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合同会社はっぴぃべる
教育,学習支援業
中国・四国
10〜29人
File.177
【開業前から支援】全員が能力発揮!キャリアパスを構築し働きがいを追求 ―利用者の立場に立った指定保育所等訪問支援を行う「合同会社はっぴぃべる」の場合―
2024.03.22
合同会社はっぴぃべるの代表社員の中薮鈴美氏は、広島市職員として発達障害児の支援をしていた経歴を持つ。定年退職後、その経歴を生かし、発達障害児が地域で生活していく支援を柔軟に実施したいと思っていた。
広島市職員時代は女性の多い職場の管理職として、子育てや介護でキャリアを中断しないような働き方、非常勤職員であってもキャリアを構築できるような働き方を模索していた。自身も育児や介護で悩んでいた時期もあったが、周囲の協力もあり定年まで勤めあげることができたという。
人に支えられて続けてこられたことを感謝し、その気持ちをお返ししたいと思い起業するにあたって働く人のやりがいを引き出す職場づくりに取り組むことにした。
全員が能力発揮できる働きがいのある職場の労働条件
代表社員の中薮鈴美氏は、設立当初をこのように振り返っている。
「私は、会社経営については何も分かりませんでしたが、自分の障害児支援に対する想いを実現したいという気持ちでした。両立支援の観点から7時間勤務と週休二日制は私のこだわりたいポイントでした。その枠組みの中でも働く人のやりがいを引き出せるような仕組みを実現したいと考え、まずは、労働条件や就業規則など、会社設立に必要な事項を自分で一つずつ調べました。しかし、専門外のことは思った以上に難しかったため、働き方改革推進支援センターの専門家の方に納得がいくまで相談し、自分で労働条件通知書や就業規則を整備することができました。相談できる人が身近にいることはとても心強かったです。」
働き方改革へ取り組んだきっかけを語る代表社員の中薮鈴美氏
常勤職員も非常勤職員も能力発揮できる職場づくりは所定労働時間と賃金の検討から始まった。
厚生労働省の労働条件通知書のひな形を参考に労働条件を検討した。女性の多い職場であることから、子育てと両立しやすい環境を考えた。1日、2週間、1か月の業務内容を所定労働時間から逆算し、時間外労働をしなくても業務が実施できるように留意した。
賃金については、ハローワークの求人票などの世間相場を参考に案を作成した。中小企業についてもパートタイム・有期雇用労働法が2021年4月から適用されたため、常勤職員と非常勤職員の賃金について、職務分析・職務評価を行い、基本給について不合理な待遇差がないかを検証し、均等・均衡が図られていると考えられた。結果を踏まえ、職務の内容に基づいた等級を定義し、賃金を決定したことにより、後日、処遇改善加算を申請する際のキャリアパス要件を設定するときに役立った。
労使間の信頼関係構築のための就業規則の作成
就業規則の整備について、中薮鈴美氏は自身の管理職の経験より、その必要性に理解を示されていた一方、起業時のメンバーが昔から付き合いのある非常に信頼している元同僚2人(常勤職員1人、非常勤職員1人)であったため、解雇や服務といった規程等については戸惑われる様子があった。しかし、開業後は経営者と労働者という立場の変化があること、また、順調に事業が拡大したら、知人以外を雇用することも想定されることから、社内のルールブックである就業規則は、労使間の信頼関係の構築のために必要であることを説明し、就業規則を整備する必要性を確認した上で、就業規則を作成した。
明確な労働条件の提示が意欲につながりました
保育士の草野葉さんは、職場について次のように語っている。
「『一緒に仕事しよう』と声をかけていただきましたが、子育て、介護、自分自身の身体のケアを抱えながら、仕事を続けることに不安がありました。はっきりとした賃金、勤務時間、体制の提示は、今までの私の仕事のスキルを認めてもらったようで自信につながりました。『やってみようかな?』から『やろう!』という意欲となり、やりがいを感じて働いています。スタッフは、常勤、非常勤といます。年齢や働いてきた経歴も異なりますが、各々の能力を認め合い、活かし合って働いている職場だと感じています。」
取り組みについて語る保育士の草野葉さん(主任 保育士 2021年入社)
労使双方の信頼関係の基礎となる明確な労働条件づくり
合同会社はっぴぃべるを支援した社会保険労務士の久保春恵氏は、次のように語っている。
「女性の多い職場の管理職だった中薮代表から、子育てや介護でキャリアを中断しないような働き方や、非常勤職員であってもキャリアを構築できる職場づくりについて、熱心に相談されました。その想いを実現できるよう、職務分析・職務評価により、全員が能力発揮できる制度を構築しました。
中薮代表は、『障害児の支援をするためには、人材の確保、定着、育成が重要』とおっしゃっていました。労働条件通知書や就業規則を整備し周知をすることは、労使双方の信頼関係の基礎となることを説明しました。」
支援を担当した社会保険労務士の久保春惠氏
合同会社はっぴぃべるは、起業後4年経過し、令和4年度に1人の非常勤職員が常勤職員が転換、令和5年度に新規で常勤職員を採用した。
人材育成は最重要課題であり、常勤・非常勤関係なく、やる気のある従業員に能力向上の機会を与えている。例えば、令和3年4月に採用したパートタイマーに資格(児童発達管理責任者)を取得するための研修を会社負担で受講させ、その時の研修時間も労働時間として扱った。また、仕事と家庭の両立に無理のないよう、本人の希望を丁寧に聞き取り、入社当初週1回勤務であった職員を、週2~3回へ増加させている。
サービスの利用希望者から支援依頼があったときに断らずにすむように、従業員の育成を充実させることを目指している。
CASE STUDY働き方改革のポイント
所定労働時間から逆算した業務内容
- 効果
- 終業時間に帰れるように、所定労働時間から業務内容を逆算。子育てや介護中の労働者のキャリアを中断させないように配慮した。
職務分析・職務評価を実施し、同一労働同一賃金を実現
- 効果
- 常勤職員も非常勤職員も能力や経験に応じた職務を与え、その職務内容や働きぶりに見合った処遇を行うことを重視した制度とした。
職務内容を確認し、キャリアパスを構築
- 効果
- 発達障害児の支援員は専門性が高く育成が難しいため、職務内容を確認し、入社後管理職昇格までのキャリアパスを構築した。
COMPANY DATA企業データ
こども・保護者・職員 みーんな、はっぴぃ!
~こどもの健やかな成長を目指し、地域で生きる力を育む~
合同会社はっぴぃべる
代表社員:中薮鈴美
所在地:広島県広島市
従業員数:10名(2023年4月現在)
設立:2020年8月
事業内容:保育所等訪問・児童発達支援を通して、障害児及びその障害児の保護者等の意思及び人格を尊重し、適切な支援の提供を確保する。地域や保護者と連携し、集団生活の中でより良い適応を目指す。将来を見通していく中で、今つけていきたい力を確認し支援する。