支援・相談は働き方改革特設サイト

ホーム > 株式会社スズキアリーナ大隅

株式会社スズキアリーナ大隅

業種

卸売業,小売業

地域

九州・沖縄

従業員数

10〜29人

File.143

人こそが会社。売上増加、事業拡大の鍵は働き方改革。〜若手世代が活躍する自動車販売会社「スズキアリーナ大隅」の場合〜

時間外労働の削減

2022.02.01

株式会社スズキアリーナ大隅

 鹿児島県で50年以上の実績を持つ地域密着型の自動車ディーラー、スズキアリーナ大隅。『ユースエール2019』、『健康経営優良法人2021』、『かごしま「働き方改革」推進企業』、『鹿児島県女性活躍推進宣言企業』、『かごしま子育て応援企業』などの認定を取得している職場環境改善への意識の高い企業である。整備士や営業職など、長時間労働が常態化しやすい職種が多い業態で、職場環境の改善に対してどのような取り組みが行われたのか。社内で働き方改革推進委員会を率い、数々の改革を実践してきた萩元邦庸代表取締役副社長に話を聞いた。

売上を増やしてから人を増やすではなく、まずは人

 若い頃から懸命に働き続けてきた萩元副社長の夢は事業拡大だ。生活の足として自家用車が必須である鹿児島県内で、唯一のスズキオーナーディーラー『スズキアリーナ店』として実績を積み上げてきたスズキアリーナ大隅だが、少子高齢化や若年層の地方離れなど、地方自動車ディーラーを取り巻く状況は決して芳しいとは言えない。更なる事業拡大は必要に迫られた企業目標でもある。そのためには何をするべきか。萩元副社長は常にそのことを念頭に置いていたが、思ったような成果が出ず、飛躍するきっかけが掴めないでいた。それでも諦めずに、データを集め、売上が上がらない原因を調べたり、色々な書籍や資料を読むなどして改善策を模索している中で、考え方に大きな変化が生まれた。「まずは売上を増やし、その売上で人員を拡充する。ずっとそう思ってきましたが、逆ではないか。人員を増やさず新たな仕事を受けてしまえば、当然残業時間が増える。人が疲弊すれば企業も疲弊する。逆に人が増えれば新たな仕事も受注できて売上が増えるのではないか。そういう考えに至ったのです」

「人が先か売り上げが先か。順番を誤っていた」と語る萩元邦庸代表取締役副社長

人に選ばれる企業ではなかった

 「まずは人」そう確信した萩元副社長は新卒の定期採用に舵を切った。「それまでは欠員が出たときにキャリア採用で補充していたのですが、2015年頃にはキャリア採用でも人を雇用することが難しくなってきました。人手不足が深刻化しているのが肌で感じられましたね。逆にだからこそ人が大切だと思い、多少育成に時間がかかっても、新卒の定期採用をしていくべきだと決断したんです」しかし、定期採用を行い、人を増やしていくためには先立つ資金が必要になる。「決してうちは規模の大きい会社ではないので、欠員補充ではなく、いま以上に人を増やすためには、まずは人件費を捻出しなければなりませんでした」金策に走り資金を調達。やっと新卒採用の募集を始めたが、結果は散々なものだった。応募件数はゼロ。電話一本鳴ることもなかったという。それでも萩元副社長の信念は揺るがなかった。なぜ応募がこないのか、その原因をすぐに調べ始める。そして他社の求人票を徹底的に調べ、自社のそれと比較すると違いが浮き彫りになった。人気のある企業は休日が多く、年次有給休暇の取得率も高い。自社はその逆だった。少なからず衝撃を受けたが、萩元副社長はその結果を素直に受け止めた。

180度発想の転換

 当時のスズキアリーナ大隅は「特例対象事業場」として週44時間労働を基本にしていた。この特例は、常時10人未満の労働者を使用する特定の事業では、労働基準法で定めている法定労働時間、1日8時間、週40時間を、週44時間(1日8時間労働の原則は変わらず)まで緩和するものだ。そのころの自動車産業では、夜遅くまで残業することが当たり前であり、決して珍しい勤務待遇ではなかった。萩元副社長は言う。「当時は長時間労働こそが事業拡大への道だと思っていました。人件費を抑えて売上をあげるのが1番の方法だ、そんなことばかりを考えていました。いま思えば本当に幼稚な考え方ですね。しかし、この新卒者募集の結果が、発想を180度転換するきっかけになったんです。このままでは人を採用できない。いまこそ変わるべき時だと。休日を増やし、残業は極力減らす。そして新卒者や転職希望者に選ばれる企業にならなければいけない。そう考えるようになりました」

定期新卒採用を実施するようになってから新卒入社した社員のみなさん

休日を増やしたことで生産効率向上

 まず初めに年間85日だった休日を20日間増やして105日にすることに決めたが、当時、会議で従業員にその話をすると、予期せぬ反発にあったという。「休日を増やすと言ったらみんな喜んでくれると思ったんですが、逆に反発されたことを覚えています。いきなり休みを増やしたら仕事が回らない。結局残業が増えるだけじゃないか。そう言われたんです」それでも諦めずに説得を続けた。「必ず良くなるから。生産効率を上げていこう。そうやって何度も話し合って、ようやく受け入れてもらえました」そして2016年、年間休日を105日に増やしたところ、その年の売上は増加。反して残業時間は半分になった。「我々が初め恐れていたこととは、まったくの逆でした。労働生産性が劇的に上がったんです」休日を増やしたことで仕事に対する集中力が上がり、効率的になったと萩元副社長は言う。「私も元々は整備士だったんですが、1日で5台の車検整備をしなければならない、となったら効率良く仕事をして1日で終わらせていましたが、逆にその日は1台だけしか整備しなくて良いよ、となったら丸1日かけて1台終わらせるくらいの生産効率になってしまうんですよ」

様々な有給休暇の活用で育児や介護との両立支援も

 「働き方改革を進めたら業績が良くなる」そう実感した萩元副社長は、次に年次有給休暇の取得率の向上に着手。計画的付与制度を取り入れるなどし、積極的な年次有給休暇の取得を促した。結果、2019年には年次有給休暇の取得率が目標の70%を大幅に超え100%になり、その後も常に目標取得率を達成し続けている。また育児との両立支援にも力を入れており、女性従業員の出産や育児休業の取得はまだないそうだが、男性社員の育児休業は6年連続で100%を達成。育児休業取得は原則1回のみであるが、生後8週以内に取得した育児休業は取得回数の計上には入れず出生後1年以内にもう1回育児休業を取得できる「パパ休暇」という制度が育児・介護休業法にはあり、同社ではこの制度の利用を推奨し、実際に男性社員の育休取得者が増えている。育児目的休暇制度もいち早く導入し取得推進に取り組んでおり、スズキアリーナ大隅では子どもが中学校就学前までの間、年間子ども1人につき5日間、最大10日間の有給休暇を年次有給休暇とは別に設けている。

 そのほかにも育児・介護休業法では、子の看護休暇や介護休暇も1時間単位で取得ができることが2021年1月から法整備されているが、同社ではそれに先駆けて2020年4月から時間単位での取得を導入。2017年4月から同社独自に子の看護休暇や介護休暇を有給化して休みやすい環境を整えている。ただ休みを増やすだけではなく、繁忙期に対応するために1年単位の変形労働時間制を導入。完全週休2日にならない月もあるものの遅い時間まで残業することは無くなった。そして、やはり業績は職場環境の改善につられるように上がっていった。

失敗にこそ学ぶべきものがある

 職場環境が改善されたこともあり、今では求人数を遥かに上回る応募がくるようになった。従業員18名中8名が21歳以下と、新卒の定期採用も順調だ。また生産性の向上や、定期採用の応募数など業務的な成果だけではなく、社内の雰囲気も格段に良くなった。「休日が増え残業が減ったことで、従業員の心にゆとりができたようです」と、萩元副社長。会社見学に訪れた新卒予定者はほぼ100%応募まで進むそうだが、その応募理由は「会社の雰囲気が良さそうだから」という回答が多い。とはいえ、すべてにおいて成功ばかりして来たわけではない。時には労働生産性ばかりを追いかけ過ぎ、従業員に無理をさせてしまったこともあった。「そんな時でも仲間たちがいたことで、立ち止まり、初心に返ることができました。失敗も数多くありましたが、失敗にこそ学べることがたくさんあったように思います」

 現在、サービス課係長兼岩川支店工場長を務めている池田治彦さんは2018年の中途入社社員。前職は他社で自動車整備士を務めていたが、スズキアリーナ大隅の整備された労働環境に魅力を感じて転職を決意したという。年間休日の増加や年次有給休暇の取得率向上といった働き方改革への取り組みが実を結び、スズキアリーナ大隅を選んでくれた人材である。「2018年に入社して以来、年次有給休暇は毎年100%取得させてもらっています。転職後に2児の父となりましたが、『パパ休暇』は2回とも取得しました。第2子の時は第1子のために出生2ヶ月前から出生1か月後まで3か月間ほど育児短時間勤務制度を利用し、通常8時間勤務のところ6時間に短縮勤務しました。第1子の保育園への送り迎えや家事などで育児に貢献できて本当に嬉しかったです」と池田さんは語る。

制度を利用したことで積極的に育児に参加できたと語る池田治彦さん(写真右)

企業を成立させているのは従業員である、という信念

 スズキアリーナ大隅では研修制度も充実している。人材育成方針を打ち出し、毎期ごとに各人の教育訓練計画書を作成し、個々のレベルにあった研修が受けられる。それだけではなく、色々なことができる人間に育ってほしいという観点から、自身の職務以外の仕事に関しても学ぶことができるのだ。「働いている人が成長すれば、その企業は強くなる。つまるところ、企業を成立させているのは従業員なんですよ」と、萩元副社長。今後も積極的に従業員を増やしていく予定だ。「現在、従業員の数は18人。これだと、まだまだできないことも多い。それに、もしいま仮に従業員の誰かが病気などで長期に休んでしまったとすると、みんなで支え合うことはできるが、その負担は小さくない。いずれは疲弊してしまうでしょう。もっと仲間を増やして事業が大きくなれば、その負担は小さくできます。また、ある時点まで事業が拡大すれば、急な欠員が出ても、周りの従業員には負担そのものがいかなくなる、と考えています。つまり、病気や介護などでやむなく休業する従業員も安心して休むことができますし、そうではない時でも安心して働くことができるんです。働き方改革を推し進めることで、みんなが不安を感じることなく、明るく、やる気に満ちている、そういう会社にしていきたい」

改革は業務効率向上の段階に

 クラウド型勤怠管理システムの導入や、勤務間インターバル制度を設けるなど、現在に至るまで、絶え間なく環境改善に取り組んできたが、改革を始めた当初、劇的に向上した労働生産性が、近年では微増に留まっている。良い意味では改善の余地が減ってきたと言える、しかし萩元副社長は、スズキアリーナ大隅の働き方改革が、次の段階に入ったと考えている。「いま、職場環境の改善はひと段落ついており、これからは業務効率をさらに上げていく、という段階に入ってきていると思います。」そして、そのために萩元副社長が着手し始めたものがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。「100年に1度の変革期と言われている自動車産業で、リスクヘッジをしながらも前に進んでいくためには、業務効率を上げ、その余力を使って新しい仕事や、新規事業を始めることが必要になってきます。その鍵になるのがDXだと、私は強く確信しています」基幹システムを入れ替えるなど、DX化はすでに始まっており、今後も積極的に設備投資をしていく予定だという。スズキアリーナ大隅の働き方改革は、事業拡大の夢に向かって、いまも信念とともに邁進している。

DX化に設備投資して、さらなる業務効率の向上を目指す

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

年間休日数を増加する取り組みで残業時間の削減を実現

効果
年間休日を85日から105日に増やしたことで、労働生産性が向上。残業時間も15時間と従来の半分にまで削減できた。
取組2

年次有給休暇の取得率向上で社内の雰囲気も向上

効果
年次有給休暇の計画的付与制度を取り入れるなどにより取得率100%を達成。従業員の心にも余裕が生まれ、社内の雰囲気も良くなった。
取組3

新卒の定期採用への取り組み

効果
新卒者に選ばれる企業になる努力が、働き方改革への取り組みの促進と繋がり、結果的に事業拡大に必要な人材の確保に成功した。
取組4

男性社員の育児休業の取得促進

効果
「パパ休暇」制度の利用勧奨を行うなど男性社員の仕事と育児の両立支援に力を入れており、男性の育児休業取得率が6年連続で100%達成という高い水準を維持。有給の育児目的休暇制度も設け、利用勧奨に取り組んでいる。

COMPANY DATA企業データ

クルマを通じて地域社会に貢献する

株式会社スズキアリーナ大隅

代表取締役社長:萩元 克久
本社:鹿児島県曽於市
従業員数:18名(2021年12月現在)
設立:1963年
資本金:1,000万円
事事内容:自動車販売・整備・保険・ロードサービス・レンタカー業

経営者略歴

萩元克久(はぎもと・かつひさ)
1965年生まれ。鹿児島県曽於市出身。中日本自動車短期大学 自動車工学科を卒業後、他社自動車整備士を経て1986年度に入社。以前は地元曽於市の消防分団長を務め、全国消防操法大会に出場したこともある地元密着型経営者。