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株式会社宝石時計の武内(TAKEUCHI BRIDAL)
卸売業,小売業
中部
50〜99人
File.87
研修の充実により、女性が輝ける職場環境を創出 ―スタッフが生き生きと働く 宝石時計の武内の場合―
2021.11.18
宝石・貴金属・時計などの宝飾品の販売を業務とし、福井県内3店舗、石川県内2店舗、富山県内1店舗を展開している。業務内容から、女性社員が多く、常に女性が働きやすい職場環境の創出に気を配ってきた。現在、店長、主任、マネージャーなどの役職は全店舗合わせて26名。そのうち女性は17名と半数以上を占める。この数字から女性がいかに責任ある仕事を任され、活躍しているかが伺えるだろう。実際、同社は福井県の「ふくい女性活躍推進企業」の認定を受けている。女性の能力を開花させる機動力となっているのは研修制度や若い年齢からの役員登用である。
働く意欲を高める職場環境
北陸本線野々市駅から徒歩10分、ブライダルジュエリー専門店としては石川県最大のフロアを誇る金沢・野々市店がある。エントランスを入ると、スタッフが扉を開け、丁寧な挨拶とともに店内へと導かれる。すぐに目に入るのが白いグランドピアノだ。その奥にはアートフラワーが置かれ、天井にはゆっくりとファンが回る。高級感あふれるインテリアはブライダルジュエリーという華やかさと厳粛さを兼ね備えた宝飾品を扱うのにふさわしい空間を創っている。こうした内装はお客様の購入意欲を刺激するためだけの演出ではないと武内瑛示社長は言う。
「お客様をもてなす空間であるのと同時に店舗は社員にとっては働く空間です。誰でも、きれいな職場で働くのは気持ちがいいはず。私たちは宝石を扱う仕事です。きれいなものを扱うのですから、それにふさわしい職場環境を整えることは社員の働く意欲を高めるためにも、おろそかにはできません」
非日常を感じさせる店内では来店客だけでなく、応対するスタッフのテンションも上がると話す。実はピアノやアートフラワーを置くぐらいなら、もっと商品ケースを並べたほうがいいのではとのアドバイスもあった。しかし、武内社長はこの空間演出にこだわった。その結果、県内ではブライダルジュエリー売上シェア1位を誇る好業績を上げている。好業績最大の推進力となっているのはインテリア以上に社員の力であることは言うまでもない。
「社員の力――それも女性社員の力が大きな戦力になっています。当社の業務は女性が活躍しないと成り立たない仕事です。お客様は宝飾品を購入する際には必ずといっていいほど、店のスタッフにアドバイスを求めます。そのとき、お客様の心に響くアドバイスができるのは女性なのです」
女性社員は相手の良さを見つけ、その人にあった商品を提案する。商品の勧め方に説得力がある。「そのジュエリーがお客様に似合うということだけでなく、それを身に着けることで、わくわくできるシーンがたくさん生まれるというような説明をするのです。そのような勧め方ができるのは女性ならではの感性があるからだと思います」といっても入社してすぐに説得力のある応対ができるわけではない。新入社員のころから、配属された店舗で接客の力をつける研修を行っているのだ。
「その研修ですが、新入社員の定着率を高める目的もあるのです」。同社では新入社員の定着率が低く、入社1年未満で離職していくケースがいくつかあった。その原因の一つが研修だった。ビジネスマナーや挨拶などの新入社員研修や商品知識を深める研修はしていたが、新入社員に対してのきめ細かさに欠けていたと言う。そこで2018年から始めたのが、ロールプレイング研修だった。これは店舗ごとに行われる研修で、社員同士で接客のシミュレーションをする研修だ。
「頭で理解していても、現場ではできないことが多いのです。この研修では経験豊かな社員が実際に行っている接客をベースにシミュレーションしていますから、新入社員でも現場で対応できるスキルが学べます。また、年に1回、ロールプレイング大会を行い接客のスキルを競い合っています。優勝店舗には賞品を授与しています」ロールプレイング研修を重ねることで、ハイパフォーマンスを身に着けた社員に育ってほしいと武内社長は話す。
クリエイティブマネージャー藤田匠さんは「私たちは若い人に成長してほしいという願いを込めて研修を行っています。新入社員は成績や接客など、何かで壁にぶつかり、それが越えられないと離職していくようです。そのような社員は様子を見ればわかりますから、声をかけるなどして不安を和らげるような対応をしています」。藤田さんは常に成長することを自分自身に課し続けていると言う。「給料をもらっている以上、会社に貢献すべきです。確かに売り上げの数字を上げるのも貢献ですが、そればかりでなく、自分も成長し、新人を育てるのも貢献の一つだと思っています」。
入社数年で責任ある役職に登用
仕事に対し〝やる気″を喚起し、社員に〝働きがい″を感じてもらうため、あくまでも実力に応じてだが、入社数年で役職に登用している。武内社長は役職という具体的な目標が定着率にも繋がるとしている。
「役職は主任が最初です。役職手当がつき、昇給します。そればかりでなく、主任になると成績が問われるようになるし、責任も重くなります。若い社員には、そういう一つ上のステージに早く上がってきてほしいのです。それは働きがいになりますし、自分の成長にも繋がります。実際に役職に就くと顔つきが変わってくるものです」。もちろん、若い社員を役職に就け、それなりの責任を課すのであるから、その後のフォローも欠かせない。そこで主任以上の役職者には個人面談を行っている。「一人ひとりと向き合う時間を作っています。話を聞くのが目的です。たとえ成績がふるわなくても、責めるのではなく、まず話を聞きます。そして改善点を探っていきます」。
金沢・野々市店主任田辺聖依さんは入社3年で主任に就いた。
「役職というとある程度の年齢の男性社員が多いというイメージがあると思います。しかし、当社では多くの若い社員が役職に就き、活躍しています。私も入社して主任を目指し、仕事をしてきました。実際に主任になるとそれまで意識していなかった後輩教育の必要を感じましたし、店長、チーフの補佐という自覚も芽生えていきました。若い役職者が多いので、20代前半の若手が会社を引っ張っているという実感があります」田辺さんは主任になり、後輩からアドバイスを求められることもある。そんなときには互いに立場をわきまえながらも、フレンドリーな会話を心がけている。
正社員だけでなく、パートタイム社員も強力な戦力と考え、実績のあるパートタイム社員には正社員へのキャリアアップを勧めている。正社員は基本的に土・日曜日が出勤になるがパート社員は平日のみも可能だ。そこで子育て中はパート社員として働いていた女性が、子育てを終え、正社員として勤務することも珍しくない。
社員の交流を図る社内報を発行
北陸に6店舗を構える同社だが、全社員の交流を図るため、社員旅行、新年会・忘年会など、年間を通して各種イベントを行っている。それに加え、社内報の発行が始まった。「情報を共有したいということで社員から社内報を作ってほしいとの希望が上がったのです。ですから、編集作業は社員がチームを組んで行っています」
2021年1月に第一号が発刊となった。サイズはA4版16ページ、手作り感あふれる冊子だ。その内容は各店舗のスタッフが紹介されるなど、社員同士の一体感を高めるツールにもなっている。冊子のなかで各店舗の社員に仕事のやりがいなどを聞いている記事があるが、誰もが前向きなコメントを寄せている。生き生きとした表情の写真とともに、社内報からは社員全員が生きがいをもって日々の仕事をこなしている姿が伺える。宝石時計の武内には女性に限らず、男女ともに輝ける職場環境が整っていると言っていいだろう。
CASE STUDY働き方改革のポイント
職場の内装を整える
- 効果
- 宝飾店という業務内容にふさわしい内装を施すことで来店客ばかりでなく、社員も気持ちよく働ける。働く空間を整えることが社員の仕事に対する意欲を高めている。
新入社員に対しきめ細かな研修を実施
- 効果
- 現場の応対をシミュレートするロールプレイング研修を実施。売り場で対応できるスキルを身に着ける。店舗同士でスキルを競うロールプレイング大会を開催。スキルアップを図っている
入社数年で役職に登用する
- 効果
- 2~3年で主任に登用。新入社員にとって主任に就くという目標が働き続けるモチベーションアップや仕事に対する〝やる気″を喚起している。役職者に対してのフォローは個人面談を行っている
COMPANY DATA企業データ
福井県内最大級のジュエリーショップ
株式会社宝石時計の武内(TAKEUCHI BRIDAL)
代表取締役会長:武内佐忠
代表取締役社長:武内瑛示
本社:福井県福井市
従業員数:53名
設立:1948年12月
資本金:2000万円
事業内容:宝石・宝飾・貴金属・時計・その他関連商品の販売
経営者略歴
武内瑛示(たけうちえいじ)
2007年 フェスタリアホールディングス(株)入社
2012年 (株)宝石時計の武内入社
2019年 11月1日代表取締役社長就任