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株式会社小田島組
建設業
北海道・東北
100〜300人
File.117
楽しく働ける会社と魅力的な地域社会を作る 【動画あり】 ー独創的で異色なカラーを放つ「小田島組」の場合ー
2022.01.24
株式会社小田島組の取り組みを動画で見る
(以下のURLのリンクからご覧いただけます)
https://www.youtube.com/watch?v=wgNuTRYmW0g
人口10万人ほどの岩手県北上市に拠点をおき、県全域の公共事業を請け負う「小田島組」。地方の土木建設業者のイメージを覆すユニークかつ大胆な経営手法により、10年で売上が倍増し2020年5月で42億円。右肩上がりの急成長を続け、5年後には売上高100億円を目指すという底知れないポテンシャルを秘めた企業だ。「ユースエール(若者育成)」の認定企業であるうえ、社風は若者の人気を得、2021年の新入社員は19名。144名の社員のうち半数以上が10代・20代、平均年齢は約35歳と、若いエネルギーに溢れる会社である。
スマートカントリーのファーストペンギンになる
「地域・業界のファーストペンギンになる」というのは小田島直樹社長の信条。「ファーストペンギン」とは、群れることを習いとするペンギンの中で、リスクある海に最初に飛び込みチャレンジをするペンギンを指す言葉。「田舎には目立つことをするのは悪、多様性が認められにくいという風潮があります。たとえやりすぎと思われようと、率先して挑戦し変化をもたらすペンギンに、私自身も社員たちにもなって欲しい。ファーストペンギンだらけのスマートでクールな田舎にしたいのです」。小田島社長はその信条通り様々な改革を重ねてきた。
2020年に設立された本社新社屋は「KITAKAMI O2(キタカミ オーツー)」と呼ばれている。かつて街のランドマークだったゲームセンターをリノベーションしたもので、その外観も内観も建設会社の社屋とは想像しがたい斬新なものだ。この社屋は、小田島組のオフィススペースを備えるほか、キャンパスをコンセプトにした一般開放型の施設になっており、ミーティングコーナーやセミナールーム、投稿動画配信スタジオなどを地域の人々に開放している。企業が「学び」を重んじ、社会との接点となっている。「学び」は酸素(O2)と同じように生きる上で欠かせないもの、という考えからO2と名付けたのだという。
IT化でいつでもどこでも仕事ができる環境を
社員全員にスマートフォン、各種タブレット端末などを支給し、出・退勤管理、情報共有に活かしてきた。どこでも仕事ができる状態を構築したことで作業の高速化につながった。オンラインで現場と本社を繋ぎ会議を行うなど移動時間の短縮も図っている。
広々としたオフィススペースは、それぞれの部署がガラス張りですべて見渡せるようになっている。セキュリティのかかった一部エリアをのぞき、デスクはすべてフリーアドレス。同じ場所に座らないよう、社長を含め出社時に毎朝クジを引いて席を決める。個人所有の引き出しや書類はなく、会社のクラウドで管理し誰でもオープンに見ることができるが、情報をローカルドライブに入れることは禁止するなど、情報管理は徹底している。
IT化にはもともと積極的に取り組んでいた。現場で撮影した写真は、日々整理していくことが業務上必要であるため、帰社後の作業に時間がかかり残業が恒常化しているという問題があったからだ。セントラルキッチン方式からヒントを得て、現場業務と写真整理などの書類作成業務を分け、本社で一括サポートする体制が生まれた。
その名も「カエレル」という現場写真整理サービスを開発。工事現場では工事の請負業者が工期中に5000枚、多ければ15000枚以上の現場写真を撮影し、一枚一枚に説明をつけ発注元に提出する。この作業は現場監督が現場から会社に戻り行うのだが、膨大な数の写真を整理し、コメントを入力するため長時間の残業につながることもしばしばである。「カエレル」では工事現場と会社のパソコンを結び、現場からリモートで写真を送り、社ではスタッフがその写真を遠隔操作で整理し、現場の状況をコメントとして入力していく。その場で処理していけるので現場監督が帰社後に写真整理する必要がない。
このサービスを開発したことで現場技術職員の月平均の残業時間は10時間以上削減になった現場も。さらには工事写真整理で困っている同業者へのサービスを提供し、これが新ビジネスにもつながった。
乗り合い通勤とカーシェアリング
現在取り組んでいる働き方改革の主軸のひとつが、社員の通勤方法の改革である。一人一台の車保有が常識の岩手で、社有車の乗合と公共交通機関を利用した通勤を導入することで、車の保有台数の減と公共交通機関の利用増を目指す取り組みだ。その結果、地域の交通事故のリスクや環境負荷を減らし、若い人が集まる魅力ある地域「スマートカントリー」の実現を目指している。
乗り合い通勤では、エリアごとに社有車を手配し、社員の乗り合いでの通勤を推奨。車検代・燃料代・保険代などの経費はすべて会社が負担する。社有車はグリーンの右斜め上のストライプ、O2ロゴマークでラッピングされた派手な車だ。移動することで、同社ブランドの宣伝にもつながるため、休日のラッピング社有車の貸出も行っており、その場合の燃料代等の経費も会社負担となっている。
これにより社員は個人で車を所有する必要がなくなるというシステムだが、車を買わなくても生活はできるのだと新入社員にも知ってもらいたいという狙いもあるらしい。
公共交通機関での通勤時間も勤務時間に
2021年6月からは、公共交通機関の通勤時間を勤務時間としてカウントする改革も断行。乗り合い制度の地域外から自家用車で通勤していた社員数名が、バスや電車での通勤に乗り換えたという。8:00始業・17:30終業が基本で、例えばバス通勤時間が30分ならば、8:00〜8:30はバスの中で仕事をして出社。帰りは17:00にバスに乗り、17:30まではバスの中で仕事をして終業という具合だ。
ブランディング部係長の小志戸前麻里さんも公共交通機関で通う一人。当初は盛岡市から毎日片道1時間半かけて車で通勤。8:00の始業に合わせて6:30に家を出ていた。ある時、小田島社長に「無駄なことしているね。公共交通機関で通勤してみたら」と言われたのだという。そこで生まれたのが移動中の業務システム。「今は8時前に家を出てバスと電車に乗りながらタブレット端末で仕事をしています。こんな田舎でこういう働き方をしている人はそういないと思います。子どもと一緒にいる時間が長くなったのも嬉しい点です」と語る。
実は小志戸前さんは十数年の公務員生活を経て、2021年4月に小田島組に入った転職組。最初の1ヶ月を車通勤で過ごした後、社長の一声で導入された新しい通勤制度を活用することに。「前職とは真逆の環境で、小田島組のダイナミズムを肌で感じました。納得のいかないことをそのまま続けるのではなく、可能性を探る。この会社に入って、おかしいと思ったことをそのままにしておくことがなくなりました。退社時間というお尻が決まっているなかで、先を考えながら業務を行うことで効率アップにもつながった気がします」。
新入社員で取材時はまだ研修中だった藤根光菜さんは、約50分間のバス通勤をしている。7:45にバスに乗り、8:00から勤務時間。メールやボイスメールのチェック、社内の勉強会、朝礼にも通勤バスの中から参加しているという。「大学時代の友人と話をすると、自分がかなり恵まれていることを色々なところで感じます。社内の雰囲気もアットホームで、皆が親しい感じで楽しいです。コミュニケーションを図る機会も多くあるのも魅力なんです」と語ってくれた。
社員のコミュニケーションは小田島組が大切にしていることのひとつ。多種多様のコミュニケーション・飲みニケーションの機会を設けている。近い役職同士の情報交換の場「グループ懇親会」、上司と部下が食事をしながらコミュニケーションを深める「部下とのサシ飲み・サシ食い」、半年に1度異なる部署のベテランスタッフと若手スタッフがマンツーマンで食事をする「夢の共有」、若手スタッフが社長や同期と親交を深める「ランチ会」など。いずれも会社が一部費用を負担して、会社の制度として行われている。
こうしたコミュニケーションの場はコロナ禍でも、ルールを守って行われてきた。地元飲食店応援の一環にもなっており、全社の懇親会も、社員を少人数の25組のグループに分けて、オンラインでつなぎながら別々の飲食店で催すなどしている。さらには本社社屋において、地元飲食店の弁当やオードブルを販売する「自由べんとう」というイベントを開催し、約450食を売り上げた。代金の半額を小田島組が負担したため、格安で食べられると地域住民に人気だったという。
社員を大切にし、地域を大切にし、常にチャレンジし形を変えていく小田島組。「これからも目標は、わくわくドキドキできる会社。地域から信頼されるファーストペンギンとなりたい。うちのお母さんがO2で働いていているのが自慢とか、地元の子どもたちからO2で働くのが夢と思われるような会社にしていきたい」と小田島社長は締めくくった。
CASE STUDY働き方改革のポイント
IT化を徹底
- 効果
- 社内をクラウド化することで情報を共有。タブレット端末など社員が使用できるIT機器を充実させることでどこでも仕事ができる環境を確立し、生産性を向上。社員の残業削減にも効果。
通勤方法の斬新な改革
- 効果
- 社有車による地域乗り合い通勤制度で社員の通勤の負担をバックアップ。休日の社有車をカーシェアリングすることで社員の車保有の負担減とO2ブランドの宣伝に効果。公共交通機関移動中も勤務時間とすることで社員の移動時間の有効活用を。
社内コミュニケーションの強化
- 効果
- さまざまなタイプの飲みニケーションの場を設け、社内の意思疎通を円滑に。その結果、風通しよく物が言える職場に、社内に明るい雰囲気が生まれている。
COMPANY DATA企業データ
建設業の枠組みにとらわれず新しい事業や働き方を生み出す
株式会社小田島組
代表取締役社長:小田島直樹
本社:岩手県北上市
従業員数:144名
設立:1985年
資本金:2300万円
事業内容:土木工事業(道路改良工事、舗装工事、防潮堤工事、法面工事などの公共事業)
経営者略歴
小田島直樹(おだしま・なおき)
1964年岩手県生まれ。1986年中央大学理工学部卒業後、大成建設株式会社入社。1991年有限会社小田島組(現・株式会社小田島組)に入社し副社長に就任。1992年株式会社小田島組、取締役就任。2003年代表取締役社長に就任。好きな言葉は「いつかいつかと思うなら今」。