ホーム > 社会福祉法人若竹福祉会
社会福祉法人若竹福祉会
医療・福祉
近畿
30〜49人
File.151
ICT化推進と育児短時間勤務制度延長、社会保険任意適用拡大で離職防止 –働きやすい職場環境を整備して、仕事と育児の両立を推進する「社会福祉法人若竹福祉会」の場合–
2023.03.24
認定こども園志紀保育園外観
昭和29年に「働く母親の育児の手助けをしよう」という趣旨で志紀保育園が設立された。その後、社会情勢が日ごとに変化し、乳児を預けて仕事に出る母親が増えたので、昭和47年に乳児を対象とする若竹保育園も設立された。平成28年からは認定こども園志紀保育園となった。保育内容は、子どもの成長に合わせ、元気で力強い基礎力をもった子育てに力を注ぐ。安心して子どもを預けられる保育園として、長年の経験と実績をもとに、保護者様の要望に応える保育を目指している。
働き続けられる支援策を考えた
これまでは、育休復帰後に仕事と子育ての両立ができず、退職する職員がほとんどだった。そのため、育休復帰後に退職したいと申し出る保育教諭の退職理由を聞き、社会保険労務士と相談しながら、働き続けられる支援策を一緒に考えてきた。主な取組みはICT化推進と育児短時間勤務制度延長、社会保険任意適用拡大、複数担任制、時差出勤手当の新設等だ。2段階の育児短時間勤務制度延長は、しっかり話合った結果だ。また、社会保険の任意適用拡大をすることで、短時間勤務でも扶養の範囲内でなく、国民年金、国民健康保険でもなく、これまで通りの厚生年金、健康保険を続けてもらうことができるようになり、モチベーションが下がることを防げた。さらに、ICT化を推進し、保育教諭の負担軽減を図ることで、職場環境の改善を図った。
保育日誌、出席管理等をICT化
認定こども園になったことで0歳から就学前までの幅広い年齢の子供への対応が必要となり、これまで以上に保育教諭の業務や管理業務の負担が増えた。そこで、認定こども園志紀保育園の小角由里子園長が中心となり、毎日の保育日誌、出席管理、延長保育管理等はすべてICT化をして、持ち帰り仕事がないようにした。朝の欠席連絡等もICT化をすることで、電話対応業務がなくなり、保育に集中できるようになった。今後は、雇用管理業務においても労働条件通知書や給与明細、就業規則等のクラウド化を検討していくことを予定している。
育児短時間勤務制度の2段階延長と社会保険任意適用拡大
育児休業復帰後に、体力面や気力面で子育てと仕事の両立ができず、退職する職員がほとんどだった。そのため、育児をしながら、働き続けられるように短時間制度の延長を工夫した。育休から復帰しても両立が難しくて退職したいと申し出る職員の退職理由を聞き、園と保育教諭のどちらにもプラスになる制度を考えた。その結果、育児短時間勤務制度の延長を2段階で設定し、小学校3年生の年度末まで延長した。
1段階目として、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する職員は、規則に定める所定労働時間について、1日6時間以上、1週間24時間以上とした。2段階目として、小学校1年生から小学校3年生の年度末の子を養育する職員は、申し出ることにより、就業規則に定める所定労働時間について、1日6時間以上、1週間30時間以上とすることができる。
育児短時間制度を利用する職員が、週30時間未満になると社会保険の適用を除外されてしまう。収入要件で配偶者の扶養にも入れないため、自分で国民年金と国民健康保険に加入する必要があった。そのため、短時間勤務の利用を躊躇して、結局体力が続かず退職するケースが多くあった。そこで、社会保険の任意適用拡大事業所とし、短時間勤務であっても社会保険の加入を続けていくことができるように制度変更した。その結果、短時間勤務制度を利用しやすくなり、子どもの成長に合わせて勤務時間を柔軟に変えることができ、職員の離職防止に大きな役割をはたしている。
複数担任制と時差出勤手当の新設
育児休業からの復職後に、自身の子育てで休みがちになることで周囲に迷惑をかけたくないと退職する職員も多くいた。そこで、育児短時間勤務制度を取りやすいよう複数担任制にするなど職員の配置も工夫した。また、早出遅出等の職員には時差出勤手当も新設した。定員よりも多く職員を配置していることで、柔軟なシフトを組むことができ、子育て世代が気兼ねなく、休めるようになった。その結果、仕事と子育ての両立がしやすくなった。
10年近いブランクを経て、2019年から若竹保育園で週20時間未満のパート勤務を開始した保育教諭の上田あかねさんと松下麻由美さんも、2021年1月の社会保険の任意適用拡大や短時間勤務制度延長により、勤務時間を増やして週35時間とし、社会保険に加入した。
「子育てに専念していた期間が10年近くあり、保育士・幼稚園教諭の経験を活かし、また働きたいと考えていましたが、いきなりフルタイムで復帰するには自信がありませんでした。まずは、扶養の範囲内から働きだしてみて、徐々に自信を取り戻しました。もう少し長く働きたいと考えていた時に、社会保険の任意適用拡大や短時間勤務制度が延長されたので、主人の扶養を外れて働くことを決めました。 現在は、まだフルタイムではありませんが、子育てと両立しながら、やりがいを感じて仕事に取り組んでいます。園では、子育てをしながら働いている人が多く、子育て中の保育教諭に園長や主幹保育教諭や同僚の皆さんが配慮してくださって、とても働きやすく嬉しいです。また、ICT化が進んでいて、保育日誌も勤務時間内に書きます。いずれは正職員に転換することもできると思うと毎日充実して働くことができます」。(上田さん、松下さん)
研修、福利厚生に取り組んでいく
小角由里子園長は、「仕事と育児の両立ができるようになり、離職者が減りました。働きやすい職場環境として、パート保育教諭の採用がしやすくなりました。また、離職した保育教諭がパートとして復職し、その後、正職員に転換するケースも増えています」と語る。
取組を支援した沼田博子社会保険労務士も「様々な制度導入の結果、上田あかね先生は、2023年4月から正職員へ転換されることになりました。職員と対話しながら働き方改革を進めたことで、離職を防ぎ、良い人材の確保につながった好事例だと思います」と語っている。
社会福祉法人若竹福祉会では、小角由里子園長が積極的にICT化に取り組み、保育教諭業務や管理業務の軽減を進めている。毎日の保育日誌、出席表、延長保育管理はすべてICT化をして、持ち帰っての仕事がないようにしている。月案、週案、日案、毎日の保育日誌のICT化により手作業で書きこんでいた業務が激減した。毎日の園児の出席管理もタッチパネルの導入により、短時間で出欠管理が出来ている。毎月の保育料、延長保育料も銀行引き落としシステムにより現金を扱う事がなくなった。
また、モチベーションが上がる研修、食事会やクリスマスプレゼント等、福利厚生にも力を入れ、仕事以外でも満足感を得てもらう工夫を続けている。
支援社会保険労務士:沼田博子氏(大阪府)
CASE STUDY働き方改革のポイント
保育日誌、出席管理等のICT化推進で業務改善
- 効果
- 毎日の保育日誌、出席管理、延長保育管理等はすべてICT化をして、持ち帰り仕事がなくなった。朝の欠席連絡等もICT化をすることで、電話対応業務がなくなり、保育に集中できるようになった。
育児短時間勤務制度の2段階延長と社会保険の任意適用拡大
- 効果
- 小学校就学の始期までは1日6時間以上、1週間24時間以上、小学校1年生から小学校3年生の年度末までは1日6時間以上、1週間30時間以上とする2段階の育児短時間勤務制度の延長と、短時間勤務であっても社会保険の加入を続けていくことができる社会保険の任意適用拡大で、離職を防止し、勤務継続の意欲が向上した。
複数担任制と時差出勤手当の新設
- 効果
- 育児短時間勤務制度を取りやすいよう複数担任制にするなど職員の配置も工夫。また、定員よりも多く職員を配置していることで、柔軟なシフトを組むことができ、子育て世代が気兼ねなく、休めるようになった。さらに時差出勤手当を新設し、早いシフトや遅いシフトに対応する職員の処遇が改善された。
COMPANY DATA企業データ
イキイキ、のびのび、感性豊かに 「働く母親の育児の手助けをしよう」
社会福祉法人若竹福祉会
理事長:小角尚子
所在地:大阪府八尾市
従業員数:46名(2022年12月現在)
設立:1954年4月
事業内容:認定こども園、保育園の運営
経営者略歴
小角尚子(こすみ・ひさこ) 理事長
略歴:昭和39年3月保育士資格取得後、志紀保育園に就職。その後、志紀保育園、若竹保育園、志紀学園幼稚園の幼児教育に携わる。現在は、奈良の特別養護老人ホーム「田原本園」の理事長も兼務している。