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よこづな

業種

宿泊業,飲食サービス業

地域

九州・沖縄

従業員数

10〜29人

File.179

企業も働く人も成長できる公正・公平な待遇の実現 ―お客様も従業員も笑顔になる備長炭焼き鳥と串カツの店「よこづな」の場合―

同一労働同一賃金の実現

2024.03.22

よこづな

 沖縄県宜野湾市の備長炭焼き鳥と串カツの店よこづなは、いつでも美味しいものが楽しく気軽に楽しめる店を目指して2008年にオープンした。

 事業主の平良哲人氏は、関西の串カツ専門店で修業中、楽しそうに食べて飲む人々の笑顔に接するにつれ「故郷・沖縄の人々を、食を通じて笑顔にしたい」との思いが強くなったという。縁にも恵まれ、チャンスが巡ってきたため一念発起し、自分の店を持った。

 平良氏は新型コロナウィルスの影響の中、自分の足元を見つめ直す機会を持ったという。ピンチはチャンスと発想を転換し、従業員も笑顔にしたい、との思いから専門家の助言を受けながら「働き方改革」を進める決意をし、取り組みを積極的に進めていくことにした。

職務分析・職務評価の手法で事業内容と待遇を整理

 平良氏は働き方改革へ取り組んだきっかけを次のように語った。

 「これまで賃金の決め方に関しては、特に明確な基準がありませんでした。アルバイトに関しても、時期的な要素に左右されながら、決めていました。そんな中、新型コロナウィルスの影響が収まり、急激に人手不足が強くなってきました。人員確保の観点から世の中の相場にあわせて賃金を決定していたところ、ベテランのアルバイトよりも最近入った新しいアルバイトの時給が高くなる逆転現象が生じていました。何とか改善しなければならないと考えました。また、店舗の切り盛りを任せられる人材を育てていきたいとの思いがありますが、具体的に何をどう行っていけばいいのかがわからないため専門家による支援を求めることにしました。」

ピンチをチャンスに変えて働き方改革に取り組んだ事業主、平良哲人氏

 これまで、よこづなには賃金の決定に関して明確な基準がなかった。慢性的に人手不足である中、賃金相場は徐々に上昇しており、状況に合わせて人材確保を最優先に賃金等の待遇を決定した結果、新人の方が、ベテランより時給が高いという逆転現象が起こってしまった。このままでは従業員の不満となり、離職につながってしまう。そのため、担う仕事と待遇の関係を可視化し、課題解決を図ることにした。

 まず、広く課題発見のために厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」のチェックシートを活用した自主点検を実施した。支給基準が不統一であるために、通勤手当が支給されていない者がいることが発見された。同一労働同一賃金ガイドライン概要を提示し、共通認識としたうえで、通勤手当は実費支給との方針を決定することができた。その結果、通勤手当における不合理な待遇差が改善された。

 次に、職務分析・職務評価を実施した。すると、職務の洗い出しを行う中で、新人には任せていない業務があることや、経験年数が長くなる事でできる業務が増えること、調理などは特別な技能が必要になることなど、同じ職場内に様々な業務があることが確認でき、従業員の中には担っている業務と待遇に必ずしも整合性が取れていないものがいるという課題が発見された。

 職務構造を可視化したことにより、担う職務の質と量で待遇を決定する方針を定めることができた。その方針を従業員に説明することで、従業員が待遇について納得感を持てるようになり、ほとんど全ての従業員の待遇が改善する結果となった。

均衡待遇を意識した処遇の改善と人材開発との連動

 職務の洗い出しを行う中で、担っている業務と待遇に必ずしも整合性が取れていない従業員がいることがわかった。

 そこで、人材活用の方針と連動させた賃金制度を設計した。職務分析・職務評価を行い、職務と待遇が可視化されたことで、人材開発で何をすべきかについても考えることができるようになった。また、人材活用の段階や、簡易的なキャリアパスを構築することができた。

自分の待遇が明確に説明されたことで納得感が得られました

 店長候補の伊藤主悦さんは、今回の取り組みを振り返ってこう話してくれた。

 「コロナ明けに急激に忙しさが戻ってきて、とにかく人手の確保が重要で、一人ひとりの待遇が公平なものかには正直疑問もありました。しかし、今回の一連の取り組みで、なぜ、今の待遇なのかが明確に説明がされたため納得感があります。しかも、賃金引き上げにより待遇も良くなりました。自分も店長になるには何が必要かを改めて知ることができ、モチベーションもあがりました。職場の雰囲気も更に明るくなり、店も自分も成長していきたいと改めて感じています。」

取り組みを振り返る店長候補の伊藤主悦さん

 

働く人のモチベーションとお店の発展の相乗効果

 よこづなの働き方改革への取り組みを支援した社会保険労務士の岡輝一氏は次のように語っている。

 「『お店をよくしたい』との事業主の思いに共感しました。思いを具体的な働き方改革の成果とできるように丁寧なヒアリングを心がけて支援を行いました。なじみのない専門用語は、かみ砕いてイメージをつかんでもらえるように工夫しました。同一労働同一賃金の実現と人材開発・活用方針を連動させる下地ができたと考えています。今後も働く人、一人ひとりの成長とお店の発展が相乗効果をあげていくように、働き方改革の取り組みを加速させてほしいと願っています。」

 コロナ禍という飲食業のピンチをチャンスに変えて、よこづなは更なる発展を続けていく。

取り組みを支援した社会保険労務士の岡輝一氏

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

通勤手当における不合理な待遇差の改善

効果
「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」に基づく自主点検を行い、通勤手当における不合理性を是正できた。
取組2

職務分析・職務評価による職務と待遇の可視化

効果
職務分析・職務評価を行ったことで、これまで漠然と事業主の裁量で決まっていた処遇についての決定要素を明確化することができた。
取組3

均衡待遇の実現と人材開発方針の決定

効果
職務分析・職務評価の実践により待遇の根拠が具体的に説明可能となり、人材開発の段階・筋道も定まった。

COMPANY DATA企業データ

食を通じて人々を笑顔に!

よこづな

事業主:平良哲人
所在地:沖縄県宜野湾市
従業員数:11名(2023年12月現在)
設立:2008年4月
事業内容:備長炭で焼き上げた焼き鳥と旬の食材を楽しめる串カツをメインとしつつ、ビールをはじめお酒も楽しめる店。