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株式会社 米五

業種

製造業

地域

中部

従業員数

10〜29人

File.89

グラフや表で可視化を図り残業時間削減、年休取得率アップを達成―昔ながらの味噌造りを守る米五の場合―

時間外労働の削減

2021.12.07

株式会社 米五

 創業天保2(1831)年、味噌を扱う商店としては唯一の曹洞宗大本山永平寺御用達である。米五は旧来の味噌造りの伝統を守りながら、その時代にあった新たな試みを続けている。味噌業界に先駆けインターネットによる個人向け販売を開始し、2018年には店舗移転、事務所移転に加えて〝みそカフェ″をオープン。味噌を使った新しいスタイルの食を提供した。しかし、飲食業という不慣れな業務は残業の増加を招いてしまった。気がつけば残業時間が徐々に増していくという状態に陥っていたのだ。危機感を抱いた米五は残業時間削減に取り組んだ。

残業時間をグラフ化する

 多田健太郎社長は話す。同社はもともと残業の少ない職場だった。それが2018年の店舗移転・事務所移転による作業増加に加えて飲食業という新規事業のスタート作業に手間取り、残業が増えていったのだ。

多田健太郎社長。何故、残業時間削減が必要なのか、また、年休の取得は労働者の当然の権利だと社員にしっかり説明することが必要と話す
 

 「給料明細に残業代がいくらと記載されているのにそれが何時間の残業にあたるのか、気にしている社員は少なかったと思います。たとえば残業代が3万円だったとします。その3万円が何時間の残業に対する手当なのか、そこまで気にする社員はあまりいなかったと思います」
 そこで考えたのが残業時間を可視化することだった。残業時間を一目で見てわかるにはどのようにすればいいのか?その答えが残業時間の〝グラフ化″である。半月に一度、残業時間をタイムカードから集計し、誰が何時間、残業しているのかをグラフにし社員の目につきやすい事務室のタイムカード付近に貼り出した。
 「社員全員の残業時間をグラフにしました。こうすると一目で自分の残業時間が分かるし、他の社員の残業時間も分かる。すると自分は40時間も残業しているのに、3時間しか残業していない社員もいる、何故だろうという疑問が起きてきます。自分が効率の悪い働き方をしているのか、それとも仕事量が自分だけ多いのか。他の社員と同じ仕事量なのに残業時間が多ければ仕事の仕方を変える必要があるし、仕事量が偏っているのなら平準化する必要がある。グラフ化することで残業の理由と解決方法が見えてきたのです」。
 また、水曜日を定時退社日に設定し、実施した。
「仕事がある部署に偏ってしまうと残業が発生します。そこで平準化を図りました。平準化といっても難しいことではなく手の空いた人がその部署の応援に行くということです。それまで部署内の仕事はその部署内で片づけていました。専門性を必要としない仕事なら誰もが手伝える、それで業務の平準化を図ったのです」。
 その結果、一人当たりの1ヵ月平均残業が2018年上期は44時間だったのが、2019年上期は25.8時間、さらに2020年上期はコロナ禍という要因もあり、10.8時間に減少した。
「今までと同じ業務でも、作業効率を意識して行えば短時間で終わらせることができます。そこから生まれた時間で新しい付加価値を生むような仕事に取り組んでほしいと思いました」。

残業時間をグラフ化。グラフは事務所のタイムカード脇に貼り出している

年次有給休暇を表組にする

 残業と同様に年次有給休暇の取得率の低さも問題だった。
 「これも年休があと何日残っているか、今年度の有給消化日数を社員は意識していなかったのです。ですから、社員一人ひとりの年次有給休暇を取得した日数と取得率を表にして月に一度の社内会議で配布し、可視化しました」
 この可視化も残業時間同様の効果があったという。そして、年次有給休暇の取得が進まない社員に対しては積極的に取得するように声をかけた。
 また、年休の取得を促進するため、年末年始、夏休みの前後3~4日間を計画的付与の対象とした。この日は社員全員が休暇を取り、会社は休業となる。
 年間5日の年次有給休暇を確実に取得してもらうため、忙期で忙しくなかなか年休が消化できない社員には閑散期に取得するように積極的に働きかけた。2018年にこの制度を設けてから、社員全員が毎年9月頃までには年次有給休暇5日間取得を達成している。
 また、年次有給休暇について理解が充分でない社員もいたことから、「年休の未消化分は翌年には繰り越せても、2年間で時効になってしまう。年休を残しておいているつもりでも、実際には時効になってムダになってしまう。と、説明しました」。
 その結果、年次有給休暇取得率70%を達成している。

正玄貴之さん。「仕事は裁量権があるので体験教室などプログラムを企画し、実施し好評だったときには達成感があります」と話す。

 可視化、業務の平準化について、営業部に所属し、工場見学や味噌造りなどの体験教室の企画・運営を行っている正玄貴之さんは「グラフを見て自分がこんなに残業しているのかと驚きました」という。
「グラフを見て自分が40時間も残業していること、それが他の社員よりかなり多いことに驚きました。そのときは店舗の業務に費やす時間が長く、残業に繋がっていたのです。そこで店舗の人員配置を見直し、業務を平準化してもらうことによって、負担が減り、本来の業務である体験教室の企画・運営に時間を当てることができるようになりました」。
残業を削減すると残業手当も減額になる。その点はどうなのだろう。
「残業で稼ぐというよりも、生産性を上げることで評価も上がり、結果として収入も増えることを目指しています。私の仕事は体験や工場見学で自社製品の素晴らしさを伝え、いわばファンを増やすのが目的です。裁量権もあり、店舗の売り上げにも繋がっています。いい企画を考え、お客様に喜んで頂け、やりがいを感じています」。

 通信販売部の横濱友梨さんも残業時間のグラフを見て驚いた一人だ。
 「自分は他の社員より、少ないだろうと思っていたのに、多いほうだと分かって驚きました。この可視化は残業の原因について考えるきっかけになりました」。

横濱友梨さん。残業が減少し、Webマーケティングなどのセミナーに行ける時間が増え、新しいことを学ぶ機会が増えたという

 2018年事務所移転による残業が多かったものの、通販用の出荷場を作ったことで作業が効率化され、2019年度の残業削減につながった。また、2020年3月にはネットショップのモールから撤退したことで作業効率がよくなり、さらに残業時間を削減し、プラスアルファの仕事ができるようになった。
 「商品を発送する際、お客様に手書きで手紙を入れたり、季節のキャンペーンなどを紹介するパンフレットの企画・制作に時間をかけたりできるようになりました。残業削減によって残業手当も減りますが、それより、定時に帰宅でき、プライベートな時間が増えることのほうが、私にとってはメリットが大きいです」
 横濱さんは年次有給休暇も可視化されたことで意識して取得するようになったという。
 「年次有給休暇も、表を見て、〝そんなに残っているなんて″と意外に思いました。一斉年次有給休暇が設定され、それ以前より、休みやすい環境になりました。誕生日休暇はすべて消化していますし、できる限り年次有給休暇を取ろうと思うようになりました」

面接でキャリアプランをフォロー

 米五は福井県の「キャリアアップ推進企業」の認定を受けている。社員が将来、何を目指して働くのか、キャリアプランを本人と相談して制作し、年に2回の社長との個人面談でプランをフォローしている。必要な資格があれば取得に向けて資金面などを会社が負担する。
 「20年後、30年後にどうなりたいのか。そのために今年度の目標はどこにおくのかを中心に話します。たとえば今は接客をしているが、将来は商品の企画開発をしたいという目標があるとします。そのためには製造現場、カフェ、物販と業務のすべてを知り、マーケティングの知識も必要になる。では、今年は何をして、どう結果を出すか、必要な資格取得はどうするかなどを相談して決めていきます。物販なら具体的に数字を決めます」

1階に直営店と2階に飲食施設〝みそカフェmisora″を併設した店舗「みそ楽」。2018年にオープンした

 「そして、今年度の目標が高すぎる場合には低く、反対に自己評価が低すぎるなら、もっと高いところ目指すようにアドバイスしています。ゴールを変更させることはありません。年2回の面談は目標に向かっているか、誤って反対方向に走っていないかを確認する面談です」。
 多田社長は定年を自分で決められる制度や他社との社員交換制度なども検討したいと話す。
「社員それぞれが自由で、その人にあった働き方ができる会社にしたいと思っています」。
社員の成長を目指し、新しい働き方を常に模索、追求している企業である。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

残業時間をグラフ化して貼り出す

効果
社員一人ひとりの残業時間を半月に一度タイムカードから集計してグラフ化する。これを事務室に貼り出し可視化することにより、残業時間を確認でき、削減に繋がった。
取組2

年次有給休暇の取得日数と取得率を社内会議で共有する

効果
年次有給休暇も可視化することが取得促進に繋がった。また、一斉休暇取得日の設定や特別有給休暇の創設など、休暇を取得しやすい環境を整備。取得率が向上した。
取組3

個人面接でキャリアアッププランをフォロー

効果
将来を見据えたキャリアアッププランを制作。必要な資格取得を資金面で援助。またプランの進行状況を年2回の個人面接で確認し、アドバイスすることでフォローしている。

COMPANY DATA企業データ

曹洞宗大本山永平寺御用達を務める

株式会社 米五

代表取締役社長:多田健太郎
本社:福井県福井市
従業員数:25名(2021年8月現在)
設立:1954年4月
資本金:2040万円
事業内容:味噌製造・販売、味噌加工品、醤油、塩などの販売

経営者略歴

多田健太郎(ただ・けんたろう) 1984年、福井県福井市出身。2007年、大阪大学卒業、同年三谷商事(株)入社。2014年、同社を退職。同年(株)米五常務取締役、2021年同社代表取締役社長就任