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株式会社サニックス
その他サービス業
北海道・東北
50〜99人
File.103
働く人を大切にし、人が輝く職場を目指す 【動画あり】 ーワンストップで総合自動車サービスを提供する「サニックス」の場合ー
2022.01.24
株式会社サニックスの取り組みを動画で見る
(以下のURLのリンクからご覧いただけます)
https://www.youtube.com/watch?v=yipOXvnMSUA
「働く車の快適環境創造業」を企業ドメインに、ワンストップで車の設計・製作から整備、修理までを提供する総合自動車サービス業の株式会社サニックス(山形県山形市)。2010年、サニックスの前身であるニッシン自動車株式会社と同市内でボデー架装などを手がけていた、三栄自動車工業株式会社が経営統合し生まれた。創業は1970年で創立51年目を迎える会社だ。
会社と社員が幸せになる100年企業を目指す
「リーマンショック後の混乱期に赤字会社と赤字会社が統合するという、正直大変な出だしでしたが、明るい未来に可能性を見出し成長するためにスタートしたのがサニックスです」と佐藤啓社長。「社会を幸せにし、会社と社員が幸せになり、100年続く企業を目指す」をモットーに新会社の舵をとってきた。
かつて業界の調査で若い女性が自動車修理工場には、「サスペンスドラマの犯人が働いている所」というマイナスイメージを持っていることに愕然としたと社長は言う。そうした偏見や3Kのイメージを払拭することをまず考えた。「働く人を大切にし、人が輝く職場を目指し、心と身体のベストコンディションがとれる職場環境を整える」を信条に様々な施策を講じてきた。社員が心身ともに健康で長く活躍できることが会社にとっての大切な資産であるという考えもあった。
時間外労働削減と年次有給休暇取得率アップへの取り組み
車体整備作業では手作業でジャッキアップの作業を複数回行う必要があり、寝板で車の下に潜ってする作業も効率が悪く多くの時間が費やされていた。2017年に新工場を設立した際、油圧リフトや昇降式のピットなどの最新設備を導入。作業効率アップと時間削減が図られた。
残業を「事後報告制」から、所属長への「事前申請制」にルールを変更。個人の判断で行われていた残業から、その必要性により会社側の業務命令で行われるものとの共通認識作りをした。勤怠管理システムを導入し、それまで月末の集計でしかわからなかった残業時間をほぼリアルタイムで把握し部門で共有。時間外労働が月一定時間を超える社員には、「要注意メール」を管理者に送り注意喚起を促している。こうして月平均の残業時間は2016年の20時間から2020年には12時間まで削減されたという。
年次有給休暇の計画付与の日数を徐々に増やし、現在は1人当たり平均10日以上を目標としている。また、「誕生日休暇」を新たに制定。誕生日が休日に当たる場合は本人の希望日にし、誕生日以外の日に変更することも可能とした。有給休暇を取得しやすい風土づくりは着々と進んできた。
専門家のアドバイスを受けて労働環境を整備
2018年度に「山形県成長分野参入戦略支援事業」に公募。山形大学国際事業化研究センターが派遣する「シニアインストラクター」が企業を訪問し、経営問診・現場診断を行って改善策を提案するもので、働く現場の状況を見て合理化への施策をアドバイスしてくれる。
専門家が現場作業の流れを見て動線を分析した結果、電動工具のコードレス化、ゴミ箱や工具の位置の改善など、きめ細かな指摘を受け改善してきた。これにより作業ミスが減り、安全な環境ができたことでケガがなくなり、生産性がアップしたことで残業も減ったのだという。当初6ヶ月間の現場診断5回・改善指導5回の計10回の指導料20万円は、支援事業として山形県から直接大学に支払われたが、効果の高さからその後2年に渡って有料でこの制度を利用したという。
「我々だけで見ていたのでは到底気づかない色々な点をご指摘いただいて、大変勉強になりました。外部の意見を聞くことの大切さに気づきました。同業者や行政、大学など、産学官の連携が重要だと学びました」と佐藤社長。
インターンシップ生の受け入れ
そうした連携の大切さを身をもって知った社長は、大学生のインターンシップの受け入れを始める。山形大学のキャリア教育の一環で行われているもので、1年生のうちから地元の中小企業を知ろうというカリキュラムに賛同し、6年ほど続けられている。直接採用にはつながらないプログラムだが、最終的には効果があるという。
3日間のインターンシップの内容は若手の専任スタッフが担当する。「サニックス(中小企業)の魅力を伝えられるようになること」、「大学生に中小企業を知ってもらうこと」を目的に独自のプログラムを作る。それらについて学生に教えることで、社員自らも「仕事理解」・「企業理解」・「自己理解」が深まり、自分自身も学ぶ「共育ち」の場になっているのだという。
健康経営への取り組み
2016年に「やまがた健康企業宣言」をし、健康経営への様々な取り組みを重ねてきた。法律上必ずしも受診が義務づけられていない一部のパート社員も含め、全社員に定期健康診断を実施し、再検査や治療の必要があった場合は医療機関の受診を勧める。精密検査を受診した場合は人事考課でプラス査定となる。保健師さんによる「特定保険指導」も行っている。
毎朝ラジオ体操を実施し運動機会とコミュニケーションの増進を図るほか、希望する社員全員にウェアラブル端末を配布し、歩数や心拍数などの健康管理に役立てている。会社近くのスポーツクラブの法人会員になり、希望者に無料利用券を配るなどもしている。
年に一度全社員が参加する健康セミナーの自社開催、腰痛防止ヨガセミナー、病気の治療と仕事の両立支援セミナーを行うなどして健康リテラシーの向上に努めている。
喫煙者と受動喫煙者の健康を守るため、トップダウンで禁煙を推奨し社屋内での喫煙を禁止した。休憩とタバコがワンセットになっている喫煙社員からは反発もあったが、会社が考えるべきは「社員の健康」と取組を後退させることはなかった。禁煙セミナーなどを重ね、共感を得られる努力を根気よく続けている。近い将来は敷地内完全禁煙を目指す。
新たな取り組み「サニックスアカデミー」
2021年3月にオンラインで開校した6つの学部からなる社内大学「サニックスアカデミー」。技術の伝承やスキルアップを狙ったものだ。オンデマンドの10分程度の動画は外部発注によるものではなく、社員が発信し他の社員にその技術を伝える手づくりの内容だ。コロナ禍でもあり、対面ではなく動画で伝えるメリットもある。
デジタルデータはいつでもどこでも観ることができ、いつまでも残るという利点がある。パソコン内に存在するアカデミーの動画を見ることで履修科目となり、人事につなげていく考えもある。取材時は20本ほどの動画が完成していたが、目標は180本。新入社員がすべて観て、3年で一人前のサニックス人に育つというのが目標だ。アカデミーには新入社員向けの入研修もあり、入社前に会社が活用している社内SNSシステムの社内カレンダー、トークルームの使い方などを習得できるようになっている。
人にものを教えるのはなかなか大変なこと。まして職人は口が重い人の集団でもある。教える人によって教え方は違い、怒られて嫌になる場合もある。時間がかかる上、退職したらまた一から新人の教育を行わなければならない。これらの問題の強力な解決策ともなりうる。
いまのところ若手社員で、動画制作への思いの強い人が教材を作ることが多い。レジュメを作って録画しアカデミーにアップロードするのが製作手順だ。編集技術を駆使したユニークな内容や見せ方、ベテランと若手コンビによる作品などの力作が並ぶ。普段の勤務時には見られない新たな顔が垣間見えることもあり、製作者は水を得た魚のようだともいう。得意分野を発揮できるという新たな経験は、本来の業務にも応用できるだろうと社長は考える。
社内報を社員の家族へ届ける
入社5年目、経営企画部の佐藤ありささんは経理の他、社内報の編集も担当。通常業務の合間に、企画立案・取材・執筆、印刷所入れまでを社員2名で行い、年4回の定期発行を続けているという。それでも残業はほとんどなく、月にせいぜい1〜2時間程度、まったくゼロの月も多いというから能力の高さがうかがえる。
社内報への社員からの直接の反応はないが、各家庭に直接郵送されるため、バックナンバーが全部欲しいなど社員の家族からリクエストがあることも。こんな会社でこんな人たちと働いているというのが見えるのが、家族にとっても安心感になっているのではないかと考えている。社員の家庭のことも考えるところがサニックスらしさかもしれない。
風通しの良さと向上心のある社風
入社4年目、業務部の今野竜平さんはサニックスでは珍しい国立大学卒。「自分をしっかり持ち、会社のここがおかしい、ここを変えなくてはと臆せず言える会社にとってなくてはならない貴重な人材」とは上司の弁。
会社のことは何も知らず大学の先生のすすめで説明会に来たところ、社長自ら駅に迎えにきてくれて「大事にされているかも」と思ったのだという。「面接で会社の人たちに会ってみて、ここなら話を聞いてくれるかもしれないと縁を感じた。「社内のコミュニケーションは良好で、社員同士の仲もとてもいいです。改善すべき点についてただ文句を言うだけでなく、いかに自分の言説に説得力を持たせるかが重要であることをこれまでの3年間で痛感しました」と今野さん。
就職した会社について友人たちと話をする中で、県内でも職場環境や待遇が良い会社に巡り会うことが出来たと感じている。それでもそれに甘んじず常に良くしようとしている社長の気概が感じられるのがとても有り難く感じると言う。自分の話を丁寧に聞いてくれ、自分の意見をキャッチボールしてくれる上司にも影響を受けたという。社員が幸せになる会社を目指すサニックスの社風は随所に現れている。
CASE STUDY働き方改革のポイント
残業削減と年次有給休暇取得率アップの取り組み
- 効果
- 最新設備の導入、退勤管理システムでの残業時間管理、事前申告制の導入、誕生日休暇の制定などにより、残業しない風土づくり・年次有給休暇を取りやすい風土づくりが進んだ。
専門家のアドバイスで労働環境整備
- 効果
- 社内の目だけでは到底気づかない問題点を多く指摘してもらい改善したことで生産性がアップし、残業も軽減した。安全な環境ができたことでケガや作業ミスもなくなった。
健康経営への取り組み
- 効果
- 健康診断の徹底、ラジオ体操やウェアラブル端末の配布、各種セミナーの実施、社屋内禁煙の断行などで、社内の健康リテラシーが向上。社員の健康維持につながっている。
COMPANY DATA企業データ
働く車を通じ会社と社員が幸せになる100年企業を目指す
株式会社サニックス
代表取締役社長:佐藤啓
本社:山形県山形市
従業員数:77名(2021年7月現在)
設立:1970年5月
資本金:3050万円
事業内容:総合自動車サービス業(車検点検整備・鈑金塗装・車体架装・特殊機械の点検整備・車両販売・損害保険代理店)
経営者略歴
佐藤啓(さとう・ひらく) 1966年山形県生まれ。専修大学経営学部卒業後、株式会社大沢商会に入社。1995年ニッシン自動車株式会社に入社。1998年に専務取締役に就任。2010年三栄自動車工業株式会社と経営統合し、株式会社サニックスに社名変更。2012年代表取締役社長に就任。2018年株式会社サニックス仙台設立・代表取締役社長に就任。座右の銘は「中庸は徳の至れるものなり」。