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有限会社エヌ・エス・エス

業種

その他サービス業

地域

中国・四国

従業員数

10人未満

File.164

働き方改革推進支援助成金を活用し、時間外労働短縮とSDGsを同時に達成 ―車の販売から車検・点検整備までトータルにサポートする「有限会社 エヌ・エス・エス」の場合―

時間外労働の削減

2023.03.24

有限会社エヌ・エス・エス

 昭和24年、現社長の父である先代社長が創業したエヌ・エス・エスは、自転車屋から始まった。その後、二輪バイク、自動車へのモータリゼーションの進歩に伴い、地域の自動車屋さんとして対応しようと考え、指定自動車整備業を取得。「中田モータース」の名前で地元の皆様から愛された。1996年に法人化する際、これからも地域の中心としてあらゆるサービスの中心となれるよう中田サービスステーションの頭文字をとって現在の社名「NSS(エヌ・エス・エス)」に変更したそうだ。現在は、中古車の販売、車検・点検整備、修理、レンタカーの取扱いなど、さまざまなサービスを提供している。地域密着のクルマ屋さんだ。


中田哲義(なかた・あきよし)社長。

時間外労働短縮に向けてフロンガスの回収・注入装置を導入

 エヌ・エス・エスでは、若い子育て世代の社員が多く、時間外労働の削減や時間単位年次有給休暇の導入を検討していた。社員からのヒアリングの場として、労働時間・休日管理委員会(以下、委員会)を開催し、会社全体として働きやすく魅力ある職場づくりを考えてきた。

 

 時間外労働の削減に向けて取り組んだのが、助成金を活用したフロンガス回収・注入装置の導入だ。従来、自動車のエアコンのフロンガス補充については、自動車整備士2人がペアで手作業にて行う必要があり、1台につき30分かかっていた。さらに、エアコンガスの補充は時期が集中(夏場5~8月、冬場11~12月)するため、その他の業務にしわ寄せがきて、時間外労働が発生していた。

 時間短縮につながる設備として自動でフロンガス回収・注入が出来る装置があったが、130万円ほどかかるため、導入を躊躇していた。その費用の財源を思案していたところ、働き方改革推進支援センターから派遣された専門家から「働き方改革推進支援助成金の年休促進支援コース」を紹介されたため、装置の導入に向けて検討を進めることとした。

 とはいえ、会社自ら助成金を申請するのは初めてのこと。就業規則等、基本的な労務管理などもよく分からない部分があったため、専門家から説明を受けながら、担当の中田裕美さんは一生懸命に取り組みを行ったという。

 厚生労働省のホームページに掲載されている申請マニュアルや申請様式について、会社の就業規則と照らし合わせながら、専門家から説明を受けて作成。ある程度出来上がったところで、広島労働局雇用環境・均等室へ足を運び、内容を確認した。会社のある安芸高田市から広島市内までは2時間ほどかかり、また、担当の中田裕美さんは保育園児2人、小学生1人の子育てをしているので、時間のやりくりは大変だったそうだが、タイミングなどをよく打合せした結果、円滑に手続きが出来たという。助成金は交付が決定し、設備が納品された。その後、支給申請を行って令和52月末日に入金されている。

 


左)取組前の手作業時に使用していた器具。
右)取組後の全自動フロンガス交換機。

 助成金の申請は大変だったが、助成金を活用することにより、新しい装置を導入することが出来た。新しい装置が導入される以前は、自動車整備士2人がペアで30分かけて手作業で作業していたため、いろいろな苦労があった。装置の導入により自動車整備士が1人で作業が出来るようになり、時間も5分程度に大幅に短縮されたため業務集中時の作業効率も向上した。さらに、従来の手作業から自動化されたことにより、フロンガスが確実に回収されるようになり、SDGsにも貢献できた。

若い社員が年次有給休暇を取りやすく、働きやすい魅力ある職場づくり

 年次有給休暇の取得促進に向けた取組にも力を入れた。もともと年次有給休暇の取得については、年5日の取得は全員達成していた。しかし、取得状況については個人差があり、取得促進が課題となっていた。そこで、働きやすい職場環境づくりの必要性を考えて、委員会で対策を提案することになった。
 専門家からは、年次有給休暇の取得促進策として計画的付与や時間単位年次有給休暇の導入を提案された。また、従業員の子どもの通園している保育園がコロナのため休園になり、子育て世代が大変な状況であったため、コロナ感染症特別休暇の導入も専門家に相談した。

 検討の結果、3つの改革を行った。
 1つ目は、年次有給休暇の計画的付与だ。エヌ・エス・エスでは10月に休暇の切り替えタイミングがある。そこで、9月末までに向こう1年間のうち1日計画的有休となる日を選んでもらうようにした。
 最初は「休みをこんなに早く決めるなんて。」と戸惑う声もあったが、数日後にはみんなが提出してくれた。実際にすぐ休みを使用したスタッフからは「有休が気軽にとれた」と喜ばれたそうだ。今までは最低限の日数でも使いづらく思っていたらしく、遠慮しがちになっていて、切り替え時期の近づいた89月に多くのスタッフが有休を使用することとなり、お客様や他のスタッフにも迷惑が掛かっていたという。年次有給休暇の計画的付与を契機に、うまく有給休暇を使用し、バランスよく全員が取得してほしいとの狙いを持った取組だったが、確実に成果が上がっているようだ。

 2つ目は、時間単位年次有給休暇の導入だ。今まで病院に行ったり、ちょっとした中抜けをしたい場合は、休み・早退で対応していた。しかし、時間単位年次有給休暇を導入することで、年次有給休暇が気軽に利用できるようになり、周りにも自分にも負担が少ないため、利用する人が多くなった。

 3つ目は、コロナ感染症特別休暇の導入(有給)だ。まだ小さい子供のいる従業員にとって、休校等の急な休みの場合、祖父母などに子供の世話を頼みづらいこともある。コロナ感染症特別休暇を導入したことで、今後は休校等があっても、安心して自分たちで対応できると喜ばれた。現時点では、まだ使用したスタッフはいないものの、働きやすさを感じてもらえたようだ。

コバサンタと一緒に。

時間単位有給休暇ができて仕事にも心のゆとりができました

 入庫管理や保険、車検管理などの事務を担当する小笠原真理さんによれば、これまで休みの日を「早い者勝ち」ではなく「話し合い」で調整してくれるため対応が良い職場だと思っていたが、それでも休みの希望日が重なった場合には心苦しい日もあったそう。しかし、今回1時間ごとに時間単位有給休暇が取得できるようになり、とても助かっているそうだ。


「プライベートにゆとりができたことで仕事も心のゆとりができました。社員に寄り添ってくれる姿勢のある職場なのがここの良いところです。」と語る、小笠原真理さん。

地域のお客様へサービス向上を通じて還元していきたい

 これまでの取組について、助成金の申請などを担当した中田裕美さんは次のように振り返る。

「助成金の申請を初めて担当することになったのですが、36協定や就業規則の作成などは、これまで担当していたフロント受付の業務とは違う内容なので、とても苦労しましたが、機械を入れたことで、従業員の労働時間に余裕ができて他の仕事ができるようになり、生産性向上が図れて良かったです。今まで2人がかりでやっていた作業が1人でできるようになって、従業員も大変喜んでいます。今後もこのような助成金を活用し、古くなった道具を更新する際に生産性向上を踏まえた投資を行っていきたいと思っています。」

「地域のお客様へサービス向上を通じて還元していきたいですね。『我々の商品は、お客様の満足感です』を合言葉に、お客様の満足感を一番に考え、従業員一丸となって、今後も仕事をしていきます。」と笑顔で語ってくれた中田裕美さん。エヌ・エス・エスは、地域で愛されるクルマ屋さんとして、これからもお客様の満足感を高めてくれることだろう。


普段は、フロントとして受付、案内、車両販売を担当している中田裕美さん。

支援社会保険労務士:久保春惠氏(広島県)

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

エアコンフロンガス自動回収・注入装置の導入により生産性・売上高向上とSDGs達成

効果
装置の導入により、1人で作業が可能となり、作業時間は5分に短縮。作業効率が向上し、従業員の労力軽減をはかれた。さらに、フロンガスが確実に回収されるようになり、SDGsも達成。
取組2

年次有給休暇の取得がしやすい魅力ある職場づくり

効果
若い子育て世代の社員が多く、ワークライフバランスの観点から、休日・休暇の取得についても取りやすいように声をかけるなど配慮していたが、年次有給休暇の計画的付与と時間単位年次有給休暇、コロナ感染症特別休暇の制度導入によって、より働きやすい魅力ある職場環境づくりの取組ができた。
取組3

会社全体で取り組むことで風通しの良い職場風土が醸成

効果
働き方改革推進の取組を行い周知を徹底することで、新たに社員から男性育休の相談が寄せられた。これまで女性社員の育休の取得実績はあるが、男性の育児休業の申し出は初めてであり、今後どのような対応をすべきか、専門家に相談をしている。

COMPANY DATA企業データ

クルマ事業を通して全社員の幸せを追求するとともに、
町や地域の方々が元気になるお手伝いができる企業になる。

≪有限会社エヌ・エス・エス の SDGs宣言≫
◎安心安全なカーライフの提供
◎活気ある職場づくり
◎環境に優しい社会の実現
◎地域社会への貢献

有限会社エヌ・エス・エス

代表取締役社長:中田哲義
所在地:広島県安芸高田市
従業員数:7名(2023年1月現在)
創業:1949年6月、設立:1996年2月
資本金:300万円
事業内容:自動車整備業(車販売、車検、点検整備等)

経営者略歴

中田哲義(なかた・あきよし)
略歴:大学卒業後、昭和57年に家業である中田モータースに入社。平成8年有限会社エヌ・エス・エスを設立。代表取締役に就任。安芸高田市商工会幹事、安芸高田市消防団副分団長、車体整備組合三次地区支部長等を歴任。保育園の保護者会長等も務めるなど家庭や仕事との両立支援についても理解がある。