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有限会社山下組

業種

建設業

地域

近畿

従業員数

10〜29人

File.156

ITの活用で人材不足解消と職場環境改善を実現 【動画あり】 –DXで魅力ある職場づくり「有限会社山下組」の場合–

生産性の向上による処遇改善

2023.03.24

有限会社山下組

有限会社山下組の取り組みを動画で見る 
(以下のURLのリンクからご覧いただけます)
https://www.youtube.com/watch?v=dYTGnWzIpAA

 

 京都府宇治市にある「有限会社山下組」は、建設現場の作業用足場を組み立てる専門工事業、いわゆる鳶の会社として平成13年に設立された。建設業の中でも特に人材確保の難しい職種である鳶の確保・定着のために取り組んだのは、ITの活用による職場環境改善であった。

 「身近な人を大切にして、お互いに協力し合い、成長し合う。そして仕事と私生活ともに充実した豊かな人生を歩んでいきたい、という企業理念に掲げた自分の思いが18年やっている中でやっと実になってきたかなと思います」と山下永似社長は言う。

人手不足解消に補助金を活用してシステムを導入

 まず、人手不足対策として、Excelで作成し、業務フローも社長しかわからない状況であった見積、請求業務について、補助金を活用し見積・発注・原価管理ソフトを導入した。「大手ゼネコンがDXを推進していく中で、ペーパーレス化などを迫られるようになったのがきっかけ」と山下社長は話すが、この事務作業の標準化によって社長一人が担っていた事務作業を事務スタッフに任せることができ、社長が現場巡回や新規取引先の営業活動を行えるようになった。


山下永似 社長/業務の標準化により、現場へ足を運ぶ機会が増えた。

SNSを活用して鳶の魅力をビジュアルで発信

 建設業の中でも現場の仕事は3Kのイメージがまだ強く、いろいろな求人広告を出しても若い人が応募してこないのが悩みだった。そこで社会保険労務士でもある山下典子取締役は、採用・定着について研究し、SNSHPに社員の仕事風景を掲載して、求職者に鳶の魅力や社内の雰囲気をビジュアルで発信することにした。すると、それを見た未経験でもやる気のある若い人の応募が増えたのである。


(左) 山下典子 取締役(社会保険労務士)/ (右) HPの一部。ビジュアルを工夫し、魅力を発信している。

 「最近の求職者の傾向としてどんな仕事をするのかというより、どんな人と働くのかを見るんだということを感じますね。普段の働く姿とか今後、どんな人と働いていくのかという中の状況が見えるということが大事だし、それが応募につながったのかなと思います」

 「社長の仕事に対する思いとか、こういう従業員がいて、こういうイベントをしています、ということを結構細かく書くことによって、ある程度イメージを持って面接に臨んでくれる方が多くて、まず一番変わったのが面接のドタキャンがなくなりました。また、採用後の定着率も断然よくなりました」と山下取締役は言う。

 社員が増えたことでさらに年次有給休暇を取得しやすい環境になり、取得率は3年前と比べて2割増えた。

 鳶工の中西海翔さんは、「SNSを見て社外からは楽しそうな会社だねと言われますし、自分では一緒の現場で働いていない社員の近況を見られるのが楽しく、仲間意識を感じます。山下組は年次有給休暇を取得しやすく、子育てしやすい環境を作っていただいているので、ありがたいと思っています」と話す。


(左) 鳶工の中西海翔さん/ (右) 山下組のSNS。

社員全員でスマホを活用して移動の負担を軽減

 DXを推進するに当たって、社員に苦手意識を持たせないよう、使い慣れているスマホを活用。勤怠管理アプリを導入し、スマホにより打刻・日報の送信ができるようにした。これまでは記録が紙ベースだったため、記録のため現場から帰社する必要があり、移動時間を考慮して作業を急いで早く終える必要があった。アプリの導入により現場で打刻・日報の送信ができるようになったため、直行直帰が可能となり、体を休める時間が多く取れるようになった。また、移動時間が無くなることで生じる時間的な余裕、移動の負担の軽減から安全意識も高まり、現場での事故やケガの予防にもつながっている。


(左) 鳶工の保利翔さん/(右) 勤怠管理アプリ。帰社する手間がなくなり、直行直帰が実現した。

 鳶工の保利翔さんは、「やっているうちに非常に楽というかもうすべてそれで済んでしまうので、スムーズに勤怠管理もすべていけるようになりました。労働時間は、変わりましたね。会社に戻ってきて帰るという形だったんですけど、デジタル化になってからはもう現場でピッとボタンを押してそのまま家に帰る」とスマホ活用の効果を語る。

職場環境づくりから生産性の向上へ

 山下組では、技術者として身に付けるべき技能の向上について、資格取得を会社がバックアップしている。一人ひとりが能力を高めれば、技術力が底上げされ生産性向上につながるからだ。

 「勤務年数に応じて取れる資格を一覧表にして、この時期が来たらこの資格を取りにいこうと会社から提案して、体系的に受けてもらうということをしています。講習に関しては就業時間中として、受講料は会社で100%負担します」(山下典子取締役)

 最後に山下社長は、「建設業は、ブラックだと思われている部分もあると思うのですが、会社が取組みをしていくことによって、みんなの意識も変わっていくと思っています。環境が人を変えると思っているので、こちらが環境を良くすればそれに対して社員も応えてくれると思って取り組んでいます。将来的には、専門工事業の鳶職というものもホワイトカラーのようにしていきたい。安定した雇用というものにしたいという思いがあります。魅力のある建設業にしていきたいというのが目標です」と、未来への思いを語った。

支援社会保険労務士:山下典子氏(京都府)

 

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

SNSやHPによる求職者への魅力発信

効果
SNSやHPに社員の仕事風景を掲載し、鳶の魅力をビジュアルで発信。3Kイメージを払拭し、業界未経験の若い人の採用につながった。
取組2

DXの推進にスマホを活用

効果
スマホで使用できる勤怠管理アプリを導入し、現場から打刻・日報の送信を可能にして移動の負担を軽減した。
取組3

社会保険労務士の知見の応用

効果
社会保険労務士である取締役が、他業種の多くの事例について知見があり、専門家としてのアドバイスを有効に活用できた。
取組4

SNSやHPによる求職者への魅力発信

効果
SNSやHPに社員の仕事風景を掲載し、鳶の魅力をビジュアルで発信。3Kイメージを払拭し、業界未経験の若い人の採用につながった。
取組5

DXの推進にスマホを活用

効果
スマホで使用できる勤怠管理アプリを導入し、現場から打刻・日報の送信を可能にして移動の負担を軽減した。
取組6

社会保険労務士の知見の応用

効果
社会保険労務士である取締役が、他業種の多くの事例について知見があり、専門家としてのアドバイスを有効に活用できた。

COMPANY DATA企業データ

私たちは、必要な技術の習得を通じてキャリアアップを図り、
仕事のみならず私生活においても自己の成長と豊かさを育てます。

有限会社山下組

代表取締役:山下永似
所在地:京都府宇治市
従業員数:29名(2022年12月現在)
創業:2001年
資本金:300万円
事業内容:仮設工事一式、土工事、コンクリート工事

経営者略歴

山下永似(やました・えいじ)
略歴:祖父母の代から建設業を営んでいた建設業一家に生まれる。高校卒業後、一度は会社員として勤めるも、20歳で鳶の世界に。父親のもとで鳶職人として日々仕事に打ち込んでいたが、父親が病に倒れ、25歳で山下組の代表取締役に就任。