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株式会社ミスズ工業

業種

製造業

地域

中部

従業員数

100〜300人

File.106

時間外労働時間の削減で、社員のモチベーション向上と成長を -高精度、高品質な製品作りに取り組む「株式会社ミスズ工業」の場合-

生産性の向上による処遇改善

2022.01.24

株式会社ミスズ工業

 株式会社ミスズ工業(長野県諏訪市)は1965年創業。プレスおよびアセンブル事業、ロボティクスソリューション事業、半導体実装事業の3本の柱を中心に展開し、諏訪市に本社と工場、長野県箕輪町と岩手県北上市に工場、香港と中国にグループ会社を擁する。IoT、AI、ロボティクスなど、さまざまな分野がしのぎを削る中、ミクロンオーダーの高精度・高品質な製品で産業ニーズに応えているのが強みだ。また、工程設計から製作・加工・検査・出荷まで、すべてを社内で行う一貫加工体制も構築し、2015年には、優れた新技術や新製品を表彰する「中小企業優秀新技術・新製品賞」優秀賞を受賞している。しかし、少子高齢化が進む中、限られた人員でさらなる生産性向上を目指すためには従業員のモチベーションを高めることが不可欠と、働き方改革に取り組んだ。

時間外労働の削減によりワーク・ライフ・バランスの実現を目指した山崎社長

現実的な取り組みで働き方改革を推進

 「個人の成長が会社の成長であり、会社の成長が社会の成長であるという当社の経営理念に基づいて、多くの仕組み作りを行いました。すべての取り組みにあたっては経営側と従業員側が協力し、過度ではない、現実的で双方が納得できる目標を設定しました」と語る山崎泰三社長。まず重視したのが時間外労働の削減だった。個人ごとの残業データをグラフで可視化して管理を行うことで、1分ごとの徹底した時間管理に着手した。

 これによって時間外労働は、2015年の取り組み当初月平均17.2時間だったものが2020年度はコロナ禍ではあったものの月平均5時間と激減した。「現在は忙しくはなっていますが、当初と比較したら時間外労働はかなり少なくなっています」と山崎社長。仕事量が増大した時は従業員の負担を軽減するために、社外から人材派遣の活用、中途採用の募集の両方を、仕事量の増加や期間見込みを含め検討している。

 また、全従業員を対象にフレックスタイム制を導入した。就業時間は8時25分から17時15分、このうち10時25分から14時35分までがコアタイムとなっており、それ以外はフレキシブルに出退勤時間をやりくりできるように従業員に委ねている。すべての時間管理は社員証を兼ねたICカードで行われるので正確で確実だ。

 HRT(ヒューマン・リソース・テクノロジー)グループでITインフラを担当する名取早織さんは、フレックスタイム制を有効に使っている一人だ。「早朝や夜間に仕事のある場合でも勤務時間帯を自分なりにシフトできますし、ほとんど残業はないので平日退社後のプライベートな予定が組みやすくて助かっています。もし残業があっても別の日に早めに退社できるなど、自分の時間が有効に使えます」。専門知識が求められる部署だけに、キャリア開発制度を活用して資格取得にも励む。「従業員が目標を持って協力し合える環境の整った会社です」。それが自分にとって心地よいと話してくれた。

数年先の自分を意識しながら仕事に取り組む名取早織さん

年次有給休暇の取得促進と仕事と育児の両立支援

 時間外労働の削減と同様に、同社が力を入れたのが年次有給休暇の取得促進だ。具体的な取得目標を一人当たり年平均10日以上とし、個人ごとに取得データを管理した。さらに、4日間を計画的付与制度によって一斉付与した。その結果、2015年度は年平均8.5日だったが2020年度は年平均9.6日とほぼ目標に近い日数に到達することができた。

 さらに、失効した年次有給休暇のうち毎年5日を限度に、最大100日まで積み立て可能とする積立有給休暇制度も実施している。これは、私傷病による休業、子の看護休暇、介護休暇、自己啓発の目的にも利用可能。また、勤続期間が長い従業員には最大15日間のリフレッシュ休暇制度があり、さらに勤続30年に達した従業員には、宿泊施設の宿泊費・交通費・食事代の補助も加わる。3年間で延べ42人が利用し、年次有給休暇と組み合わせて取得する従業員も多いという。

 子育て中の女性にも男性にも配慮した制度が、同社の育児短時間勤務制度。現行の法では3歳未満の子どもが対象だが、同社では「小学校就学の始期まで」を対象にしている。また、子の看護休暇制度は現行の法では小学校就学前の子ども1人につき1年間で5日まで、小学校就学前の子どもが2人以上いる場合には年に10日まで取得できるが、同社では「中学校就学の始期までの子ども1人につき1年間で10日まで」利用可能としている。

基幹事業のひとつ、諏訪工場のプレス装置の前で

キャリアアップを支援する社風

 一人ひとりの能力を発揮してもらおうというのがキャリア開発制度。全従業員(契約従業員を除く)が対象のキャリアプランシートをもとにした3年から5年間という中長期的な育成計画だ。「必要な時期に、必要な従業員に、必要な教育を受けてもらおうというもので、ほとんどの場合、仕事に必要な教育受講や資格取得が主な目標となる」とHRTグループ・人事チームの畑めぐみ係長。自ら学ぼうという従業員の自己成長を支援する仕組みだ。2020年度は85人が希望してオンラインの教育プログラムを受講し、35人が新たな資格取得に挑戦したという。

諏訪工場外観

 働き方改革に取り組んで以来、数々の実績を重ねてきたが、「今後は女性管理職のモデル作りに向けて取り組みたい」という山崎社長。非管理職の女性係長は5人だが管理職はまだいない。また、コロナ禍の影響で労働環境が変化している。その中でテレワークは検討材料のひとつ。試験的に実施してはいるが社内の制度運用のあり方の検討も必要だと言う。

 「当社としては、働き方改革によって単なる残業のない働きやすい環境を作ろうという捉え方はしていません。ライフ・ワーク・バランスをフルに活用した従業員一人ひとりが、自己啓発や社内の教育制度によって能力を高め、さらに生産性向上に結びつけていただきたい。そのための支援は惜しみません」。山崎社長の言葉は明快だ。

 HRTグループ・人事チームの畑めぐみさんは、同社への入社後、2度の産休・育休を取得したが「いずれも上司と面談を行い、休業前の引き継ぎもスムーズで復帰後の働き方もイメージでき、なんの不安もありませんでした」と言う。現在も育児短時間勤務制度を活用しての仕事と子育ての両立中。「法を上回る勤務制度は子どもと過ごす時間を多く持てるので本当に助かっています」。従業員の成長を支援する社風を生かして勉強に取り組む人が多く、自身も触発されていると言う。また、同社の特徴のひとつに従業員同士を肩書きでは呼ばない「さん」コミュニケーション」をあげる。「社長姓の山崎は複数いるので、社長を「泰三さん」と呼ぶんですよ。風通しのよさも感じられるでしょう?」と畑さんは笑う。

子どもが生まれて学ぼうとする気持ちが強くなったと語る畑めぐみさん

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

時間外労働の削減

効果
削減にあたって、1分単位でのデータ管理を徹底したうえでグラフによる可視化を実施。その結果、2015年の取り組み当初は月平均17.2時間だった時間外労働時間が2020年度は月平均5時間と激減した。
取組2

年次有給休暇の取得促進

効果
目標としていた年間10日の取得を、2020年度にほぼ達成する年間9.6日を実現。失効した年次有給休暇を最大100日まで積み立て可能とする積立有給休暇制度も実施している。
取組3

仕事と育児の両立支援

効果
育児短時間勤務制度、子の看護休暇制度ともに、制度の対象となる子どもの年齢など、法を上回る制度を導入している。これによって女性だけでなく男性にも、仕事をしながらのゆとりのある子育てを支援することができている。

COMPANY DATA企業データ

クリーン&ファインテクノロジー/クリーンな環境で高精度・高品質な製品作りを目指す

株式会社ミスズ工業

代表取締役:山崎泰三
本社:長野県諏訪市
従業員数:235名(2021年8月現在)
設立:1965年4月
資本金:1億円
事業内容:プレスおよびアセンブル事業、ロボティクスソリューション事業、半導体実装事業

経営者略歴

山崎泰三(やまざき・たいぞう) 1961年長野県諏訪市生まれ。1985年慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業、1993年株式会社ミスズ工業入社、1998年株式会社ミスズ工業代表取締役就任、現在に至る