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株式会社えぷろんフーズ
卸売業,小売業
中部
301人〜
File.15
「日曜定休30年」が生む従業員ファミリーの笑顔 ―食品スーパー えぷろんフーズの場合―
2020.01.31
「世界のトヨタ」の本拠地として知られる愛知県豊田市。市中心部を車で走ると、道沿いに、「えぷろん」の文字が目に飛び込んでくる。豊田市を中心に店舗展開する食品スーパー「えぷろん」の店舗だ。エプロンと野菜をイメージしたキャラクターが目印だ。
食品スーパー「えぷろん」を展開するえぷろんフーズ(本社・豊田市)は創業間もないころから約30年間、従業員の働き方で一貫して実施していることがある。スーパーではめずらしい「日曜定休」の実施だ。
「パートのお母さんに家族一緒の時間を」お盆・お正月も休業
スーパーの各店舗では、パートナーと呼ばれるパート従業員が多くの業務を支えている。パートナーは、地域の主婦が多いため、「日曜日は家族で過ごしてほしい」との思いから、日曜日を定休にし、全従業員が休日をとれるようにしてきた。
豊田市は、トヨタ自動車の企業城下町として発展してきた。このため市内では、トヨタ自動車をはじめトヨタグループに関係する企業で働いている人が多い。トヨタ自動車をはじめグループ企業は、通常、日曜日は休日となっている。学校も休みだ。このため、えぷろんフーズが日曜日に店舗を営業すると、各従業員の家庭では、「日曜日はお母さんだけが働きに出ている」という事態になる。
30年ほど前、当時の社長が「家族全員が休みの日曜日は、お母さんは子どもたちと一緒に過ごしてほしい」と、定休日を日曜日にすることを決めた。全国的に小売業では大手スーパーを中心に年中無休の流れができつつあったが、定休日を確保し続けるとともに、従業員が家族と過ごす時間を大切にしようと、「日曜日」にしたのだ。
現在、河合岳史代表取締役社長も、原則として店舗の「日曜定休」を守り続けている。「日曜日は市場も休みのため新鮮な食材が手に入りにくい。生鮮食品は土曜日に売り切って日曜日は休む。月曜日に当日仕入れた新鮮なものを売る」というスタイルを確立させている。
河合社長は「十数年前、3年連続で売り上げが落ちた時に日曜日も開店しようと、当時の社長(現・相談役)に直訴したこともあったが、自分が社長になってみると社長の立場で従業員と家族を思う気持ちが理解できた。今後も日曜定休を続けていく」と語る。同様に、「お正月とお盆も家族でゆっくり過ごしてほしい」と、正月、お盆も店舗を休みにしている。現在、全5店舗中、複合施設内に開業した1店舗を除く4店舗で完全日曜定休を実施している。
連続で最大10日間の休暇でリフレッシュ「人も商品も新鮮です」
「働き方改革」で河合社長が掲げるのが、残業時間の削減だ。「かつては職場に長くいることで会社に貢献しているという風潮があった」と指摘する。2年前から全従業員を対象に、「レイバースケジュール」と名付けた仕事の時間管理の強化に乗り出した。仕事のスケジュールを決めて、時間内に終わらせる仕組みづくりを進めている。
経営管理部リーダーの青木康浩さんは、情報通信関連企業から7年程前にえぷろんフーズに転職し、業務の効率化や働き方改革に取り組んでいる。多様な働き方を実現させるため、従業員の勤務時間は、採用時に個別に契約、働きやすい仕組み作りを続けている。「リフレッシュ休暇制度」を拡充し、2019年7月から有給5日間を含めて連続で最大10日間取得できるようにした。初の試みだったが、若い従業員を中心に10連休を取得するケースが目立った。青木さんは「商品も人も鮮度が大事。疲れた顔で接客するのは失礼にあたる。ぴちぴちの笑顔でぴちぴちの商品を売っていきたい」と抱負を語る。
日曜定休は、実際に従業員からも好評だ。青果売り場のチーフとして働く武山真琴さんは、毎朝午前4時に起きて、仕入れを行う。日曜日は完全なオフとして、友人と会うなど自分の時間を楽しんでいるという。
また、仕入れの仕事をする際には、IT技術の活用で市場など遠隔地からもタイムカードを記録できるようになった。これまでは市場で働いていても、事務所に出勤しなければタイムカードを押すことができなかったという。昼の休憩時間も1時間30分、取得することができる。「自分で仕入れて売る仕事にやりがいを感じている。仕事中は無駄をなくし、自分の時間も大切にしながら仕事を楽しむことができる」と話す。
従業員8割が地元主婦、「食のヘルシーライフ」は地元の使命
店舗事務を行う浜野奈穂江さんは出産を機に一度退職したが、通算15年間勤務しながら4人の子どもを育てている。仕事先に「えぷろんフーズ」を選んだのは、子どもと幼稚園が一緒だった母親たちから、「日曜日が定休のスーパーがオープンする。働く人を募集している」と聞いたのがきっかけだった。
浜野さんは「自宅からも近く日曜日が定休のため、子どもとゆっくり過ごす時間を持つことができた。子どもが小さくても働き続けることができたと思う」と笑顔を見せる。
実際、「えぷろんフーズ」の従業員の約8割が近隣で暮らす主婦だ。地域で働き、暮らす人々の生活と密接につながっている。現在、地域の食品スーパーとして、野菜を食べたくなる売り場づくりにも注力している。愛知県は、キャベツやトマトなど野菜の栽培がさかんで、農林水産省の調査によると、2017年の農業産出額は47都道府県で7位。一方で、厚生労働省の都道府県別調査では、愛知県民の野菜摂取量は男性が全国最下位となるなど全国でも低水準となっている。全国有数の農業県でありながら、野菜の摂取量が低いことが政策課題の一つとされるためだ。
「旬な野菜、果物、魚の豊富な品ぞろえで食を通じて地域の人々の健康にも貢献したい」と河合社長。従業員の笑顔とともに、地域で働く人々とその家庭の食卓を守り続ける。
CASE STUDY働き方改革のポイント
日曜日定休
- 効果
- 従業員の家族との時間を大切にする ※複合施設内に開業した1店舗を除く。
リフレッシュ休暇制度の拡充。
- 効果
- 2019年7月から有給5日間を含めて連続で最大10日間取得可能に。
COMPANY DATA企業データ
株式会社えぷろんフーズ
代表取締役社長:河合岳史
本社:愛知県豊田市
従業員数:社員92人、パート533人
設立:1973年
資本金:1,000万円
事業内容:食品スーパー
経営者略歴
河合岳史(かわい・たけし) 1974年生まれ。愛知県豊田市出身。1997年中京大学卒業。 1999年えぷろんフーズ入社。2012年からえぷろんフーズ代表取締役社長。