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T-Solutions株式会社

業種

情報通信業

地域

北海道・東北

従業員数

10〜29人

File.95

場所や固いルールに縛られることなく自分を磨く働き方 -創業時からテレワークを実践する「T-Solutions株式会社」の場合-

テレワークの推進

2022.01.24

T-Solutions株式会社

 「ソフトウェア開発」「テレワーク推進・在宅ワーカー活用」「キッズプログラミング教室」と3つの事業を展開するT-Solutions株式会社(山形県山形市)。飛塚嗣公社長は、勤務地だった東京から山形県出身の奥様の地元に「嫁ターン」して2015年8月に会社を立ち上げ、現在秋田県湯沢市にもオフィスを構えている。起業の理由は、自分が携わっていた仕事が山形にはなかった。それなら自分で立ち上げてみようという「他愛もない」(飛塚社長)動機からだった。

積み上げたノウハウを生かし、起業時からテレワークをフル活用

 飛塚社長が東京で携わっていた仕事とは、人材派遣会社で在宅ワーカーを活用した事業であり、約1000人ものワーカーの育成、企業への在宅勤務を推進するものだった。山形へ移住するにあたり、その経験とノウハウをもとに第一歩を踏み出した。当初から社員は全員がテレワークをフル活用している。働き方改革については「自分で起業するなら在宅ワーカーで動かす会社だと考えていたので、テレワークの部分でいえば働き方改革という概念は初めからなかった。当たり前だとさえ思っていました」。

 こうした思いでの起業後、新規起業家による公開プレゼンテーション「やまがたし☆創業アワード2017」に参加し優秀賞を受賞した。これは、創業を志す者のモデル事例としてふさわしい優れた起業家を表彰するもので、これによりT-Solutionsの名前が注目されることとなった。

東京で積み重ねた実績を生かし「嫁ターン」先の山形で起業した飛塚社長

 同社の社員は、本社(山形市)と湯沢オフィスで18名。「大規模や中規模の企業なら”こうあるべき”という働き方の規範があると思いますが、うちのような小規模の会社だともっと緩い感じでやれる。テレワークの許可申請のためのハンコをもらうのに3日かかるなどという無駄なことはいやですから」と笑う。

 場所やルールに縛られない働き方を推進する同社の勤務は月曜から土曜だが、そのうちの3日から5日が出勤日で週休2日以上。就業時間は午前9時から午後5時半だが、周りに迷惑がかからない範囲なら、ある程度自由な働き方を推奨している。例えば、午前中は出社して午後は在宅勤務。出社を希望する曜日のみ出勤することや1日4時間の短時間勤務なども可能。子どもの学校の都合に合わせるなど、それぞれが柔軟に働ける環境を築いている。

 業務は必ず主担当、副担当を設定して、進行中の業務を複数の人間が理解できる環境を作っている。例えば、どちらかが子どもの具合が悪くてちょっと仕事を抜けたいという場合でも業務に支障が出ない仕組みだ。また、情報を共有し合い、担当業務でなくても社員全員でフォローできるように気を配っている。残業は一般社員にはほとんどない。

作業実績に応じた合理的な成果主義を実践

 半日休暇の取得については各自で調整しながら融通し合っている。子どもを持つ社員が多いので「明日の午前中は休みたい」などという要望はかなり多く、取得する社員も多い。

 同社は、社員全員がテレワークを活用しているため、実際に社員が揃って働く姿を見ることは少ない。信頼関係をどう築いているのかについて飛塚社長は「社員を信用することが大前提」ときっぱり。

 そのうえで各業務について標準工数を決め、作業実績や売り上げに基づいた成果主義を採用していると言う。裏返せば、部下の力量を把握できない上司は問題外ということであり、成果主義は働く側にとっても合理的な環境ではないだろうか。

 社員同士は管理職を含めたチャットツールでやりとりしているので互いに業務内容は把握できている。毎日の朝礼では互いの業務の空き時間を確認して作業を融通し合い、担当者が不在であっても誰かがフォローできるような体制もできている。さらに、終業30分前には進捗状況を報告し合って残業が生じないように工夫もしている。毎週火曜日の「掃除の日」は、顔を合わせてコミュニケーションできる場ともなっている。

週に1回、全員が集まってコミュニケーションを深めている

仕事より家庭優先でいい。自分の時間を有効活用して欲しい

 「家庭を持っている女性社員がストレスを感じず働いてもらえる、休みも取りやすい会社だと自負していますが、最近思うのは、逆に女性が家庭に縛られ、旦那さんだけがその恩恵を受けているのではないか。働きやすい環境というのは性別に関係なくあるべきで、これは社会の大きな課題だと思っています」と語る飛塚社長。

 自由になった時間は家族との交流はもちろん、趣味や自身のスキルアップだけでなく、さらなる収入を求めて副業に活用することも推奨している。「会社の業務に影響がなく、それぞれの負担にならなければどんどんやってほしい。自分がやりたいことを自分で見つけてくれることが理想かな」と強調する。

 人が集まらないと仕事にならないという発想はない。会議は時間の無駄だから嫌い。開いても3カ月に1回くらいだ。採用はほぼ中途。その理由は、同社に新人研修のプログラムがないからだ。かといってバリバリの即戦力を求めているわけでもない。

 

 中途採用希望者であっても、最低限のマナーやエチケットの教育を身に着けた人なら、ほぼ未経験でも受け入れて成長を支援する。現在、最前線で活躍している社員の中には入社後にスキルを身に着けた人も多い。同社の社員育成のポテンシャルは高い。

(社員/東海林菜摘子<ルビ/なつこ>さん)

 こうした同社でスキルをアップしたのが秋田の湯沢オフィスで働く東海林菜摘子さん。400人ほどの在宅ワーカーを抱える同オフィスでライティングの関連業務の管理を担当する。自身、在宅ワーカーを5年ほど経験し2年ほど前から契約社員となった。かつて他社で正社員として働いた時期もあったが、両親を介護する環境への理解が得られず、仕事との両立が無理と離職。

 そんな折、同社の求人募集と出会った。介護への理解も得られ、トレーニングと実務を積み重ねて来た。「両親のほか、子供が3人いますが、学校行事などへの参加も自由にさせていただけるのは本当に助かっています。会社のイベントへ家族ぐるみでどうぞという社風で、とても恵まれた環境で働いています」。上げた成果がそのまま実績になる充実感。契約社員から正社員へというこれからのモチベーションは高い。

仕事とプライベートが両立した環境をフルに活用する東海林菜摘子さん
子どもたちとのコミュニケーションにも余裕ができた

働きやすい環境をさらに求め続ける

 飛塚社長は、数年前からボランティアとして小学校でプログラミングを教えていた。社員や在宅ワーカーも関わり、昨年度は正式な授業に採用されるまでになった。今年度はICT支援員として社員を学校に派遣し、小学生に一人一台端末活用促進に取り組んでいる。

 「起業当初は働き方の課題解決をしていこうと思っていたのですが、それが社会の課題解決に変わり、結果として子どもの未来を作っていきたいと考えるようになりました」。「キッズプログラミング教室」も、未来を創る子どもたちへの強い期待の表れともいえる。

 社会貢献への意識も強い飛塚社長は「これからも働きやすい環境づくりを進めていくことに変わりはない。そのためにAIを始め、活用できるものがあれば積極的に採用していきたい」と語る。どのような働き方の「Solution」が展開されるのか、注目していきたい。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

社員全員がテレワークを活用

効果
一人ひとりの環境や事情に合わせて、細かな制度を設けない柔軟な対応が、男性だけでなく、とくに子育て期間中の女性へ働きやすい職場環境となっている。
取組2

個人のさまざまなスキルアップを奨励

効果
残業がなく定時で終えたあとの時間は自分自身の研鑚に使える。資格の取得、独学でのプログラミング言語の勉強、副業でのシステム開発、Web制作を手がける社員もいる。
取組3

標準工数に基づいた合理的な成果主義

効果
業務ごとに標準工数を設定して、作業実績や売り上げで社員のやる気や頑張りを把握。この成果主義によって、働く様子が見えないテレワークであっても会社と社員との信頼関係が築かれている。

COMPANY DATA企業データ

柔軟な働き方ができる環境作りを推進する

T-Solutions株式会社

代表取締役:飛塚嗣公
本社:山形県山形市
従業員数:18名(2021年9月現在)
設立:2015年
資本金:300万円
事事内容:クラウドコンピューティングに関わるコンサルティング、ソフトウェア開発、システム構築、販売、及び保守・運用業務。一般事務及び各種軽作業の請負。学校、各種施設、企業及び個人における人材育成事業。フランチャイズシステムの構築及び運営。地域活性化に関する事業

経営者略歴

飛塚嗣公(とびつか・つぐのり) 1975年福島県生まれ。
セールスエンジニア、システムエンジニアを経て、前職にて地方に雇用を生むことを目的としたアウトソーシングセンターの設立及び在宅事業の立ち上げ等新規事業の創出に関わる。「新しい働き方と未来を創るしごと」をするために2015年8月に起業。T-Solutions株式会社を設立し、どこでも仕事ができるようなシステムの提案、開発、構築といったテレワークを推進するサービスの展開や、同社に登録している在宅ワーカーを活用した業務請負事業を行っているほか、キッズプログラミング教室の運営、フランチャイズ展開も行っている。デジナーレ情報学研究所 理事。湯沢市ビジネス支援センター(ゆざわ-BIZ)ITアドバイザー。