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菱木運送株式会社

業種

運輸業,郵便業

地域

関東

従業員数

30〜49人

File.157

システムを活用し改善基準告示遵守を図ることで、安全な輸送を実現 【動画あり】 ―会社とドライバーをコンプライアンス違反から守り、安心・安全な物流を目指す「菱木運送株式会社」の場合―

時間外労働の削減

2023.03.24

菱木運送株式会社

菱木運送株式会社の取り組みを動画で見る 
(以下のURLのリンクからご覧いただけます)
https://www.youtube.com/watch?v=SO9htmWt2Dk

 

 菱木運送株式会社は、1971年に先代社長が千葉県匝瑳市で操業、主に大手製粉会社グループの配送を中心に手掛けて成長してきた。長距離輸送が全体の約40%、関東県内の輸送が約60%の割合となっている。近年、運送業界の経営環境は厳しく、改善基準告示遵守と労働時間短縮が大きな課題となっている。

 労働基準法に加え、改善基準告示によりドライバーの労働時間は、厳しく規定されている。改善基準告示は、ルールを理解することも、遵守することも、容易なことではない。

 そこで、トラックドライバーの労働時間を管理し、改善基準告示の解釈や守るために必要な情報は何か、情報の使い方に問題がないか等を、社会保険労務士越川祥伸氏のサポートのもとで検討を行っている。そして、会社とドライバーをコンプライアンス違反から守るため、常に確認・改善を行っている。

改善基準告示遵守で、事故が大幅に減少

 「人が時間を守れるのは時計があるから、同じように、ドライバーが時計で時間を確認することで改善基準告示を守る。時計で確認ができるような仕組みを作ろう」という発想のもと、改善基準告示を遵守するために必要なシステム『乗務員時計』を運用している。

 「改善基準告示の100%遵守を求めていくという姿勢が事故を回避する。90%守れていても10%は守れていないことになる。その10%守れていないことが事故の原因となる。改善基準告示は集中して運転できる限度を定めたもので、遵守することで集中して運転することができる環境が整い、事故が大幅に減少した」と菱木博一代表取締役社長は語る。



左/菱木博一(ひしき・ひろかず)代表取締役社長
右/特許の一例。他にも多数の特許を取得している。

システムにより会社ドライバーの法令遵守をサポート

 改善基準告示の内容は複雑で、遵守の為の指導は、運行管理者、ドライバー双方のストレスとなり持続可能とは言えない。そこで、スマートフォンをもとに構築したシステム(乗務員時計)により、改善基準告示を遵守するために必要な時間情報を自動的に算出し、ドライバーと運行管理者にリアルタイムに提供。


乗務員時計システム。

 「指導」ではなく、遵守を「サポート」するシステムで、スマホアプリにより、時計で時間を確認するようにシステムが知らせる時間情報をもとに運行できる。
 そのため、ドライバーにとって運転に集中できる環境となり事故発生率も大幅に減少し、自動車保険の割引率はMAX75%で継続5年目を迎えている。

左)システムについて「スマホで簡単にできるため、使いやすく素晴らしい」と語る、ドライバーの花島清二さん。
右)会社について「とても働きやすく、環境が整っている」と語る、ドライバーの三浦進一さん。

必要な時間情報を自動的に算出し、リアルタイムに伝える乗務員時計システム

 乗務員時計の時間情報は「カウントダウン方式」による残余時間表示を採用。たとえドライバーが改善基準告示を理解していなくても、“自己管理”により改善基準告示を遵守できるのも大きなポイントの一つである。

 一般的な運行管理では、運行終了後でなければ拘束時間や休憩・休息運転時間がわからない。しかし、このシステムでは休憩時間残余や運転時間残余が運行中でも表示され、警告も出る。従って、ドライバーにとって便利なだけでなく、管理者にとっても非常に効率的な管理が可能となるシステムである。

スマホアプリの画面表示。

待機時間を減らす努力により労働時間(時間外労働時間)を削減

 自社の自助努力だけではどうしても解決できないのが「待機時間」である。

 「待機時間」は荷主にとってもプラスではない。従来の、待機時間が減少しない状態を前提として24年問題に向き合うと、運行を減らさざるを得なくなる。すなわち、1日2運行できていたものが1運行のみとなる。売上げを確保するためには、1運行当たりの単価を引き上げざるを得ない。単価の引上げを避けることができたら、荷主にとってもプラスとなる。



荷物積込み作業の様子。

 単に荷主に「待機時間」削減をお願いするだけでなく、リアルな数字を示した方が受け入れてもらいやすくなるのではないかとの発想から、システム(乗務員時計)により、データから待機の傾向等タイムリーな情報をだす。それを提示して交渉した方が、荷主も対応しやすくなる。


乗務員時計システムの待機時間入力画面。


待機時間分析。

 待機ゼロは無理としても、仮に1時間の「待機時間」削減を図ることが出来れば、22日出勤換算で月間22時間の労働時間削減が可能となる。
 また、「待機時間」削減は、労働時間削減が図られるだけではなく、1日の運行を減らす必要がなくなり、売り上げ減を防止することにも繋がる。今後も、「待機時間」を1時間未満に削減することを目指していく方針である。

左から、菱木社長、ドライバーのお二人、サポートを行っている 越川祥伸 社会保険労務士

支援社会保険労務士:越川祥伸氏(東京都)

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

法令を遵守することにより事故削減

効果
改善基準告示が遵守できることになったことにより事故発生率が減少し自動車保険の割引率がMaxの75%引きとなっており、この割引率は継続5年目を迎えている
取組2

システム開発により法令遵守をサポート

効果
「乗務員時計」システムを構築。スマホアプリで時間情報を確認できるシステムで、「指導」ではなく、「サポート」を行っている
取組3

待機時間削減により労働時間削減を実現

効果
乗務員時計により、自助努力で解決できない「待機時間」を削減するため、荷主が実態を受け入れてやすいように、リアルな数字を示すことにより、待機時間1時間未満を目指している

COMPANY DATA企業データ

社会的責任(法令遵守)に応えながら、お客様の様々なニーズに対応していける安心・安全な物流を目指しています!

菱木運送株式会社

代表取締役社長:菱木博一
所在地:千葉県八街市
従業員数:41名(2022年12月現在)
設立:1971年1月
資本金:2,000万円
事業内容:
1,一般貨物自動車運送業
2,貨物運送取扱業
3,倉庫業
4,上記に付帯関連する一切の業務

経営者略歴

菱木博一( ひしき・ひろかず)
略歴:2000年4月に代表取締役社長に就任。
10年以上の歳月により開発したシステム「乗務員時計」を活用し、物流会社の長年の問題である労働時間に関して、法令を遵守できる環境を整備し、安心・安全な輸送を継続することを尊重する経営を行っている。