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えびの電子工業株式会社

業種

製造業

地域

九州・沖縄

従業員数

301人〜

File.132

相互扶助の精神で好循環を生む!ピンチに強い職場づくり ―チーム力で大手メーカーのニーズに応え続ける「えびの電子工業株式会社」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2022.02.01

えびの電子工業株式会社

 宮崎県に5か所、鹿児島県に1か所の拠点を構える『えびの電子工業』。主に大手メーカーの協力企業として電子部品・自動車部品の製造を行う。1975年の創業以来、徐々に規模を拡大し、現在は650人の従業員を擁する。時代のニーズに応え続ける組織が生き生きと働けるための取組とは。

地域に根付く“助け合い精神”が根底に

 大手製造業メーカーの協力企業として、電子部品や自動車部品の生産などを主に行う『えびの電子工業株式会社』。社員の3分の2が女性であることから、女性にとって働きやすい職場づくりへ取り組むことは必然だった。本社を構えるえびの市は、もともと農業が盛んなエリア。互いに支え合いながら仕事に取り組む姿勢は同社にも根付いており、設立当初から「助け合いの精神」で個々の暮らしを軸とした働きやすい環境づくりを推奨してきた。

地域に根付いた風土を、そのまま組織運営に取り込む発想で誰にとっても居心地のいい職場づくりに取り組む津曲社長

 「当たり前のことかもしれませんが、社員には家庭と仕事、どちらも大切にしてほしいんです。そのために本人や家族などに急な体調不良などがあっても、休める環境を整えてきました。えびの地域は元々農業の盛んな地域で、稲刈り休暇や田植え休暇など家庭の事情による休暇が取りやすい土壌があります。そのため、昔ながらの“助け合い精神”で支え合いながら、従業員のライフ・ワーク・バランス向上に努めています」と話す津曲慎哉社長。

同社で働く社員の内3分の2は女性。軽作業が主で長く続けられる働きやすさは口コミで広がっている。

 同社が働き方改革への取り組みをはじめたのは約6年前。まずは年次有給休暇の取得率を上げることから始めたが、当初は休むこと自体に不安を覚える管理職も多かったとか。「それぞれが頑張ってきた成果や功績を労いながら、徐々に社内の空気を醸成していきました」。今では、平均残業時間が短縮され、年間の年休取得率は80%に達する。また、評価制度も明確化し、パートから正社員になり、リーダーまで昇格するなど、個々の能力に応じて公平に昇進できる仕組みを整えている。その結果、女性管理職も増えたことで子育て世代への理解が深まり、より相談しやすい環境が整えられた。リーダーに登用された場合は、コーチング研修などを行い、リーダーを育てる試みも行っている。そうした取組が認められたことで、女性活躍企業が対象の「えるぼし認定」では、宮崎県内で初の3つ星認定を受けた。「うちは下請け企業です。作った製品に自社の名前が載ることはありませんが、こうした認定を受けることで、社員が自分の職場に誇りを持つよい機会になっています」。そう話す津曲代表自身も、2019年に2週間の育児休業を取得するなど、今後は男性の育児休業取得率100%を目指す。
「男性の育児休業取得が普及すれば、男女問わず家庭優先の仕事スタイルが確立できるはずです。産後は単純に手が足りないということもありますが、家族と過ごす時間はかけがえのないものです。その経験が後々、仕事や家庭との両立する中できっと役に立つと思います」と津曲代表は優しい笑顔を浮かべる。

プライベートでは3児の父の顔を持つ津曲代表。「生まれた日から2週間の育児休業では、貴重な瞬間の連続でした」と振り返る。

 今後は、故郷えびので働きたいと願うUターン志望者の受け皿になれるよう「地域で豊かさを創造し発展を続ける100年企業」づくりに邁進中だ。「お互いに助け合いの精神で『誰もが働きやすい職場づくり』への努力を惜しまず続けていきます」。誰もがのびのびと働ける次世代の共同体は、これからも変化を続けながら飛躍していくことだろう。

妊娠期のつらい時期も会社の存在がありがたかった

 地主美希さん

 平成23年に入社した地主美希さんは、妊娠・出産を経て、改めて働きやすさを実感したとか。「飲食店などのパート勤務を経て、この会社に出合いました。元々、姉が働いていて“正社員で働けるし、働いてみたら? ”と言われたのをきっかけです。正社員として勤務していましたが、妊娠初期から出産まで入退院を繰り返すことになり、妊娠でうれしい反面、自分でも思いがけない不調が押し寄せ、精神的にも肉体的にもつらかったですね。そんな時に理解のある周りの社員の方たちがかけてくれた温かい言葉に、とても救われました」と地主さん。ライフステージの変化や個々の状況に応じて、個人が自由に雇用形態を選べる同社。現在は、子育てに集中するため、パート勤務を選択しているという。「子育てがひと段落したら将来的には、また正社員に戻るつもりです」。正社員でもパートでも、ライフスタイルに応じて雇用される側が人生設計に基づき、自由な勤務形態を選べる体制に、多様性を認める同社の姿勢が垣間見える。そのほか病気や授業参観、学校行事なども、社員の多能工化や近隣の工場との協力体制によって、いつでも気兼ねなく休める“助け合いの精神”が醸成されている。さらに、2021年からはパート勤務でも退職金が出るようになり、働く側にとっての選択肢も広がった。「また、職場内の結婚や恋愛、夫婦・親子・恋人などの入社で同一職場勤務となっても、希望がない限り配置転換などは行わず、現行業務を継続できるので個々のモチベーションの維持やキャリアアップにもつながっている。

 それぞれの立場を思いやり、何かあっても上司や同僚に抱え込まずに相談できる環境は、同社の大きな強みのひとつ。仕事や家庭の両立の苦労や不安も、職場のチーム力で乗り越えていこうという社風がある。 「これまで周りの方に助けていただきました。これからは私が周りを支える側となり、できるだけ長く働き続けたいと思っています」。

姉が働いていたことをきっかけに入社した地主美希さん。「結婚や妊娠・出産などのライフステージの変化に理解のある方ばかりだったので、やさしい言葉にとても救われました」とほほ笑む。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

人材の多能工化で助け合える職場に

効果
家庭も仕事もどちらも大切にできるように、助け合える職場づくりを推進。 家族の急な体調不良も、急な受発注にも対応できるように、個々が複数の作業をこなす“多能工化”を進めている6つの拠点を構える工場間でもフォローし合える体制を整え、ピンチに強い体制づくりを強化している。
取組2

育児休業制度の利用推奨

効果
男女問わず、育児休業の利用を推奨している。近年では、津曲社長自ら2週間の育児休業を取得するなど、男性職員の育児休業の取得を積極的に促す。現在の育児休業取得率は女性100%、男性は67%。今後は男女ともに100%の取得を目指す。
取組3

女性労働者の働き続けやすい職場環境づくり

効果
3分の2の社員が女性という同社。熟練工の女性が、出産や育児など変化するライフスタイルの中でも仕事が続けやすい環境を整えるため、希望に応じて勤務形態の変更が可能だ。また、評価制度も明確化し、能力に応じて公平に昇進できる仕組みを整えているため、女性管理職も増えた結果、さらに相談しやすい職場環境が整えられている。

COMPANY DATA企業データ

大手メーカーの生産の現場を支える地域のリーディングカンパニー

えびの電子工業株式会社

えびの電子工業株式会社
代表取締役社長:津曲慎哉(つまがり・しんや)
本社:宮崎県えびの市大字上江670 
従業員数:777名 
設立:1975年 
資本金:1,000万円
事業内容:省力化機器・ソフトウェアの開発、電子部品・自動車部品の製造

経営者略歴

代表取締役社長 津曲慎哉
えびの市出身。高校卒業後、上海外国語大学経済貿易科へ。卸売業や宿泊業などを経て、平成21年に同社関連企業「イーテック」入社。令和3年4月から現職。プライベートでは3児の父。2週間の育児休業を取得するなど、ワーク・ライフ・バランスを高める活動を実践する次世代のリーダーとして周囲の信頼も厚い。