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株式会社I・M・S
教育,学習支援業
北海道・東北
30〜49人
File.131
創業時から短時間正 社員制度を導入 ーキャリア形成支援を手がける「株式会社I・M・S」の場合ー
2022.02.01
株式会社I・M・S(青森県弘前市)は、個人に対しては、キャリアカウンセリングを軸としたキャリア形成支援(就職支援・起業支援)、各種資格取得講座などを手がけ、法人に対しては、課題解決コンサル・社員定着支援・各種研修の実施・離職者への支援などを行っている。個人の生き方にも関わる業務ということから、社を挙げてキャリアコンサルタントの育成に努め、男性12名女性28名の計40名の社員中、男性の11名がキャリアコンサルタントの有資格者、うち2名がキャリアコンサルティング技能士、女性の18名がキャリアコンサルタントの資格を得て活動している。
働きやすい職場作りは自然な流れで始まった
「2005年の創業時から女性社員が多く、子育て中の社員の中にはシングルマザーもいました。そこで、一人ひとりにヒアリングを行って、それぞれの希望に合わせて働きやすい勤務時間帯を決めていました。今から思うと、それが働き方改革にも繋がったのだと思うのですが、とくに意識することなく自然にワーク・ライフ・バランスを取り入れていたのだと思います」と語る三上友子社長。
同社の短時間勤務制度は30分単位で2時間まで。社員一人ひとりとの相談によって、所定の単位時間内で出勤時間を遅らせたり、退勤時間を早めるなどの勤務形態を決めている。給与その他の待遇はフルタイム勤務の社員と変わらない。パートタイマーであっても希望すれば短時間勤務は可能だという。また、副業を認めていることから、副業のために短時間勤務を利用している社員もいる。
子育てを支援するため早くから短時間勤務を取り入れたこともあって、「お互い様」という社風も根付いた。急な子どもの都合が生じても年次有給休暇が取りやすいという。こうした職場作りを続けてきたこともあり、2015年12月に女性の活躍を推進する気運の醸成と取り組む「あおもり女性の活躍応援宣言企業」第4号に登録、2019年3月には、女性の雇用環境の改善に向けた自主的な取組を実施している企業として「弘前市女性活躍推進企業」第1号に認定。同年10月には「あおもり働き方改革推進企業」に認証された。
「社員の8割が女性で、子どもの成長や家族の状況に合わせて働き方を変える必要があるのは自然なことで、それぞれの家庭の状況に合わせて就業条件を決めています」と語る三上社長の考えは、どこにも気負ったところはない。
野宮真美さんは総務部部長として主に会計業務を担当し、給与計算や委託業務の会計に携わっている。職業訓練講師が急に休んだ場合はパソコンや簿記、ビジネスマナーなどの代替講師となることもあり、セミナーやイベントの設営・受付のフォローも手がける。「もともと年次有給休暇は取りやすい会社ですが、管理職の自分が率先して取ることで周りの社員も積極的に年休を取るようになったと思います。残業もほとんどありませんが、あおもり働き方改革推進企業に認証されてからはとくに定時退社を心がけています。その結果、勤務時間内に作業を終わらせる工夫が身に付くようになりました」と語る。
創業以来続けてきた働き方改革が時代と重なった
同社の働き方改革は、女性の働きやすい環境作りから自然な流れで生まれてきた。三上社長は「2019年施行の働き方改革関連法をとくに意識はしていないが、その内容はこれまで同社でやってきたことと大きな変わりはなく、スムーズに取り組んできた」と語る。それは次の3つだ。①子育て社員の継続就業②男性の家庭参画③ワーク・ライフ・バランスの実現。
①の子育て社員の継続就業については、短時間勤務制度のほか、パートタイマーとして働いていた従業員が子育てを終えたことを機会に正社員として働きたいという要望に応えて正社員へ登用している。②の男性の家庭参画では、男性社員が一週間の育児休業を取得するという初めてのケースがあったという。「子どもとじっくり過ごすことができて幸せだった、と言っていましたよ。次のお子さんのときも取ってほしいです」と三上社長は笑う。
③のワーク・ライフ・バランスは同社が創業時から取り組んできたことだが長時間労働の削減に関わっている。同社は月曜から土曜が勤務日で日祝は休み。仕事柄、夜間のセミナーや講座も開催するが、子育て中の社員には負担が大きい。そこで生まれたのが専任のパートタイマーを雇用する「夜番」と呼ばれる制度。少しでも社員の負担と残業を減らすための方策だが、こうしたこともあって「残業はほとんどゼロ」と三上社長は胸を張る。
それぞれに取り組んできた中で心がけてきたことは、「制度として掲げるだけで、現場で取り入れることができなくては無意味」ということ。そうした思いで柔軟に普通にやってきたことが「働き方改革に自然に当てはまっていただけと思っている」と三上社長は言う。また「私たちのような小さな会社で、あおもり女性の活躍応援宣言企業を始めとした認証取得に取り組んでいいのかという気恥ずかしさ、気後れがありました。地元では大企業以外に、認証取得に向けて取り組んでいる企業はほとんどいないと思います。でも、これはもったいないことです。働き方のよりよい環境作りの励みになると思うんですよ」と言葉に力を込めて三上社長は語る。
三上社長自らが「あおもりイクボスアワード」を受賞
同社は、社員同士の横の繋がりが強い。そのきっかけとなったことを三上社長は「子育て中の女性社員の月一度の楽しみが、給料日の夜、子どもが寝たのを確かめてから食べるコンビニスイーツという話を聞いたことかもしれません」と語る。
働いてくれている社員の唯一の楽しみがそれでは悲しい。会社で何かできないかと考え、会社の行事には基本的に子ども連れでも参加可能とし、キャンプ、ねぷた祭り参加などの遊びを積極的に開催した。こうしたイベントはコロナ禍によって中断されているが、自宅に子育て中の社員と子どもを招いてのバーベキューなどは実施しているという。
こうした試みは社員の継続就業に繋がっているそうだが、イクボスの存在も貢献している。イクボスとは、職場で共に働く部下やスタッフのワーク・ライフ・バランスを考え、自らも仕事と私生活を楽しんでいる経営者・管理職のことで、三上社長は2019年の「あおもりイクボスアワード」を受賞している。
イクボス宣言は、「仕事を効率的に終わらせる部下を評価する」「休日、定時以降には仕事を依頼しない」「ムダに残らず率先して帰る」「男なのに育休?などとは絶対に言わない」「部下のどんな相談にも応じる」「生き生きと働ける職場にする」となっている。残業はほとんどないということと合わせて、家庭参画への動機付けにもなっているようだ。
ライフの充実あってこそのワークの充実
同社は、生産性向上にも取り組んでいる。例えば、イベントやパンフレット、チラシ、ダイレクトメール、各種名簿など、すべてのデータをネットワーク上のハードディスクに保存し、パソコンでいつでも誰でも取り出せるシステムを導入することや、手間と時間がかかるカウンセリング履歴の保存を音声入力ソフトで行うことも検討しているという。
「社員も自分自身も人生を楽しむことがもっとも重要だと考えています。取り組んできた働き方改革は、私にとっては自然なものですが、ライフの充実あってこそのワークの充実という私の思いを持ち続けていきたい」と三上社長。自身は改革の成果はとくにないと言うが「ハローワークのスタッフからI・M・Sは女性に優しい職場だね」と言われたことがあるそうだ。
また、統合的ライフプランニングで知られるL・サニー・ハンセンの提唱した人生の役割である4つのL、Labor(労働)、Learning(学習)、Leisure(余暇)、Love(愛)のバランスを大切にしながら、一人ひとりが望む生き方ができる会社を目指していくと語ってくれた。
CASE STUDY働き方改革のポイント
子育て社員の継続就業への取組
- 効果
- 社員の8割が女性ということもあり、創業時から子どもの成長や家族の状況に合わせた短時間勤務を導入することで、「お互い様」という社風も根付き、突発的に子どもの都合が生じても年次有給休暇が取りやすくなった。子育てが終わったパートタイマーが正社員を希望する場合に正社員への登用を行うなども行っており、継続就業に繋がっている。
男性の家庭参画推進
- 効果
- 「仕事を効率的に終わらせ早く帰る部下を評価する」「率先して帰る」などのイクボス宣言によって安定したプライベート時間が取得できている。初めて男性の育児休業取得者が出るなど、男性の家庭参画への機運が高まっている。
ワーク・ライフ・バランスの実現
- 効果
- 短時間勤務の自然な導入から始まり、互いにワーク・ライフ・バランスを大切にしながら子育てと仕事を両立してきた。フルタイム社員でも残業はほぼゼロ。
COMPANY DATA企業データ
株式会社I・M・S
代表取締役社長:三上友子
本社:青森県弘前市
従業員数:40名(2021年11月現在)
設立:2005年4月
資本金:1,000万円
事業内容:個人/キャリアカウンセリングを通した就職支援・起業支援・パソコンスクール運営・職業訓練の実施。法人/定着支援・採用活動支援・企業研修。ホームページ作成
経営者略歴
三上友子(みかみ・ともこ)
1975年青森県弘前市生まれ。2001年から05年までブラザー販売株式会社が運営する「ブラザーパソコン英学院 弘前教室」にて室長として勤務。2005年株式会社I・M・Sを設立、現在に至る。一般社団法人ひろさきキャリア形成支援協会代表理事、青森県男女共同参画課審議会員、弘前市母子寡婦福祉会副会長、NPO法人マザーフィールド理事などを歴任。青森県あおもり女子就活・定着サポーター「なでしこ」、青森県あおもり女性UIJターン創業サポーターズ「あおもりフルール」などの社会的活動を行う。