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東光コンピュータ・サービス株式会社
情報通信業
北海道・東北
50〜99人
File.124
社員は一番の財産との考えから健康経営に取り組んできた ー秋田県北の有力IT企業「東光コンピュータ・サービス」の場合ー
2022.01.24
秋田県大館市の本社と秋田支店を中心拠点とするIT企業「東光コンピュータ・サービス株式会社」。能代・北秋田・鹿角などの県内各営業所の他、東京・仙台・札幌など全国を対象として事業展開している。地域に根差した事業として自治体や学校へのサポートやIT機器の販売、IT 教室の運営も行っている。安定した経営と本格的なIT企業として存在感のある同社は、SEになりたい新卒者の人気を集め、就職後の定着率も高いという。
社員の健康を第一に働きやすい環境を整える
「今の学生が注目するのは給料よりも休みです。2020年より完全2日制を導入して、現在は年間休日120日+年休消化日数となります。これは365日のうち約3分の1は休みになるという数字です。IT業界ではこのような明記をしないと採用が難しいというのが現状です」と藤盛公之社長。
もともとリクルート目的で作り上げた数字ではなく、健康経営を主軸とした働き方改革の様々な施策の結果として生まれたものだ。「弊社にとって人が財産であり、追求するのは一人ひとりの社員とその家族の幸せです。社員が元気だと会社も元気になり、ひいてはお客様のためになるという考え方で、社員の健康を第一に働きやすい環境を整えてきました」。2017年から本格的な健康経営を行うため、経営トップの思いを「健康宣言」として表明し、社員への浸透を図ってきた。
徹底した生産性の効率化
まず、残業は当たり前・休みも取りにくいというIT業界全体の風潮を覆すことに取り組んだ。残業時間を減らし、年間休日数を増やすため徹底的に無駄を省き、生産性の向上に努めた。月1回行っていた全体会議を年3回に減らし、進行表に時間設定をして会議時間も短縮した。残業を事前申告制として「残業は特別なもの」という意識を浸透させた。水曜日をノー残業デーに設定し、当日は社内に一斉メールで告知、定時で帰る意識や習慣作りの一環に。時間内に業務を終わらせるため、「集中タイム実施中!」というのぼりをデスクに置くことで、電話に出ず周囲にも話しかけられない環境を作れるようにした。
社員全員ITリテラシーが高い企業の強みを活かし、サブスクリプションサービスを導入し、情報・ファイル共有、会議、チャットなどに有効利用するなど最新のITシステムを100%活用して効率化を図った。また、自宅でのテレワークを進めてきたほか、県内各所にある営業所をサテライトオフィスにし、本社勤務者も自宅に近いオフィスで仕事ができるようにし通勤時間を減らした。
人間磨き教育を徹底
こうした取り組みにより残業時間が減り休日が増え、全体の労働時間は大幅減になっているが、収益の低下は招いていないという。藤盛社長によれば、これは社員一人ひとりの努力と、弊社の人間磨き教育の徹底によるものだという。
「常々伝えているのは凡事徹底です。挨拶・返事・整理整頓・清掃・後始末など技術的なことより凡事の徹底でコミュニケーション力が身についてきます。弊社には指示待ちの仕事はほとんどなく、社員自ら考えて動くために、良識ある社会人として人間力を磨くことが大切です」。
毎朝営業部とシステム部が二手に分かれて行う「活力朝礼」は社長が最も重要視している日課だ。健康維持のためのラジオ体操に始まり、企業使命感などの唱和、挨拶を腹の底から出す「ハイ!」の実践。最後は倫理研究会発行の「職場の教養」を日直が音読し皆で学ぶという充実した内容になっている。
2009年に導入された「ありがとうカード」は社員間で感謝の気持ちを伝えるシステム。たとえ小さなことにでも感謝し、「ありがとう」のキャッチボールをすることで仲間との絆が深まる。毎月もらったカードの数を集計して発表。1位の社員には大手ショッピングサイトで使用できるギフト券が贈られる。普段は手書きをする機会が少ない職場だけに、あえてアナログにこだわっているという。
人材育成への投資は必ず元が取れる
会社のサポートで教育を受ける機会が得られる制度もユニークだ。研修・WEB講座・セミナーなど、自分で選んだもの1回、上司がすすめるもの1回の年2回の受講を義務付けている。内容は事前申請し、受講後は3日以内に内容を報告すれば、受講料や交通費を会社が負担してくれるというものだ。例えばシステムウェア開発技術者など、資格を取得すれば褒賞金がもらえるものもある。
「年間600万円ほどかかりますが、2年・5年・10年と明らかに効果が出てきます。会社の宝である人材育成への投資は必ず元が取れ、何倍にもなって帰ってくるのです」。
健康維持増進への取り組み
社員が自発的に健康維持増進に取り組むための支援として、健康診断の受診と要検査診断後の受診を徹底。保健師による食生活セミナーや体操レクチャー、ストレスチェックを活用したメンタルヘルス対策、社屋内での禁煙施行などをしている。
最も新しい取り組みとしては、健康管理アプリ「グッピー ヘルスケア」の導入がある。体温や歩数、体重、食事など生活全般の記録ができるスマホアプリで、社員全員にIDを配る。利用者の健康的な活動にポイントを付与するサービスがあり、健康状態を記録することで健康ポイントを獲得でき、ギフト券や現金に交換できるというものだ。
これらの取り組みにより、社員の間で健康への意識が高まり、健康診断の数値も良くなってきているという。体重の平均も減っており、競争してダイエットに励む姿も見られる。
働き方改革に対する社員たちの声
入社20年目・管理本部主任の原田幸恵さんはこれまで3度の産休・育休の取得を経験し、仕事と育児を両立している。結婚や出産で退職するのが通例で、前例がほとんどなかった最初の育休を取得する際は不安を感じたという。働きたいけれど果たして戻れるのか、長く休むことで居場所がなくなるのではと焦燥感にかられたが、問題なく復職ができた。
子どもを産んでからは、それまでしていた残業を一切やめた。「その日のやることを定時までに終えられるよう、フォローしてくれる会社や同僚に感謝しています。産休・育休を安心して取れるサポート体制のもとで、3度も育休をいただけて、好きな部署でずっと働けるのは幸せです」。中学生・小学生・幼児の3人の子どもたちの行事はバラバラで数も多いが、社長は「子どもの行事は一生に1度」と快く送り出してくれるという。
入社12年目・公共ソリューション課・課長の千葉幸生さんは、結婚して子どもが生まれ、自分だけの時間ではないことを痛感。「自宅と営業担当エリアが近いサテライトオフィスを積極的に活用しています」。直行直帰による通勤時間の削減や移動時間の節約にもなり、家事や育児に関わる時間が増えたことが嬉しいという。
入社17年目・地域ソリューション課・課長の櫻田純さんは働き方改革を進めてきた側。当初はセミナーなどを受けて働き方改革について学んだが、システム化やノー残業デーなどを一気に進めすぎたが浸透しなかったという反省がある。
「定時を過ぎてやることがなくても、周囲の”帰らないオーラ”に負けて帰宅できない社員が多かったです。集中タイムを設けて計画的に仕事をするようにするなどの細かいことの積み重ねから、皆の意識が徐々に変わってきたように思います」。率先して周囲の模範になるように定時退社を心がけている。
こうした様々な働き方改革の取り組みにより、経済産業省および日本健康会議による「健康経営優良法人」に2017年から5年連続で認定。2021年には優良な上位500法人に対して新しく付与されることになった「ブライト500」の認定も受けている。その他、「大館市 働くパパママ応援企業」、「健康づくりチャレンジ事業所 プレミアム」など様々な団体から評価されている。
CASE STUDY働き方改革のポイント
週休2日制の導入と休みやすい環境作り
- 効果
- 年間休日120日以上を実現。社員の健康を守り、本人や家族の生活の質の向上につながっている。新卒応募者が企業を選ぶ際の条件としても注目されている。
無駄を省きシステムを100%活用
- 効果
- 全体会議を縮小し会議時間をコントロールする。サブスクリプションサービスの活用やリモートワーク、サテライトオフィスなどで生産性を向上。残業時間の軽減と休日増加につなげた。
人間磨き教育を徹底
- 効果
- 「活力朝礼」や凡事徹底で社員一人ひとりがコミュニケーション力や学ぶ力を会得。教育機会など人材育成への投資をすることで、労働時間は大幅減でも収益は低下していない。
COMPANY DATA企業データ
社員を大切にし、お取引先を大切にする
東光コンピュータ・サービス株式会社
代表取締役社長:藤盛公之
本社:秋田県大館市
従業員数:75名
設立:1984年7月
資本金:6000万円
事業内容:業務システムの提案、システム開発&導入&サポート、情報機器販売、Webコンテンツ制作、ICT教育運営、小中学校ICT支援
経営者略歴
藤盛公之(ふじもり・きみゆき) 1958年生まれ。1992年まで地熱開発に携わる。1992年4月東光コンピュータ・サービス株式会社入社、営業課配属。1995年〜2004年に営業課長、営業統括課長、営業部長に昇進。2005年取締役部長、2007年取締役に就任。2009年より現職の代表取締役社長を務める。好きな言葉は「凡事徹底」。