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大鏡建設株式会社

業種

建設業

地域

九州・沖縄

従業員数

100〜300人

File.61

変化を恐れず一人一人が成長し続ける職場へ ―人と地域社会をつなぐまちづくり企業「大鏡建設」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2021.01.28

大鏡建設株式会社

 これまでの施工実績は600棟以上。マンションや商業施設などの建設、土地活用のコンサルティング、不動産管理を営む大鏡建設(那覇市)は、建築後もオーナーに寄り添いながら、地域のまちづくりに貢献している。今でこそ民間の建築物を専門に手がけているが、もともとは公共工事で実績を積み上げ、成長を続けてきた。時代に合わせて事業の形を変え、変化を恐れない姿勢は働く環境づくりにおいても一貫している。

積極的に変化していく姿勢

 設立は1975年。以来、公共工事を担いながら着実に成長を続けていた。2000年、平良修一社長は父親が創業した同社に入社した。1990年代中盤から公共工事の発注が減り始め、「このままでは会社は先細りしていく」と不安を感じていたという。

 そうしたなか、沖縄県で大規模な談合事件が発生する。県内の多くの建設会社が摘発された2005年、同社は事件をきっかけに公共工事から一切手を引き、フィールドを民間に移すことに決めた。建築後のサポート体制についても充実させるため、平良社長自ら不動産管理事業を立ち上げた。

「新しい人材が入社することで多様性も進んでいく」と話す平良修一社長

 大きな社会のうねりの中で前進を続けるため変化を遂げた同社。さらに成長し続けていくため、平良社長が社長に就任した2012年ごろから新卒採用を本格的に始めた。平良社長は「会社は継続していくことが大切。10年、20年先につなげていくために若い人材は必要。新しい人材が既存社員の刺激にもなる」と新卒採用に対する思いを語る。

 新卒採用の本格化に合わせ、しっかりと客観的な基準を定めた人事評価制度を導入した。制度は毎年見直しを行っている。平良社長は「成果はもちろんだが、成果を出すまでの過程も評価してあげたい。いまだ発展途上だ」と説明する。

成長できる環境を作り人材が定着

 社内の変化を促すため、積極的に新しい人材を受け入れている。人事評価制度を整えるなど働く環境を整備した結果、安定的に新卒者を採用できており、2014年以来2~6人の学生を毎年採用している。2010年に入社した開発事業部店舗開発課の宮城栄作さんは、「建物に関わる仕事がしたいと就職活動をしていたときに、知識のない自分に分かりやすく業界のことを説明してくれた」と入社の動機を説明する。

 入社後のサポートも手厚く、新入社員一人に教育係の先輩がつく「エルダー制度」が導入されている。日々の業務はもちろん、先輩社員との間で月に一度、「エルダー面談」も行われ、新入社員の不安を解消している。先輩社員にとっては、後輩の教育を通じて学ぶことも多い。宮城さんは「後輩に教えるためには自分が理解していないといけない。後輩の育成を通して自分も成長できている」と力説する。

 また、仕事の心構えや業務の基本などを動画でいつでも学習できる「DAIKYOアカデミー」を2019年に立ち上げた。新卒の社員だけでなく、中途入社の社員にも見てもらい、会社そのものや新しく担当する業務のイメージをつかんでもらうべく活用されている。他部署の業務についても知ることができるなど、部署間の理解促進にも一役買っている。学習プログラムを作成するにあたっては、業務の棚卸が進むという副次的な効果もあった。今後はよりスキルアップに役立つプログラムを充実させる方針だ。

「入社後は周りに支えていただいた。人柄の良さが会社の良いところ」と話す宮城栄作さん

 充実した教育体制で人材が定着し、社員数は増加を続けている。社員増加とともに収益を上げられているのは、低コストながら最良の土地活用法を顧客に提案できているためだ。フルオーダーではなく、ある程度型が決まっている規格型マンションにより、顧客はコストを抑えてマンション運営を始められる。提案は顧客の信頼を生み、リピーターだけでなく口コミによる新規顧客につながっている。

 今や社員数は140人を超えているが、社員が増えることで新しい変化が生まれた。固定席を維持するためのスペースがなくなり、3年ほど前からフリーアドレスを実施することとなったのだ。フリーアドレスに伴い、ノートパソコンがデスクワークを担う社員全員に貸与された。場所を選ばず、仕事を行うことが可能となった。

 事業やオフィス環境など、思い切った変化を続けているが、新しい人材の入社や環境の変化に社員も刺激を受けている。宮城さんは「後輩の仕事を作るためには自分が成長して次のステージに行かなければならない。組織で仕事をする意味を学べている」と話す。積極的に変化を続けることで、社員が成長できる環境が作り上げられている。

自然と培われていた社員を大切にする風土

 「全社員とその家族の物心両面の幸せを追求し関連企業との共存共栄を図り以て地域社会に貢献しよう」という同社の経営理念に表れている通り、社員を大切にする風土は会社設立当初から培われている。年次有給休暇とは別に設けられている9連休制度は、先代の社長の時代から受け継がれている。平良社長は「民間のお客様に向き合うこともあり、消費者としての目線が大切。目線を磨くために連休を自分の投資に充てる時間としてほしい」と制度への思いを説明する。

 9連休制度について、「社会人になるとまとまった休みを取れる機会は少ないと思う。それでもこの会社ではまとまった時間が取れるので、やってみたいことに挑戦する休暇にしたいと思っている」と話すのは総務部主任の兼村麻里絵さんだ。兼村さんは入社して初めての9連休で、初の一人旅に挑戦したという。船で片道24時間かけて小笠原諸島に行き、釣りをしたりクジラを見たりして楽しんだ。新しい経験を得て、さらなる成長を望んでいる。「資格を取得し、経理の立場から会社全体に貢献できる人材になりたい」と意気込む。

「会社全体に貢献したい」と意気込む兼村麻里絵さん

 3年ほど前からは社員一人一人の残業時間について毎月の経営会議で確認するようにし、残業が続いている社員がいればヒアリングを行っている。社員数の増加による個人の業務負担の減少、社員間で行われるミーティングでの仕事の割り振りの確認を徹底することにより、残業時間削減を実現できている部署もある。月平均残業時間は法人営業部で2017年が10.2時間だったものが2019年には6.5時間に、開発事業部設計担当で同36.1時間から同13.5時間に減少した。

社内部活動の水産部で釣りに出かけた兼村さん

変化し続けた結果、コロナにも対応

 変化を続けた結果、新型コロナウイルス感染症による影響も最小限に食い止められた。対面型の営業やセミナーは行えなくなったものの、社内会議は滞りなくウェブ会議に移行できた。4月以降はリモートワークも実施し、「フリーアドレスによるノートパソコンの貸与が結果的に生きる形となった」と平良社長は話す。場所を問わず仕事をする意識は自然と形成されていたため「すんなりと対応できたと思う」とするが、「遠い未来が少し早めに来たという印象を受けている」と率直な思いを口にする。

社員を大切にする風土が自然とあり、若手の教育に力を入れている(2019年12月撮影)

 今後について、「今入社してくれている若い社員が30代になり、バリバリ活躍している姿が楽しみ」と笑顔で話す。一方で、デジタル、IT化が進んでいく時代で安定だけを求めていくのではなく、「会社の多様化が進んでいく中で、もっと新しいことにチャレンジしていきたい」と意気込む。同社のこれからの変化が楽しみだ。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

評価基準を定めた人事評価制度の導入

効果
新卒採用を始めると同時に、評価基準を定めた人事評価制度を導入した。現在も毎年見直しを行っている。
取組2

新入社員の教育制度の充実

効果
新入社員一人につき先輩社員一人がつく「エルダー制度」や、研修動画を配信する「DAIKYOアカデミー」の立ち上げなど教育制度を充実させた。社員が増え定着することでオフィスのフリーアドレス化につながるなど、環境変化に結び付いている。
取組3

社員を大切にする風土から生まれた休暇制度や残業時間削減

効果
もともと社員を大切にする風土があり、年休とは別に9連休制度が設けられている。3年ほど前からは残業時間削減にも取り組み、削減が実現できている部署もある。

COMPANY DATA企業データ

人とまちの、未来をつくる。

大鏡建設株式会社

代表取締役社長:平良修一
本社:沖縄県那覇市
従業員数:145名(2020年9月現在)
設立:1975年9月
資本金:2,000万円
事業内容:地域開発、都市開発等の事業並びにこれらに関する企画・設計・施工及びコンサルティング業務 不動産の売買、賃貸、仲介管理並びに土地造成

経営者略歴

平良修一(たいら・しゅういち) 1975年7月、那覇市生まれ。1997年に日本大学理工学部建設学科卒業後。2000年に大鏡建設入社。不動産部長、常務取締役を経て、2012年に代表取締役社長に就任。