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株式会社久米商店
卸売業,小売業
中部
50〜99人
File.169
きめ細かな労務管理で時間外労働削減、新入社員の定着、パートタイマー育成 ―時代に合わせて業態変更し成長を続ける「株式会社久米商店」の場合―
2024.03.22
初代は、大正6年に名古屋市で桐タンスの製造販売店として創業したが、戦火で焼失し昭和19年に岐阜県関市に移転した。その後、昭和22年に「株式会社久米商店」を設立した。当時の家具の需要が「桐タンスなど婚礼家具」から「学習デスク」へと変化し、平成に入るとその需要はさらに大きく変化し、低価格販売の大手量販店が全国的に市場を拡大してきた。そのことを受け、従来のタンス業態から平成18年にアウトレット家具へ業態変更した。その業態変更が大成功し、お客様や売り上げが急増し、県外への店舗し進出を成し遂げて現在に至っている。
時間外労働の削減と年次有給休暇取得の推進
代表取締役である久米浩元氏は、働き方改革に取り組むきっかけなどについて、次のように語った。
「アウトレット家具販売へ業態を変更してからお客様が非常に多くなり、残業は当たり前で年次有給休暇などとても取得できる環境ではありませんでした。働き方改革が始まり、労働局や労働基準監督署で開催されたセミナーに、何回も参加しました。その際、働き方改革推進支援センターのことを知り、派遣専門家の支援を依頼しました。私がめざす働き方改革は、正社員、パートタイマーを問わず従業員誰もが、安心して真の笑顔が出るような楽しい気持ちで毎日仕事ができるようにすることに尽きます。企業理念の『従業員に愛され、喜ばれるお店を創ろう』を実現しなければ会社の繁栄はない、それが『お客様に喜ばれ、愛される久米商店』の基本であるという信念で、働き方改革にも取り組んでいます。」
「従業員に愛され、喜ばれるお店を作ろう」をモットーに働き方改革にも取り組んだ代表取締役社長の久米浩元氏
会社の急成長を背景に、時間外労働が多くなり、年次有給休暇も取りづらい状況にあった。そこで、各店舗の店長など管理者が部下の労働状況(シフト、実労働時間、時間外労働、年次有給休暇取得の状況や時間外労働上限の警戒通知など)を リアルタイムに把握できる勤怠システムを導入した。従来、集計が終わらないと時間外労働等の詳細が把握できなかったが、システム導入後は、特定の従業員や部門に時間外労働が集中し業務量が多い状況を即時に把握でき、管理者が業務の平準化を迅速に実施して、時間外労働削減が実現した。
リアルタイムに労働状況を把握する勤怠システム導入
新入社員のメンター制度を充実し、定着化を推進
また、新入社員の定着化については、毎年数名の新規学卒者を採用しても、2,3割ほどが早期に退職していたので、従来から新入社員教育の一環で実施していた業務日誌を、新入社員のメンター制度として活用した。
採用後3か月間は毎日の仕事の内容、苦労したことなどを日記形式で書いてもらい、それに対し先輩がコメントを記入して返す「交換日記」制度を実施。新入社員の悩みをカウンセリングすることで早期退職を防止し、定着を図った。
入社2年目の正社員、北條真衣さんは入社当時を振り返って次のように話している。
「現在、売場での接客を中心に、値札作成や特売チラシの準備の業務も担当しています。入社後3か月間、業務日誌に、実際にお客様に応対してよく分からなかったこと、苦情対応など、今悩んでいることなどを何でも自由に書いて、その都度身近な先輩からコメントをいただき、とても心強かったです。」
入社2年目の正社員 北條真衣さん
パートタイマーの育成とキャリアアップの推進
さらに、将来の会社の発展のための課題であるパートタイマーの育成にも着手した。
当時78名の従業員のうち、パートタイマーが20人と大きな戦力となっている中、パートタイマーのモチベーションアップが必要不可欠であった。
そこで、正社員と同様にパートタイマーにも各職種別目標を設定し、人事考課における評価基準を明確にしてステップアップと待遇改善の方針を全従業員が集まる会議で説明し、公平・透明性を確保することによりそのモチベーションアップを図った。また、パートタイマーから正社員への転換制度を設けて、公募方式と勧誘方式を併用し、会社幹部による面接と人事考課結果に基づいて、正社員への転換を積極的に推進しているところである。
実際に正社員転換制度を利用した尾関宣子さんは次のように話している。
「上司やスタッフ間の風通しが良く、何でも言い合える雰囲気がある職場です。人事考課はパートを含めて行われ、その面談でも上司から健康のこと、子供など家族を含めた近況や職場での悩みごとなど、何でも聞いていただけます。公平に一人ひとりを評価してくれており、自分が頑張ってやってきたことが認められ、働きがいを感じています。」
「自分で頑張ってきたことが公平に評価され、働きがいを実感しています」と語る尾関宣子さん
先手、先手の思い切った社長の経営手腕が成果達成の原動力に!
働き方改革の取り組みを支援した社会保険労務士、梅田静可氏は次のように振り返った。
「人事部長にヒアリングした結果、働き方改革のポイントをきめ細かな労務管理による労働時間削減、新入社員の定着およびパートタイマーの育成・キャリアアップの3点に絞って、改善提案をし、取り組みの支援をしてきました。同社の急成長は、既成概念にとらわれない先手、先手の思い切った社長の経営手腕によるものですが、今回の働き方改革においてもそれが十分に発揮されたと感じました。
また、今回の成果は『従業員に対する温かい気遣い』の土壌のもとに生まれたものであることも紹介します。例えば、毎年クリスマス時期に、社長が各店舗をまわって従業員に子供さん用クリスマスケーキを手渡しているということが続けられていると聞いています。」
「お客様に喜ばれ、愛されるお店を創ろう!」
CASE STUDY働き方改革のポイント
時間外労働削減と年次有給休暇取得率の向上
- 効果
- 従業員の労働状況を即時に把握するシステムを導入し、各人に応じた労務管理を推進したことで時間外労働削減、年次有給休暇取得率向上を実現
新入社員の早期退職防止と定着化
- 効果
- 独自のメンター制度を導入して、新入社員の悩みや不満を早期に把握し、カウンセリングを行うことで早期退職の防止と定着化を実現
パートタイマーの待遇改善とモチベーション向上
- 効果
- パートタイマーの一層の活用を図るため、正社員転換制度の導入や公平な人事考課により待遇の改善・モチベーション向上を推進
COMPANY DATA企業データ
家具、インテリアを通じて、より楽しく、より癒しのあるライフスタイルの向上に奉仕しよう
一、 お店はお客様のためにある
一、 お客様に愛され、喜ばれるお店を創ろう
一、 お取引先、従業員に愛され、喜ばれるお店を創ろう
株式会社久米商店
代表取締役社長:久米浩元
所在地:岐阜県関市
従業員数:78名(2023年10月現在)
設立:創業1917年 株式会社化1947年6月
事業内容:家庭用家具の販売、配送及び設置