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SCSK北海道株式会社

業種

学術研究,専門・技術サービス業

地域

北海道・東北

従業員数

100〜300人

File.101

様々な試行錯誤を重ねて実現した働き方改革 「SCSK北海道株式会社」の場合

時間外労働の削減

2022.01.24

SCSK北海道株式会社

 住友商事グループのIT中核企業であるSCSK株式会社の地域子会社「SCSK北海道株式会社」(北海道札幌市)。DX事業、ソリューション事業、システム開発事業、IT基盤ソリューション事業と専門性の高い高付加価値サービスの提供を通じ、道内企業の経営課題解決をITでサポートしてきた。24時間365日稼働し続けるシステムを相手にする業種の特性から、長時間労働・休日出勤の多さ・休みを取りづらい風土があった。2012年という比較的早い段階から取り組んできた同社の働き方改革とは。

トップダウンで働き方改革を推進

 優秀な技術者が難しい問題を一人で抱え、残業を余儀なくされる現状を打破するにはどうしたらよいか試行錯誤を重ねてきた。「最初は安易に考えていて、社員に残業するな・休みを取れと言っていました。宣言することで収まるという考えでしたが、実はこれはプレッシャーを与えるだけでした。社員のせいにしたり、社員まかせにしても現状は変わらない。改革は会社側がやるべきことで、仕組みや環境を整えることが大切だと気づきました」と石丸清文社長は語る。

働き方改革を進めるにあたり様々な気づきがあったという石丸清文社長

 以来トップダウンで働き方改革を進め、社内に改革の必要性を強いメッセージとして送り続けた。その結果、「夜遅くまでいる社員や休まない社員=良い社員」という社員の固定観念を覆し、「優秀な技術者が難しい仕事を一人で抱え込む」状況を解消させていった。

 しかし、社長には次のような心配もあった。
「一人あたりの残業を削減するとそれまで残業によって達成していた業績も減り、その結果、利益も減じる……。これをカバーする対策が必要だ」

 そこで、社長は管理部やスタッフと色々な施策を考え、試行錯誤を重ねた。改革を始めて2〜3年、成果が出ずに苦悩する時期もありながら、その後それらの施策は順調に稼働していったという。

ITによる効率化や細部の見直し

 「スマートワーク・チャレンジ20」と銘打って、月平均残業時間20時間・年次有給休暇取得日数20日を目指した。テレワークプラットフォームを入れたモバイル端末をラインマネージャ、営業部員に配布し、アプリにより全社員の予定を把握。打ち合わせや在宅勤務にオンライン会議を活用。RPAの導入などITによる効率化を図った。

 社内説明資料を簡素化し作業時間を削減。会議の内容を精査し不要な会議を減らした。フレックスタイムを活用し、頑張る日や早く帰る日などメリハリのある業務の繁閑を平準化させた。スケジューラに年次有給休暇の予定をあらかじめ登録することで皆の状況を見えやすくし、計画的取得を進めた。

 ノー残業デーの導入。全社一斉年休取得日や取得奨励日を設定。年次有給休暇を使い切った社員への5日間の追加休暇「バックアップ休暇」を制度化。これらの細かな施策の数々により、2012年度には月平均残業時間34.6時間/年次有給休暇取得日数14.4日だったのが、2020年には同17.8時間/同16.6日となった。

 こうして浮いた残業代は全額社員に還元し、会社の本気度を示し組織の取り組みを促進した。当初は残業時間・有給休暇取得日数の組織目標を達成した社員に対してインセンティブとして還元していたが、現在では全社員に対して20時間分の定額残業手当として支給している。

テレワークへの取り組み

 働きやすくやりがいのある会社を目指し、在宅勤務にも早くから取り組んできた。2015年に在宅勤務トライアルを開始し、2016年から制度化、2018年にはオンライン会議システムを全社に導入した。こうした下地があったためコロナ禍のテレワークもスムーズに行われた。在宅勤務率はコロナウイルスの状況に応じて最大75%、2021年7月時点では50~60%ほどで推移している。介護や育児が働き方の大きなキーポイントになる現状で、コロナ終息後もテレワークは柱になっていくと社長は語る。

オンライン会議システムを活用

育児と仕事の両立を目指し

 かつては結婚や出産を機に多くの女性社員が退職してしまい、せっかく育った優秀な人材が退職してしまうことが社内で長く問題視されていた。大企業並に福利厚生も充実しているのに何故かと疑問に思った社長は、女性社員とのオフサイトミーティングの開催や、全女性社員が参加する研修を通じて会社への提言をまとめてもらうなど、女性社員の声を集めた。その結果、女性社員が働きやすい環境が整っていなかったことを痛感。育児と仕事の両立への施策を始めた。

 また、育児休業取得者は取得前や復帰前に、本人・上長・人事で三者面談をし、育児休業を安全・安心・スムーズに利用できるようにした。会社や上長が理解を示すことで、遠慮せずに取得してもらい、復帰後の不安についても細かく相談・対応できるという。保育園の待機児童にさせない施策として、「企業主導型保育所」の制度を活用。「保育事業者設置型」の保育所と企業が利用契約をすることで、社員の子どもが通えるようになるというものだ。これまで7名が利用しており、社員の配偶者が職場復帰をする場合もこの制度が使えるという。

 有志が昼休みに集まりミーティングをする「子育てカフェ」を開設。毎回テーマを決めて、育児と仕事を両立するアイデアなどの情報交換を行っている。このように上司や同僚、周囲とコミュニケーションをとる機会を日頃からさまざま設けることが悩みや不安を解消する手立てになっている。

 これらの取り組みの結果、女性社員の育児休業取得・復帰率は100%となっている。男性の育児休業取得者も徐々に増え、これまで4名が取得。5ヵ月、6ヵ月、8ヵ月、12ヵ月といずれも長期で休業を取得している。

1年の育児休業を取った男性社員の例

 サービスインテグレーション部の藤田洋さんは、取得者の中でも最長1年間の育児休業を終えて取材1ヵ月前に復職したばかり。両親からは「大丈夫なの?」と不安の声があったが、本人は取得することにまったく抵抗はなかったという。上司からも「働く30〜40年のうちでもなかなかない貴重な時間だから」と好意的に受け入れられたとか。戻ってきた時はチームに「おかえり、久しぶり」と声をかけられ、不在時のことを色々教えてもらうなどと温かく迎えられた。

1年間の育児休業から復職したばかりの藤田洋さん

 藤田さんは復職後も在宅半分・出社半分の割合で勤務している。「子どもが生まれる直前に会社まで10分ほどのマンションから、50分離れた一戸建てに引っ越しましたが、在宅勤務が可能なため影響はあまりありません。子どもに晩ごはんを食べさせる時間、お風呂に入れる時間も十分にあります」と藤田さん。年次有給休暇も気軽に取ることができるため、子どもが生まれる前は夫婦でのドライブに、現在は子どもを公園やテーマパークに連れていくなど月に1〜2日年次有給休暇を利用しているという。

年次有給休暇を取り子どもとテーマパークへ

入社時と働き方がまったく変わった

 入社13年目のサービスインテグレーション部サービス開発課の細藤礼美さんは5歳と2歳、2人の子どものお母さん。この日は子どもが熱を出したため、会社でのインタビューの予定をしていたものの、急遽自宅でのリモート取材に変更。細藤さんは普段から週の半分は在宅勤務をしているため、問題なくスムーズに取材に対応してくれた。

この日、急遽リモートで取材に応じてくださった細藤礼美さん 

 第一子は1年半、第二子は1年間の育児休業を取得。最初の時は復職後について不安を抱き、日々のタスクが増える中で時間的にも体力的にも両立できるか心配したという。しかし、実際に復帰するとギャップもなく、すぐに慣れた。8:00出社・16:30退社のフレックス制を利用し、保育園の送り迎えも問題なくできた。

 前出の「企業主導型保育所」制度導入のきっかけになったのは細藤さんだ。「復職時期も迫る中、許可保育園にすべて落ちてしまって途方に暮れていた時に制度を知りました。すぐに管理部長へ相談しに行ったところ、翌日には保育園へ出向いて企業契約を結んでくださったのです」と細藤さん。もちろん男性社員も対象としており、後輩社員のための道を作れたと感じている。

 入社当時は働き方改革という概念がなく、残業が多いのが当たり前という風潮。先輩たちは子どもができたら働いていけないと嘆いていたという。第一子を出産するまでは不安が大きかったが、会社の制度は様々に改革され、制度だけでなく社風自体も変わってきた。今では安心して働ける会社だと思っている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

スマートワーク・チャレンジ20

効果
ITによる効率化や細部を徹底的に見直し改革することで、残業の大幅減と年次有給休暇取得率のアップにつながった。社員の間にあった残業に対する固定観念も払拭された。
取組2

在宅勤務への取り組み

効果
早くから取り組んでいたことで、コロナ禍の対応がスムーズに行われた。働き方が多様になり、社員にとって働きやすくやりがいのある会社になっている。
取組3

育児と仕事の両立をめざす取り組み

効果
女性社員の育児休業取得・復帰は100%となり、男性の育児休業取得者も徐々に増えている。「企業主導型保育所」、三者面談、「子育てカフェ」などきめの細かい対応でサポート。

COMPANY DATA企業データ

先進的ソリューションで顧客のビジネスを支援する。

SCSK北海道株式会社

代表取締役社長:石丸清文
本社:北海道札幌市
従業員数:160名(2021年7月現在)
設立:1990年1月
資本金:1億円
事業内容:DX事業、ソリューション事業、システム開発、IT基盤ソリューション事業

経営者略歴

石丸清文(いしまる・きよふみ) 1957年生まれ。2012年代表取締役社長に就任。好きな言葉は「コツコツ勝つコツ」。