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株式会社エス・アイ
情報通信業
近畿
50〜99人
File.17
ワーク・ライフ・バランスの“元祖” 進化を続けて30年 ―情報処理サービス エス・アイの場合―
2020.02.14
兵庫県姫路市。姫路城の北西に位置し、深い緑に包まれた地に、情報通信業のエス・アイの本社がある。
周辺はタケノコの産地で、一帯を「タケノコの里」と呼ぶ人もいるという。エス・アイの今本茂男社長は「ここは『ワーク・ライフ・バランス発祥の地』と言われている」と笑顔を見せた。
社員が自由に決める勤務時間→全員時給制度がバックアップ
エス・アイは、従業員が毎日、出勤と退勤時間を個人で自由に設定できる「自由出勤制度」を設けている。1日のうちに何度も出勤と退勤ができ、子どもの学校行事などでいったん出て、また仕事に戻ることもできる。それぞれの事情や都合に合わせて、仕事を開始する時間をはじめ、退勤時間も決めることができるようにしている。育児はもちろん、働く時間に制約がある従業員が仕事を続けやすい制度となっている。今本社長が働きやすい環境を模索する中で、たどり着いたものだ。
この「自由出勤制度」を支えているのが、「全社員時間給制度」だ。従業員全員について、仕事の成果を反映した時給制としており、時間給は、半年ごとに個人の実績に基づいて見直しを行っている。自由な時間に出勤でき、休憩をとる時間も自由だ。「10分間、ベッドで横になってもいい。その日の勤務時間は自分で入力する。それぞれの能力に合わせる」と今本社長は語る。
2児の子育て経験の専務、システム考案で社長の理念支える
今本社長の働き方改革への思いを、主にシステム構築の面から支え、実行できるようにしてきたのが、家永雅子専務だ。もともと、他社でシステムエンジニアとして働いていたが、結婚を機に退社した。2児の母となり、「小さい子どもがいても働ける」と友人の紹介で、1994年、下の子どもが1歳の時にエス・アイに入社した。
今本社長は「家永専務のお子さんを保育園に迎えに行った」と振り返る。家永専務は、自由出勤制度などエス・アイのワーク・ライフ・バランスを支えるさまざまなシステムを考案、整備してきた。家永専務自身も、自由出勤制度を利用して、仕事の途中で家事のために自宅に帰り、また出勤するなど生活に合わせた働き方を実践してきたという。現在、当時幼かった子どもたちは成長し、孫にも恵まれた。家永専務は、「孫との時間も楽しんでいる」という。
現在、エス・アイで人事と総務にかかわる業務を担当している玉田由紀恵さんは、2年半ほど前に入社した。結婚と同時に勤務していた会社を退社し、10年ほどのブランクを経て選んだ勤務先がエス・アイだった。子どもが生まれた時にテレビ番組でエス・アイの存在を知り、「子どもの手が離れたら働きたいと思っていた」ためだ。現在、小学校3年生、1年生、4歳の3人の子どもを育てながら働いている。子どもたちの学校行事などに合わせて勤務時間を決めている。「学校の給食がない日には、正午に帰宅するなど、自分で仕事をする時間や日を決めることができるので、とてもありがたい」という。
「ハンデを持つ人も働き続けられる環境、もっと広めたい」
もともと、1991年に創業した際にも「残業のない会社を作りたい」との思いが強かった。今本社長自身が会社員時代に長時間働いた結果、働き方について考えなおし、「自分の時間を大事にしてほしい」と従業員に残業を禁止している。今本社長は「本当に必要な仕事だけをして早く帰る。時間給を高くして短い時間、働いてもらいたい」と説明する。
今本社長が近年、従業員の働きやすさとともに注力しているのが、ダイバーシティだ。「精神障がいや発達障がいのある方にもシステム構築など専門性を生かしてもらおうと、積極的に採用している」と語る。エス・アイが進める自由な働き方の仕組みによって、精神面などの障がいを持ちながら働き続けることができる人が少なくないという。「こんな会社をもっと広めたい」。常に社会と働く人に目を向けながら、会社を進化させる今本社長の挑戦は続く。
CASE STUDY働き方改革のポイント
自由出勤制度と残業の禁止
- 効果
- 全社員が時給制となっており、基本的に残業はしない。好きな時間に出退勤でき、勤務時間の合間にいったん自宅に帰って家事をするなど、何度でも出退勤ができる。
エイジフリー制度
- 効果
- 定年制度を設けておらず、年齢に関係なく働く意欲のある社員は本人が希望する限り働き続けることができる。
ダイバーシティの実現
- 効果
- ワークシェアリングによって、障がいのある人も専門性を生かした働き方ができる環境を整備している。
COMPANY DATA企業データ
株式会社エス・アイ
代表取締役:今本茂男
本社:兵庫県姫路市
従業員数:50名(2019年9月現在)
設立:1991年
資本金:1,000万円
事業内容:情報処理サービス
経営者略歴
今本茂男 奈良県大和郡山市出身。1991年エス・アイ設立。第3種電気主任技術者。兵庫県障害者職業生活相談員、兵庫県立姫路聴覚特別支援学校評議員、兵庫県立播磨特別支援学校評議員、ひょうご経済・雇用活性化プラン委員、関西学院大学非常勤講師など歴任。