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大津建設株式会社

業種

建設業

地域

中国・四国

従業員数

30〜49人

File.166

「休日増加・ICT建機導入・多能工化」の三位一体改革で生産性向上 ―モノを建てる・創るだけでなく未来への環境問題にも取り組む「大津建設株式会社」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2023.03.24

大津建設株式会社

 昭和35年の創業以来、土木工事を中心に地域に根ざした建設会社として事業展開している大津建設。道路工事、治山工事、河川工事、下水道工事などを中心に社会資本整備の一端を担うほか、自然災害時の復旧支援なども手掛けている。昨今の建設業界を取り巻く環境は、人材確保や競争の激化など厳しい環境下にある。大津建設では、安全な施工はもとより、お客様の多種多様な要望にお応えできるものづくりの技術・品質の確保、ルール・プロセス遵守などの体制づくりを行ってきた。また、モノを建てる・創るだけでなく未来への環境問題にも取り組むべく、環境美化活動や環境負荷低減にも力を注ぎ、社会・お客様の信頼を裏切ることのないよう、日々努力している。

ICT建機導入と多能工化による生産性の向上

 大津建設は、長年にわたってさまざまな取り組みを行ってきた企業だ。「広島県仕事と家庭の両立支援企業登録」、「ひろしま企業健康宣言認定事業所認定」、「広島県働き方改革実践企業認定」のほか、2020年「ユースエール認定」、「健康経営優良法人2022(中小規模法人)認定」などを受けている。働きやすい環境づくりに向けて着実に改革を進めてきた。あわせて力を入れているのは、ICT建機導入と多能工化による生産性の向上だ。そこには、都市部とは違った悩みもあったからだという。

熊本社長。

「弊社は中国山地の中心部に位置する、人口約5万人の三次市にあります。都市部であれば、専門の業者へ外注することも容易と考えられますが、中山間地域においては専門の業者が少ないため外注することが難しい。そのため、出来得る限り社内での内製化を進めました。仕事の段取り、流れをスムーズにする観点からも内製化を行っています」

 ICT建機導入については、2021年から行っている。国土交通省がi-Construction(アイ・コンストラクション)を普及促進していたため、導入にあたってはその事例を参考にしたという。ICT施工は、熟練高齢者の退職や若年層の入職減少が加速する中での人材確保対策、生産性向上施策として促進されている。対応した業者には工事評点が加点される制度もあり、従来の機械のリプレースのタイミングでもあったことから、熊本社長は、より高い安全性や生産性向上につながるICT建機の導入を決定したそうだ。
 調査・測量から施工・検査まで一連の機器(油圧ショベルなど)を導入してICT施工を開始。属人化(熟練工頼り)の改善、省人化を図った。これにより生産性が向上し、現場からは「3人必要な現場が1人で出来るようになった」と報告があったという。

 入社した社員には車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転技能講習を受講させている。上手い下手はあるものの、熟練者でなくても機械自体で制御できるため、作業の質が標準化されたそうだ。その他にも、導入して良かった点としては、作業日数の短縮・人工の削減、事故発生のリスク低減だ。土工の作業効率は、印象としては4割~5割程度削減されたという。また、作業箇所の周辺でバックモニターや機械の付近に人が接近した場合、運転手に警告音が鳴るなど、安全性もさらに高まった。

 

 また、多能工化にも力を入れている。新入社員は欲しいが人材確保はなかなか難しいので、今いる従業員を育成し、多能工化を推進しているのだ。日々の業務の様子や周辺の人の意見を参考に、一人一人の適正を見極め、本人が興味のある、いろいろな仕事を与えてみるようにしているそうだ。さらに、従業員の過去の経歴に応じて、広く労働安全衛生法による技能講習や安全教育等を受講させ、さまざまな作業に携わってもらえるよう心掛け、従業員のやる気と適性を引き出すことで、作業の配置などに生かしている。

 「面白い仕事を自身で発見し、主体的に働いてもらうことが必要。仕事を『面白い』と感じてもらえることで、定着率向上につながるのではないか」熊本社長はそう考えている。

 

定例で行われている安全衛生会議

休日数増加へのトライアル ~「4週6休から4週8休」への移行~

 大津建設では、2022年から休日数増加へのトライアルも実施している。2021年以前は46休(年間休日87日)だったが、2022年は47休(年間休日96日)、20231月からは48休(年間休日105日)へと、2年かけて段階的に46休から48休に移行した。

 休日を増やすにあたっては、試験的に勤務時間を2022年は1日7時間30分から7時間45分に変更した。ただ、就業時間はこれまで通り始業8時、終業17時と変わらない。なぜなら休憩時間を工夫したからだ。具体的にはこうだ。従来は10時から15分、昼60分、15時から15分だった休憩時間(90分)のうち、午前中は任意で休んでよい「休息時間」とし、休憩時間を60分にしたのだ。特に屋外での作業では午前中より午後の方が体力を消耗する傾向があるので、安全衛生対策面への配慮や休憩を取らないことによる効率低下を防ぐため、午後の休憩は必要と考えて従前通りとした。

 変更後は、しっかりモニタリングも行った。日報記載時に、午前中休憩した時は休憩したことを記録し、午前の休憩が必要かだったかを検証。結果としては、作業によっては体力的にきついためか、ほぼ毎日休んでいる従業員もいた。喫煙者は喫煙のための休憩時間が必要であることも分かったそうだ。

 この検証結果を踏まえつつ、2023年1月からは、更なる変更を行った。4週8休にするとともに、就業時間を始業7時45分、終業1715分に変更、休憩時間は午前・午後15分、昼60分に戻した。現場からは、始業時間をさらに早い「7時半からにしよう」という声も上がっていたが、季節により7時半前は暗く、通勤災害の可能性を考慮し、7時45分始業に落ち着いた。始業時間繰り上げの反対意見は出なかったという。子育て中の女性からも、特に問題意見はなかった。

 従業員の福利厚生は大切であるが、企業収益とのバランスも重要である。働きやすい環境にするために試験的に運用し、従業員の意見を聴取しながら進めている。今後、従業員の家族構成や業務によって勤務時間を分けるなども検討課題としているそうだ。

 

4週8休で土曜休みが増えて部活の応援などもしやすくなり、子どもも喜んでいます

 2003年に入社し、現在は工務室長として工事管理・監督、教育指導、社内マネジメントなどを担当する中篠迫晶さんは、休日の増加やICT建機導入などについて、こう話してくれた。


中篠迫晶(なかしのさこ・あきら)さん

 「ICT建機導入で効率化されたことによって作業量が減りました。具体的には、掘削作業の際、これまでは測量士の指示で掘削量をその都度調整していたのですが、ICT建機の導入でオペレーター自身で判断出来るようになり、手間と時間が削減されました。今までは、目の前の作業をまず行っていましたが、作業量が減少したことで段取りをゆっくり考えられるようになりました。ムリ・ムダ・ムラを無くすことにより、仕事の効率化を常に考えています。5S推進も、生産性向上や安全性確保の観点から継続したいです」

 「それから、休日については、以前は月2回土曜日の出勤があったのですが、働き方改革により2023年度から4週8休になりました。高校生・中学生・小学生の子どもの部活(バスケットボール、バレーボール)の送迎や見学、試合の応援は土曜日が多いのですが、妻は平日が休みなので、誰も見に行けなかったこともあり気になっていました。休みが増えて参加しやすくなり、子どもも喜んでくれることが嬉しいです。土曜日は仕事で見学等に行けない親御さんもいるので、4週8休の会社が増えてほしいですね。自分は大津建設に勤めていて良かったと思っています」

 安全と健康を第一とし、働きやすい職場環境作り、いろいろな業務への経験を通じて、仕事を面白いと感じ興味を思ってもらえるような取組を行ってきた熊本社長。資格取得や人材の育成にも力を入れ、社員の多能工化を推進し、従業員の活躍を支援している。

 「ワークライフバランスの観点から、休日数の増加を実施し、2023年は4週8休を達成しました。ただ、勤務時間についてはまだ試行中で、検討を重ねているところです。従業員の家族構成なども考慮しつつ、柔軟な対応を心掛けたいと思っています。ICT建機やテレワークの導入など、情報通信技術についての新しい試みも行いながら、働きやすい魅力ある職場作りとともに、企業イメージの向上に努めたいです」(熊本社長)

 企業理念に掲げる 「人を尊び 自然に優しく 地域社会に潤いを届け 共にあゆむ」の実現に向けて、大津建設は今後も尽力したいと考えている。

支援社会保険労務士:久保春惠氏(広島県)

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

「4週6休」から「4週8休」へ

効果
従業員から「家族と過ごす時間が増えた」「身体をしっかり休ませられた」など喜びの声が増え、ワークライフバランスが向上した。今後、人材確保面についても、休日数増加による効果が出てくるのではないかと期待している
取組2

ICT施工技術の導入

効果
属人化(熟練工頼り)の改善・省人化、作業日数の短縮・人工の削減、事故発生のリスクの低減、生産性向上などの効果があった。機械を導入することで業務の平準化が図れ、新人でもいろいろな仕事にチャレンジできる魅力的な職場作り、企業イメージの向上も期待できる
取組3

多能工化を積極的に推進

効果
様々な業種を経験できるよう資格取得のサポートに注力し、人材を育成することにより、従業員一人一人の仕事の幅が広がり、多能工化の実現を図っている

COMPANY DATA企業データ

人を尊び 自然に優しく 地域社会に潤いを届け 共にあゆむ

大津建設株式会社

代表取締役社長:熊本孝司
所在地:広島県三次市
従業員数:33名(2023年1月現在)
創業:1960年3月、設立:1967年1月
資本金:2,000万円
事業内容:建設業(土木工事業、建築工事業等)、下水道排水設備工事業、土木建築設計管理業、介護福祉用具の販売・貸与業、農業、食品製造業ほか

経営者略歴

熊本孝司(くまもと・こうじ)
略歴:
建設コンサルタント会社に勤務後、1974年7月に大津建設株式会社に入社。1992年6月に代表取締役に就任。現場の工事管理・監督等を経験。建設業労働災害防止協会での安全指導者、旧作木村商工会会長、NPO法人理事長などを歴任。