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株式会社岩井田工業

業種

建設業

地域

九州・沖縄

従業員数

10〜29人

File.172

やる気あふれる働きがいのある職場へ ―人との繋がりを大事にする地域に密着した総合建設業「株式会社岩井田工業」の場合―

同一労働同一賃金の実現

2024.03.22

株式会社岩井田工業

 株式会社岩井田工業は、1974年に当初、鉄工所として創業した。

 人との繋がりを大事にする先代の想いを受け継ぎ2010年に現社長へと交代。長きにわたり地元に貢献することで、着実に地域の信頼を積み上げ、鹿児島県・姶良市発注の工事および民間の工事を請け負い、また近くの小学校や地域のボランティア活動にも積極的に取り組んでいる。地域とともに今後もさらなる発展を目指している地域密着型の建設業だ。

手当の支給目的を明確にした賃金体系

 働き方改革へ取り組んだきっかけについて、代表取締役である岩井田剛介氏は次のように語った。

 「建設業界を取り巻く環境が厳しさを増す中、人材確保や生産性向上に向けて新規採用を考えている時に、『働き方改革推進支援センター』のチラシが目に入り個別相談を申し込みました。

 社長に就任して13年目になりますが、先代から受け継いだ創業当初から変わらない漠然とした賃金体系では、基本給や手当支給の基準などが従業員によってバラバラであり説明しづらい状況でした。そこで、専門家の方にアドバイスをしていただきながら、一つひとつ賃金体系を見直し将来に向け経験年数や資格、技術が賃金昇給等に反映する仕組みを整備しました。」

 

働き方改革への思いを語る代表取締役、岩井田剛介氏

 

 創業当初から変わらない漠然とした賃金体系のまま現社長に引き継がれたため、従業員から質問された際に手当の支給目的を明確に返答できない状態であった。

 そのため、同一労働同一賃金の観点から、手当の支給項目を一つひとつ、その意義・目的を確認、精査し、またその額が適正であるか検討を行うと同時に、職務の内容を洗い出して可視化し、その大きさを客観的に評価する手法である職務分析・職務評価を用いて、基本給について均衡が図られているかを確認した。その結果、基本給については均衡が図られていると考えられた。これに対し、諸手当については職務手当と資格手当が混同されているなど、明確な根拠を有しておらず、不合理であることが確認された。

 そこで、職務手当を廃止し、資格手当を新設、保有資格に応じた手当額の支給とした。同時に、無資格者も資格取得で賃金が上がるというモチベーションを持てるようになった。さらに、通勤手当は支給対象者や支給額について特に基準がなかったため通勤経路や通勤手段等を従業員に聴き取り、合理的に算出できるように規程を設けた。

キャリアパスの創設と職務等級に応じた基本給の設定

 今後、どのような能力あるいは資格を取得することで(特に賃金面において)どのような待遇になっていくのかを明確にするため、キャリアパスの作成を提案した。

 会社自体は少人数の為、キャリアパスを5等級で設定。そのランクの職位・職責・必要な資格や能力、任用要件を定めた。例えば、ランク1は初級職員、つまり指示の内容を理解し、基本業務を進めることができるものを指し、作業内容は軽作業、必要な資格は普通自動車免許とした。ランク3は上級職員で、新人や後輩の指導ができ、作業内容は現場監督やパソコンでの書類作成、作業員育成や専任技術者としての職務を担い1級土木施工管理技士を取得し、重機トラック運転が可能であるものとした。

 キャリアの具体的な道筋を示し、ランクに応じた基本給を決めることで、誰が見てもわかる表を作成し、従業員一人ひとりと面談しながら「今後の努力で、このように昇給・昇格する」といった説明をすることで、より目標を持って働ける環境を整備した。

資格取得や経験が昇給につながる仕組みにやりがいを感じます

 土木部長である徳永剛さんは、今回の取り組みを振り返ってこう話してくれた。

 「今までも特に不満や疑問をもっていたということはなかったです。社長の下で働き、若手の指導、育成をしたり、と充実していたと思います。ただ、賃金、昇給に関しては漠然としていたので、今回、社長から『賃金体系を見直す』とのお話があった時は最初不安を感じました。しかし、結果的に賃金は上がり、また将来に向けても、勤続年数や、経験年数、そして資格、技術が賃金、昇給等に反映する仕組みになり、またその基準が明確化されたことから、自分の資格取得や、後輩に資格を取得させるべく指導及び育成、技術力向上へのモチベーションが高まり、やりがいを感じられるようになりました。」

 

1級土木施工管理技士の徳永剛さん(土木部長 平成12年入社)

時代の流れに合わせて社長と共に作り上げた制度

 株式会社岩井田工業の取り組みを支援した社会保険労務士の福壽晶子氏は次のように語った。

 「最初は職務分析・職務評価の支援でお伺いさせていただきました。職務分析・職務評価を実施したところ、基本給について正社員と非正規雇用労働者の間で不合理な待遇差はなかったのですが、手当の支給根拠が曖昧な点があることに気付きました。

 先代社長の時代からすると世間の働き方改革の考え方はずいぶん変化し、今のままでは従業員から不満や不安の声が上がるのではと感じたため、今回は特に透明性を重視して改革の提案をしました。賃金制度、それに紐づくキャリアパスについては『誰が見ても分かるように』を意識しながら社長と共に作り上げました。従業員の定着を図りつつ、もともと地域密着型の会社ではありますが、個々の技術向上により、今まで以上に地域に貢献されることでしょう。」

 

取り組みを支援した社会保険労務士、福壽晶子氏

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

透明性のある賃金制度構築

効果
在職中の従業員はもちろん、これから採用される方にも安心して働ける制度であるとアピールして定着率をアップ。
取組2

将来が見えるキャリアパスの導入

効果
キャリアパスの導入によって自身の成長が見え、将来の見通しが良くなり、モチベーションがアップした。
取組3

技術の向上でさらなる地域貢献

効果
個々が上位ランクを目指し成長することで、知識や技術が向上し、より地域貢献につながる。

COMPANY DATA企業データ

地域貢献と、人との繋がりを大事にする。

株式会社岩井田工業

代表取締役社長:岩井田剛介
所在地:鹿児島県姶良市
従業員数:10名(2023年12月現在)
設立:1974年4月
事業内容:昭和49年に創業し、主に鹿児島県・姶良市発注の工事および民間の工事を行っている地域に密着した総合建設業である。