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社会福祉法人 青森県すこやか福祉事業団

業種

医療・福祉

地域

北海道・東北

従業員数

301人〜

File.45

人手不足の解消は制度改革から ―職員の心身をケアする、青森県すこやか福祉事業団の場合―

多様な休暇制度

2020.12.16

社会福祉法人 青森県すこやか福祉事業団

就労サポートセンターでのクリスマスイベント。働きやすい職場環境は、職員に心の余裕と笑顔を生み出している

 青森県内で知的障害者施設や老人ホームなど7カ所の福祉施設の運営と、県からの福祉事業を受託する社会福祉法人「青森県すこやか福祉事業団」。2007年度に県の公社から独立民営化して13年になる。施設を利用する約400名の高齢者や障害者の生活と就労を、職員約330名が支えている。

 事業団のスローガンは「風通しの良い職場づくり」。込められた思いを須藤和彦事務局長は、「福祉の職場の離職理由は給与面よりも、実は人間関係のほうが多いのです。上司、部下、同僚の間で色んなことを自然に話せる。何かあったら報告し、きちんと指示をする。そういう職場の空気をつくることで離職を防ぐよう努めてきました」と話す。気持ちが通じ合う関係と働きやすい制度で、福祉の現場の課題とされる人手不足を解消してきた。

キャリア形成を専門家に相談

 2018年度に導入した「セルフ・キャリアドック」もその対策の一つ。国家資格を持つ外部のキャリアコンサルタントとの年1回の個別面談で、この先どう働き、キャリアを積んでいきたいのか、助言を得ながら自らの考えを整理する。離職理由で目立った「キャリアアップの道筋が見えない」という声をもとに採り入れた。同僚らには話しにくい仕事上の悩みも相談でき、問題の解決を支援する。

 コンサルタントには守秘義務があり、個々の聞き取り内容は法人側に伝えず、職員全体のキャリア意識の傾向や課題などが報告される。ハラスメントなど組織としての対応が必要な内容は、個人が特定されないよう配慮のうえ、本人の同意を得て伝えられる。

 面談は、採用1、2年目と5~25年目までの5年刻みの年次の職員、育児休業からの復職者や昇任昇格者などが対象だ。「働き始めて間もない人や労務管理などでストレスが増す管理職も離職しやすいためです。3年間同じコンサルタントが担当し、信頼関係もできてきました」と須藤事務局長。離職防止に加え、職員への手厚い対応が、新たな人材確保にもつながっているという。

事務局長になって3年。長く働いてもらえる環境をつくろうと社内制度を充実させてきた須藤和彦さん

 セルフ・キャリアドックでの職員からの声を受けて2020年4月、「職場の保健室」制度を始めた。人間関係やハラスメントなどの相談に応じる社内窓口だ。プライバシーを守りながら対面や電話、メールで受けている。併せて、相談者が職場に居づらくなることがないように「公益通報者保護」の条文も就業規則に盛り込んだ。

14種類ある特別休暇

 職員の定着やワーク・ライフ・バランスを図る目的で就業規則に定めた特別休暇は、14種類もあり、休暇制度が充実している。

 「採用当初休暇」は、採用6か月まで毎月1日休暇を付与する独自の制度だ。「仕事にまだ慣れないときに体調を崩したりする方もいるので」(須藤事務局長)と、年次有給休暇を補う形で設けた。
 そのほかにも、個人や家庭生活の充実のため年4日取得できる「リフレッシュ休暇」、妻の出産時に3日まで休める「配偶者出産休暇」、「ボランティア休暇」も理事長が認めれば、年7日まで取れる。

 子の看護休暇は、育児・介護休業法では未就学児まで適用されるところを、小学生まで対象範囲を広げた。有給で年5日、1時間、半日、1日単位で取れる。非正規雇用の職員にも適用され、2019年度は31名が計94日取得、そのうち男性も6名が計12.5日利用した。

 年休も1時間、半日、1日単位で取れる等、取得向上に向けた取組の整備に努めている。

家では洗濯と子どものお風呂を担当。ワーク・ライフ・バランスが取れて充実していると話す牧野祥諒さん

 県発達障害者支援センター「ステップ」で相談業務などにあたる副主任支援員の牧野祥諒さんは、教員の妻との共働き。長男の通院などで子の看護休暇を利用する。牧野さんは、「保育所に預ける前やお昼寝時間の後など、病院の予約に合わせて時間単位で取れるので、すごく使いやすい制度です」と話す。

 働き始めて10年。社内制度は改善されてきたという。6~8月の間に3日取得できた「夏季休暇」の制度がなくなり、1日足して年4日、いつでも休める「リフレッシュ休暇」に変わった。「早番や夜勤などがある施設の変則勤務だと、夏の3か月間に休みが取りづらく、職員同士も気を使っていました。今は気兼ねなく取れます」と、柔軟さが増した制度を歓迎する。

直近3年で18名を正職員化

 1年更新の準職員の正規職員への登用にも積極的だ。過去3年でも、2017年度に6名、2018年度に7名、2019年度に5名を、仕事観などを問う小論文と面接で選考し、正職員に登用した。

 法人本部事務局総務課に勤務する斎藤麻美さんは、2018年4月に準職員で採用され、翌年正職員になった。職場の同僚に薦められて選考を受けたが、「40歳を過ぎて、子どもも3歳と小さかったので、正職員で働けるなんて考えてもいませんでした」と話す。

 県庁所在地の青森市では、公的機関での3年更新の求人は多く、斎藤さんも臨時職をつないでいく働き方を考えていた。正職員として約2年。仕事への向き合い方は変わったと話す。「担当する業務で改善できることはないか、法人をさらに良くするにはどうしたらいいかと考えて、仕事をするようになりました」。

正職員になって約2年。「すごく良い環境で働けています」と笑顔で語る斎藤麻美さん

 正職員に応募できる60歳以下の準職員数は2019年度で77名。そのうち応募者は12名だった。この数字を「少ない」と須藤事務局長はみる。要因の一つは転勤だという。

 正職員は約5年毎に異動があり、青森市から車で40分ほどかかる平内町の施設で働くこともあるからだ。「保育所の送り迎えができない、家に車が1台しかないので家族の通勤に困る、そうした事情から二の足を踏む人が多い」。

 そこで、市町村をまたいだ転勤のない「地域職」制度を、2021年度に設ける方向で検討している。「働いてもらうためには、組織が変わらないといけない。そうでなければ人は来ないし、定着もしません」(須藤事務局長)

 5年ほど前から、クラブ活動にも力を入れる。ゴルフ、フットサル、音楽、茶道、今年はアニマルセラピークラブが発足した。2カ所以上の事業所の職員の参加を条件に、年5万円の活動費を補助する。仕事以外にも活躍できる場をつくり、様々な職場の先輩後輩による縦横のつながりを深める目的がある。

 分散する職場の一体感を高めながら、「風通しの良い職場づくり」を進めている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

「セルフ・キャリアドック」を導入

効果
外部のキャリアコンサルタントが年1回の個別面談で、職員のキャリア形成を支援。職場の悩みにも応じる。離職防止と人材採用にも効果。
取組2

多彩で柔軟な有給の休暇制度

効果
採用半年までの職員が最大6日取れる「採用当初休暇」、年4日、いつでも使える「リフレッシュ休暇」など14種類の特別休暇がある。子の看護休暇は小学6年生まで適用範囲を広げ、子育て世代を支える。
取組3

非正規雇用から正職員への積極登用

効果
2019年度までの3年間で18名が、1年更新の準職員から正職員に。来春には市町村をまたぐ転勤のない「地域職」制度を導入し、人材の定着を進める。

COMPANY DATA企業データ

“攻める事業団” “風通しの良い職場づくり”

社会福祉法人 青森県すこやか福祉事業団

理事長:本堂一作
本部:青森県青森市
従業員数:329名(正職員163名、非正規雇用労働者166名=2020年9月末現在)
設立:1977年
資本金:1,000万円
事業内容:障害児・者の入所施設や就労サポートセンター、養護老人ホームなど青森県内7カ所で福祉施設を運営、県から受託した福祉関連事業も行う。

経営者略歴

本堂一作(ほんどう・いちさく)1957年生まれ。東北福祉大学を卒業し入職。施設長、常務理事を務め、2018年に理事長就任。好きな言葉は「同行二人」。