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株式会社TSSソフトウェア

業種

情報通信業

地域

中国・四国

従業員数

50〜99人

File.190

多様な働き方で生産性と従業員満足度の向上を図る ―静かな意志と確かな技術でお客様の信頼を得る「株式会社TSSソフトウェア」の場合―

過去に支援を受け更なるチャレンジをしたステップアップ事例

2025.03.25

株式会社TSSソフトウェア

 1989年に創立し、2024年で35周年を迎えた「株式会社TSSソフトウェア」は、時代の変革、社会のトレンド、そして第5次産業革命へ向けた大きなうねりの中でこだわりの主張よりも静かな意志と確かな技術で、お客様に信頼され選ばれるパートナーになることを目指してきた。働き方改革においては、テレワーク活用による効率的な勤務体制を構築し、コロナ禍以降は従業員がより柔軟に働ける環境を整えた。今後も従業員の満足度と生産性の向上、健康管理の推進を目指し、働き方改革を推進する。

※この事例は、過去に働き方改革推進支援センターの支援を受けて働き方改革に取り組んだ企業が、今回更なる働き方改革、働きやすい職場づくりに挑戦したその過程と成果を取りまとめたものである。

これまでの取り組みとその成果

【取り組み内容】

 当社の中期ビジョンに掲げる基本理念の一つ『SmartWork(生産性や従業員満足度の向上と多様な働き方)』を進めるため、従業員のエンゲージメント向上に取り組んだ。コロナ禍以降、テレワークと出社を併用した勤務体制が通常となり、出社率が低下したため、オフィスレイアウトを変更してフリーアドレス席を導入した。

 また、従業員の提案で「ドレスコードフリー」制度を導入し、TPOに合わせた服装選択を可能にした。さらに、業務中にクリエイティブな発想を高めるための「クリエイティブタイム」を1日最大30分設けて、自己啓発や軽いストレッチに充てることを可能とするとともに、時間単位での年次有給休暇の取得も制度化した。

【成果】

 従業員からは、テレワークの導入により通勤時間が短縮され、家族との時間や趣味、自己啓発に充てることができるようになったとの声が多く寄せられた。オフィスレイアウトの変更とフリーアドレス席の導入により、出社時でも快適に仕事を行える環境が整い、仕事の効率が向上した。また、「ドレスコードフリー」制度により、TPOに合わせた服装が選べるようになり、より自分らしいスタイルで業務に取り組めるようになった。

 さらに、クリエイティブタイムの導入により、業務中に軽いストレッチや自己啓発を行うことができ、仕事のモチベーションや創造性も高まり、全体的に業務の効率化が進んだと実感している。

新たな課題

 IT人材の確保と定着率向上を目標として以下3点を課題とした。

1.人材確保のための初任給見直し

 人材確保のため、初任給改定を検討していたが、既存社員との調整をどのように行うか、思案していた。

2.技術職の処遇

 技術職としてのキャリアを向上させたい社員に対する技術職専用のキャリアパスが構築出来ていないため、離職につながる恐れがあった。そのため、技術職としての上級職位のキャリアパスを制度化することで定着率向上を図る。

時間外労働削減及び年次有給休暇の取得促進

 全社平均では、時間外労働は月12時間程度、年次有給休暇の取得率は7割超である。平均的な数値は良いが、従業員個々にはばらつきがあるため、勤務体制を見直しする必要があった。

課題感を解決し、目標を達成するためのプロセス

【具体的なアクションステップ、実施方法、プロセス等】

▶ステップ1[Plan(計画)]

〇 新卒採用のために、初任給改定の必要性と同業他社の状況を踏まえた改定額を検討する。

〇 技術職については、一定の職位に留まる社員の処遇について対応する必要があったため、キャリアパスや職務等の評価方法に基づいた改善策を検討し、技術職の定着率の向上を図る。

〇 時間外労働削減のための対策と年次有給休暇の取得状況を確認する。

以上の取組を実施することで、働きがいのある職場環境を目指すこととする。

▶ステップ2[Do(実行)]

〇 初任給改定額の検討を行い、その影響を受ける入社10年目までの社員の賃金額を検証した。

〇 技術職に関しては、現状の職位と処遇を整理し、キャリアパス案を策定するとともに、処遇改善の方針を検討した。

〇 時間外労働の発生原因及び年次有給休暇の取得状況を個人別に把握し、必要な対応策を検討した。

▶ステップ3[Check(評価)

〇 初任給改定については、既存社員の不利益にならないよう、会社の労務費負担を検討し、改定案を作成したが、昇給額を一定とする方法が運用しやすいという意見があった。

〇 技術職のキャリアパス制度について、技術職に親しまれ、信頼性を確保する方法を検討した。

〇 時間外労働は職務内容、勤務場所を考慮し、数値目標とすることは妥当ではないという結論に至った。また、年次有給休暇が年5日の取得にとどまっている社員がおり、取得促進のためにはどのようにしたらよいか検討した。

▶ステップ4[Action(対策・改善)

〇 初任給改定について、運用しやすいように昇給額を一定とする案を作成。

〇 技術職のキャリアパス改定案については、社内協議を今なお継続しているところである。

〇 時間外労働削減に向けて勤務間インターバル制度導入を検討しているところである。また、年次有給休暇については、取得目標値を決定した。これらの案を基に、安心して働ける職場、働きがいのある職場として、労働環境の改善を図る。

人材確保のための初任給見直し

 同業他社の初任給を調査。新卒初任給の金額を検討。初任給を引き上げる場合、既存社員の給与とのバランスはモチベーション維持の観点から重要である。社員の標準的な昇給率等を勘案し、将来的にどの程度の差が出るかを試算。最初の役職に昇格するまでの給与表の等級について不利とならないように検討し、対象となる社員からヒアリングを行なった。

技術職のキャリアパス構築

 キャリアパス構築のモデルとなる部門を選定し、評価方法、等級構築、処遇案を作成した。

①評価方法の選定

 技術職の職務内容の評価方法について、職務・職能についての検討を行い、職能を基準とすることとした。技術職はシステム開発の案件により職務内容が異なり、個人の職務遂行能力により各案件に任命され、案件は納期・予算・内容がそれぞれその都度異なるため、職務を基準とするよりも職能を基準とした方が運用しやすいという結論に達した。

②等級構築と処遇案

 技術職の管理職ルートと総合職ルートとの役割の違いを明確化するため、役職名を改定する。等級 については、職務遂行能力と権限および責任の程度により定義(厚生労働省職務分析実施マニュアル)した。処遇については現行の管理職手当を継続する案とした。

時間外労働削減と年次有給休暇の取得促進

1.時間外労働削減

 全社的には時間外労働時間は月12時間程度と低い水準にある。納期対応やシステム保守部門での常駐など、時間外労働時間の削減について数値目標にすることは難しい事情もあることから、健康確保措置として勤務間インターバル制度の導入を検討することとした。育成専門家より睡眠時間確保・労災発生率・死亡率の因果関係の説明を受け、「社員の健康確保として有用な制度である」、「勤務間インターバル制度を遵守することによる健康確保の効果を感じる」との期待から、この制度の導入を進める予定である。

2.年次有給休暇の取得促進

 2023年に付与した年次有給休暇については、年5日の取得義務は遵守していることはもちろん、7割超の割合で取得出来ている状況であるが、取得率が5割に満たない社員が数名おり(育児休業中の社員を除く。)、その職種は管理職、営業職及び保守職であった。管理職については率先して取得するように会社から周知し、営業職及び保守職については、上司から取得を促進する。

 会社全体の年次有給休暇取得目標値を当年度付与された日数の50%とすることになった。年次有給休暇は4月1日で一斉付与を行っており、年5日間の年次有給休暇取得を達成するため、上期終了時点の9月末で取得率を集計し、5日に満たない日数については、個人別に時季を指定していたが、今後は上期終了時点で目標値を達成するための確認を行う。

今後の展望

 初任給の見直しと既存社員への影響を確認したことで、給与体系の透明性が高まり、従業員の納得感と満足度が向上することを見込んでおります。

 また、技術職のキャリアパス制度構築によりキャリアパスと処遇との関係が整理され、キャリア成長に対する明確な道筋を示すことができたため、従業員も安心して働くことが可能となります。

 さらに、時間外労働や年次有給休暇取得における個人間のばらつきを解消していきます。

 これらの取組により、従業員と会社のエンゲージメントが強化され、生産性の向上とモチベーションアップにつながるものと期待しています。 

代表取締役社長 稲垣宏氏

VOICE 従業員の声 社員一人一人を大切にする姿勢を感じます

 2022年入社 経営管理部情報システム管理の宮地亜門さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。

 「会社を良くしていこうという意識が感じられ、実際に目に見える形で変化を感じることができます。ドレスコードフリー制度や年次有給休暇の取りやすさなど、働きやすい環境が整備されています。

 また、自分の意見や提案がしやすい雰囲気があり、風通しが良いと感じています。初任給の見直しにおいては、既存社員が不利にならないよう配慮され、社員一人一人を大切にする会社の姿勢を感じました。若手社員として、今後のキャリアパスにより、将来に対する方向性を考えることが出来ます。」

取り組みについて語る宮地亜門さん(経営管理部 情報システム管理 2022年入社)

 株式会社TSSソフトウェアの取り組みを支援した社会保険労務士の久保春氏は次のように語っている。

 「初任給の改定については、既存社員の給与とのバランスに配慮しました。技術職のキャリアパス構築により、技術職としての将来のキャリアの見通しを付けることが可能となります。時間外労働について、職務内容、勤務形態によっては一律な数値目標を定めることが難しい状況を踏まえ、健康を確保できるよう、勤務間インターバル制度を検討しました。年次有給休暇について、取得の目標値を設定することになりました。

 安心して働ける、働きがいのある職場環境づくりにより、社員満足度と定着率の向上が期待できそうです。」

支援を担当した社会保険労務士の久保春惠氏

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

初任給改定と影響を受ける社員の賃金水準の検討

効果
新卒初任給引き上げ及び10年目までの社員との公平性を保ちつつ、企業の労務費負担も考慮し賃金を検討。
取組2

技術職キャリアパスで働きがいのある職場づくり

効果
技術職の評価方法、等級、処遇案を検討。技術職のモチベーションが向上し、働きがいのある職場でさらに定着率向上を図る。
取組3

時間外労働削減及び年次有給休暇取得促進

効果
時間外労働削減対策として勤務間インターバルを検討し、年次有給休暇取得目標を定めることで、働きやすい職場環境の実現を図る。

COMPANY DATA企業データ

関心・感動・感謝

株式会社TSSソフトウェア

代表者:代表取締役社長 稲垣  宏
所在地:広島県広島市
従業員数:80名(2024年12月現在)
設立:1989年8月
事業内容:・受託開発/システム開発、ソフトウェア開発、ホームページ制作、CG制作、VP制作、アプリ制作  
・パッケージ/パッケージソフトウエア開発・販売 ・サービス/人材サービス:(労働派遣事業)労働大臣認可派34-140028  ・広告代理店業務、販売代理店業務
・その他/機器販売、ネットワーク構築、OAサポート、WEB広告(インターネット広告)