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株式会社山田製作所

業種

製造業

地域

近畿

従業員数

10〜29人

File.113

主役は社員。3S活動をベースに一丸で取り組む働き方改革 -経営者と社員が、共に学び、共に育ち合う「共育」山田製作所の場合-

時間外労働の削減

2022.01.24

株式会社山田製作所

 株式会社山田製作所は、ステンレスを中心に幅広い材料を用い、製缶板金加工から溶接、組み付け調整までを一貫して行う、金属専門のものづくり企業だ。

 「最新の設備もなく、当社独自の技術があるわけでもない。それなら、製品を生み出す工場を『最高のセールスマン』にしようと考えた」と話すのは、代表取締役会長の山田 茂さんだ。

 経営者が率先垂範し、社員たちにその想いが伝播して全員で改善活動を推進。今では「工場を見てもらえば、競合企業があっても90%は受注できる自信がある」と胸を張る。その取組は、さまざまなメディアに取り上げられ、現在も海外を含め、年間200社が見学に訪れるという。

 「現場である工場に、付加価値を付けていく」発想をベースに、生産管理の見える化、残業の削減、社員の意識改革など、10年後のビジョンを掲げ、今も改善を続けている。

「守ることを決めて、決めたことを守る」を全員で

 山田会長は、8年間機械商社に勤務後、1994年に「夢や希望を持って」(山田会長)、父親が創業した山田製作所に入社。2年後には、工作機械メーカーの設計部門に勤めていた弟の雅之さん(現・代表取締役社長)も加わった。

 少数精鋭で高品質の製品製造に取り組む中、バブル崩壊後の平成不況が直撃、年商50%ダウンの危機に見舞われた。

 「営業に行くと、逆に当社には強みがないことを思い知らされた」と山田会長。同じ頃、大阪府の外郭団体主催の無料セミナーを受講した。テーマは『よい現場は最高のセールスマン。徹底した整理整頓清掃』。

 山田会長は、成功事例の企業に衝撃を受け「こんな会社にすると、弟と決意を固めた」と当時を振り返る。

消耗品管理台車に、消耗品を集約。いつでも誰でも発注できるシステムだ

 まず始めたのが、コンサルタントの指導を受けながらの整理・整頓・清掃の3S活動だ。

 同社では、整理のルールとして「いるもの」「急がないもの」「当分いらないもの」「いらないもの」の4タイプを期限で区分した。これには、材料や道具、機械も含まれる。「始めた頃は、父親と喧嘩しながら毎日何かを捨てていた」と笑う山田会長。

 次に取り組んだのは整頓だ。「『道具を床に置かないでください』からスタートした」という。「いつでも誰でもが、いるものを60秒で取り出せるように並べておくこと。そのための5頓(定位置・定量・定方向・表示・標識)を徹底した」と、そのルールを説明する。

 山田会長は「最初は、父親である先代含め、ほとんどの社員が3S活動に乗り気ではなかった」と話す。

 それでも活動に取り組むにあたって、「社員にとっては今の環境が当たり前なだけ。何を言われようと、やり続ける」(山田会長)と決めていたという。

 「自分がルールを決めたにも関わらず、他の理由を優先させて、結局守らないリーダーが多い。それは、社員との約束を破るのと同じこと」という意識も根底にあった。

 整理を終えれば整頓、その次は清掃と、地道にくり返すこと10カ月。この頃になると、工場にはほぼ無駄なものがなくなった。作業に集中できる環境が整ってきたことで、社員たちも改善活動に前向きになっていたという。

 総決算として、先代社長の英断で2週間仕事を止め、工場の丸洗いに全社員が一丸となって取り組んだ。

 すべてを終えるのにさらに1カ月を要したが、喜ぶ社員たちを見た時、「事業固めをしていく土台づくりができたと確信した」と話す。

 当初、3S活動を始めたのは、「何の強みもない会社に、他の中小企業や町工場にはない特徴を持たせたかった」と山田会長。3S活動で注目を集め、信用度の高い会社として新規顧客を獲得する狙いもあったという。

 しかし「本当の目的は、企業文化を創ることだと、コンサルタントに教えられた」と山田会長。この時に掲げたスローガン『全員で守ることを決めて、全員で決めたことを守る』は、20年近くを掛け、山田製作所の企業風土として根付いていった。

「労働環境の改善は、経営者の本気を見せること」と山田会長

「やりがいブラック企業」を返上。労働環境を大改革

中小企業、特に町工場には今も「作ってなんぼ、残業してなんぼ」(山田会長)の風潮があるという。かつては「夜遅くまでの残業や、周りの工場が休んでいる中での休日出勤は『忙しく、稼いでいる証』と優越感があった」と山田会長。

 同社は、1年間の変形労働時間制を取りつつも、ベテラン社員を中心に長時間労働が常態化。2016年の月平均残業時間は50時間、年次有給休暇の取得率はわずか4%という状況だった。

 山田会長は、働く環境づくりや人を生かす経営といった勉強会などに参加する中で、山田製作所が「やりがいブラック企業だとわかった」と話す。

 理念を熱く語り、仕事のやりがいを充実させることに注力して、「残業がやりがいとなり、良い会社づくりに取り組んだ気になっていた」と山田会長。まずは、労働環境の改善こそ取り組むべき課題だと気づいたという。

 山田会長は「100時間にも及んだベテラン社員の月最長残業時間を半分以下にし、社員の月平均残業時間を45時間以下にすること」を目標に、改善をスタートさせた。

 残業時間が増大した背景には、同社が労働集約型産業であることも原因の一つだった。人の手による作業の割合が多く、また注文生産のため、技術力のあるベテラン社員に仕事が集中していた。

 「当時は経営政策上、納期が厳しすぎる仕事も受けざるを得なかった。納期遵守のための残業が発生しているのが実情だった」と山田会長。

 まずは、半期ごとの残業削減目標数値を宣言。経営指針書に行動計画を示し、「工場では直接、残業ストップと声を掛けて回った」という。例えば、あと5分溶接すれば完成する製品も、定時終業になれば作業を止めさせた。

 不満は出たが「1日の作業を振り返り、その5分は日中のどこかで捻出できたのではないかと考えさせた」と話す。

 毎月、個人別での人時生産性をチェックし、目標の達成確認、残業時間も見える化・分析して、アクションのサイクルを回していった。

 また、景気に関わらず、新卒の定期採用を継続してきたことも、残業時間増加の一因だったという。

 「若手が技術を身につけるには、時間がかかる。当時は大赤字だったが、それでも10年後の山田製作所のため、定期採用は絶対に譲れなかった」と力を込める。

 そこで、作業負担の平準化を目指し、若手の育成を推進。「若手と先輩社員が共に成長することも狙いの一つ」(山田会長)と、1年間、先輩社員が指導するOJTの体制を整えた。

 工場長の樋口貴士さんは、入社して24年。3S活動以前の同社を知る一人だ。工場全体の管理責任者として、「作業全体の進捗を見ると、残業が必要な状況は必ず発生する」と説明する。これまでは、工場の管理業務に加え、それらの作業をほとんど一人で抱えていたという。

「若手には、考える力を身につけてほしい」と、工場長の樋口貴士さん

 残業の削減、作業の分担といった会社の方針に対しては、「若手を育てるために、仕事を任せる必要があることは理解できる」としながらも、「ベテランは、難しい物件や初めて請け負う仕事など、会社の信用に直結するものが多い」と樋口さん。

 残業が発生する仕事は、若手では手に負えないことも多く、また「作業が立て込むと、若手は早く帰らせてあげたい想いもあった」という。

 しかし、OJTが進んだことで「ようやく任せられる若手が増えてきた」と樋口さん。

 物件の進捗についても、実際の管理は次の若手が担うようになり、残業時間も他の社員と同様のレベルまで削減。今は「バランスよく仕事ができている」と話す。

 2019年には、月平均残業時間を33時間にまで削減。2020年度はコロナ禍の影響もあり、さらに減少しているが「月平均残業時間、20時間以下が最終的な目標」と山田会長。

「受注量は年々増加している。業務の増加に残業時間が比例していないことは改善の効果と考えている」と語る。

 また年次有給休暇の取得率も、就業規則を変更し、計画的な付与を推進したことで、60%以上に増加した。2020年度からは、社員の提案で、第1金曜日をノー残業デーに設定。山田会長は「私も残っていると『早く帰ってください』と促される」と笑う。

工程管理ボードで進捗を管理。働き方の改善にも繋がる

 山田製作所では、毎朝8時から会長、社長を含む全社員で朝礼を行っている。経営理念の唱和に始まり、工場内の清掃、3分間スピーチ、改善の提案など、充実の内容だ。

 なかでも会長を始め、社員たちが「ないと困る」と口を揃えるのが、進捗の確認と共有に活用する工程管理ボードだ。

 「他社が使っているのを見て、すぐに導入を決めた」と山田会長。工程管理ボードは、同社の業務内容に沿った形にカスタマイズした手づくりだ。

 週次・月次・物件ごとの3タイプを自在に組み合わせて活用している。「業務の全体把握と情報の管理が一元化できたことで、製品の作り方に対する意識が変わった」と話す。

 ここで活きてくるのが、3S活動の「整理」だ。同社は長年の3S活動で、材料の在庫や仕掛品などをできる限り工場に置かないことを徹底している。工程管理ボードの導入で、着手日の管理が可能になり、材料の仕入れなどもコントロールできるようになった。

 「これまで100台の注文が来たら、100台分の材料を一気に仕入れ、材料を100枚一度に切って、折り曲げてと、工場が仕掛品であふれていた。工程管理ボードと3S活動を組み合わせて進捗を管理すると、10台ずつ作った方が結果的に高品質になり、しかも早いという発想に切り替えることができた」と山田会長。

 以前は、ベテラン社員が1.5人ほどで10日掛かっていたものが、工程管理ボード導入後は、入社1~3年の社員3人を投入し、4日ほどで完成したという。

 「作業効率がアップしただけでなく、社員も自身の作業工程を把握しやすくなった」と、導入の意義を語る。

 冨吉勇介さんは、2011年に入社。製造グループの主任を務め、現在は製造と並行して、工場長の樋口さんから引き継いだ工程管理ボードの運用に携わる。

 3年前から工程管理の練習を兼ね、「物件ごとに工程を細分化することから始めました」と冨吉さん。

 同社は注文生産のため、受注ごとに新たな設計・製造が必要となる。製造量の多少に加え、納期もそれぞれ異なるが、それらをすべて工程管理ボードに落とし込む中で、冨吉さんは「細分化した工程に、人を割り振る作業が一番難しい」という。

 そのため、社員のスキルを把握しておくことも重要だ。同社には、社員が能力開発の目標を定めて実行する275項目にも及ぶスキルマップがあり、冨吉さんはそれらも参考にする。

 「能力差を考えながら、技術の高いベテランは、経験が浅い若手に付いてもらうなど工夫しています」と話す。

 特急の短納期が重なることも日常茶飯事のため、「その時の最適を考えながら、できるだけ余裕を持った工程を組むように心がけていますが、スムーズに進むことはまずありません」と冨吉さん。

自身について「業務管理のスキルをさらに磨いていきたい」と話す冨吉勇介さん

 業務時間のうち、毎日1時間は工程管理ボードに向き合うと決めている。「立て込んでくると半日、工程管理ボードの前にいることもあります」と笑いながらも、「自分の作業、物件の流れを把握することで、時間配分も身につきます。若手にはもっと工程管理ボードを活用してほしい」と冨吉さん。自身も管理力を向上させ、「全員が少し余裕を持ちながら、作業を終えられることを目指しています」と話す。

 また、進捗管理システムを自社で開発。生産管理に顧客を巻き込むという発想で、製品の作業工程を情報共有できるようにした。データは蓄積され、作業手順を確認する時間の短縮に繋がっているという。また顧客側も、スマートフォンなどで作業工程を確認できるため、製造途中での設計変更が容易になると同時に、納品前の立ち会い回数も軽減した。

 山田会長は「中小企業の残業削減対策になる」として、工程管理ボードや進捗管理システムの販売も手掛けている。

進捗管理が一元化できる工程管理ボード。「今日」を頭出しでき、予定もマグネットシートなので使いやすい

 残業削減など労働環境の改善において、一番即効性があったのが「経営者判断による選別受注」(山田会長)だという。

 作業時間を掛けた割に、利益に繋がらなかった教訓を活かし、技術や顧客開拓上の適度な背伸びの業務の受注に優先順位を置き、「割に合わない仕事は断った」と山田会長。結果、利益の伸びと残業削減、生産性の向上を同時に実現した。
「仕事を受けるか受けないかは、経営者しか判断できない。当社は、3S活動をベースにした生産管理ができていたので対応が可能だった」と話す。

 山田会長は「今でも、すべての残業が悪だとは思っていない」という。「必要以上に残業をしなくても、生産性が上がり、利益体質の会社になることを目指している」。

 山田製作所は、10年後、20年後のビジョンを掲げ、成長する会社づくりに邁進していく。

COMPANY DATA企業データ

顧客の要望をカタチにする、技能・技術集団

株式会社山田製作所

代表取締役会長:山田 茂
代表取締役社長:山田雅之

本社:大阪府大阪市
従業員数:19名(2021年7月現在)
設立:1969年7月
資本金:1000万円
事業内容:製缶・板金加工業・産業機械設計・製造

経営者略歴

山田 茂(やまだ・しげる)
1962年大阪府生まれ。1986年阪南大学商学部卒業後、工作機械商社に就職。1994年株式会社山田製作所入社。1996年専務取締役就任、1999年大阪府中小企業家同友会入会、2001年2代目として代表取締役社長、2019年代表取締役会長就任、現在に至る。大阪府中小企業家同友会 代表理事。