支援・相談は働き方改革特設サイト

ホーム > 株式会社 カワトT.P.C.

株式会社 カワトT.P.C.

業種

製造業

地域

中国・四国

従業員数

301人〜

File.133

女性が働きやすく、変化するライフスタイルに応じた環境作り-プレハブ配管システムのトップメーカー「カワトT.P.C.」の場合-

幅広い人材活用

2022.02.01

株式会社 カワトT.P.C.

 マンションや集合住宅の建設現場で、職人による配管工事が一般的だった風呂やキッチンなどの給水・給湯配管。それを自社工場で前もって組み立てる画期的なプレハブ型の配管システムでトップシェアを築いたカワトT.P.C.(山口県)。現在は、プレハブ配管の企画・製作に加え、NC旋盤やマシニングによる継手などの金属加工製品も製作する。作業計画の立案から組み立て、検査、人事、決算まで、すべての裁量権を委ねた独自のグループ制を採用し、経営への参加意識を高めて生産性の向上を図ってきた。同時に、従業員の7割を占める女性への働きやすい環境づくりへの取り組みに注力し、地域でのビジネスモデルも構築してきた。

カワトは、女性が働きやすい職場だという口コミが広まって

 プレハブ型の配管システムは、川戸俊彦社長が大手素材メーカーと共同開発を進め、1995年に同社の独自ブランドとして販売を開始した。その際、人材を募集したところ当初は半分ずつだった男女の応募数が、4,5年後には圧倒的に女性が多くなったという。

 「岩国市は製造業の多い工業地域で、どちらかというと女性が働きやすい職場は少ないと言えます。プレハブ配管は軽量な樹脂パイプで組み立てるため、女性でも扱いやすいというメリットがあります。そうした情報が浸透したのでしょうか、カワトは女性が働きやすい職場というイメージが定着していった結果なのでしょう」と語る川戸社長。

女性が働ける職場を提供したかったと語る川戸俊彦社長

 川戸社長は、女性従業員が多くなることを考慮し、働きやすい職場づくりを進め、それが働き方改革に繋がっていく。同社には、プレハブ配管を手がける樹脂加工事業部と金属加工製品を手がけるテクマック事業部がある。樹脂加工事業部の製作部門の加工センターにはエアコンが完備され、スペースはゆったりと広く、フロアにはパイプや継手といった素材が広げられ、床に腰を下ろしたり立ち上がったりしながら組み立てる従業員の姿が見られる。

床に座ったり立ち上がったりが、もっとも働きやすいスタイル

 同社を訪問する関係者から「大きなテーブルの上で作業しないと大変ではないか」「作業環境が悪い」などという指摘が度々あるという。しかし、川戸社長は「作業環境は試行錯誤しました。その結果、女性従業員自身がいちばん働きやすいからと定着したのが今の形」と語ります。外から見ただけの判断ではなく、働く女性たちからの要望で職場環境は整ってきた。

余裕のある作業ができるゆったりとしたスペース

 同社では、こうした女性を意識した環境づくりを20年以上前から築いてきた。その成果か、現在約350名の従業員のうち女性の占める割合は70%を超え、プレハブ配管の企画・生産加工部門はほぼ100%という。また、従業員の中には60歳以上の女性、70歳代後半の男性など、高齢者も従事しているという。

生産性と品質の向上を達成したグループ制

 同社にはグループ制という組織作りを行っている。これは、全従業員を58のグループに分け、それぞれにグループリーダーを設け、グループをまとめるものだ。1グループは5人から10人前後で「ひとつの会社」に見立てられ、各グループは、品質やリスクの管理を始め、作業時間、加工費、経費、収支などを毎月決算する。

 リーダーには人事権もある(川戸社長にはない)。つまり、従業員一人ひとりが経営者として仕事に向き合うことを推奨しているわけだ。仕事のスケジュールや時間管理はもちろん、生産管理、品質管理もグループに委譲されている。加工部門に「工場長」や「責任者」はいない。営業所には「所長」もいない。これは川戸社長の「会社は従業員のもの」という考えの現れだ。

 「当社の利益は3%程度です。各グループが毎月4%以上の利益を出したら給料の10%を手当てとして支給しています。これは正社員もパートタイマーも同じです」と川戸社長。

 このグループ制によって、作業は短時間集中型となって生産性が高まり、品質も向上した。同時に、かつては月に4、50時間あったという残業も激減し、現在では90%以上の従業員が定時で帰宅。残業が最も多くなる月でも10時間程度という。

グループ制の導入で、働く一人ひとりが経営者の認識を持っている

 また、テクマック事業部は無人の工作機械による24時間365日稼働。状況点検のために担当者が土日や祝日に出社する必要があったが、遠隔監視システムを導入することで自宅からタブレットなどで確認できるようになり、その必要がなくなった。

 

 こうした背景もあって2021年の4月から完全週休2日制となり、休日数は1カ月で1.5日、年間で18日増えて125日となったが、生産性はまったく落ちていないという。

女性従業員に寄り添った職場作り

 女性従業員の比率が多いということは、結婚や出産、育児というライフスタイルの変化への視点は欠かせない。同社では、従業員のライフスタイルの変化に応じて、本人の希望によって、正社員からパートタイマー、パートタイマーから正社員へという雇用形態変更制度を導入している。

 

 また、子育て支援として、法定で子が1歳までの育児休業期間を子が3歳まで取得可能にしている。期間中は年次有給休暇、役職、職能給などは据え置きで、ベースアップがあれば反映される。復帰しても安心して仕事ができる環境だ。育休後は短時間勤務も可能で、2021年から1時間単位の年次有給休暇制度も導入。1時間単位の中抜けもできるようになり、子育て中の女性従業員だけでなく、男性従業員にとっても時間を有効に使える制度が実施されている。

 樹脂加工事業部の全体、170人の従業員を統括するリーダーの一人で経営にも参画する中谷ヤス子さんは、1週間単位の生産計画や管理を行う重責を担う。21年前にパートタイマーとして入社し、子どもが社会人になった3年前に正社員に。「パート時代は学校行事や急な休みにも対応していただいた経験から、子育て中の従業員が子どもの成長に合わせて働ける環境をさらにつくっていきたいと思っています。2021年から完全週休2日制となって家族と過ごす時間が増えました。1時間単位での年次有給休暇は従業員の声を反映して実現できました」と語ってくれた。

 同じく経営にも参画し、生産管理部のリーダーとして活躍する上原裕子さんは、受注案件の振り分け、企画と生産管理、材料の購買管理、業務内容改善などを担当。12年前、産休・育休を取得し、復帰後も同じ部署で仕事を続けながら子育てと仕事の両立を現在も行っている。「完全週休2日制と1時間単位での年次有給休暇制度のメリットは子育て世代に限らず、全従業員のワーク・ライフ・バランスの推進に寄与しているのではないでしょうか」。同社の働き方改革は、従業員に可能な限り寄り添いつつ、働きやすい環境づくりに繋がっているようだ。

完全週休2日制のメリットを実感する中谷ヤス子さん(左)と上原裕子さん

 嶋矢恵美さんは、総務グループのグループリーダー。従業員の給与管理、毎月の決算を実施する上での売上収支報告書(人件費)の作成や金融機関への対応を担当する。2021年9月に孫が産まれた娘さんの産後の世話を1カ月続けた。その際「勤務地を自宅近くに変更していただき、娘の退院直後は半日の年次有給休暇で1日3.5時間勤務、次に2時間の年次有給休暇で6時間勤務。娘の体調が戻ってからは1時間の年次有給休暇で7時間勤務と、かなり柔軟に対応していただきました」と語る。勤務時間内で終わらない仕事は、希望して貸与されたパソコンを使用して在宅勤務を実施。従業員の要望に可能な限り対応してくれる働きやすい環境が整っていると結んでくれた。

地方企業の役割を実現するための働きやすい環境へ

 こうした環境づくりの一環として、同社では1日前倒しの余裕を持った生産計画を立てている。つねに不測の事態に備えようというもので、インフルエンザによる学級閉鎖、災害による臨時休校、子の急病などを想定した生産計画を実施。グループ制との相乗効果でスムーズな生産とワーク・ライフ・バランスの実現に繋がっている。

 同社は、「インフォーメーション・シェア」と名付けたペーパーレス化も推進してきた。すべての作業をデータ化して蓄積し、パソコンやタブレットから必要なデータを必要なときに取り出せるシステムを自社開発のソフトによって実現した。データは記録だけでなく、教育資料や作業手順なども含まれているので、加工センターなどでの作業の確認にも活用されている。

タブレットには作業工程もインストールされている

 川戸社長は、地方の企業は地元の雇用のためにあるという理念を持っている。「従業員の子供や孫が同じ企業で働くことで中小企業の事業継承、事業継続に繋がると考えています。そのためには、親の勤めていた企業に入りたいと思われる企業を従業員全員で作らなければいけません。人が集まらないと考えるのではなく、人が集まる場所に生産拠点を作るというのもひとつの考えです」と語る。

 従来は男性が主に担っていた配管工事を女性でも可能にした樹脂製パイプのプレハブシステム、不測の事態にも対応できる余裕のある生産計画、通勤のしやすさを考慮した岩国駅前のデパート7階や住宅街に隣接した複数の加工センターなど、同社が築いてきた女性が働きやすい職場作りは、その理念に沿ったビジネスモデルといえる。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

女性が働く場を提供

効果
主に男性の仕事だった配管工事を軽量な樹脂製パイプによるプレハブシステムにすることで、女性でも作業できるようになった。岩国という工業地域にあって、働く場の少なかった女性や高齢者に働きやすい環境を提供した。
取組2

仕事と育児の両立に向けた取組

効果
本人の希望によって正社員からパートタイマー、パートタイマーから正社員へとライフスタイルに沿って変更できる雇用形態変更制度を導入し、働く意欲のある従業員がやむなく離職することがなくなった。また、子育て支援として、法定では子が1歳までの育児休業期間を子が3歳まで取得可能にし、期間中は年次有給休暇、役職、職能給などは据え置き、復帰後も安心して仕事ができる環境を整えた。
取組3

余裕をもった生産計画

効果
つねに不測の事態に備えた1日前倒しの生産計画で、学級閉鎖、荒天による臨時休校、子どもの急病などに対応した。スケジュールに余裕ができるので年次有給休暇も取りやすく、子育て中の女性従業員だけでなく、すべての従業員が安心して働ける体制となった。

COMPANY DATA企業データ

企業は地元の雇用のためにある

株式会社 カワトT.P.C.

代表取締役:川戸俊彦
本社:山口県岩国市
従業員数:351名(2021年9月現在)
設立:2002年
資本金:9,000万円
事業内容:樹脂加工事業部/住宅関連給水給湯プレハブ配管品企画製作。テクマック事業部/NC旋盤、マシニングによる各種金属加工製品製作

経営者略歴

川戸俊彦(かわと・としひこ) 1953年京都府生まれ。1972年東洋工業株式会社入社、1975年坂根鉄工所株式会社入社、1989年川戸鉄工創業、同年有限会社川戸鉄工設立、1993年川戸鉄工株式会社へ改組、2002年前身の株式会社カワトトータルプレハブセンター設立、2014年にグループ3社合併と同時に株式会社カワトT.P.C.に社名変更し、現在に至る。