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喜多機械産業株式会社

業種

卸売業,小売業

地域

中国・四国

従業員数

100〜300人

File.108

働き方改革から働きがい改革へ。創業以来受け継がれてきた社員への想い。 ―マルチな事業で業界をリードする「喜多機械産業」の場合―

時間外労働の削減

2022.01.24

喜多機械産業株式会社

 創業から95年、法人設立から60周年を迎える喜多機械産業。建設機械・資材の販売・レンタル・修理を中心に、林業機械、農業機械の販売・レンタル・修理、自然エネルギー事業、汚水処理プラント・濁水処理などによる環境保全事業、ユニットハウス事業、トレーニングマシンなどを扱うスポーツ関連事業など、お客様の要望、地域の発展に応えることで、その事業内容は多岐に及んでいる。地元徳島を擁する四国圏を中心に、近年ではグローバルな事業も展開している。また徳島県内で8社目となる「プラチナくるみん」認定をはじめ「ユースエール」認定、「スポーツエールカンパニー2021」認定、「健康経営優良法人』認定を受けており、雇用や労働の問題に対しても真摯に取り組んできた。そこには常に、お客様のために、地域の発展のために、そして社員のために、という想いがある。

地域の発展、お客様の願いを叶えるためには、第一に社員を大切にすること

 創業以来、社員を大切にし続けてきた喜多機械産業。その想いは現在の代表取締役である喜多真一社長まで綿々と受け継がれてきた。また、性別を問わず活躍できる環境風土があり、初代の社長であった喜多社長の祖父が地元のラジオ番組に出演した際に、女性の社会進出に対して問われ「男性、女性という分け方ではなく、その人その人に適した仕事をしてもらうべきだ」と話した音源が残っているという。福利厚生にはとても力を入れており、社員想いの企業であることも間違いない。

創業90年以上の喜多機械産業。喜多真一社長は4代目になる。

 喜多機械産業のコア事業は建設機械・資材の販売・レンタル・修理である。建設業は、社会的な重要度が高く、安易に工期を遅らせたりするわけにはいかない。その反面、天候不良による遅れや、人材不足などの影響もあり長時間労働が状態化してしまっているのが現状だ。そういった状況にあるお客様に合わせた働き方を余儀なくされていた喜多機械産業も、必然的に長時間労働になっていた。また、『時間をいとわず働くことが会社への貢献』という考え方が、建設業界だけではなく、一般的にもいまだ払拭できているとは言い難い。そんな中、残業を減らし、週休二日制にして、今までの通りお客様の要望に応えられるのか。問合せがあれば対応しなければならないのではないか。会社が容認しても取引先の手前、年次有給休暇(以下、年休)・育児休業を取得するのに後ろめたい思いはないか。どれほど会社が社員を思い遣っていても、それだけでは社員の不安は払拭されない。そして現場の声は、いつも日常業務に掻き消されてしまうのだ。「会社が把握しているよりも、はるかに多くの長時間労働が行われていたのかもしれません」と喜多社長は言う。

 しかし創業以来受け継がれてきた社員第一の精神は決して揺らぐことはない。2017年5月に本社ビルが建て替わり、新たな採用者が増えてくると「お客様からはもちろん、就職先としても選んでもらえるような会社にならなければいけない」という想いがより一層強いものになっていった。折しも2016年度には国土交通省が標榜する『i-Construction』が本格的に推進され始め、土木・建設業界でも生産性向上、そして働き方改革に対する意識が少しずつだが向上してきた時期でもあった。

次々と打ち出される施策と勤怠システムの導入

 手始めに毎週水曜日を『早よ帰らなあかんデー』と称し、早帰りをする日とした。次いで、労働状況を『見える化』し、労働時間や休暇取得状況を全部門で共有。状況を分析することで、様々な課題が明確になった。例えば、技術部門ではベテランと新人の技術の習得度が違うため、一部の社員に残業が集中してしまうことが往々にしてある。そこでスキルを可視化した『スキルマップ』を作成。技術習得度の差で生じてしまう作業の集中や、技術力不足による過重労働が起こることを改善した。明確な基準を設けることで、技術者当人にとっても技術向上の目安になる。他にも、顧客からの要請が集中してしまった社員がいた場合に仕事をシェアできる体制を整えるなど、働き方を変える施策を次々と実行に移していった。

 そして2019年、スマートフォン(以下、スマホ)で使用できるアプリケーションソフトウェア(以下、アプリ)を利用した勤怠管理システムを導入。スマホは会社から支給した。導入の不安ついて「当初は、スマホやアプリの扱いに戸惑う社員もいましたが、1年も経たないうちに便利だねって言いながらみんな使っていました」と喜多社長は語る。最近ではスマホの普及率も高まっており、年配の方やデジタルが苦手という人でも、簡単なスマホアプリであれば使用することに抵抗感が少ないようだ。

 アプリ自体は非常に簡単な操作で出退勤記録をつけることができるため、使う側は負担が少ない。また年休の申請・承認もアプリからできるため、精神的にも申請がしやすい。『上長に申請用紙を書いて提出する』その行為自体がストレスで、年休の取得を見送ったことがある人も少なくないだろう。そして何よりアプリでの出退勤記録は手書きの出勤簿とは比較にならないほど、正確なデータを詳細に収集できた。そのデータを元に、毎月、部署ごとに残業時間や休暇取得の一覧表を作成。残業の多い社員のいる部署の長には個別に対応を指示したり、休暇の取得が少ない社員には業務内容を見直すなど、データを活用して具体的な改善策を講じることができる。「実際は何かきっかけがあって働き方改革に着手したというよりは、社会的、技術的な問題でできなかったことが、実現できるようになったというような感覚です」と喜多社長は話す。

目的はシステムの導入ではなく、社員の働きやすさの向上

 システムを導入することで、データの集積、分析は容易にはなるが、重要なのは「データをどう活用するか」だと喜多社長は言う。社員のアイデアも取り入れつつ、実行、検証、さらなる課題へ取り組み、そしてまた分析、検証、課題、改善へ取り組むことを繰り返していく。「システムを導入しただけで何かをやった気になってしまっては意味がない。『ルールだからやる』とか『言われたからやる』というのではなく、目的を理解し、納得し、能動的に行動することが大切なのです」と力強く話す喜多社長。効率化だけに焦点を置くのではなく、社員の気持ちを思いやるような取り組みも多い。例えばPCを起動すると早く帰ることを促す画面が表示されたり、ユニークなところでは『休暇取得者の机に申し送りの付箋を貼らない』という取り組みもある。休暇を取得することに後ろめたさを感じさせないための気遣いだ。こういった取り組みは、『時間外労働を8,4時間削減(約4割削減)、年休、特別休暇の取得数日は約3倍増加』と非常に大きな効果をあげた。

 そして喜多機械産業の働き方改革はますます加速していく。第2・第4土曜日は公休化。土曜日出勤の場合は定時退社の励行。さらに2019年6月からは第1、第3、第5土曜日を交代で休む『TOS(take off saturday)運動』を実施。これらの段階を経て、ついに2021年4月から完全週休二日制を導入した。

 『子育てと仕事の両立支援』にも力を注いでおり、産休、育休中の社員と密に必要な情報を共有するなど、復職まで孤立しないようなサポートも行っている。女性はもちろん、男性の育休取得も進んでおり、2020年には子育てサポート企業として、厚生労働省から「プラチナくるみん」認定を受けた。

社員を想い、お客様を喜ばせたいという気持ちがある限り、喜多機械産業の改革は止まらない

 「従来進めてきた『働き方改革』については、一定の成果が得られました。しかし、改革を後戻り・リバウンドさせないことも重要です。その上で仕事のやりがいに軸足を移し『働きがい改革』を最重要施策として推進しています」と喜多社長は語る。

ある日、喜多社長が、営業職の社員と一緒に取引先へ訪問すると、先方の社長は敢えてその社員にこう質問したという。

 「(完全週休二日制を導入したことに対して)喜多社長の気持ちはよくわかった。で、営業マンとしてはどうなの」と。

それを受けた社員は「お客様からのご要望もあり、自分としても土曜日に仕事をした方が良いのではないか、と迷ってしまうことがあったのも事実です。しかし、残業時間を減らし、完全週休二日制になり、業務を効率的にこなすためにしっかりと考え、行動することで、お客様に対しても今まで以上に良い提案ができるようになったと感じています。社会的にも働き方に対する考え方が変わっていく中で、弊社の取り組みはとても良いことだと思っているので、今後は『働き方改革』という面でも、お客様と共に歩んで行けるよう頑張ります」と答えたという。
会社が社員を想い、社員がやりがいを持つことが、お客の要望を叶え、地域を発展させる。喜多機械産業の理念を象徴するような素晴らしいエピソードだ。

 また女性管理職の登用や、男性中心だった営業職に女性を採用するなど、女性がさらに活躍できる環境づくりにも積極的に取り組んでいる。最近では女性が中心となったプロジェクトチームKITADONNAを発足させ、社内の課題や新たな取組などをこれまでになかった目線で考えた改革活動も行なっている。女性の活躍推進企業として『えるぼし』認定の基準も達成する見込みだが、喜多社長はそれを目的にしているわけではない。「『えるぼし』認定のために女性を登用するという考え方はありません。祖父の話にもあるように、男性だから、女性だからという判断基準ではなく、その人に適した役職についてもらうだけです。弊社では多数の女性が活躍しているので自然と認定基準に達する可能性が高い、ということだと思っています」

アプリ使用の具体例などを説明してくれた品質向上室 藤井愛室長。KITADONNAにも参加している。

 また2022年にはKTLA(キタローカルアカデミー)を設立する予定だという。これは社内のメンバーが講師になり創業から95年以上に亘り培われてきた『想い』や『技術』などの『キタイズム』を継承していくプラットフォームになるそうだ。

 他にも、2年に1度は自己負担なしで海外社員旅行にでかけたり、アフターファイブや休日に社員同士で楽しむことができる行事を開催したり、怪我や病気のため長期治療を余儀なくされた社員へのサポート、フレックス勤務、育児・介護時短勤務など様々な取り組みがある。

「ごめんね」ではなく「ありがとう」と言い合える仲間たちと共に。

 「経営と社員が一体となり『働きがい改革』を実現することで、今後3年間で社員満足度を80%、10年後の2030年までに社員満足度100%を達成することが目標です。互いの誕生日を祝い合い、サポートが必要な仲間を応援し『ごめんね』ではなく『ありがとう』といえるチーム。そんなチームでみんなと共に歩んでいきたいと考えています」。
まだまだ喜多機械産業の改革は止まらない。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

スマホアプリによる勤怠管理システムの導入

効果
スマホアプリで簡単かつ正確に勤怠を管理。労働時間や休暇取得状況を把握することができ、残業が多い部署の長に個別で指示を出したり、休暇取得の少ない社員の業務内容を見直すなど、具体的な改善策を講じることが可能。データを集積、分析することで見過ごされがちな課題を炙り出すことができた。時間外労働の削減、休暇取得数の増加を大幅に促進。
取組2

段階的な週休二日制導入

効果
第2、第4土曜日の公休化。第1、第3、第5土曜日の交代制休日など、段階的に導入していくことで、現実的な仕事の調整や取引先への周知につながった。また社員の意識も少しずつ変化し、いざ完全週休二日制に移行する際にも無理がないため、リバウンドが起こり難くなる。
取組3

意見や改革案を吸い上げる体制づくり

効果
産休・育休中でも必要な情報を共有するなど、コミュニティから孤立してしまわないようにすることで休業からの復職がし易いようになった。

COMPANY DATA企業データ

笑顔あふれ 選ばれ続ける企業を目指す

喜多機械産業株式会社

代表取締役社長:喜多 真一
本社:徳島県徳島市庄町三丁目16番地
従業員数:235名(2021年2月1日現在)
創業:1926年
設立:1961年
資本金:1000万円
事業内容:建設機械・資材の販売、レンタル、修理、林業・農業用機械の販売、レンタル、修理、太陽光発電システムの設置およびメンテナンス、汚水処理プラント・濁水処理システム等、各種プラント構築、建設ソフトウェアの販売、ユニットハウスの製造、販売、レンタル、トレーニング機器の販売、レンタル

経営者略歴

代表取締役 喜多真一(きた・しんいち) 
1989年、徳島県生まれ。神戸学院大学を卒業後、大手レンタル企業に入社し、建設機械のレンタル事業に従事。2013年、喜多機械産業に入社。海外事業プロジェクトなに参画する一方、地域のスポーツ支援活動、企業の社会貢献なども意欲的に取り組でいる。2017年、常務取締役・営業本部長に就任。2021年2月、代表取締役社長に就任。