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社会福祉法人不二学園 こうしおんがく保育園

業種

その他

地域

九州・沖縄

従業員数

10〜29人

File.67

風通しの良さが生む「働き続けたい保育園」―音楽教育に注力「こうしおんがく保育園」の場合―

働きやすい職場づくり

2021.02.04

社会福祉法人不二学園 こうしおんがく保育園

 生後2カ月の乳児から就学前までの児童を受け入れ、音楽を取り入れた指導に力を入れる社会福祉法人不二学園「こうしおんがく保育園」(熊本県合志市)。設立時から勤務する職員が多くいるだけでなく、インターンシップ生として勤務していた学生がそのまま入職を希望するなど、「働きたい」「働き続けたい」と職員が思える環境が実現している。音楽とともに、職員の笑顔があふれる保育園の働き方とは。

働き続けたい保育園

ハンドベルの指導に当たる職員

 遊戯室で「ドンドン」と和太鼓の音が鳴り響いている。別の教室では職員の動きに合わせて児童がハンドベルを楽しそうに鳴らしていた。

 同園の設立は2012年。和太鼓やハンドベルのほか、ピアノやリズム表現など、音楽を通して表現力や集中力、想像力を身につけてもらおうと音楽教育に注力してきた。音楽に特化した保育園は県内でも珍しい。体育指導や園庭での畑作りなどを通して食育にも力を入れており、心身のバランスの取れた保育を目指している。

 山下知美園長は「職員の待遇はかなり恵まれているほうではないか」と語る。その言葉を裏付けるように、2019年度、2020年も11月末時点で離職者はゼロだ。今年度から働く職員は学生時代に「保育補助」として勤務しており、「卒業後はここで働きたい」と、そのまま入職した。職員一人当たりの月平均残業時間は行事などと重なる時期も含め5~6時間で推移している。月に3回ほど1時間の「延長保育」の当番があり、その時間も加算されているため、延長保育以外の残業はほぼない。

20年以上の保育士としてのキャリアを振り返り、同園について「従来の保育園に比べて職場の風通しは良い」と話す山下知美園長

 職員が働きやすい職場環境を生み出している理由の一つが、「十分な人材の確保」だ。児童福祉施設の設備及び運営に関する国の基準では0歳児はおおむね子ども3人、1~2歳児は同6人、3歳児は同20人、4歳児は同30人に対し職員1人以上を配置するよう定められている。しかし、同園では3歳児には15人に1人を配置するなど、すべての年齢層で常に基準を上回っており、現場にゆとりを持たせて職員を配置している。

 延長保育も含めた開園時間は午前7時から午後7時まで。正職員、契約職員、パート職員らでシフトを回している。夕方前に帰宅するパート職員がいても、保育補助として夕方から勤務するパート職員がいることでカバーできている。十分な人員配置の結果、個人の業務負担が減り、それぞれの働き方を維持しながら残業が少ない職場を作り出せている。業務負担の削減は残業の削減、つまり残業代の削減にも結び付いている。山下園長は「子育て中の職員も多い。自分の子どものための時間を犠牲にすることはやめてほしい」と、現在の仕組みに込めた思いを語る。

風通しの良さを生み出す運営方針

 保育士として20年以上のキャリアを持つ山下園長は、これまでいくつかの保育園に勤務してきた。これまでに勤務した職場を振り返ったうえで、同園について「従来の保育園では考えられないほどの風通しの良さだ」と説明する。

 働きやすい職場にしようという機運は、設立当初からあったという。社会福祉法人でありながら、設立者である山田敬太理事長は保育業界とは全く関係のない県内の民間企業の社長であることもあり、山下園長は「民間企業ならではのスピード感と、保育業界にはない発想力がこの環境を生み出しているのだと思う」と分析する。

保育園で一般的に使用されている年次休暇届(上)と同園オリジナルの年次休暇届

 その象徴ともいえるものが、オリジナルの年次有給休暇届だ。保育園運営にあたり、必要になる書類のフォーマットは県保育協会によって展開されているが、年休取得の際に使用するフォーマットでは、1回の取得ごとに1枚の紙での申請となる。「職員がもっと気軽に申請できて、年休残日数を管理しやすい方法はないか」。そこで、従来型の休暇届の手間を解消するため、山下園長はオリジナルの年休届を作成した。1枚で複数の申請ができ、残日数も一目で分かるものだ。

 山下園長によると、従来からの保育業界の慣習にこだわった結果、書類を使い続ける保育園もあるというが、山田理事長ら理事メンバーは変更について全く意に介さなかったという。山下園長は「園の基本的な方針として『より働きやすい職場にしていく』という雰囲気が自然とある」と笑顔で話す。

 年休を半日単位で取得できる制度も導入しているため、子どもの行事参加や緊急事態にも対応しやすい仕組みができている。

職員同士の壁をつくらない

 同園の保育士は正職員が6人、契約職員が5人、パート職員が6人で構成されている。産休や育休などの休暇制度、通勤手当などの諸手当は全職員に付与されている。

 契約職員は1年ごとの更新制だが、更新を希望すれば基本的に契約を継続している。正職員と契約職員ではクラスの担任、副担任といった職責の差があるが、職員のライフスタイルに応じて柔軟に切り替えができるようになっている。これまでに2人が契約職員から正職員になったが、「子育てに集中したい」といった事情から正職員から契約職員に変更するケースもある。

 正職員と契約職員の月給は基本的に同じだが、賞与は職責の差により倍率が異なる。一方、パート職員は面接時に希望の勤務時間を聞いた上で採用することで、職員は自身のライフスタイルに合わせた働き方ができる。

職場環境について語る渡邉由紀さん(右)と田野祥子さん

 同園に勤務して4年目になるパート職員の渡邉由紀さんは、1歳の次男を出産後、2019年6月に育休を取得し、2020年9月に復帰した。「子育てしながらでも働きやすく、4年間毎日楽しく過ごせている」と笑顔で話す。正職員から仕事に関して相談を受ける機会も多いといい、「勤務形態での差は全く感じない」と説明する。

5歳の長男とともに七五三の記念写真に写る渡邉さん

 開園時から勤務している正職員、田野祥子さんは「自分のクラスで行事が近づくと、行事がないクラスの職員が『何かやることはありませんか』と助け船を出してくれる。自然とサポートしあう雰囲気がある」とチームワークの良さを強調する。2018年には双子を出産し、育休から復帰後も忙しい毎日だったというが、「『無理しなくていいよ』と声かけしてもらい、ありがたかった」と振り返る。今後について「仕事とプライベートのバランスを取りながら、気持ちを豊かにして子どもに接していきたい」と意気込む。

12歳の長女、10歳の長男、2歳の次男、三男と4人の子どもの母親の田野洋子さん

よりゆとりを持った働き方へ

 子どもを預かるという職務上、新型コロナウイルス感染症への対策は徹底している。子どもの身長に合わせた検温システムを入り口に設置し、送迎に訪れた保護者は玄関までしか入れないようにするなど、さまざまな対策に取り組む。山下園長は「子どもは体調が悪いことをうまく訴えられない。その分、気をつけて見てあげないといけない」と語る。

 保育士もトイレ掃除などの園内の衛生管理に一層気を配ることになったが、山下園長が考えているのは「庶務的な業務の外部委託の推進」だ。「私立保育所では先生がトイレ掃除などを園児の午睡の時間を利用して行うケースが多い」とした上で、「そういった業務を外部に委託し衛生面にも配慮することで、職員がもっと子どもに向き合えるようになるのではないか」と話す。

 子どもを相手にするという職務上、勤務中の休憩を取りにくいケースもある。書類や記録などの事務をICT化するなどして業務の負担をさらに減らして、子どもに向き合う時間を増やすことで、ゆとりのある働き方が可能になるのではないかと考えている。同時に、どんなライフスタイルでも働きやすい職場をさらに追及していくつもりだ。「いろんな年齢層の方が勤務している。そこは今後も大切にしていきたい」と前を見据える。

 働き方改革が進むにつれ、共働き世帯が一般的となってきた。そんななか、保育の需要は高まっている。保育園は、働き方改革に欠かせない存在ともいえるだろう。同園はこれからも改革が進む社会を支えながら、自らも変わり続けていく。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

十分な人材の確保で職員個人の負担を軽減

効果
国が定めている基準を上回り、現場にゆとりを持たせるよう職員を配置することで職員個人の負担を軽減。夕方から保育補助として勤務するパート職員もいることからシフトを回すことができている。
取組2

オリジナルの年次有給休暇届と半日単位で休暇が取得できる制度を導入

効果
オリジナルの年次有給休暇届を導入することで申請と管理のしやすさを同時に実現。半日単位で休暇を取得できる制度も設けていることから、柔軟に休暇を申請できる体制を整えている。
取組3

ライフスタイルに合わせた柔軟な勤務形態

効果
職責の違う正職員、契約職員をライフスタイルの変化に合わせて柔軟に切り替えることができる。パート職員は面接のときに希望の勤務時間を聞いた上で採用する。休暇制度や手当などに差はない。

COMPANY DATA企業データ

音楽を通して創造性を育む

社会福祉法人不二学園 こうしおんがく保育園

山田敬太理事長 山下知美園長
所在地:熊本県合志市
職員数:24名(正規職員6名、契約職員5名、パート職員6名、保育補助3名、看護師1名、調理員3名)(2020年11月現在)
設立:2012年4月
事業内容:保育事業(乳児保育、延長保育)

経営者略歴

山田敬太(やまだ・けいた) 1968年、熊本県生まれ。コンクリート二次製品製造の熊本不二コンクリート工業代表取締役社長を務める。社会福祉法人不二学園理事長。

山下知美(やました・ともみ) 1973年、熊本県生まれ。1993年熊本短期大学(現・熊本学園大学短期大学部)保育科卒業後、熊本市社会福祉協会報徳保育園に入職。1996から2年間オーストラリアでボランティアを経験。帰国後いくつかの保育園、幼稚園を経験し2012年、こうしおんがく保育園の設立とともに入職。