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バックカントリーラボ株式会社(なかはた農園)
農業,林業
九州・沖縄
10人未満
File.136
非正規雇用の雇用環境の整備と人材獲得 〜働く人たちの夢を応援する「バックカントリーラボ株式会社」の場合〜
2022.02.01
“九州のへそ”と呼ばれる、熊本県山都町。そののどかな山間でおいしいイチゴを育てているのが、2011年に開業した「なかはた農園」だ。その家族経営から始まった小さな農園は、さらなる事業拡大を目指して、2019年に「バックカントリーラボ株式会社」として法人化。第一次産業だけではなく、体験型農園事業も開始し、年間6000人のべ5万人の受け入れを行なっている。その多角的な事業展開を支える人材の獲得のために、どのような取り組みが行われたのであろうか。中畠由博社長にお話を伺った。
法人化を契機に、社内の現状と課題を整理
中畠社長が、雇用環境の改善の必要性を感じたのは、2019年の法人化がきっかけだったという。社会保険労務士からのアドバイスを基に、給与体制の確立や勤務カレンダーの作成を進めている中で、あらためて社内の現状と課題を整理した。「長年働いてくれていたベテランの従業員が辞めることになり、優秀な人材を獲得する意味でも、人員拡大に向けた改革が必要だと感じました」。
そこで中畠社長は、正社員だけではなく、パート従業員の働き方を多様化させることも人員を増やす際の選択肢の一つになると考え、雇用環境の改善に取り掛かった。
業務を細分化し、業務分担や賃金の設定に活用
パート従業員の担当業務を「自分でできること」と「教えたらできること」の区分により整理し、業務分担や賃金の設定に活用した。具体的には、作業を指示する場合は、“花を摘む作業”や “苗木を作る作業”など作業内容を細分化して平易な言葉で伝える。「簡単な仕事」であるという意識を植え付けることで、仕事に対するハードルを下げ、習熟度の向上を図った。さらに年に一回面談を行い、「まず習得してもらいたいこと」と「長期的に身につけてもらいたいこと」を明確に伝えるようにした。中畠社長は「面談では作業の習熟度や意欲などを確認し、本人の希望も考慮しながら賃金の設定に活用していきたいと考えています。まだ取り組み始めて日が浅いため、これから着実に実績に繋げていきたいです」と語る。
能力に応じた昇給制度を新設
社内の現状と課題を整理していく中で、パート従業員の明確な昇給基準がないことも課題として挙げられた。パート従業員は個々の事情によって勤務日数や勤務時間が異なるため、査定の基準が設けにくい。そこで、パート従業員についても能力に応じた新しい昇給制度を設けた。具体的には、「コミュニケーション」と「作業性(能力)」という2軸で評価。そのレベルに応じて昇給していくという制度だ。また、パート従業員の多様化する働き方に対応できるように出勤日や出勤時間をより自由に選択できるようにした。
求人票の記載内容を見直し、これまでに出会えなかった人材を獲得
中畠社長が、次に目をつけたのが、求人票の記載内容の見直しだ。例えば、「パック詰め作業を行うため手先が器用な人募集」といった具体的な業務内容を記載するようにした。求めている人材がより明確になり、求職者に仕事のイメージが想像しやすくなった結果、求人が殺到したという。「以前は、求人を出してもなかなか集まりませんでしたが、あっという間に定員に達しました。こういう自由な働き方が求められているということを実感しました」と中畠社長は語る。
雇用環境が整備され、今後の人材獲得のための土台が完成しつつある、バックカントリーラボ株式会社。具体的な成果が数字として表れるのはこれからであり、まだまだ課題は多いと中畠社長は語る。「働く姿勢やモチベーションは非常にいい状態ですが、その一方で、作業の習熟までに時間がかかるという課題も見えてきました。楽しく働くこととパフォーマンスがイコールになれば理想的ですね」。
働き方が多様化の一途を辿る中、中小企業も旧態依然としているわけにはいかない。固定観念にとらわれない大胆な仕組みづくりが、長く働いてもらえる人材獲得のカギになるのではないだろうか。
「弊社のような農園にとって、非正規雇用労働者は非常に大きな存在です。せっかく一緒に働いてもらっている以上、彼らの目的や夢を達成できるお手伝いができる職場でありたいと思っています」と語る中畠社長の瞳は未来を見据えている。
農業を通して、地域の活性化に貢献していく、バックカントリーラボ株式会社。熊本の小さな農園から、大きなムーブメントが起きる日はそう遠くないのかもしれない。
入社2年目になる営農部の長澤静香さんも、社内の大きな変化を感じているという。「昇給規定などが明確になり、社長が求めていることが理解しやすくなりました。パート従業員への指導もスムーズにできています。独立に向けた勉強をする機会も準備していただき、働くモチベーションアップにつながりました」。
CASE STUDY働き方改革のポイント
業務を細分化し、業務分担や賃金の設定に活用
- 効果
- パート従業員の担当業務を「自分でできること」と「教えたらできること」の区分で整理し、業務分担や賃金の設定に活用。さらに年1回面談を行い、「まず習得してもらいたいこと」と「長期的に身につけてもらいたいこと」を明確に伝えるようにした。
能力に応じた新たな昇給制度を新設
- 効果
- 査定基準が曖昧だったパート従業員を「コミュニケーション」と「作業性(能力)」という2軸で評価する新しい昇給制度を設けた。さらに、様々な働き方に対応できるように出勤日や出勤時間を自由に選択できるように体制を整えた。
求人票の記載内容を見直し、これまでに出会えなかった人材を獲得
- 効果
- これまでは固定的な内容だった求人票の業務内容を、「パック詰め作業を行うため手先が器用な人募集」などのように具体的に記載した。求めている人材がより明確になり、求職者に仕事のイメージが想像しやすくなった結果、求人が殺到した。
COMPANY DATA企業データ
熊本から、新しい農業を目指して
バックカントリーラボ株式会社(なかはた農園)
代表:中畠由博
本社:熊本県山都町
従業員数:5名(2021年12月現在)
設立:2019年7月
資本金:100万円
事業内容:イチゴ生産、販売、体験農園運営、農作業受託
経営者略歴
中畠由博(なかはた・よしひろ)
2011年に「なかはた農園」を開業。家族経営から法人格へ。
農業で地域を賑やかにするという目的のもと、体験型農園や
近隣ホテルとのコラボレーションなど、
農業の枠を越えた多角的な事業と展開している。
2020年総合化事業者認定