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株式会社ケイ・エス・ケイ

業種

製造業

地域

九州・沖縄

従業員数

50〜99人

File.135

「企業は人なり」社員への利益還元と働きやすさを追求 ―磨き上げられた技術で技術革新を支える「ケイ・エス・ケイ」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2022.02.01

株式会社ケイ・エス・ケイ

 創業から46年。小谷俊幸社長がゼロから起業してはじめた超硬合金材や耐摩耗材の超精密研削加工業。ワイヤー放電、鏡面仕上げなど優れた技術と徹底した品質管理に定評があり、半導体業界や自動車関連、電子部品などの企業からの受注は後を絶たない。時代のニーズに沿った技術で業績はずっと右肩上がりだ。当初は小谷社長1人で始めた事業だったが、今では50人を超える社員がそれぞれの技術で凌ぎを削る。組織拡大に伴って「株式会社ケイ・エス・ケイ」が実践してきたこととは。

年次有給休暇が取得しやすい環境づくりと
全社員への業績開示で士気を高める

 創業者である社長の小谷俊幸(こたにとしゆき)さんが“取引先に損をさせないこと”をモットーに、超硬合金材や耐摩耗材の超精密研削加工業の会社を創業したのは1976年生家の佐伯市大入島で個人創業開始。1982年に日出町に移転して2人の社員が入社し妻と4名に成り、1984年に(有)小谷精工を設立した。当初1人で始めた会社は順調に業績を伸ばし、1991年に株式会社ケイ・エス・ケイを設立。今では社員50人以上を抱えるまでに成長を遂げた。「それまでは仕事に意識を集中していましたが、組織が拡大するにつれて全体的な管理を行う必要性が生じてきました。組織の再編成を余儀なくされる中で、改めて会社としての在り方を見直そうと、2009年に社訓を定め、同時に福利厚生や会社の運営の見直しを図りました」と小谷社長。

「一緒に働いてくれる仲間がいないと会社は存続ができません。社員には常に感謝の気持ちを持って接するようにしています」と小谷社長は語る。

 同社の働き方改革は、年次有給休暇の取得を促すことからスタートした。社員の勤務カレンダーには、年5日間の年次有給休暇への付与日を設定するなど、積極的に年次有給休暇が取得しやすい環境づくりに力を注ぐ。年間変形労働時間制の申請を行い、1年間を通じて週40時間の労働を達成することを認め、個々の裁量で働き方を調整できる勤務形態を採用している。合わせて、タイムカード制を廃止し、近代的な勤怠管理システムを導入することで、それぞれの勤務状況を一括管理することで管理業務の削減と、社員の働き過ぎ防止に役立てている。また、営業部門では在宅勤務も可能となり、個々の事情に合わせた柔軟な勤務体制を整えた。

 また、年度末には業績を全社員に開示して会社全体の方向性を共有するほか、部署を細分化することで目標達成や技術の継承をしやすい環境を整えるなど、社員への厚い信頼関係が伺える内容だ。「会社の創業から今まで、支えてくれる社員がいたからここまで続けてこれました。その感謝の気持ちを返していきたい。それだけです」と語る小谷社長は、現在71歳。今年、これまで携わってきた経営業務のいくつかは社員に引き継ぎ、自身は再び創業当時と同様に、社員と肩を並べて現場での作業に徹している。

 「そろそろ作業に戻らないと行けないので」、そう言うと駆け足で現場へ戻って行った小谷社長。取材班が工場へと向かうと、そこには、かつて会社を立ち上げ、夢中で仕事を追いかけていた創業当時を彷彿とさせる、気迫に満ちた表情で働く小谷社長の姿があった。何十年経っても、目の前の仕事をこんなにも夢中になって取り組める社長が居る会社だからこそ、長く一緒に働き続ける社員が育つのだろう。

±0.2ミクロンという精度で競う精密加工の世界。大手半導体メーカーや大手自動車メーカーの要望に応える技術を確立してきたのは、紛れもなく小谷社長をはじめとする社員全体の手腕によるものだ。
組織が拡大する中で、改めて小谷社長が掲げた社訓。常に限界を作らずに仕事に向き合う姿勢は社員や取引先、ひいては地球規模で貢献することを念頭に置く寛容な精神が垣間見える。
会社負担で予防接種や健康診断を行うなど社員の健康をサポートするほか、書籍購入の助成や出産祝い金、勤続5年ごとの表彰と祝金の支給も行っている。令和4年4月より河原 亮氏(写真一番右)に社長業務をバトンタッチする。

キャリア存続の危機にも、会社が味方になってくれた

 入社27年目の佐藤和也(さとうかずや)さん。入社以来現場で技術を磨き、責任者を務めていたが、2021年の春から営業部に移動した。時には在宅勤務をしながら、小谷社長に代わって現場から営業部へ転属。見積もり依頼の対応や、受注の生産管理、各種展示会の出展などの業務を行っている。現場に精通した佐藤さんだからこそ、顧客の求めるものが瞬時につかめるとあって対外的な評判は上々だ。

 佐藤さんが現在の部署に異動したのは、理由がある。同居の家族3人がそれぞれに認知症と悪性リンパ腫を患い、介護のために会社を休まざるを得ない状況になったからだ。当初は年次有給休暇を使って対応しようと試みたものの、長引く介護と仕事の両立は到底難しいと感じた佐藤さんは、会社に事情を説明。すると、会社側から一つの提案があったという。

 「一人当たり年間90日は介護休業が取得できる制度があるそうです。これから同じような状況の社員が出てきても対応できるように、まずは佐藤さんがロールモデルとして介護休業を申請してみませんか?」と提案して頂きました。これまで同社では、介護休業を利用した事例はなかったが、会社として佐藤さんがキャリアを諦めずにすむ道を見出してくれたという。介護休業から復職しても、継続的に介護の必要性がある佐藤さんの場合、「どのような働き方であれば仕事を続けやすいのか」と会社の仲間と考えた結果、現場よりも時間の調整がしやすい営業職のポジションに付くことに。現場で長年経験を積んできた佐藤さんだからこそ、クライアントのニーズを素早く把握し、スムーズな提案に繋げられているという。

 「私のような状況に陥った場合、やむを得ず離職をする人も少なくないと思いますが、私は会社のおかげで仕事を辞めずにすみました。前例のない長期の休みを取得したからといって、会社に居づらくなることもなく、会社の理解や懐の深さには本当に感謝しています」と語る佐藤さんは、現在52歳。「迫り来る高齢化社会に向けて、自分のような状況に誰が陥ってもおかしくはない。僕の経験から次の世代に伝えられることがあれば、なんでも力になってあげたいですね」。


 技術力の高さが要となる製造業は、言うまでもなく人が財産だ。社員のことを一番に考えた結果、育児休業取得者の80%は復職し、勤務を継続している。創業時は、ほんの数名から始まった「ケイ・エス・ケイ」。“社員というかけがえのない存在とともに成長し、人生を歩みたい”、その一心で働き方改革に取り組んできた結果、令和元年「おおいた働き方改革」推進優良企業として表彰された。社員のライフステージに伴う環境の改善にも積極的に取り組んでいる。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

社員の健康をサポートする

効果
勤務カレンダーに年間5日間の年次有給休暇の付与日をあらかじめ設定するなど、気兼ねなく取得できる環境づくりに努めている。また会社負担で予防接種や健康診断を行うほか、書籍購入の助成、出産祝い金や勤続5年ごとに表彰と祝金の支給も行っている。
取組2

勤怠システムの導入で、労働時間や年休取得状況を明確化

効果
タイムカード制を廃止し、近代的な勤怠管理システムを導入することで、それぞれの勤務状況を一括管理することで管理業務の削減と、社員の働き過ぎ防止に役立てている。また、営業部門では在宅勤務も可能となり、個々の事情に合わせた柔軟な勤務体制を整えた。
取組3

全社員を対象とした決算報告の実施

効果
全社員を対象とした業績開示を行い、次期の行動計画や営業方針を全社で共有。業務に取り組む機運を醸成するなど、会社全体で業務に対するモチベーションを高めている。部署を細分化し、目標達成や技術の継承をしやすい環境を整えている。

COMPANY DATA企業データ

「超精密加工」を専門とするプロフェッショナル集団

株式会社ケイ・エス・ケイ

取締役社長:小谷俊幸
本社:大分県速見郡日出町
従業員数:53名 
設立:1984年
資本金:1,000万円
事業内容:超精密金属製品製造業

経営者略歴

小谷俊幸(こたに・としゆき)
1976年に『小谷精工』を個人創業。当初から専門的に行ってきた精密加工技術は今や世界でもトップクラス。あらゆる規格・仕様に応える技術力の高さと「高品質・短納期・低コスト」を追求する。2021年春からは、経営業務を退き、現場復帰。衰えることの無いバイタリティで現場の若手をけん引する生粋の職人肌。令和4年3月をもって、社長から退き(新社長は河原 亮氏)現場に復帰し若手の指導にあたっている。