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株式会社シアンス

業種

情報通信業

地域

中部

従業員数

50〜99人

File.104

確固たるトップダウンで働きやすい職場作りを推進 -地域密着型のITサービスを展開する「株式会社シアンス」の場合-

時間外労働の削減

2022.01.24

株式会社シアンス

 「ITソリューション」「システム開発」「Webマーケティング」の3つの事業を柱とする株式会社シアンス(新潟県新潟市)。1989年の創業から、地域に密着することで高付加価値サービスやきめの細かいサポートを提供してきた。7、8年前から、首都圏の企業が国内の地方企業に開発を依頼するニアショア開発をスタートさせた。2016年には県内唯一のニアショアベンダーとして認定され、「ニアショアアワード2018」に選定されるなど、着実に業績を高めている。

危機感に直面して、社員こそ財産だと痛感

 「このままでは会社が危ない・・・」。15年前、野口一則社長は大きな危機感を感じたという。IT業界は長時間労働が付きものといわれる。同社も例外ではなく長時間労働が常態化していた。「社員に働く意欲が見られなくなり、笑顔が消え、殺伐とした雰囲気が漂っていました」と野口社長。50人ほどの社員から10人ほどが離職したため人手不足に陥り、その結果業績が悪化し経営が困難になった。

 社員は会社にとって最大の財産だと痛感した野口社長は、経営上の最重要課題としてワーク・ライフ・バランスを重視した働き方改革に取り組むことを決意した。

最重要課題としてワーク・ライフ・バランスに取り組んだ野口一則社長

 長時間労働を是正するために、夜10時以降の深夜業務と休日労働を禁止した。繁忙期は社員の負担を軽減するため、社外から要員を確保した。さらに2009年年次有給休暇の取得促進、2010年テレワーク導入、2014年育児休業・育児短時間勤務(9:00~16:00)の取得奨励と、積極的に推進した。

 時間外労働時間の削減には強く取組を進めた。時間外労働がひと月に45時間を超えないように管理し、30時間を過ぎたらあと15時間しかないと「注意」するシステムを採用。つまり、限られた時間の中で効率よい仕事をしようということだ。野口社長は「社員が安心して長く働ける会社にするという信念のもとに辛抱強く推し進めた」と語る。

 こうした施策を積み重ねた結果、社員の仕事と家庭生活が両立できる職場環境を整えている企業として、2018年「働きやすい職場づくり推進賞」(新潟市長賞)を受賞することになった。

「困ったときはお互い様」の社風が根付く

 こうした取り組みのなか、離職者が減り、年次有給休暇の取得率は81.7%に達した。以前の殺伐とした雰囲気は払拭され、子育て中の社員は保育園への送迎や、仕事中に授業参観のため一時中抜けできるなどの時間が確保でき、帰宅時間が早まったことでプライベートな時間への有効活用が進んだ。こうした背景には、時間的なゆとりによって社員間に「困ったときはお互い様」という社風が定着したからだ。

 仕事と子育てとを両立したい社員は、育休→短時間勤務→フルタイムに復帰、またはテレワークという柔軟な働き方が用意されている。さらに2018年には傷病を持つ社員にも短時間勤務を適用するなど対象範囲を拡大し、健康経営にも取り組んだ。

 ITソリューション部システム課の川原輝幸さんは、第3子が生まれたばかりで育休に入ったばかり。「2014年の第1子から制度を利用しています。2週間は午前9時から午後4時までの勤務になるのですが、当初は奥さんってこんなにやることがあるのかと驚きました」。短時間勤務の効果は仕事への取り組み方に現れた。効率化を考えるようになり、同じ時間内でも仕事量が増えたと言う。現在は後輩社員の適材適所など、効率の上がる人員配置の役割も担っている。

短時間勤務で仕事の効率化を考えるようになったと川原輝幸さん

 同社にはアスリート社員として日本代表の山岳スキーヤーも在籍している。過酷なスカイランニングというスポーツでも国内トップランクにあり、週末の国内レースだけでなく海外への遠征もあるが、仲間と同社の経済的支援も受けて「仕事とプライベート」を上手に両立させている。これも「お互い様」が機能している現れだろう。

風通しのよいコミュニケーション

 「社員は最大の財産」と気付いた野口社長は、社員同士のコミュニケーションも重視する。例えばビアガーデン開催や2カ月ごとの全社会議のあとに開かれる1時間ほどのささやかな飲み会。一般的に会社の「宴会」は敬遠されがちだが、同社の場合はそうではないようだ。コロナ禍でこうしたイベントは中断されているが、社員から開催して欲しいという声もでているそうだ。常時用意されている本格的なコーヒーの試飲会を野口社長が主催するなど、社員とのコミュニケーションは良好だ。

風通しのよさも働きやすさの重要な要素

 デスクワークの多い同社は運動不足解消に向けて、新潟市が毎年主催する「ウォーキングチャレンジ」に参加している。これは4週間の平均歩数8,000歩/日を目指すイベントだが、野口社長自ら先頭に立って参加している。社員の参加率は約70%と高い。

 こうした社内の雰囲気を象徴するのが、社長室のないことだろう。ワンフロアのオフィスは一見しただけでは社長席がどこか分からない。社員の先輩・後輩だけでなく社長との垣根も低い風通しのよさが同社のパワーになっているのかもしれない。

 平均年齢32歳。20代、30代が70%という若い会社。15年前の危機感から取り組んだ「働き方改革」が「働きやすい職場作り」として実を結んだが、野口社長は「楽をして仕事するためと思って欲しくない。一人ひとりが仕事と家庭を両立して働ける会社にするためのものであり、働くことに意欲を持って事業の安定と発展に貢献して欲しい」と強調する。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

強気のトップダウンで実行

効果
社長が危機感を真剣に受け止め、半ば強引に改革を行った。、安心して長く働ける会社にするという目標達成のために推進し、結果として業績を上げることができた。
取組2

仕事と家庭生活が両立する職場環境

効果
深夜・休日勤務の全面禁止や年次有給休暇の取得促進に加え、多様な働き方(短時間勤務、テレワークなど)の選択肢を用意した結果、「困ったときはお互い様」の社風が芽生え、社員の結束力も高まった。
取組3

健康やコミュニケーションにも留意

効果
恒例のウォーキングチャレンジ、日々のストレッチングなどを実施する一方、ビアガーデンや全社会議後の軽い飲み会など、社員同士だけでなく、社長とのフラットなコミュニケーションが形成された。

COMPANY DATA企業データ

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株式会社シアンス

代表取締役:野口一則
本社:新潟県新潟市
従業員数:63名(2021年4月現在)
設立:1989年7月
資本金:3,600万円
事業内容:ITソリューション、システム開発、Webマーケティング

経営者略歴

野口一則(のぐち・かずのり) 1947年新潟県生まれ。明治大学卒業後、日本オリベッティ入社。1989年株式会社シアンス設立、代表取締役社長に就任。