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株式会社ピージーシステム
情報通信業
中国・四国
50〜99人
File.36
改革によって見いだされた新たな可能性 ―情報処理システム開発「ピージーシステム」の場合―
2020.10.21
山口県宇部市に本社を置く「ピージーシステム」は、郷田宏会長が1998年に創業した。官公庁のほか幅広い業種において情報処理システムの開発を手がけ、2020年7月現在で従業員59人を抱える。近年は「働き方改革」として従業員が万全の態勢で仕事に臨める環境づくりを徹底し、企業ステータス・知名度ともに向上。採用人数も増加が続くなど、さらなる躍進の兆しを見せている。
ターニングポイントは実務経験豊富な担当者の採用
郷田会長は「お客様に必要とされる企業が生き残る」という思いから、「顧客ファースト」を信念に掲げる。丁寧な仕事をすることで生まれる、人と人とのつながりを特に大切にしなければと、従業員一人あたりの労働生産性の向上を念頭に置く。
若い頃、実力ではなく上司の顔色をうかがって仕事をする人間が評価されるという理不尽な思いを数多く経験した。そうした内向き志向では顧客ファーストなどあり得ないと感じた。まずは社員を大切に、「何よりも頑張った人をきちんと評してあげたい」と、経営者として会社づくりと人材育成に力を注いできた。
世の中の移り変わりに合わせて、産休や育休など、女性、男性ともに働きやすい環境づくりを目指して福利厚生を整備してきた。ただ、企業として規模拡大を進める上で、「離職率の低下」「採用強化」「従業員の満足度の向上」「知名度のアップ」など、新たな課題も浮かび上がってきた。いずれの課題も労務管理に起因する問題といえることから、郷田会長は実務経験豊富な人材としてスカウトしたのが富田祥司人事総務部長だった。2018年9月のことだった。
働きやすい環境づくりを目指して
富田部長はSE経験を持ち、2012年に山口県に本社を置く同業他社にUターン転職した。外資系金融機関で人事を長く務めた経験を持つなど、IT業界と労務管理のスペシャリストと言える人材だった。
労務管理を任されることとなり、「働き方改革」の推進について、「企業として大きなステップアップにつながるはず」と着目した。「深夜までの残業や休日出勤は当たり前」といったIT業界の悪弊を数多く見ており、その経験を生かし、職場環境改善のためのアプローチを考え、取り組みをスタートさせた。
「定時内でしっかり働いて仕事をきちんと終わらせることが大切。定時を過ぎて遅くまで働いて『よくやっている』という評価はありえない」。かつての職場で、過酷な勤務により心身ともに疲弊していく社員を数多く目の当たりにしてきたこともあり、言葉には熱がこもる。
まず、毎週水曜日をノー残業デーとして設定。具体的な目標を掲げたことにより、従業員にも意識改革しなければという気持ちが芽生えたという。結果、2018年には18時間あった月平均の残業時間は、2019年には11時間まで減少した。そして、始業と終業を30分ずつずらした、3パターンの勤務時間帯を新たに設定。家庭環境や通勤距離に合わせての勤務が可能になり、従業員のモチベーションのアップにもつながった。
同じ業界から転職して1年目という山根篤浩さんは、「以前の職場では深夜までの長時間勤務が常態化していた」と振り返る。改革への取り組みはもちろん、一つの仕事に対するスケジュール管理やサポートがしっかりしている点などを魅力に感じた。面接で郷田会長や富田部長から直接話を聞き、「挑戦したい」と入社を決意する。
「帰宅後、しっかり家族との時間を過ごせています。一日の中でしっかりメリハリができ、心身の余裕を取り戻したことで仕事のやりがいを大きく感じられるようになりました」と笑顔で語る山根さん。会社の考え方には大きな安心があるといい、充実して仕事に打ち込めていると会社の取り組みを評価している。
あらゆる業界、業種で女性の活躍が目立ち始めた昨今。同社においては産前産後休暇、育児休暇の取得推進にも取り組んでいる。現在、女性従業員は59人中15人。うち2人が育児休暇を取得中だ。出産、育児、介護、ワーク・ライフ・バランスの実現。これらに対応し、地元で安心して仕事に集中してもらえるよう、転勤のない地域限定採用も改革の一環として積極的に進めている。
改革推進により知名度アップ
同社が「働き方改革」推進の上でもう一つ注力しているのは、国や自治体などが実施している企業認定などの取得だ。2018年には「宇部市女性活躍推進企業」(宇部市)、「やまぐち男女共同参画推進事業者」(山口県)として認定を受けた。2019年には「やまぐち子育て応援企業」「やまぐちイクメン応援企業」「やまぐち女性の活躍推進事業者」「誰もが活躍できるやまぐちの企業」(いずれも山口県)としての認定も受けた。
富田部長は、「企業としてのステップアップのためにはイメージ、知名度アップも不可欠。これまでの取り組みを採用関連サイトや就職説明会などで紹介することで、採用人数は新卒、キャリアとも期待通りに増加しています」と説明する。
新卒採用で入社2年目の黒木智華さんは、休暇が同業他社と比べしっかり取れる点や、文系理系区別なく採用対象である点などに魅力を感じ、「IT関連の知識ゼロからのスタートでも頑張りたい」と同社の門を叩いた。
黒木さんにとって、活躍する女性の先輩の存在が大きく、仕事の評価以外にも、お茶出しなど雑務を求められるような日本の企業に未だありがちな「女性だから」といったジェンダーによる差別を一切感じないという点が励みになっているという。法定の5日も含めた年次有給休暇取得についても、「新人ということで最初は遠慮がありましたが、先輩の勧めもあり、きちんと仕事をスケジューリングして、休めるときには取得するようにしています」と笑顔で語る。
業界のマイナスイメージ払拭を
「働き方改革」を進めていく中で、企業として置かれているレベルや、新たな弱みも見えてきたという。「評価が全部漠然としたものであれば、やってもやっていなくても変わらない形になってしまう。目に見える評価で、従業員本人が納得できる透明度のあるシステムを築きたい」(富田部長)
今後、休みをより取りやすくするなど、さらなる制度整備を目指している。富田部長は、「IT系企業は、長時間残業、徹夜、休日出勤も当たり前というイメージを抱く人も少なくない」としたうえで、「自社のアピールをしつつ、業界のマイナスイメージを払拭できれば」と決意を語る。
CASE STUDY働き方改革のポイント
管理部門の人事総務部に実務経験豊富な人材を採用
- 効果
- 社会に対応した福利厚生を遂行するために、実務経験豊富な担当者をスカウト。
従業員が働きやすい環境作り
- 効果
- ノー残業デーの設定により、従業員自らも働き方を考える意識が浸透。3パターンの勤務時間帯を設定し、家庭環境や通勤距離に合わせた勤務を可能にした。産休、育休など、女性従業員が勤務継続しやすい制度を創設。地元で安心して仕事に集中してもらうために、転勤のない地域限定採用を実施。
自治体の企業認定を積極的取得
- 効果
- 企業ステータスのアップを目指して、県や市が実施している子育てや男女共同参画などの企業認定を積極的に取得。取り組みの紹介や知名度アップにより、採用人数が増加。
COMPANY DATA企業データ
共に成長する、企業でありたい
株式会社ピージーシステム
代表取締役会長:郷田宏
本社:山口県宇部市
従業員数:59名(2020年7月現在)
設立:1998年
資本金:2,000万円
事業内容:情報処理システムの受託開発を通じ、問題解決をサポート。官公庁ほか、販売・在庫管理、受注発注、生産管理ほか、多岐にわたる業種・部門にて実績。AI/IoT、ビッグデータ等の最新テクノロジー活用にあたっての実証実験プロジェクト「ひろしまサンドボックス」に2019年1月より参画中。
経営者略歴
代表取締役会長 郷田宏(ごうだ・ひろし)
1958年、山口県宇部市生まれ。国立宇部工業高等専門学校機械工学科卒業。ICTソリューション会社などを経て独立。1998年、ピージーシステムを設立。