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群馬小型運送株式会社

業種

運輸業,郵便業

地域

関東

従業員数

100〜300人

File.110

新卒採用をきっかけに働きやすい環境の整備を推進 ―総合物流業「群馬小型運送株式会社」の場合―

時間外労働の削減

2022.01.24

群馬小型運送株式会社

 群馬県高崎市で、会社設立より68年を迎える群馬小型運送株式会社。GKUグループの中核企業としてトラック輸送を中心とした総合物流業をおこなう同社は、食品から建材、化学品まで多様なモノを運べる対応力が大きな強みだ。「現在の保有車両の多くは、中型車両以上の大きさ。それでも社名に“小型運送”と残しているのは、会社の歴史を示す私たちの誇りだと考えている」と語るのは、創業者を祖父に持つ川手和義社長だ。

 前社長の父に伝えられた「運送業は人がいてこそなりたつ。だから働く人を大切に」という教えを受け継ぎ、働き方改革を推進する。

初めての「高卒・大卒の新規採用」に踏み切った理由

働き方改革について語る川手和義社長

 同社が働き方改革に取り組んだ背景には、ここ数年、メディアでも取り上げられるようになった「トラックドライバー危機」がある。物流は経済を支える重要なインフラの一つだが、ドライバーという「人」がいなければなりたたない。しかし労働人口の減少はもとより、規制緩和の影響による競争の激化と単価の下落、それにともなう長時間労働や不規則化といった面が特に若い働き手から敬遠され、トラックドライバーは慢性的な人手不足に陥っているのだ。

 さらにトラック事故防止を目的に、平成19年に国は道路交通法の一部を改正。大型車両を運転できる免許が「21歳以上、普通免許を受けてから3年以上」でないと取得できなくなったため、高卒での新規採用を控える傾向が業界全体で強まってしまったのだという。「しかし長期的に見れば、若くて優秀な人材を確保して育てていかなければ、会社としての成長もありえない。私たち中小企業にとって人材育成のコストは投資ではあるが、多少の時間や費用をかけてでも免許を取ってもらい、一人前のトラックドライバーとして育てていくことが会社の今後のためにも必須だと考えた」と川手社長。

 とはいえ中途採用が中心の業界にあって、8年前から始めた新規採用は同社にとっても創業以来初めての試み。パンフレットを作り、社長自らも高校や大学に出向き、合同説明会などでも会社の業務内容や働く環境をアピールしたという。しかし10代の学生にとって、物流企業で知名度のある会社といえば大手の宅配企業くらい。説明会では「何をする会社なんですか?」から始まり、「運転するだけなんですよね」といった質問に、「総務や営業もある、そこでは女性従業員も活躍している」と説明するのに追われたそうだ。

残業時間の短縮、スマホアプリでのスケジュール管理

 そうした新規採用の取り組みを通じ、トラックドライバーや物流業界が外からどんな目で見られてるか身をもって知ることは、社長就任から少しずつ進めてきた社内の労働環境の改善にも良い刺激になっていると川手社長は語る。

 労働時間が不規則で年次有給休暇が取りにくいという課題については、年5日の計画年休制度を導入。スケジュールをオープン化し、子どもの学校行事などへの参加も推進している。「前社長だった父は、子どもの運動会に来たことがなかった。それが運送業では『当たり前』という考えだったのだろう。しかし私たち世代は男性も子育てに積極的であり、ワーク・ライフ・バランスを適正に保つことは従業員のモチベーションにもつながると思う」と川手社長。

 道路状況や荷受け先の都合でドライバーの労働時間がまちまちになるだけでなく、それに合わせて事務職でも残業が常態化していた課題については、残業の事前申請制を導入することにより解消を目指す。業務が集中しそうな時期を社員が各々で把握し、「今日は何時まで残業が必要」と上司に申請し、その時間までに終わらせようという意識を高める効果があるという。

 ドライバーとの情報共有や配車指示は、従来の電話連絡からスマホアプリを使ったビジネスチャットに転換。電話では数分間かかっていたやり取りが大幅に短縮できただけでなく、運転中に応対できずに折り返すといった手間もなくなり、かなりの時短につながっている。また指示内容が履歴として残るため、行き違いがなくなったことも精神的な負担減になっているといった声も聞かれる。

女性も働きやすい環境、従業員の健康を考えた試み

「女性にとっても働きやすい環境です」と話す浦野友梨佳さん

 一昨年には、男女ともに従業員のユニフォームを一新。ドライバーは動きやすさや快適さとともに、人と接する仕事であることを意識してもらうためにも明るさや清潔感を重視したという。女性従業員の制服については、「夏冬ともに着心地がよく、デザインも気に入っている」と管理本部経理課の浦野友梨佳さん。浦野さんは4年前に大卒で入社したが、「他社に就職した友人から、『入社したてのときは通勤に着る服をそろえる余裕がないから、制服があってうらやましい』と言われることもある」ということだ。

 また社内には女性専用のパウダールームを設け、女性従業員専用の営業車を備えるなど、さまざまな場で女性も働きやすい環境の整備にも取り組んでいる。

コーポレートカラーをあしらったパウダールーム
配食サービス・オフィスおかんを利用した「プチ社食」

 家事や育児に忙しい子育て世代の従業員に人気を集めているのが、「プチ社食」だ。もともと食べることが好きで、「社員に健康的で美味しい食事をとってもらいたい」と考えた川手社長のアイデアで実現したもの。外部の配食サービスを利用し、事務所に置いた冷蔵庫に届く惣菜を1品100円で購入できる仕組みだ。どうしても食事の時間が不規則になりがちなドライバーのことを考え、いつでも冷蔵庫から取り出して食べられるようなサービスを選んだという。従業員はそれぞれ、弁当に一品プラスしたり、家に持ち帰って夕飯や晩酌のつまみにしたりと、便利に使っているそうだ。

 従業員の健康管理については、インフルエンザなど予防接種の費用補助、禁煙サポートプログラムの策定もおこなっている。

ベテランの力を生かし、新しい可能性を育む

社内に常備されたドライブシミュレーター

 ドライバーの運転技術向上や事故削減については、デジタルタコグラフ・ドライブレコーダー全車両装備や各種研修会のほか、社内にドライブシミュレーターを設置して定期的に運転訓練を受けるようにしている。また新人ドライバーに対しては、先輩ドライバーによる的確な指導が成長につながっている。

 新卒採用と同時に、雇用確保のための取り組みとして同社が採用したのが「定年の60歳から65歳への引き上げ」だ。メディアでは問題とされがちなドライバーの「高齢化」だが、同社ではそうしたベテランドライバーこそ財産だと川手社長は語る。「祖父は、『我が社に来てくれた人には、できるかぎり長くいてもらえ』が口癖だったそうだ。実際、再雇用制度で80歳過ぎまでがんばってくれた人もいる。もちろん体力的な問題はあるが、知識でも経験でもベテランドライバーには若手がかなわない力があり、それを最大限に生かせるのも我が社の強みといえるだろう」。

 同時に事務職も定年を65歳まで引き上げた。正社員として活躍できる期間が延びることが「働きがいにつながる」という意見も寄せられている。

働き方改革後の社内の変化について語る荻原嘉宣さん

 新卒採用は、毎年度1~3名で順調に推移。事務職も含めて新人が増えたことによる影響を、営業本部・本社営業所所長代理・萩原嘉宣さんは、「一人で抱えていたマルチタスクが解消され、非常に働きやすくなった。以前に比べ1~2時間早く帰れるようになったので、スポーツジムに行けるくらいのゆとりが持てるように。今後はこのゆとりを生かして、後輩を育て、自分も次のステージへ成長したい」と高く評価する。

 ベテランが支え、中堅が育んできた同社に、若い働き手が加わることで、さらに新たな課題や改善点も見つかってきたという。「中小企業の強みは、課題に対して柔軟に変化ができることだ」と川手社長。時代の変化に合わせ、大小の変化を積み重ねながら、同社は今後も従業員とともに進んでいくことだろう。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

新卒採用と定年延長で雇用を確保

効果
高卒ドライバーを含めた新卒採用の強化で、会社を支える人材を確保・育成。定年延長により、経験豊富なベテランドライバーを確保。新卒採用をきっかけに労働環境を見直し、年齢・性別を問わず働きやすい環境が整ってきた。
取組2

休暇取得の奨励

効果
スケジュールのオープン化で年次有給休暇が取得しやすくなり、子育て世代が学校行事に参加できるようになった。
取組3

残業しないための意識づけ

効果
事前申請をしないと残業ができないシステム、スマホアプリによる連携業務の効率化などにより、常態化していた残業の削減に成功。

COMPANY DATA企業データ

オンリーワンの総合物流

群馬小型運送株式会社

代表取締役社長:川手和義(かわて・かずよし)
本社:群馬県高崎市
従業員数:107名
設立:1953年
事業内容:トラック輸送、商品保管管理、輸入代行業務

経営者略歴

川手和義(かわてかずよし)
1976年 高崎市生まれ。2000年 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。同年、群馬小型運送株式会社へ入社。2006年に取締役就任。2008年 専務取締役に就任。2013年 代表取締役専務に就任。2016年 当社代表取締役社長に就任。