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ペンギンシステム株式会社
情報通信業
関東
30〜49人
File.80
業界特性に合った制度で、メリハリのある働き方へ ―オーダーメイドのソフトウェア開発受託 ペンギンシステムの場合―
2021.11.01
茨城県・つくば市に本社を置くペンギンシステムは、「研究開発支援のフルオーダーメイド企業」として、国立の研究所や大学等での最先端研究向けの高難度なソフトウェアを製作するIT企業。医療関連のソフトウェアや、自社製品の開発・販売なども手がけている。仁衡琢磨社長が取締役であった2003年頃、当時の社員数は6名ほどで、個々が業務に追われ残業は常態化していたという。それを改善すべく、2011年より、時間外労働の削減を含む各種働き方改革に着手した。
「固定残業手当」など、各種施策で残業を削減
「I T企業はブラックで当たり前、という風潮を自社から無くしたかった」と話す、仁衡社長。自身もシステムエンジニア時代に過度の残業で苦労した経験から、社員たちの限界は感じ取っていた。夕方には退社するようにと呼びかけていたが、月40時間以上の残業をしている社員も多く、なかには生活残業も見受けられたという。
契機となったのは、2011年に起こった東日本大震災だった。その時の災害への対応や、柔軟に変化していく世の中を見て、仁衡社長は「会社組織も新しい形に脱皮しないと生き残ることはできない。変えるなら今しかない」と考えた。同年より組織の働き方を見直し、スピード感をもって改革を進めていった。
まずは不要な残業をなくそうと、手始めに毎月第2・3水曜日に「ノー残業デー」を設けた。また、“職能手当”と名付けた「固定残業手当」制度を導入。これは、職級ごとに残業時間の上限が決められ、その範囲内での残業が許される。残業時間が手当額を上回る場合は、その差額が支払われるが、全くしなくても固定額の手当が支給される。「どうしたら早く帰るという意識ができるか。残業代を稼がなくても生活に困らず、皆が安心して働けるだろうか」と、悩んだ末の施策だったという。
さらに、制度を整えていく中でも生産性の高い働き方を実現するため、勤務スタイルを「1年単位の変形労働時間制」に切り替えた。同社で設定された1日の所定労働時間は8.5時間。通常よりやや長く感じるが、これにより勤務時間中に集中して業務を行い定時には帰るというスタイルの定着に成功した。繁忙期のある業界の特性上相性が良く、残業削減により懸念していた社員のモチベーション低下もカバーできたという。また、業務を円滑に進めるための各種管理ツールも導入。限られた時間の中で計画的かつ効率的に働ける体制づくりにも取り組んだ。
結果、就業時間内に集中して取り組む意識が会社全体に根付き、ノー残業デー以外の日でも残業する社員はほぼゼロに。2011年時点で月平均23.7時間だった残業時間を、現在では月平均2.7時間まで削減することができた。
“プライベートも諦めない”柔軟な休暇制度
同じく2011年にスタートしたのが、「時間単位の年次有給休暇」制度だ。社員のためにと率先して導入を決めた。1時間から休暇を取得できるため、病院に立ち寄りたい時や、子どもを保育園に送りたい時など日常の様々なシーンで役立ち、社員から大好評を得た。時間単位の年次有給休暇には年に5日までという取得上限があるため、上限を設けない「半日単位の年次有給休暇」も考案、実施した。時間単位の年次有給休暇と併せて使うこともでき、多くの社員に活用されるようになった。
「私自身も、子どもの授業参観や学校行事がある時に積極的に取得しています」(仁衡社長)
さまざまな取り組みを行うなかで、「今まで通りでいいのでは」と変化に抵抗を感じる社員も少なくはなかったそうだが、社長自ら不安や疑念の一つひとつに懇切丁寧に答えることで、社内全体で理解が進んだ。
子育てサポート企業として「くるみんマーク」を取得
同社には、子育てをしながら働く社員も多い。現在、女性社員の育児休業の取得率は100%だが、2011年時点の実績はゼロだった。働き方改革を進めるなかで、少しずつ社員に取得を働きかけていった。先駆けとなったのは、システムエンジニアとして活躍する宮本さん。2回の育児休業を取得し、復帰後はお子さんが就学するまで短時間勤務で業務にあたった。
「“取得することが当たり前”という風潮を会社で築いていただいたので、休業中も復帰後もストレスなく過ごせました。働きながら自然に人生のあゆみも進めることができ、とてもありがたかったです」(宮本さん)
宮本さんは育児と両立する中で、会社の中心メンバーとして活躍し、技術計算部の係長に昇格。その姿は、他の女性社員たちにもキャリアについて考える良いきっかけを与えた。
現在も、社内では男性を含む全社員を対象に、育児や介護、仕事との両立について伝える社内セミナーも実施し、休業制度などへの理解が深まるよう働きかけているという。そして最近では、初めて男性社員が育児休業を取得した。出産直後の1週間であったが、奥さんや子どもを支えることができ、本当に取得してよかったと語っていたという。
体制を整えていく中で、2021年には「くるみん認定」を受けた。これは、厚生労働大臣が「子育てサポート企業」として認定するものである。「中小企業が基準を満たすことは難しいと思っていましたが、これまで取り組みを続けてきたことが実を結んでうれしいです」そう話すのは、総務部の係長を務める横山さん。13年前に入社以来、仁衡社長と二人三脚でさまざまな施策に挑戦してきたという。くるみん認定を受けられたのも、10年にわたり取り組んできた成果のひとつだ。
「働きやすい会社という実感はあっても、どうアピールするか試行錯誤していました。公的な認定を受けられたことは会社にとって大きな強みになったと思います」(横山さん)
世の中の状況を踏まえ、リモートワークシステムも早期に導入した。さらに、自宅の電気代が負担にならないよう新たな手当も追加したという。現在は出勤とテレワークを個々で選択できるようにしているが、今後はさらに制度を整えていきたいと考えているという。 「どんな状況下であれ、プライベートを大切にしながら、自分なりの働き方をデザインしていける会社でありたいと思っています」(仁衡社長)
わずか10年で変革を起こし、社員ファーストの環境づくりを行ったペンギンシステム。多様な働き方を受容することが人材確保にもつながり、生産性向上も実現した。温かな制度の一つひとつが、組織全体に良い影響をもたらしている。
CASE STUDY働き方改革のポイント
時間外労働時間削減のための施策
- 効果
- 固定残業手当と変形労働時間制を導入。メリハリをもって業務に取り組む風潮ができ、2011年時点で月平均23.7時間だった時間外労働時間を、月平均2.7時間に大幅削減した。
融通の効く多彩な休暇制度
- 効果
- 時間単位や半日単位の年次有給休暇により、短時間の予定や突発的な急用にも対応できるようになった。年休取得率アップにもつながっている。
結婚・出産後も長く働ける
環境づくり
- 効果
- 会社に育児休業を取得しやすい風潮をつくり、女性社員の取得率は100%に。セミナー等での働きかけにより、男性社員の育児休業取得者も出た。
COMPANY DATA企業データ
研究開発支援のフルオーダーメイド企業
ペンギンシステム株式会社
代表取締役社長:仁衡琢磨
本社:茨城県つくば市
従業員数:31名(2021年7月現在)
設立(創業):1983年 3月
資本金:2,500万円
事業内容:コンピュータ・ソフトウェア・システムの設計、開発、運用、コンサルティング
経営者略歴
仁衡琢磨(にひら・たくま)1969年生まれ。1997年ペンギンシステム(株)に入社。2003年取締役に就任、2006年代表取締役社長に就任。一般社団法人茨城研究開発型企業交流協会会長。茨城県総合計画審議会委員。