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株式会社ユーメディア

業種

製造業

地域

北海道・東北

従業員数

100〜300人

File.107

社員の視点を大切に、全社を巻き込む働き方改革を実現 ー広告・印刷・プロモーション支援企業「ユーメディア」の場合ー

時間外労働の削減

2022.01.24

株式会社ユーメディア

 平均年齢40歳と若手社員のエネルギーあふれる「㈱ユーメディア」(宮城県仙台市)。もとは1960年に「今野平版印刷㈱」として創業。情報サービス業が急速な成長を遂げた1990年代に、印刷をはじめあらゆるメディアを駆使したコミュニケーション支援企業へと大きく舵を切り、社名も改称した。印刷製造業の業態や常識を打ち破るべく、2009年という比較的早い時期から独自の働き方改革を重ねた。職場の環境は徐々に変化し「魅力ある職場づくりモデル企業表彰」(宮城県)や「新ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)にも選定されている。

一気呵成トップダウンの働き方改革を決意

 2003年に経営後継者として入社した今野均社長。当時の職場は「不夜城」と呼ばれるほどの長時間労働、さらに休みにくい働き方が常態化していた。そうした状況について悩みがないか同僚たちに尋ねると、「どうせ言っても無駄でしょう」という返事だったという。「非常に悔しい思いがし、会社を変えたいと心に決めた」という今野氏は取締役になるや、働き方の改革に取りかかる。自分たちが働く環境について、社員が発言できる体制にしたいという願いもあった。

強い志を持って働き方改革に挑んできた今野均社長

 折しも、営業成績のよい女性社員の結婚退職の願いが舞い込む。それまでも結婚や育児と仕事の両立が難しいことが理由で辞めるケースは多く、女性社員の平均勤続年数は4年と非常に短いものだった。事業の多角化や立ち上げの中で、専門性や挑戦意欲の高い人材の獲得や育成が急務となり、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人材が活躍できる土壌が必要との認識もあった。危機感を感じた今野社長は、一気呵成に進めるべくトップダウンの改革を開始した。

 まずは結婚・出産・育児といったライフステージに合わせた制度のロールモデルを作る。社員とコミュニケーションを取りやすい中小企業ならではの強みを活かし、それぞれの社員の状況に合わせプラスアルファを加えたりと、きめ細かくフレキシブルな内容にしていった。育児で時間に制約がある社員も事業の中核でキャリアを継続できるようにすることを念頭においた。

 育児休業は、子どもが2歳になる月末まで取得可能、短時間勤務などの「子育て勤務」は小学校就学まで利用可能とするなど、法定を上回る両立支援制度を整備した。それにより女性の育児休業取得率は100%。これまで対象となった約10人全員が柔軟に時間を選べる短時間勤務で復職。結婚や出産で辞める女性が減り、女性の平均勤続年数は4年から9.4年に伸びたという。

▲トップダウン型改革から社員参画型に移行▲

 女性活躍推進の取り組みを進めるうち、今野社長にはひとつの気付きがあった。「女性女性と言い続けると、男性社員は自分には関係ないと感じてしまう。女性がパフォーマンスを発揮するには、同僚や上司など男性社員の協力が不可欠である」と。働き方改革の必要性が社員にも浸透し始めたこともあり、2015年に各部門の推進メンバーで組織する「新しい働き方委員会」を立ち上げ、トップダウンの改革から社員参画型へと移行した。職場環境について社員が発言できる会社にしたいという今野社長の願いがまた一歩前進した形だ。「新しい働き方委員会」は現在「ワークイノベーション委員会」へと発展し、「過去最高の生産性と、仕事の質の最大化を実現する」という大きな目的を掲げ全社的なムーブメントになっている。

 「ワークイノベーション委員会」によりオフィスの閉館時間を21時と定め、申請と許可がなければそれ以降残業はできない体制を作った。委員会には男性目線と女性目線の2つの部会があり、それぞれ面白い視点と手法のイノベーションが生まれている。

「イクボス部会」と「イクメンバッジ」

 男性社員が集まって職場について語る「イクボス部会」から生まれたのは「イクメンバッジ」。月初めにその月の定時退社日を宣言して、各自が決めた日が書かれたバッジを身に着けて周知するというものだ。お客様や納期があっての業務であるため、全社的に何曜日が定時退社日と設定することは不可能。事前に定時退社日を決めることで段取りを工夫するようになり能率はアップし、バッジをつけることで帰り際に仕事を頼まれるということもなくなったという。バッジを見たお客様から尋ねられ、お褒めの言葉やお気遣いをいただくこともあった。

 

定時退社日を宣言・周知する「イクメンバッジ」。男性社員に限らず全社員が対象だ

若手社員による「project blUe(プロジェクト・ブルー)」

 入社5年目、CS事業部の秋山日奈さんは若手社員によるプロジェクト「project blUe」のメンバーでもある。もとは2020年の創業60周年事業プロジェクトに端を発したもの。一般的な記念誌や式典とは違った目新しいことを企画するため、当時入社2〜3年目の秋山さんほか若手社員4名が抜擢された。大きな節目の事業を任せられることに不安もあったが、やりがいを感じたという。

 その後プロジェクトに他の若手社員も加わる中、新たなコンセプトのもとで活動が広がっていった。「10年後の70周年の時に、この会社で活躍していたいと思える会社を、自分たちの手で作っていこう。与えられるだけでなく、どうやって自分たちで作っていけるか、とりあえず何でもやっていこうと。若さ→青い(未熟、青二才など)のイメージとユーメディアの特徴を活かした新しい色という意味でblUeになった。一見してblueとは読めないイビツながらも独創的な形は、ユーメディアの新人ならではの青さで、枠にとらわれない新しい価値を生み出していくという思いを込めた」と秋山さん。

 現在チームは4つ。旧工場の利活用の可能性を広げる「チームINKS」。印刷の可能性を実験・追求し新たな価値を創出する「プリント研究室」。東北のクリエータープラットフォームの立ち上げを図る「HAKUSHI」。食を通した社内活性化と新たなビジネスの創造を探る「チームサラダ」など、個性豊かなチームが揃う。

 若手社員が社内で活躍するシーンを自分たちで開発し創造していく。自由に発想しプロジェクトを進めていくことで、自発性が増し、企画力もついてくる。これは社員自身による働き方改革でもあるようだ。

     

「project blUe」について語る秋山さん。イクメンバッジはこのように付けている

経営との対話を深める「あしたLab.」

 2019年には若手社員が参加して経営を考える「経営活性化部会(現在は「あしたLab.」と部会名を変更)」を創設。企業風土の活性化と未来を創る人材の育成を目的に、立候補で誰でも参加ができる組織で、現在は若手と中堅で10名ほどが参加している。月1回のディスカッションをもとに経営会議に提言し、経営との対話を深める。「会社の未来は自分たちが創る」と視座の向上、部門を超えた取り組みにより、社内に風通しのよさもあたえているという。

 地域ブランディング事業部の東海林広高さんは「あしたLab.」のメンバーのひとり。もともと経営活性化の組織だったが、コロナ禍により、社内コミュニケーションの活性化も担う組織になっているという。四半期に一度行う「サンキューカード」。感謝の気持ちを相手に伝えるタイミングを作ろうと始めたもので、メッセージを書いたカードを本人に直接手渡したり、掲示板に掲載する。円滑なコミュニケーションを図るツールになっているという。

「あしたLab.」について語る東海林広高さん

 「あしたLab.」は2年連続でオンラインの新入社員歓迎会を開催した。早く組織になじんでもらいたいが、会社外での交流ができないご時世。新入社員は上司の顔もマスク越しでしか見られないという現状もある。オンライン中は突然社員の子どもが画面に現れたり、会社では見せない面が見られたりということも。マスクを外し、お酒を飲みながら雑談を楽しむこの会は、社員の満足度も高かったという。

ハイブリットワークとオフィスリニューアル

 働き方改革の大きな柱のひとつは「ハイブリッドワーク」。出社してオフィスで働くこととテレワークのメリットを融合させたもので、仕事内容や制約のあるなしに関わらず、全社員を対象としている。働き方は全社一律ではなく、チームごとに成果を生み出すため模索しているという。

今野社長自らフリーアドレスで仕事をする

 働ける場所が自由に選べるという点でテレワークと相性がいいフリーアドレスを導入し、「オフィスリニューアル」にも力を入れてきた。社員参画の「ワークスペースデザイン部会」により進められている。職種により異なるが、多くの社員は個人専用の机を持たず、フロア内のデスクスペースに自由に着席場所を選んで仕事をする。私物はセキュリティボックスに入る分だけなのでオフィスが整理整頓されやすく、スペースも広々と使える。業務の効率化、生産性の向上、部署を超えた社内コミュニケーションの活性化などメリットは大きい。


「社員が集うPark(公園)」と名付けられた会議室

 フロア内には数か所のスタンディングミーティングスペースを設け、打ち合わせが気軽にかつ短時間で行える仕掛けになっている。会議室を「社員が集うPark(公園)」と定義、ミーティングやソロワーク、食事など社員がいつでも自由に使えるスペースとしている。

広々としたフロアにスタンディングミーティングスペースが置かれている

 社員を巻き込んでの様々な働き方改革の結果、離職率は7.8%から4%へと減少。本業とは別の様々な部会での活動は、ともすると業務の増加にもなるところだが、社員は積極的に参加している。従業員エンゲージメントの高さを生んだ働き方改革の成功例とも言えそうだ。

※事業内容、所属部署名等は2021年7月の取材時のもの。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

働き方改革を全社ムーブメント化

効果
様々な部会を作り、性別や年齢、キャリアが多様な社員の視点・アイデアを吸い上げることで、細やかでユニークな施策が講じられてきた。社員が裁量権を持って改革に取り組むことによって、主体性と変革意識を高め、従業員のエンゲージメントの向上にもつながっている。
取組2

生産性向上のための柔軟な働き方

効果
出社とテレワークを融合した「ハイブリッドワーク」。きめの細かい育児休業制度や子育て勤務体制。「アニバーサリー休暇」や「リフレッシュ休暇」、「イクメンバッジ」の導入。オフィスのフリーアドレス化。チームや得意先の事情などに応じて最も生産性の高い働き方をリーダーが柔軟に判断できるようにしている。
取組3

社内コミュニケーションの活性化

効果
経営との対話を深める「あしたLab.」。部署をまたがる社員による各種部会。オフィスのフリーアドレス化。「社員が集うPark(公園)」会議室。サンキューカード。オンライン新入社員歓迎会。様々な形で社内コミュニケーションを促進させることで新しい価値創造と仕事の質の最大化につながっている。

COMPANY DATA企業データ

おもいを、カタチに。みんなを、ゲンキに。私たちのすべては、その実現のために。

株式会社ユーメディア

代表取締役社長:今野均
本社:宮城県仙台市
従業員数:136名(2021年7月現在)
設立(創業):1960年1月
資本金:6000万円
事業内容:コミュニケーションサポート・地域ブランディング・地域メディア運営・エリアブランディング

経営者略歴

今野均(こんの・ひとし) 1996年福島大学経済学部卒業。2003年株式会社ユーメディアに入社。2006年取締役に就任。2008年専務取締役に就任。2013年代表取締役専務に就任。2014年代表取締役社長に就任。座右の銘は「有志竟成(ゆうしきょうせい)」=志を曲げることなく、堅持していけば、必ず成し遂げられる。