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株式会社弘法

業種

卸売業,小売業

地域

中国・四国

従業員数

50〜99人

File.73

テレワークから広がる働き方をビジネスチャンスに 従業員が「働きがいのある会社」をつくる-弘法の場合-

テレワークの推進

2021.10.29

株式会社弘法

 時代に合わせ、働き方は多様化し続けている。コロナ禍でテレワークなど、オンラインの導入が推奨され、多くの企業が手探りの中、取組をスタートさせた。今や、働き方の新常識としても浸透しつつある。
企業や官公庁向けのOA事務機器の導入・保守、ワークスタイルの支援など、快適なオフィス環境づくりを事業の柱とする株式会社弘法も、いち早くテレワークを導入。同時に、従業員の意欲・能力を発揮できる職場環境づくりにも積極的に取り組んできた。
そして働き方改革を実践する中で浮かび上がった課題と、それらに対する改善をノウハウとして蓄積。クライアントへのオフィス環境改善の提案というビジネスに繋げている。

90%のペーパーレス化で、テレワークが加速

 同社における働き方改革の主目的は2つ。柔軟な働き方(従業員満足度の向上)と、生産性の向上(収益改善や事業継続の実現)を目指している。
「テレワークを実践すれば、それらが両立できるという結論に至った」と弘法敦志社長は語る。

 しかし同社にとって、テレワーク環境が整うまでの道のりは、決して順風満帆ではなかった。2015年、営業ツールとしてタブレット端末やモバイルPC、スマートフォンを従業員に支給。他社に先駆け、モバイルワークをスタートさせるも、社外から社内環境にアクセスできるインフラが整わないなど、さまざまな課題が噴出。当初は運用が軌道にのらず、苦労したという。

 特に、日本の法律や商慣習である紙・ハンコ文化は、テレワークの大きな障害になった。これまでは、提案書や発注書、顧客管理情報など紙の書類をファイリングしてストック。書類を探す、照合作業などに多くの時間が割かれていた。外回り中の社員がデータをメールし、社内で印刷、提出してもらうという非効率な業務も常態化していたという。
そこで1年間使用しなかった書類を整理・整頓・清掃。日々無駄な出力も減らし、書類のほとんどをデータ化することで90%のペーパーレス化に成功。また個人管理だった会議や研修会の資料もスキャニングして一元化、データ保管に切り替えた。

 同社は印刷機器を扱っているため、従業員の中には紙の削減に対して少なからず抵抗感があったという。営業や保守担当に、民間資格であるペーパーレスアドバイザーの認定取得を義務づけ、また勉強会などを通して理解を深めていった。
「紙の申請書を電子に切り替えることで、数日かかっていた決裁が当日に完了するようになった」と弘法社長。時間効率が上がり、業務全体がスピードアップしたという。

「環境だけ整えるのではなく、実践するためのルールづくりも大切」と話す弘法敦志社長

サテライトオフィス導入で、仕事と家庭の両立が可能に

 ペーパーレス化が進んだことで、テレワークが一気に加速。時間や場所にとらわれず、業務を行える体制を整えていった。
業務や家庭の事情に合わせ、広島県、山口県に点在する9拠点のうち、都合の良い場所で勤務できるサテライトオフィスの活用もそのひとつだ。これまでは業務が終了すると自身が所属する拠点に戻り、日報などを作成。そのための残業も多く発生していたという。各拠点どこからでも日報を入力できるように改善したことで直行直帰も可能となり、経費や移動時間の削減に繋がった。

 販売推進チーム ITソリューション部門の笠井春樹さんは本社所属だが、「実は別の拠点の方が家に近い」という。これまでも営業先へ直接出向く時など、朝拠点に立ち寄り、仕事が終了すると拠点に戻ってその日の業務をまとめ、そのまま直帰していた。最近は、サテライトオフィス制度を家庭の事情で活用することも増えてきたという。

 同社では、仕事と家庭の両立支援に向け、半日単位、1時間単位で年次有給休暇が取得できる制度を設けている。
「サテライトオフィスも半休や時間休の取得も、子どもの体調不良など、家庭内のイレギュラーが発生した時に本当に助かっている」と笠井さん。家事や育児に関わる時間が増え、自身が目指すワーク・ライフ・バランスに近づいている実感があるという。

 他にも、3歳までの法定の制度を拡充する形で、小学4年生までの子どもを持つ従業員向けの育児短時間勤務制度を導入。また、在宅ワークや家族の介護を担う従業員を対象とした、介護短時間勤務制度などを充実させることで「家庭の事情で、働くことを諦める人を少しでも減らしたい」と弘法社長は力を込める。

2人の男の子の父親でもある笠井春樹さん。「家事や育児はまだまだ妻任せ。もっと関わっていきたい」と話す

オンライン化でコミュニケーションの幅が広がる

 同社は、10年前よりテレワークの体制を整えつつ、定期的な会議や研修、朝礼、商談などは対面で行ってきた。テレワークが進むにつれ、必然的にこれら対面型のコミュニケーションは減少する。加えてコロナ禍が、図らずもオンライン化に移行する後押しになったという。
弘法社長は「バラバラで働く環境が増えていく中で、対面で会っていた時以上にコミュニケーションの必要性を感じた」と話す。コミュニケーションは、人と人を繋ぐ有効な手段でもある。

 まず、従業員のスマートフォンに勤怠アプリを導入し、タイムカードを電子化すると同時に、事業所に在席管理のオンラインボードを設置。各拠点や在宅ワークで働く従業員の空間を常時繋げ、勤務状況を視覚的に把握できるようにした。
「在席状況がわかるので、ちょっとした打ち合わせも手軽にできるようになった」と弘法社長。オンライン化のメリットは、どの拠点にいてもオンラインで集まることができ、情報共有もスムーズかつ一元的に行えることにある。これまで本社で行われていた会議のための出張コストや移動時間の削減という面でも効果が現れた。

 対面時は、事業所単位で朝礼を実施していたが、WEB会議システムの導入に伴って、夕礼を加えた。弘法社長は「オンラインを通して、1日が終わったという区切りを従業員の間で共有するため」と説明する。ビジネスチャットツールを利用して、社内のコミュニケーションが活性化するなど、対面以上にコミュニケーションの幅が広がるような環境づくりに努めている。

 同社では、これら働き方改革で社内環境を改善してきた取り組みを、オフィス環境事業としてフィードバック。ペーパーレス化をはじめ、ICT関連機器の積極的な活用、フリーアドレス化を実践することで、お客様への改善提案に繋げている。「理想とする働き方を自社実践することで、成功・失敗例含めて提案に説得力が生まれる」と弘法社長は胸を張る。実体験に基づくノウハウをベースにしたコンサルティングという新たなビジネスチャンスの創造で、従業員の自主性を高め、生産性の向上にも繋がることを期待している。

育児短時間勤務制度を利用しつつ在宅ワークの従業員とも、モニターを通して気軽にコミュニケーションが取れる仕組みだ

「仕事に追われるのではなく、仕事を人生の一部分として、生きがい・やりがいを喜びとし、常に成長を感じてもらえる会社にしたい」と弘法社長。
従業員への健康支援もその一環だ。プライベート時の怪我や疾病の治療費を負担する福利厚生制度をはじめ、家族を含めたインフルエンザ予防接種費用制度、禁煙外来費用を補助する禁煙チャレンジ制度などを展開。
「従業員を経営資源と考える」(弘法社長)、同社ならではの取り組みも数多い。これら働き方改革への取り組みが評価され「広島県働き方改革実践企業」の認定も受けている。

 今後も、取り組みの定期的な振り返りを通して、従業員の働きがいやモチベーションを高めていく組織づくりを継続する。「自身が喜びを感じることができる仕事は、お客様や社会に対しても良い影響を与えてくれると思っている」と弘法社長。
同社が次に注目するのは、働き方改革の先にある「従業員の働きがい」だ。第三者機関・GPTW(Great Place To Work)に調査申請し「働きがいのある会社」認定に向けて社内整備を進め、新しい企業価値の向上を目指していく。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

ペーパーレス化でテレワーク推進

効果
日本の法律や商慣習による「紙文化」に注目。非効率な業務を見直し、1年間使用しなかった書類を整理・整頓・清掃。書類のほとんどをデータ化して、90%のペーパーレス化を実現。電子決裁への転換で当日決裁が可能になるなど、時間効率が上がり、業務全体がスピードアップ。
取組2

サテライトオフィスの導入で、無駄な移動時間削減

効果
広島県、山口県に点在する9拠点のうち、都合の良い場所で勤務できるサテライトオフィスを導入。直行直帰も可能となり、経費や移動時間の削減に繋げる。半日単位・1時間単位の年次有給休暇制度、法を上回る育児短時間勤務制度などフレキシブルに働ける仕組みを整え、仕事と家庭の両立を推進。
取組3

コミュニケーションもオンライン化

効果
各拠点に在席管理のオンラインボードを設置し、各拠点や在宅ワークで働く従業員の空間を常時繋げ、勤務状況を見える化。WEB会議システムの導入で、スムーズな情報共有が可能に。出張コストや移動時間の削減に成功。自社実践を通して、お客様への改善提案力の向上も。

COMPANY DATA企業データ

「オフィスマネジメントの弘法」として、時代に合ったワークスタイルを支援

株式会社弘法

代表取締役社長:弘法敦志
本社:広島県広島市
従業員数:65名(2021年7月現在)
設立:1923年4月
資本金:4000万円
事業内容:OA事務機器・プリンター販売保守・オフィスレイアウト・オフィス内装工事・オフィス家具販売

経営者略歴

弘法敦志(こうぼう・あつし) 
1971年山口県生まれ。1997年株式会社弘法入社。2012年より代表取締役社長。座右の銘は「意思あるところに道は拓ける」。