支援・相談は働き方改革特設サイト

ホーム > 学校法人東雲学園イナバ自動車学校

学校法人東雲学園イナバ自動車学校

業種

教育,学習支援業

地域

中国・四国

従業員数

50〜99人

File.163

高齢職員に合わせた時間制度導入 男性育休制度促進 時間外割増賃金率上乗せ -職員を大切に考え、モチベーションアップを図る「学校法人東雲学園イナバ自動車学校」の場合-

幅広い人材活用

2023.03.24

学校法人東雲学園イナバ自動車学校

 イナバ自動車学校は、県下一の広々とした教習コースを持ち、大型二種をはじめフォークリフトやドローンまで、あらゆる免許を取得できるのが特長である。丁寧な指導を心がけ、鳥取県東部や兵庫県北部を中心に、年間約2,200人の卒業生を輩出している。

 「お客様本位の自動車学校」という理念のもと、地域の交通安全センターとしての役割を担い、企業や幼稚園、学校向けの自転車を含む交通安全講習や、高齢者講習などを多数実施、交通事故のない社会、地域への貢献を目指している。

誰もが安心して活躍し続けることの職場を目指して

 年々、新規職員の採用が難しくなっているという現状や、 現在雇用している職員の高齢化していく中で、限られた人材をどのように活用すればよいか悩んでいた。数年前に定年を65歳に引き上げるなど、高齢職員の活躍の場を広げる取り組みを進めてきてはいたものの、さらにここ最近では、引き上げ後の定年年齢に達する職員も徐々に増えてきていた。しかし、各職員の家庭や健康状況に合わせて働き方を選択できるような制度は整備できていなかったため、その都度、職員の希望を聴き、可能な範囲で対応をするという状態が続いていた。

 事業所としては、職員には可能な限り働き続けてほしいという気持ちがあり、また職員としても定年後の働き方に、いくつかの選択肢があることを定年前から知っておくことで、継続就業のモチベーションにつながるのではないかと考え、そのための制度設計の準備を進める方針をたてた。

 そこで、自動車学校という業種柄、年間を通じて繁閑の差が大きく、必要な時期に必要な人材を確保する必要もあることから、社会保険労務士吉田佳寿美氏のサポートにより、そのような業界特有の特徴も踏まえ、法令を遵守した制度設計を進めている。

ビジョンを語る 安住 学 理事長

労働時間制度の選択制の導入

 当校では、時間外・休日労働削減のため、2~3年前から労働時間制度の見直しを進めてきており、正職員の労働時間制度は1年単位(変形期間は3か月)の変形労働時間制を導入するなどし、年間所定休日数の増加にもつながった(92日⇒104日)。この労働時間制度は業界特有の繁閑に対応できるよう制度設計されているのだが、特に繁忙期の勤務シフトは、定年後の高齢職員にとっては身体的な負担が大きいため、定年後の就業意欲を減退させるのではないかと懸念していた。

 そこで、労働時間制度を柔軟化することとした。具体的には、正職員に適用される1年単位(変形期間は3か月)の変形労働時間制に加え、定年後は、1か月単位の変形労働時間制も選択できるようにすることで、各高齢職員の健康状態・家庭の状況等に合わせ働き方を従業員本人が選択できるようにし、週休2日程度の休日数を確保できる選択肢も整備した。

 併せて継続雇用契約の契約期間の終了時期を工夫することで、職員は半年に1回、本人の希望に応じて労働条件を見直すタイミングとなり、また学校としては繁忙期の途中に契約満了時期がくることがないよう設定することができた。この結果、高齢職員が自分にあった働き方が出来るようになり、モチベーションが上がっている。

 

男性の育児休業取得促進に向けた取組み

 職場の約8割以上を占める男性職員については誰一人として育児休業を取得したことがなかった。若手の男性職員も増えつつあったことから、男性職員に対し、「育児休業取得」について積極的に声かけや、ポスターを校内掲示板に貼るなどし、上原啓介総務部長を中心に取得促進を働きかけ続けた。

 その結果、男性職員1名が育児休業を取得。家族から後も「育休取ってもらってよかった~と声をかけてくれ、嬉しかった」という声も聞かれた。その後は、そんな職員の姿をみた他の男性職員から育児休業の申し出があるなど、男性が育児休業を取ることは普通という風土が根付いてきており、現在、育児休業取得者は3名となっている。今後は、業務の協力体制の構築の見直しを図るなど、よりスムーズに長期の休業に入ることができるよう、そして繁忙期であっても躊躇なく取得できるよう、まだまだ改善しながら取り組みは続けていく予定である。

育児休業取得を働きかけている上原啓介総務部長(中央) 育休取得男性職員 岸田さん(左)浦松さん(右)

 学校全体で取り組んできた3ヶ月ごとの変形労働制を導入により、年間休日が92日から104日へ12日間も大幅に増えました。自動車運転教習所は繁忙期には、生徒さんが集中して大変忙しくなりますが、通常期に休みが増えることにより、メリハリをつけて働くことを考えるようになりました。今年は以前からの目標としていたけん引免許の指導員を目指して研鑽を積みたいと考えています。

 個人的には、子どもが生まれた時に1ヶ月の育休を取得させていただきました。育児にかかわる時間を持つことができすばらしい体験となりました。誰も育児休業を取得しなかった以前と比べると、育児休業に対するイメージや、学校の雰囲気も若い世代を中心に確実に変わってきていると感じます。

本家侑也(ほんけ・ゆうや)さん/教習インストラクター/平成24年7月1日入職「仕事にメリハリができ、自己研鑽時間も捻出できました」

割増賃金率の上乗せ

 時間外労働の削減を図る取組みを進めると同時に実施したのが、割増賃金率の上乗せである。繁忙期には法令の基準ギリギリの時間数で推移していた。法改正により、時間外労働の上限規制による制限がかかり、法令の遵守ができなくなるとの危機感から、労働時間制度の見直しや残業削減のための取組みを進めていた。しかし、時間外労働を大幅に減らすことは、職員の生活に大きな影響を与えることとなり、時間外労働削減に対するモチベーションも生まれないとの結論となった。そこで、取組み前の給与水準を維持しながら時間外労働削減に取り組めないかと考えた結果、時間外割増賃金率を1.5に引き上げることを検討。綿密なシミュレーションを何度も行い、労働時間を見直すことにより、時間外割増賃金率を1.25から1.5に引き上げることは経営上可能と判断でき、労働時間制度の変更と合わせて1.5に引き上げを実施した。

支援社会保険労務士:吉田佳寿美氏(鳥取県)

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

柔軟な働き方ができる継続雇用制度を導入

効果
1年単位変形労働時間制し加え、定年後は1ヶ月月単位変形労働時間制も選択できるように労働時間制度を柔軟化
取組2

男性職員の育休取得

効果
男性職員の育休取得を促すために積極的な呼びかけを続けた結果、3名の男性職員が育休を取得
取組3

給与減防止の為、時間外割増賃金率の引き上げ

効果
時間外労働の上限規制に対応するため、取組みを進めてきたが、職員の給与減防止のため、時間外割増賃金率を1.5に引き上げ

COMPANY DATA企業データ

お客様本位の自動車学校になることを目指します

学校法人東雲学園イナバ自動車学校

理事長:安住学
所在地:鳥取県鳥取市
従業員:70名(2022年12月現在)
設立:1962年1月27日
事業内容:
1.鳥取県公安委員会指定自動車教習所
2.厚生労働省登録講習機関(フォークリフト講習)
3.ドローン講習
4.各種安全講習

経営者略歴

安住学(あずみ・さとる)
略歴:鳥取県出身
地元金融機関勤務を経て、イナバ自動車学校入職。
総務部長を経て現在理事長に。