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コスモプラス株式会社
卸売業,小売業
関東
100〜300人
File.63
ワーク・ライフ・バランスだけでない働き方を求めて ―地域密着で調剤薬局を展開「コスモプラス」の場合―
2021.01.28
埼玉県と千葉県で計16店舗の調剤薬局を展開するコスモプラス(さいたま市北区)は、調剤業務にとどまらず、個人宅への訪問看護や障害者・介護施設への訪問服薬指導などの事業を展開している。「和」という理念を掲げ、薬剤師や看護師、ケアマネジャー、管理栄養士などさまざまな職種が連携。地元に根差した薬局として地域医療に貢献している。「専門性を持った人材が地域で働けるように」。同社の働く環境づくりには、そんな願いが込められている。
ライフステージが変わっても地域で活躍できる
創業者である父親は、同社を立ち上げる前は医療機関専門の建築設計業務を担っていた。薬の処方を医師、調剤を薬剤師が分担して行う「医薬分業」が国内で進む中、建築設計を手掛けていた病院、クリニックから医薬が一体となった薬局を作って欲しいとの要望を受ける形で1986年、「コスモ調剤薬局」として立ち上げられた。現在の代表取締役である林宗一郎社長は2代目。設立から30年以上たった今、社員は200人を超え、埼玉県内に15店舗を構えるまでに成長した。社員の7割以上は女性。林社長は「働き方改革というが『変わった』というよりも、ごく自然な風土として定着しているもの」と説明する。
調剤薬局の業界における採用は、知名度がものをいう。一方で、全国に店舗を展開する知名度の高い大手薬局になると、転勤も多くなる。安定的に採用し続け、長く働き続けてもらうため、地域に密着した同社は「ライフステージの変化があっても、地域で専門性を持った仕事ができる」という点を打ち出すことにした。ここから働き方改革が進められた。
地域密着型ゆえのカバー体制
同社の子育て支援制度は充実している。育児短時間勤務制度は、法律上子どもが3歳に達するまで取得可能であるところを、同社では小学校入学までとしている。また、育児休業の取得率は毎年100%を維持しており、2015年には「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣からくるみん認定も受けた。
子育て世代に優しい職場を実現できている理由は「十分な人員配置」と「店舗間のカバー体制」だ。医薬品医療機器法(薬機法)では、処方箋40枚に対し薬剤師1人を配置しなければならないと定められている。同社では1人30枚という、余裕を持った基準で各店舗に人員を配置している。結果、一人一人の業務負担の軽減に結び付いている。
また、店舗が埼玉県内に集中していることから、各店舗が近接している。人員が足りなくなった店舗には、別の店舗からカバー要員を容易に派遣でき、柔軟な人員配置を可能にしている。「余裕のある働き方は社員のワーク・ライフ・バランスのみならず、仕事のクオリティーを担保できる。それが患者の利益にもつながる」と林社長は説明する。
薬剤師の吉田里美さんは、結婚を機に病院薬剤師を退職。2013年に入社した。転職の際は複数社の面接を受けたというが、「自宅に近く、育児への理解もあった」ため同社への入社を決めた。育児休業を2016年9月~2018年4月、2019年8月~2020年8月末の2回取得し、現在は育児短時間勤務制度を利用している。「子育て中の社員も多く、取得は当たり前のような雰囲気だ」と話す。
カバー体制の充実は子育て支援以外にも好影響を与えている。2020年11月現在、年次有給休暇の年間取得率はほぼ100%を維持し、月の時間外労働時間の平均は2.3時間と、残業はほぼないと言えるだろう。
研修で職種間のコミュニケーションを円滑に
同社では薬剤師だけでなく、看護師、ケアマネジャーなどさまざまな職種の社員が勤務している。薬剤師といえども、一般的な店舗内での調剤業務だけ担えれば十分というわけではない。そのため、ほかの職種に関係する業務の研修にも参加している。つまり、職種を超えた交流が研修を通じて行われるため、社内コミュニケーションが図られるわけだ。林社長は「これもクオリティーの高い仕事の実現につながる。患者から感謝されることで、仕事にやりがいを感じることができる」と、社員のモチベーション向上の効果について強調する。
事務職の石井春日さんは新卒で2011年に入社した。今まで2店舗に配属されたが、「どの店舗でもみなさんがフレンドリーに対応してくれる」と笑顔で話す。単に仲が良いだけではない。「良いことは良い、だめなことはだめとはっきり言い合える。そういった環境がいいところだと思う」と説明する。
2016年10月から2018年4月まで育休を取得し、長男を出産。現在第二子を妊娠中で2度目の育休を取得する予定だ。復帰後は「スキルアップをして活躍したいと意気込んでいる。
仕事でも人生の充実を
新型コロナウイルス感染症は、医療現場に大きな影響を与えている。同社も感染リスクがある中での業務が続くが、林社長は「過度に怖がらずしっかり対応できている」と語る。店舗でのフェイスマスク、ゴーグルの着用はもちろん、職場での感染リスクを少しでも減らすため、施設訪問は直行直帰、オンラインでの打ち合わせを実施するなどの対応を取っている。
警戒の日々は続くが、林社長は今後の事業の方向性について「これからも変わらず地元医療に貢献していきたい」と変わらぬ思いを口にする。一方、「働き方改革の根本は何か」と考え続けている。子育て中の社員が多いこともあり、職場でのワーク・ライフ・バランスに関する意識は高い。「ワーク・ライフ・バランスを実現するというベースの部分はある程度クリアできているのではないか」とし、「人生の中で働く時間の比重は大きい。楽しく仕事をし、趣味だけでなく仕事でも人生を充実させるのが本当の働き方改革ではないか」と投げかける。
仕事とプライベート、本当の意味でバランスを取る。そんな働き方は何か。模索はこれからも続いていく。
CASE STUDY働き方改革のポイント
十分な人員配置
- 効果
- 法律では処方箋40枚につき1人薬剤師を配置しなければならないところ、30枚につき1人の基準で店舗に人員を配置。一人一人の業務負担軽減に結び付いている。
カバー体制の充実
- 効果
- 店舗同士が近くにあることにより、人員が少ない店舗にすぐにカバーに行ける。業務負担軽減との相乗効果により、子育て中の社員が働きやすい職場を実現している。
職種を超えたコミュニケーション
- 効果
- 自分が担当する職務以外の研修を受講することで、他職種の社員同士のコミュニケーションを促進している。
COMPANY DATA企業データ
きらりと光る地域の薬局へ
コスモプラス株式会社
代表取締役:林宗一郎
本社:埼玉県さいたま市
従業員数:289名(薬剤師93名、看護師40名、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士27名、ケアマネジャー18名)(2020年11月現在)
設立:1986年2月
資本金:3,000万円
事業内容:処方箋調剤、在宅医療、訪問介護リハビリステーション
経営者略歴
林宗一郎(はやし・そういちろう) 1974年8月、さいたま市生まれ。東京理科大学卒業。コスモプラスには2006年4月に入社し、専務取締役を経て2012年7月、代表取締役に就任。趣味はクライミング、バックカントリースキー。