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有限会社奥州秋保温泉蘭亭
宿泊業,飲食サービス業
北海道・東北
50〜99人
File.201
評価制度の見直し、マルチタスク化により生産性向上、休暇取得の促進を実現 ー職場環境を整えひとにやさしいハートフルな宿を実現する「有限会社奥州秋保温泉蘭亭」の場合ー
2026.03.27
有限会社奥州秋保温泉蘭亭は、1995年に旅館としてオープンして、どこよりも早く「ファミリー」に優しい宿として、「ひとにやさしいハートフルな宿」、老若男女問わず満足して頂ける様、県内唯一の畳風呂、ウェルカムベビーの宿認定などサービスの幅を広げた。2021年からは宮城県内初のドーム型グランピングをオープンし、アウトドアサウナ、車中泊スペース、プールサイドイルミネーション、愛犬と泊まれる宿などで地域に新たな客層を呼び込み観光促進を図っている。働き方改革においては、助成金を活用してIT化や設備投資を実施して、業務効率化・時間外労働の削減を進めた。さらに、職務分析・職務評価を導入し、正社員とパート社員間の不合理な待遇差の是正に取り組んだ。
※この事例は、過去に働き方改革推進支援センターの支援を受けて働き方改革に取り組んだ企業が、今回更なる働き方改革、働きやすい職場づくりに挑戦したその過程と成果を取りまとめたものである。
これまでの取り組みとその成果
[取り組み内容]
有限会社奥州秋保温泉蘭亭では、長時間労働や人材不足への対応として、助成金を活用し、IT化や設備投資を実施し、業務効率化及び時間外労働の削減を進めた。また、職務分析・職務評価を導入し、等級・賃金制度を整備して正社員・パート間の不合理な待遇差を是正。
さらに、従業員の多数を占めていたパートから正社員への切り替えを目指し、新卒・外国人採用を推進するとともに、柔軟な人員配置を可能にしていくために、マルチタスク人材の育成を実施することで生産性向上と定着率改善の実現を目指している。
[成 果]
職務分析・職務評価を通じてパートと正社員の処遇差を可視化し、是正する必要がある処遇差を是正した新たな等級制度・賃金制度を整備した。さらに、職種間の連携・助け合いをしやすくするため、部署を横断したマルチタスク化を推進し、マルチタスク人材を増やすことで、柔軟な人員配置を可能にした。
その結果、全従業員の目的意識や問題解決意識が芽生え始め、提案力が向上、従業員のモチベーションやコミュニケーションが向上するとともに、人材定着にもつながり、繁忙期の売上高10%増と総時間外労働5%削減を実現した。これにより、生産性向上と働きやすい環境整備を達成した。
新たな課題
現状で一番の課題は、離職率をいかにして下げるかということである。業界平均の離職率は、30%と高いので、離職率が下げられれば、人手不足対策も含め、会社にとって大きなメリットが生まれる。
高齢パート従業員の退職により世代交代が進み、新卒や外国人労働者の採用が増加したが、その一方で、従来の評価制度や教育制度とのミスマッチが生じていることの改善を図る必要がある。特に外国人従業員に対しては、定住を視野に入れた独自の評価・教育が必要であり、若手従業員の伸びしろを活かした生産性向上と職場定着施策の強化が必要である。
課題感を解決し、目標を達成するためのプロセス

具体的なアクションステップ、実施方法、プロセス等
▶ステップ1[Plan(計画)]
課題を抽出した結果、離職率の高止まり、過去の評価制度・教育制度とのミスマッチが顕在化した。
これを踏まえ、従業員の処遇改善、時間外労働削減、若手・外国人の採用と定着率向上を中期目標、年次有給休暇取得率促進、評価制度やスキルマップの見直し、オフィス改革、人時生産性の向上、週休3日制導入を短期目標とした。
▶ステップ2[Do(実行)]
外国人従業員の教育・評価方法についてと、週休3日制導入の可能性を検討した。
従業員面談で、日本人労働者は残業が少ないワークライフバランス重視、外国人労働者は残業をして家族に多く送金したいと相反するニーズを把握した。それに対し、有給休暇の取得促進と働き方の希望に沿った人員配置の方向性を提示するとともに、事務室や女子トイレ、社員寮の改装工事を進め、ワークライフバランスと業務効率化のための職場環境改善も同時に実施した。
▶ステップ3[Check(評価)]
年次有給休暇取得率が83.8%と業界平均(51%)を大きく上回った。人時生産性に関しては、3年前の同月比で最大68%と上昇し、マルチタスク化の効果が現れている。
また、日本人労働者と外国人労働者の働き方の希望の違いを確認し、現状の対応が従業員の希望に沿っている一方で、入社3年以内離職率の低下といった持続可能な働き方改革にはさらなる改善が必要と判断した。また、事務室改装による職場環境改善が生産性向上に寄与しているかを今後検証することにした。
▶ステップ4[Action(対策・改善)]
週休3日制についてはオフシーズンに試験導入を行い検証した上で導入を検討する、シフト管理にはAIシステムを試験的に導入する計画である。とりわけ時間外労働が多い調理部門(調理長含む)の有給休暇取得を促進させ、週休3日制の導入や分業制を導入することで健康面への配慮も強化する。
また、賃上げ等の処遇改善を進め従業員の定着を目指すとともに、健康経営優良法人認定や県・市の事業を活用し、国内外に自社をアピールし、採用競争力向上・離職率低下と職場環境改善を推進する。
人時生産性向上を目指した業務改善
人時生産性向上(※)を重要課題として位置付け、複数の施策を展開した。まず、新卒や外国人の採用に伴い、従来の評価制度・スキルマップとのミスマッチが生じていることを是正するために、等級制度・賃金制度の見直しを進め、従業員のモチベーション向上を図った。
また、従業員のマルチタスク化を推進したことにより、人員配置の見直しや業務の効率化を進めた。そうした取り組みによる効果で、繁忙期でもパートや臨時のアルバイトに頼らない体制が構築でき、人件費が削減できたこともあり、人時生産性が、3年前と比較して最大の月で68%増加した。今後は、事務室の改装によるバックヤード業務の更なる効率化や、新規事業の実施による付加価値上昇で生産性の向上を実現していく。
(※)人時生産性とは、従業員1人が1時間当たりに生み出す粗利高を表す指標。売上高から売上原価を引いた粗利高を使用して算出することで、1人当たりの1時間の純粋な付加価値を表すことが可能。
外国人労働者の戦力化と定着支援
大勢いた高齢パート従業員が退職したことに対し、将来を見据え、日本人の新卒採用や特定技能外国人を積極的に採用することで、世代交代を図った。外国人の採用にあたっては、海外の求人イベントに参加したり、経産省の国際化促進インターンシップ事業を利用したりして、採用につなげている。今後も外国人の採用を増やす計画である。それに合わせ、外国人従業員のニーズをふまえた評価制度・教育制度の見直しを図るとともに、社員寮をリフォームして個室を提供するなど、外国人労働者が安心して働き続けられる環境づくりを行っている。さらに、将来的に日本への定住や家族を日本に呼ぶ等の外国人労働者のライフプランに寄り添った支援を行うことで離職率の低下を図り、同業他社との差別化を図っている。
ワークライフバランス推進と週休3日制導入の検討
業務上、1日の拘束時間が長くなり、残業も多くなりがちである調理部門について、従業員のワークライフバランスを重視し、週休3日制導入の検討を続けている。
今後、オフシーズンに週休3日制導入を試験的に導入し、従業員の反応を踏まえて正式導入を判断する予定である。年次有給休暇取得率は、従業員への休暇取得促進周知の効果があり、83.8%に向上した。また、オフィスを改装し、子供やペットが使えるスペースを設けるなどして、子供やペットとの同伴出勤を可能にするなどし、ES(従業員満足度)を高める取り組みを実現させた。

今後の展望
代表取締役の菅原幸子氏は、今回の取り組みを踏まえて、今後の展望について次のように語っている。
「現在スタッフの世代交代を進めており、平均年齢は30歳、スタッフの大半が20代です。そのため以前の高齢者のスタッフに比べ、マルチタスクが効率化し、またDX化が進みました。
今回の取り組みではオフィス改革を進め、事務所での集中管理が進化したことで、さらなる効率化が見込まれます。
今後は週休3日制の検証をしながら、今後のスタッフの働き方のニーズを把握し、新しい働き方について検討を重ねて、今後の新卒・中途の採用にアピールしていきたいです。」

代表取締役の菅原幸子氏
オフィスの環境が整備され、マルチタスクの推進と効率化につながりました
2017年入社の総支配人の松本敦さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。
「さらにペット同伴の出勤や小さいお子様を連れての出勤も可能にすることで、仕事と生活を両立できる環境の整備も進めております。
有限会社奥州秋保温泉蘭亭では、オフィス効率化やコミュニケーション活性化を目標に、以前までのデスクが固定された事務所からフリーアドレスへ整備を行いました。IT環境ではデュアルモニターを設置し、作業効率やマルチタスクを大幅に向上させる環境も作りました。これにより部署間の垣根を取り除き、交流する場を作ることで、多様な働き方に対応しやすくなり、ペーパーレス化やデジタル化を進め、持ち運ぶ荷物を減らし身軽に移動することができるようになりました。
さらにペット同伴の出勤や小さいお子様を連れての出勤も可能にすることで、仕事と生活を両立できる環境の整備も進めております。」

取り組みについて語る総支配人の松本敦氏(2017年入社)
有限会社奥州秋保温泉蘭亭の取り組みを支援した社会保険労務士の佐々木章良氏は次のように語っている。
「蘭亭様はとにかくスピードが早いです。次から次へ新しいことにチャレンジし、訪問する度に新しい発見や課題が出てきます。今回の支援では職場環境整備だけでなく『稼ぐ力』を重視しました。改善プランは多岐に渡りキャパオーバーのリスクはありましたが、個々の施策のベクトルが『稼ぐ力』に集まるイメージを軸にしてなんとか支援ができました。
蘭亭様はこれからも圧倒的なスピードで新しい事にチャレンジするでしょう。その際はまたお力になれるように私も成長していきたいです。」

取り組みを支援した社会保険労務士の佐々木章良氏
CASE STUDY働き方改革のポイント
ワークライフバランスと 生産性向上
- 効果
- フリーデスクやIT化に対応したオフィス改装で生産性向上と、子供やペットと同伴出勤可能なオフィス環境を整備した。
人時生産性を向上させ 「稼ぐ力」を強化
- 効果
- 新卒採用・外国人雇用で世代交代によるマルチタスク化で、3年前のとの比較で人時生産性が大きく向上した。
有給休暇の取得促進
- 効果
- 従業員へ有給休暇の取得促進した結果、有給休暇取得率が業界平均51%に対して83.8%と大きく上回った。
COMPANY DATA企業データ
ひとにやさしいハートフルな宿
有限会社奥州秋保温泉蘭亭
代表者:代表取締役 菅原幸子
所在地:宮城県仙台市
従業員数:59 名※2025年12月現在
設立:1964年2月
事業内容:温泉旅館「蘭亭」を運営している。他にもグランピング施設や愛犬と泊まれる宿を手がけている。地域活性化にも取り組み、「ひとに優しいハートフルな宿」として、お客様に寄り添ったおもてなしを目指している。
