • 01子育てと仕事の両立を全社的に支援

    育休取得後の会社への復帰率は100%。男性も1~4か月の育休取得実績がある。育休後に、時間短縮勤務や、勤務時間をずらしたシフト勤務などを利用できる。共働きが自然にできるような会社作りを目指す。

  • 02子育て支援規則の柔軟な適用

    子供の健康不安がある場合は、すぐに早退できるような職場の雰囲気作りができている。また、時短勤務などの制度も、子供や家庭の状態を見ながら、特例的に延長することもできる。

  • 03社員旅行による家族間の交流

    年に1度は社員旅行を実施し、家族の参加もできることから、家族間の交流を深めることができる。また、社員の子供を職場に招いて、昼食会を開くなど、家庭と職場の仕切りをなるべく低くした会社作りを進めている。

company data企業データ

株式会社プロアシスト

  • 生駒京子・代表取締役社長
  • 本社・大阪市中央区
  • 従業員数238人(2019年4月現在)
  • 創業1994年
  • 資本金5000万円
  • 組み込みシステム開発、ソフトウェア開発、ハードウェア開発、WEB開発など

経営者略歴

生駒京子(いこま・きょうこ) 大学卒業後、大手ソフトウェア会社勤務、専業主婦を経て1994年に有限会社プロアシストを設立。2001年 株式会社に改組。経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」、内閣府「女性のチャレンジ賞 特別部門賞」などを受賞。現在、関西経済同友会常任幹事、大阪商工会議所 第一号議員、大阪産業局理事、日本WHO協会理事、生産技術振興協会理事、大阪大学招聘教授なども務めている。