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なかじま建設有限会社

業種

建設業

地域

中部

従業員数

10〜29人

File.152

働き方改革に取組み、社員と家族が安心して働ける企業を作る ―総合仮設足場工事業の働き方改革に挑む「なかじま建設有限会社」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2023.03.24

なかじま建設有限会社

 なかじま建設の創業は1999年。土木、建築、住宅、プラント、公共工事等幅広い工事を担う総合仮設工事業として北陸を中心に活動してきた。特に、『安全に作業が出来る効率の良い足場で快適なスペースの提供』に配慮して、従業員一人一人がそれに取り組み、成長してきた。確かな技術の継承のため、国家資格である一級とび技能士を今までに7名を輩出している。

 従業員とその家族が安心できる会社作りを目指して、働き方改革に取組み、新しい足場製品を取り入れて労働時間を削減し、必要とされる企業を目指して挑戦し続けたいと決意。

業界特有の課題を克服するため、働き方改革の必要性を痛感

 働き方改革に取り組むことになったきっかけについて、中嶋代表取締役は次のように語る。

 「前の会社で働いていた時に業界としての労働環境がよくないと感じた。足場という安心感のある環境作りを提供するはずだが、作業員の作業環境の安全が担保されていないことに違和感があった。繁忙期は休みが取りにくい一方で、閑散期は日給月給で仕事が無ければ休みで収入が安定せず、屋外資材場のため雨や雪の日は大変な思いをした。これらのことを変えたいという思いから起業した。起業後は月給制の採用、天井クレーン設備を備えた倉庫内での屋内作業環境の整備、資格取得への助成制度の導入等社員が働きやすい環境を整備していった。しかし、受注量の増大に従って働き手不足や非効率な業務により、時間外労働や従業員の負担が増大していった。従業員の負担が増大し、仕事の集中力を欠いた結果、ミスや事故、品質の低下に繋がる恐れもあった。そういった状況が離職にもつながることもあり、新たな雇用が必要となり採用・教育コストが発生した。そのため現状の業務から課題を洗い出し、労働環境を整え、従業員の心身の負担を減らすことから優先的に改革を進めようと始めた」。

 業界の抱える構造的な問題を解決するためには、これまでの取り組みに加えて、働き方改革が必要であることを認識し、そのためには改革の全体像をしっかりと整理・把握し、計画的、段階的に進める必要があるという大きな方針を確立して取り組んだことに中嶋代表取締役の強い信念が感じられる。

助成金を活用して効率化と時間外労働削減、快適な職場づくりを実現

 業務の繫閑の差が激しく、繁忙期では時間外労働は多いことが課題だった。また、慢性的な人手不足の現状があった。

 まず、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の義務化、割増賃金率の引上げ等、今後の働き方改革関連法の流れや概要を正しく理解することに努めた。また、従業員の健康面の配慮が必要であること、今後の採用や定着を見越して働きやすい職場としていく必要があることから、働き方改革に取組むことを決めた。

 時間外労働の削減のために業務の効率化を行う必要があると考えられたため、雇用・労働分野の助成金の情報を収集して、生産性の向上につながる設備の導入を検討し、段階的に実施していく方針とした。

 比較的社歴の浅い企業であるため、若くて体力のある従業員が多く、多少無理してでも仕事をしようという風潮があった。そのため、月の時間外労働が80時間を超えることもあった。建設業は令和6年3月で時間外労働の上限規制の猶予措置が終了すること、割増賃金率の引き上げがあること、労働者への健康管理上の配慮が必要なことを踏まえ、従業員のワークライフバランスのため、効率化を進めて段階的に時間外労働を削減することを目標とした。また、作業員は現在1年単位の変形労働時間制であるが、事務員は週休2日制に移行した。

 2021年度には業務改善助成金を活用し、フォークリフトの購入を行った。これにより、手作業で行っていた倉庫内の資材の積み下ろしが効率化され時間外労働の削減につながった。また、給与面のこともあり時間外労働を行いたがる従業員がいたが、基本給の時間単価を引き上げたことで、時間外労働を減らしても賃金総額は同水準を維持できたため、従業員の労働意識が高まったように思われる。

 2022年度には、積算・工程管理・労務を一体的に管理するシステムを導入するため、働き方改革推進支援助成金の申請を行い、交付決定を得た。業務ごとに異なる手法でデータを管理していたためデータの同期が出来ず複雑な業務が多く、業務フローが煩瑣で社員の入れ替わりに対応するのが困難だったが、社内で情報の一元化、共有が可能となり、効率化につながった。

 同業他社では資材置き場を屋外としていることが多いが、なかじま建設では倉庫内で資材を保管して、天井クレーンを設置することにより従業員が快適に働ける職場作りを行った。また2020年度よりクーラー服を導入し夏季の熱中症対策を行った。

屋内倉庫の資材置き場

働きやすい職場です。最近責任感ややりがいを感じることが多くなりました。

 工事部の米田偉織さんに職場について伺った。 

 「中学を卒業後すぐに、友人の紹介で入社しました。社員同士の仲がよく仕事のこともプライベートのことも何でも話せるので、働きやすいです。社長と出会ったのは15歳のときでした。時には怒られることもありますが、いつも愛情深く親身になってくれて、息子のように可愛がってくれます。仕事で失敗したときは、一緒に頭を下げにいってくれますし、どうすればよかったのかを時間をかけて一緒に考えてくれます。最近では、少しずつ大きな現場を任されるようになり、技術的にも精神的にも成長したと思います。責任感ややりがいを感じることも多くなりました。期待されていることを嬉しく思いますし、これからももっと大きな現場を経験し、後輩への指導にも力を注ぎたいと思います」。

米田偉織さん/工事部/2014年4月入社

女性が活躍できる職場づくりに取り組む

 建設業自体がきつい、危険というイメージがある。熟練工の減少により今後の人手不足が考えられるため、未経験者や女性でも働ける会社にしていく必要がある。

 国が策定する女性活躍推進計画にもいち早く取り組み、業界を活性化させようと奮闘してきた。2022年には、北陸初となる女性一級とび技能士が誕生し、女性も建設業界で活躍できることを多くの人に知ってもらえるきっかけになった。これからも、未経験者や女性でも活躍できる社会づくりに取り組んでいきたいと前向きだ。

働き方改革への取り組みの結果、モチベ―ションアップ、生産性向上を実感

 中嶋芳規代表取締役は、「働き方改革を行うことで、モチベーションアップが向上し、生産性のUPにつながっているものと実感しています。業務をより効率よく行える環境が整えば、従業員の負担が軽減でき作業品質も向上し、今まで以上によい商品、サービスの提供が可能となっていきます。安全で効率的な職場環境を整えることでお客様にも従業員にも選ばれる会社となっていくことができると思われます。事務部門で行ったように、若い人が入りやすいように現場でも週休2日制への移行をしていきたいと考えています。また、時間外労働の上限規制に備えて従業員と知恵を出し合いながら時間外労働の更なる削減を進めていきたいと思います。建設業界は男性の社会であるという固定概念に捕らわれず女性活躍にも取組んで人材を育成していきたいと思います。今後もお客様や従業員のため多様な取組を推進します」と語る。

 働き方改革を単に法律改正事項への受け身の対応ということを超えて、業界の置かれた現状及び政策の全般的な動向を大局的にとらえた上で、経営上の重要な課題として包括的に取り組んでいることが印象的である。

支援社会保険労務士:宮下智弘氏(富山県)

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

働き方改革の意義と必要性を理解して改善に取り組む

効果
長時間労働、慢性的人手不足という業界の特性を見据えて働き方改革の全体像を理解した上で取り組むべき方向性を見定めた。時間外労働削減の目標実現のための手段やプロセスを吟味して計画的、段階的に進めた。
取組2

助成金を効果的に活用して働き方改革を実現

効果
助成金情報を積極的に収集した上で効果的に活用して生産性向上や労働条件改善につながる機械設備、システムを導入した。
取組3

未経験者や女性が働きやすい職場づくり

効果
安全で効率的な作業環境のため次世代足場への転換を実行し、未経験者や女性が働きやすい職場を実現した。従業員の資格取得にも力を入れており、2022年には北陸初となる女性の一級とび技能士が誕生した。

COMPANY DATA企業データ

お客様にも従業員にも必要とされる会社を目指して真摯に挑戦を続けていくこと

なかじま建設有限会社

代表取締役:中嶋芳規
所在地:富山県射水市
従業員数:14名(2022年12月現在)
創業:1999年4月
資本金:300万円
事業内容:総合仮設足場工事業
クサビ緊結式足場、枠組み足場、吊足場等を始めとして仮設足場工事全般に対応。安全性・効率性・快適性を考慮して仮設計画を行っている。

経営者略歴

中嶋芳規(なかじま・よしき)
略歴:1976年2月富山県生まれ。地元の高校を卒業後、地元の鳶会社に入社。その後建設業界の労働環境を自分で変えたいという思いから23歳で独立。趣味は30年以上続けている柔道で現在5段。地元の中学校や高校での指導や大会審判を努めて地域貢献に取組む。座右の銘は自他共栄。