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株式会社タバタ

業種

製造業

地域

関東

従業員数

100〜300人

File.93

2週間の夏期休暇+多様な休暇制度を充実 ―社員の余暇時間を重視するタバタの場合―

多様な休暇制度

2021.12.16

株式会社タバタ

スポーツ用品を扱う会社だけにアクティブな社員がいっぱい。

 東京都墨田区にある株式会社タバタは、創業69年になるスポーツ用品製造販売の老舗である。その歴史の中では、素潜り用マスク、スイミングゴーグル、スキューバ用フィン、ゴルフ練習用具など多くの“国産初”を送り出してきた。業界内では非常に早く多様な休暇制度を取り入れてきた同社であるが、2017年度からさらに大幅な労働時間短縮に取り組み、成果を上げている。

全ての社員がレジャーを楽しめる会社に

 株式会社タバタは、スイミングゴーグルでは国内シェア№1。スイミング・ダイビング・ゴルフ関連の各種自社ブランド製品を世界80カ国に出荷するグローバル企業である。従業員数は210名。四谷・八潮・大阪に営業所を持つ他、茨城には製造部門があり、アメリカ・オーストラリア・オランダ・台湾に海外子会社を展開している。

 同社が世の中に先駆けて完全週休2日制、1日7時間労働を開始したのは1971年からだ。当時では革新的な取り組みである。これは、田畑兼一郎社長の祖父(初代社長)の考え方によるものだった。

 「当社は1965年頃、レジャーブームを受けて急成長しました。祖父は、多くの人に喜ばれるレジャー用品を作るには、社員たちが自らレジャーを楽しむ余暇時間がなければならないと考えたのです」(田畑社長)

3代目となる株式会社タバタ の田畑兼一郎社長。

 1975年にはリフレッシュ休暇も設けた。通常の年次有給休暇とは別枠で勤続5年ごとに3日間の有給休暇+リフレッシュ費用が支給されるという制度だ。そして3代目として就任した2016年、田畑社長は祖父の思いに立ち返り、より時代に即した形での働き方改革への取組を決意する。

 「会社を発展させることも必要ですが、まずは従業員の生活の質を上げたいという考えが根本にあります。スポーツ&レジャーの楽しみを提供するのが我々の仕事。働く皆さんが余裕をもって人生を楽しく過ごす時間を持つことが、仕事にもよい影響をもたらすと思いました」(田畑社長)

 「よく遊び、よく働く」をモットーに、2017~2020年度の行動計画がスタートした。

自由度の高い長期連続休暇の導入を決断

 最初に掲げたのが、夏休みを2週間連続で取得できる会社にしようとの目標だ。 「我々のダイビング用品は欧米の方にも広く使用されています。特にヨーロッパの方たちは4週間から6週間の休暇を取り、時間の余裕をもってダイビングを楽しんでいます。そんな休暇の過ごし方ができる会社を目指しました」

 当初から夏期休暇は1週間でしたが、翌年は11日間と少しずつ増やし、2020年度には連続2週間の休暇取得を実現した。夏期休暇(有給)5日と計画年次有給休暇5日の計10日間に土日を加える形だ。毎年誰でも、ゴールデンウィークから10月末までいつでも申請できる。7営業日と3営業日の2度に分割して休んでもいいし、育児などの関係で年次有給休暇を温存したい人は日数の調整もしてよい。

 ただし、茨城の製造部門では休みの間は工場の機械を一斉に止める必要があるため、お盆の7営業日を連続休暇としている。残り3日分はそこに足すのも別の機会に休むのも自由だそうだ。2週間あれば、過ごし方の幅はかなり広がる。扱う製品上でもあろうか、アクティブなレジャーを好む従業員が多く、この長い休暇を使ってヨーロッパやアフリカを旅行する人、離島ダイビングや海外ゴルフを楽しむ人などさまざまだ。

リフレッシュ休暇を活用してドライブ旅行を楽しむ社員も。

 リフレッシュ休暇では、リフレッシュ費用として勤続5年なら5万円、10年以上では10万円が記念旅行の費用として支給される。年次有給休暇も併用すれば、こちらも長い休みが取れる。また、創立記念日休暇(有給)は、本来の創立日である1月21日ではなく、飛び石連休の間などに配置される。さらに記念日休暇制度(有給)というものも設けた。毎年、任意の1日を“自分の大切な日”として申請し、休みとするものだ。

 

 時間外労働の削減も取り組むべき目標であった。
「7時間労働としていながら残業があるのはフェアじゃない」と田畑社長。
 休みを増やすために多忙になり、残業が増えてはならない。2017年の残業時間を基点(100%)として、2018年85%、2019年65%、2020年50%という削減目標に向けて従業員たちは頑張ったそうだ。残業削減に取り組む中で売上や利益率がアップし、業績への貢献に応じて賞与支給が増額されたこともモチベーション向上に繋がった。(賞与支給最大8.8か月、平均5.5か月/年)

 目標を可視化したことも意識を高める上で大いに役立った。  「月次の残業時間や年次有給休暇取得率などの平均値を管理職間で共有し、部門内で声かけするようにしました。また、年1回“改善アワード”という表彰も行っています」(田畑社長)

 改善アワードでは、業務を効率化したり生産性を上げたりする改善策を、個人またはチームで発表する。賞品は低額のクオカードとアイスクリーム券だが、「金額より、新しい取り組みに挑戦して改善効果を出せた人が称賛される、ということが重要ですね。こうしたことを通し、メリハリよく働こうと前向きに仕事に向かう意識が皆に浸透してきました」(田畑社長)

休暇や時短があるからこそ効率化も進む

 年次有給休暇取得率も、2018年度には55%だったが、年々増加し、2021年度には80%を超えた。一人当たりの月平均残業時間も3時間ほどであり2018年度の5.18時間と比較して減少した。メリハリよく働いてきちんと休もうという会社の姿勢による、休みやすい・働きやすい労働環境の整備が、年次有給休暇の取得促進や男性の育児休業の取得促進にもつながっている。営業本部海外営業二課に所属する岡崎愛さんは元々、ダイビングが趣味で中途入社し、海外との輸出入手続きを担当している。

大好きなダイビングに行くことを心待ちにしている岡崎愛さん。

 「2週間連続休暇が取れる会社はなかなかないと思います。私は夏の混雑期を避けて休み、北海道や金沢などへの1週間の国内ドライブ旅行へ行くということが多いですね」(岡崎さん)

 新婚旅行では2週間フルに使って海外に行ったとのこと。コロナ禍が落ち着いたら、海外でのダイビングを計画しているという。

 「会社が長期休暇を推奨しているので、休暇取得前に引き継ぎさえちゃんとしておけば大丈夫。休む人の担当分を分担することで、仕事全体への理解が進み、効率がアップする効果も出ていると感じます。残業時間削減も浸透し、定時にサッと退社できるようにもなりました。ワーク・ライフ・バランスが取れ、遊びも仕事も充実。社内にはダイビング部やスノボ部、ゴルフ部などの部活もあって、皆楽しく働いています」(岡崎さん)

 上司や先輩がいても帰るのに遠慮は要らない。今では田畑社長自身が最後に鍵を閉めて出ることもしばしばだ。

 遊ぶ心と仕事をつなげるプランは今後もいろいろある。皆で海に遊びに行って実施する商品調査は以前からだが、今後はプールに従業員家族を招いて行う商品テストも計画している。さらに、コロナ禍での経験を経た今、テレワークの延長として旅行先で仕事をするワーケーション、海外出張と休暇をセットにするブリージャーなどの制度も検討している。

 「私たちは“地球と遊ぶ企業”を標榜しています。それには働く一人ひとりが日々を楽しめる環境でなければ」と田畑社長。今後の取り組みにもぜひ注目したい。

遊び心を大切に働く社員の方々。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

2週間連続の夏期休暇を導入

効果
年次有給休暇取得率は、55%(2018年度)から80%(2021年度)に向上。長い休みを通して従業員一人ひとりが好みのレジャーを楽しむことが、自社ブランド製品の企画開発にもよい効果をもたらしている。
取組2

多様な休暇制度を実施

効果
リフレッシュ休暇では、勤続5年なら5万円、10年以上は10万円を記念旅行の費用として支給。ほかに、各自が年の中で一番大切にしている日を記念日休暇(有給)として取得できる制度など、多様な休暇が仕事効率化の一助になっている。
取組3

働き方改革目標の達成率を可視化

効果
年次有給休暇取得状況や時間外労働削減率の目標を年度毎に定め、その達成率を管理職間で共有したことで、上司が率先実行するだけでなく、従業員への奨励も進み、計画よりも早い目標達成を実現した。
取組4

余暇の楽しみを共有するしくみ作り

効果
従業員それぞれが休暇をどう楽しんだかなど、ウェブサイト上に写真と共に掲載。“休んで遊ぶ”ことの後ろめたさが払拭されるだけでなく、趣味を通した共感も深まった。休暇中の人の作業を分担することで、担当外の仕事への理解も深まった。

COMPANY DATA企業データ

株式会社タバタ

代表取締役社長:田畑兼一郎
本社:東京都墨田区
従業員数:210名
設立:1952年
資本金:1億9,250万円
事業内容:スポーツ用品の製造・販売

経営者略歴

田畑兼一郎(たばた・けんいちろう) 1973年東京都生まれ。3歳より水泳を習う。6歳の時に佐渡島で初めてのダイビングを経験し、海で2時間の遠泳を泳ぎ切る。1998年株式会社タバタに入社。2009年ゴルフ事業部本部長、2015年TUSA事業部本部長を経て、2016年に代表取締役社長に就任。